私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第拾陸話 負けへんで〜

 

相手の蟷螂坂の素早さは美亜以上で、普通に見れば動きを目視する事すら厳しい。

だが、私も"知識の力"を解放して向こうの動きを予測して、美亜と連携しながら確実にパンチやキックを"先読みして"当てていく。

 

「次は綾の方よ!」

 

「よっし!――食らえ!」

 

そうして今は、蟷螂坂の顔面に振り向きながら繰り出した裏拳が命中している。

しかし、顔面に拳が入ったというのに蟷螂坂の方はむしろ楽しそうな笑い声を浮かべていた。

 

「ええわ、ええわ!やっぱり戦いってのはこうでなくてはのぅ!」

 

「動きさえ読めちゃえば、お前をぶちのめすのも朝飯前だっての!」

 

「全く、綾のその先読み能力・・・ちょっと反則級に強いんじゃないの?」

 

蟷螂坂の風の流れを利用して加速される鎌の攻撃を腕でいなして、今度はガラ空きとなった腹にパンチをめり込ませた。

 

「今だ、美亜!」

 

「これもオマケよ!とっときなさい!」

 

そこに美亜も加わって、脳天から打ち下ろすようにしてカカト落としも入る。

 

「ご、ふぉっ・・・!」

 

ふと気が付けば、周囲に隠れていた妖怪達も私達の戦いの激しさからか、姿を現してまで見入っている。

 

「さ、流石は、あの妖狐の子と同じ五級のライセンスを持つ人間だ・・・!」

 

「幾ら蟷螂坂さんでも、2対1じゃ勝てないかもしれねぇ・・・」

 

すると、観戦していた妖怪がそう呟いた途端に、蟷螂坂は「ちょっとタイム」と手を前に出して私達を止めた。

 

「あ・・・すいません!蟷螂坂さ――げふん!」

 

「い、今のはつい口が――あがぁっ!」

 

「ったく、けったいな野郎やの」

 

そして、その妖怪達がいる場所へツカツカ歩いていき、彼らに蹴りや頭突きを見舞ってから、また此方へと戻ってきて大きく深呼吸をした。

 

「フゥ〜・・・ほんじゃ、再開といきましょか」

 

そう言った蟷螂坂は次の瞬間、なんと美亜の真後ろへと一瞬で移動して回し蹴りを彼女の無防備な背中へ放っていた。

 

「みぎゃっ!?」

 

「美亜!な、なんだ今の速さ!?」

 

木へ吹っ飛ばされて気を失ってしまった美亜に私がそう叫ぶ間にも、蟷螂坂は鎌で切り上げるような攻撃を私に繰り出してくる。

 

それをギリギリで回避して足払いの蹴りを出そうとすると、今度はもう片方の腕の鎌を90度回転させて振り下ろしてきた。

 

その不意に繋げられた攻撃も、腕にキックを当てて何とか避けたと思っていると、蟷螂坂はさっきわざと見せた時のように腕を交差した状態から外側に開いて、空気の刃を飛ばしてきたのだ。

 

こればかりは流石に避けられず、右肩に掠って少し血がしぶく。

 

「・・・っ!」

 

「へへっ、今度はその腕落とすで〜」

 

それからも激しさを増した蟷螂坂の攻撃に、私は防御するので精一杯となってしまう。

 

――この四方八方から来る蟷螂坂の連撃は、想像以上に厄介だ。

 

それに何よりとんでもないのは、彼がその攻撃を私が"知識の力"で認識してから"回避もしくは攻略する方法"が出てくるより速く繰り出してきているのである。

 

「まだまだいくでぇ〜!」

 

「うおっ!のわぁっ!くっそ、全然手が出せねぇ!」

 

一旦距離を開けようにも、蟷螂坂の連撃がそれを許さない上に、たとえ少し空いたとしてもあの空気の刃で追い討ちしてくる為に中々その隙を突く事が出来ない。

 

何とかして、蟷螂坂の気を一瞬でも逸らす事が出来れば良いのだが・・・。

 

「考えてても埒が明かない!こうなったら、私1人でも――うぐ!」

 

「甘いなぁ〜嬢ちゃん。バカ甘いでぇ!」

 

防戦一方を打開しようと、"知識の力"が出した僅かな可能性にかけて鎌を交差させる瞬間に拳を突き入れたが、それすら蟷螂坂は受け止めて私の拳を掴んで今度は真正面から空気の刃をもらってしまった。

 

頑強な戦闘スーツのおかげで血こそ出はしなかったものの、それでも腹に思いっきり金属バットを振られたくらいの衝撃で身体が悲鳴を上げ始める。

 

「なーんか、思ってたより微妙やったな。ま、少しは楽しめたからええわ。このままいたぶるのも可哀想やし、次で終いにしたるわ」

 

「う、ぐ・・・くそっ」

 

これは、本気でもう駄目か・・・!

 

私の頭に諦めがよぎる。

そうして蟷螂坂が私にトドメの一撃を出そうと腕の鎌を交差させた瞬間――なんと突然彼の頭上に小豆が沢山入ったタライが落ちてきて脳天にクリーンヒットした。

 

「んぶぇっ!?ど、何処のど阿呆や今の!?」

 

落ちてきた方向を一斉に見ると、そのタライは向こうで脱落した小豆洗いが落とした物だったのだ。

 

しかし、それにハッとした私はすぐに美亜の方を見た。

 

・・・彼女が小さく笑みを浮かべている。

つまり、私と蟷螂坂が1対1で戦っている間に、美亜は呪術を蟷螂坂へとかけていたようだ。

 

このチャンスを逃す訳にはいかない!

 

私は隙を突いて蟷螂坂へ渾身の右ストレートを打ち込む。

 

「うおっとぉ!まだそんな元気が残っとったか〜・・・でも、残念やったなぁ」

 

拳は蟷螂坂の片手に掴まれて届かなかったが、それでも私は諦めない。

 

――これでもう"勝機が見えた"のだから。

 

「まだまだぁ!」

 

そのまま私は蟷螂坂がもう片方の腕で切りつけようとするのを掴んで止め、相手が腕を交差出来ないように押さえつけた。

 

今度こそ、もう逃がす事は無い!

 

「な、何する気や!?」

 

「さぁ、これが正真正銘――私の切り札だぁぁああ!!」

 

思いっきり私は頭をグンと後ろに振り上げ、全身の力を込めて蟷螂坂の額へ頭突きを命中させた。

 

「ご、ほ・・・っ」

 

蟷螂坂は頭突きをモロに食らって、口と思われる部分から泡を吹いてその場へ倒れ込む。そして私は倒れ伏す蟷螂坂に、追い討ちとして更に体重をかけて2、3回くらい強く踏み付けておいた。

 

「ぜぇ、ぜぇ・・・勝ったのか?」

 

身体にドッと来た疲れを感じながら、膝に手を当てて肩で息をしていると、蟷螂坂はヨロヨロと起き上がって満身創痍なのに私へ迫ってきた。

 

「ま、負けへんで〜・・・」

 

「あぁもう、しつっこいな!妖異顕現、稲妻雷霆蹴!」

 

「ぁぶへっ!」

 

もう二度と起き上がってこないように、雷の妖術による回し蹴りを蟷螂坂の側頭部へ叩き込み、それを食らってようやく蟷螂坂は気絶した。

 

なんというか・・・自分で言うだけあって本当に強くて、よく私と美亜で勝てたなと思う。

 

でも、これでやっと椿と合流しに行けそうだ。

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