私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第拾伍話 乱入するなんざ三下のする事

 

「だりゃぁああ!!」

 

「そんな攻撃、妖怪の猫じゃらしよりも遅くてアクビが出るわ!」

 

ザーッと雨が強くなっていく中で、私は変身して美亜に頭を狙った蹴りを放つ。

しかし、彼女はいとも簡単にヒョイとそれをジャンプで避けつつ、私を捕まえようと手錠を再び投げつけてきた。

 

「わっぶね!ギリギリセーフ!」

 

それを何とか木の棒を拾ってフルスイングで弾き飛ばす。ショッピングモールの時もそうだったが、やはり美亜も美弥子と同じくらいに身体能力が高く、当てようと思っても全然攻撃が当てられない。

 

いっその事、風の妖術で森ごとまとめて吹っ飛ばしてやろうかとも考えたのだが、威力をコントロールするのが難しく、さっきの様にまたド派手に目立つ事態になると思って止めておく事にした。それに、まだ訓練の途中だというのに妖気を消費しまくるのはなるべく避けたいのもある。

 

「こうなったら・・・小次郎、手伝って!」

 

「御意!あの猫の娘を何とかすれば良いのだな!」

 

「速さで勝てないと見るや、数で攻める方に切り替えるのは流石ね綾!でも、そう簡単に私は捕まえられないわよ!」

 

そうやって呼び出した小次郎の蹴りや斬撃にも、美亜は苦もなく対応して避けて見せる。ならばと思い、そこに私も加わって2人で彼女を挟み撃ちにするが、それでも前方後方から繰り出される此方の攻撃が当たらない。

 

これでは美亜を捕まえようにも、動きを止める事すら厳しそうだ。

 

「隙だらけよ!」

 

「危ない、主殿!」

 

しかし一瞬出来た隙を美亜に突かれ、手錠が目の前まで振るわれ「もう駄目か」と思った瞬間――なんと小次郎が私を体当たりで突き飛ばして自身が身代わりとなって手錠をかけられてしまった。

 

「えっ・・・こ、小次郎?」

 

「ふっ、私はただ呼び出されているだけの存在故、捕まったとしても主殿が捕まった事にはなるまい?」

 

「ちょ、そんなのズルいわよ!?ルール違反だって訴えてやる!」

 

そう言って美亜が不満そうにしていたが、小次郎の考えていた通りに脱落者を回収しに来た烏天狗から、同じ説明をされた事で彼女は渋々承諾した。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

――小次郎が脱落して

 

「何とか首の皮が繋がったとはいえ、私1人で美亜と戦わなくちゃいけないのか・・・ん?」

 

「ふん、さっきのはたまたま運が良かっただけ。今度こそ、アンタを捕まえ――な、何よ、この音!?」

 

すると、今度は私と美亜の周囲にあった木々が次々と一瞬の内にして切り倒されていき、そこに両腕に鎌のような刃を装備した、緑と薄緑の体を持つパッと見は小次郎とは別な形でロボットのような妖怪が姿を現す。

 

「はいは〜い、蟷螂坂(かまきりざか)さ〜ん!こっちこっち〜!」

 

そして雨降り小僧がその妖怪の前に現れてピョンピョンと跳ね回る。どうやら、私達が戦っている最中に味方を誘導してきたらしい。

 

「なまらおもっしぇ子達じゃねぇ!わしもちょう混ぜてくれっか〜?」

 

蟷螂坂と呼ばれたその妖怪は、如何にもワクワクした様子でブンブンと両腕をあちこちへ振り回していた。

 

「な、何よコイツ!旅館側のお仲間って訳!?」

 

「多分ね!っていうか、すごく方言が強いな!」

 

私と美亜は一旦逃げようかと目で合図をしていると、雨降り小僧はそれを見越してかニョキと私の目の前に出てくる。

 

「別に逃げても良いけど〜?でも、この妖怪に勝てたのなら、僕はもう君の居場所を教えたりしないって言ったらどうする?」

 

「ぬぐっ!?ほ、本当だろうなそれ?」

 

「うん、ちゃんと約束は守るからね。だけど、蟷螂坂さんは旅館の妖怪の中でも1、2を誇る強さだよ。磯撫でさんと同じく、戦闘に限った話だけどね〜。だから、そこの猫の子と一緒に戦っても良いよ?」

 

"磯撫で"という妖怪がどんな人なのかは知らないが、雨降り小僧がそう約束してくれるというのなら戦わない選択肢は無さそうである。

なにせ、周囲の妖気を探ったら彼ら以外にも沢山居て囲まれてしまっていたからだ。いっぺんに襲いかかって来ないのは、きっとそれだけ蟷螂坂が強いからだという事かもしれない。

 

これ戦わなかったら絶対逃がすつもり無いだろ・・・勘だけど。

 

「OK。そっちがそこまで言うんなら、あの蟷螂坂とかいう奴をぶっ倒せば良いんだよな?乱入するなんざ三下のする事って教えてやるよ」

 

「案外すんなり聞いてくれるんだね。またビックリするような妖術で逃げられるかと思ったよ」

 

雨降り小僧の言葉に、私はわざとらしくニッと笑って見せる。心中ではかなり焦っているはずのだが、それ以上に私は更なる強敵の出現に何故か心が踊っていた。

 

「どうせ、逃げても逃げても追われ続けるんだったら、ここで大暴れして少しでも椿の為に頑張る方が私の性に合ってるからね。それに、向こうだってとっくにやる気でしょ?」

 

「はぁ・・・綾、本当にアンタってバカよね。まぁ良いわ、私も殆ど袋の鼠みたいなものだし、ここはアンタに協力してやるとするわよ」

 

「あっははは!やっぱおまんたはおもっしぇな〜!けんど、わしも言うてかされるのは嫌やから本気出さしてもらうわ」

 

私と美亜が戦闘態勢に入るや否や、蟷螂坂は腕を一度前で交差してから大きく外側へ振り抜いた。

すると、突風のような物がビュウと脇を通り抜けて建物の壁に深い切り傷を刻む。

 

その様子に、思わず私達は同時にポカンとしてしまった。

 

「「・・・えっ?」」

 

「いやぁ〜さっすさっす。かすっけ真似はいかんとね、だすけまずは"種明かし"させてもらうたわ」

 

「あぁ・・・うん、ごめん全然何言ってるか分からん。なんか普通に喋れないですか?」

 

あまりに蟷螂坂の方言がキツすぎて、私も美亜も彼が今なんで攻撃を外したのかについて理解できなかった。

 

「えぇ・・・ゴホン、せやこれで良いかな?とりあえず、不意打ちは好かない性格なんで今のは"デモンストレーション"ちゅう事や。次からは本気出していくで〜」

 

「なるほど、よく分かりました。なら、私も本気でいかせてもらうとしますよ!」

 

だが、私がそう叫んだ時には蟷螂坂の姿は一瞬で消えており、強風が吹いて気が付いた時にはなんと私のすぐ横まで接近してきていた。

 

これは・・・美亜以上に素早い身体能力を持っているのか!?

 

「わしを舐めとったらアカンでぇ。磯撫でが風の揺らぎを避けるんが得意なら、わしは逆にそれに乗るのが得意や!これがわしの奥義、疾風ぶつかりや!」

 

そのまま、蟷螂坂は左腕を裏拳の要領で振るって私を切り裂こうとしてくる。

 

「そいつは私の獲物よ!」

 

「おぉ、あらっ!?」

 

だが、そこで美亜が素早く爪で引っ掻いた為に、蟷螂坂の左腕は彼女の手に押さえられる形となった。

 

「ナイス、美亜!これでも食らっとけ!妖異顕現、緊急祭繰龍(エマージェンシーサイクロン)!」

 

その絶好のタイミングを狙って、私はありったけの威力を持つ風の妖術を思いっきり放った。危うく美亜がそれに巻き込まれそうになったが、元を辿れば彼女も敵だし、あまり気にする必要はないだろう。

 

「きゃぁああ!?な、なに私まで巻き込もうとしてるのよ!?」

 

「チッ」

 

「今舌打ちしたって事は、アンタ絶対わざとよね」

 

何はともあれ、これで風を利用するとかほざいていた蟷螂坂も何処かへ吹っ飛んでいっただろうと思って振り返ると――

 

「今のはちょう驚いたで〜。けんど、これくらいの風、わしには乗りやすい風や!例えるならそう、サーフィンやな!」

 

普通にケロッとした様子で目の前に立っていた。

いや、今のめちゃくちゃビビったよ!!

 

「はぁ!?あれをまともに食らってピンピンしてるとか何なんだよ!?」

 

「言うたやろう?わしは旅館でも磯撫でと同じく一目置かれとる奴の1人やと!こないな事してくるとは、いよいよ楽しくなってきたな〜」

 

なんというか・・・ちょくちょく磯撫でという妖怪の名前を出す所からすると、蟷螂坂って実は強過ぎて結構暇人だったりしたんだろうか?

私と美亜を相手に、何の惜しげもなく自分の能力を話しながら心から楽しそうにしているし。

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