私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第拾陀話 じゃあ遠慮なく殴るか

 

それからしばらくして、少し体力が戻ってきた私はとりあえず気絶している蟷螂坂に手錠をかけた。

 

「って、何でついでのように私にまで手錠をかけてるのよ〜!?」

 

「え?だって、また喧嘩売られたりしたら面倒だし」

 

まだ自力で起き上がれない美亜にも手錠をかけて、そろそろ椿と合流しに向かおうかと考えていると――

 

突然、大きな爆発音が何処からか聞こえてきた。

 

「え、ちょ・・・何よ今の!?」

 

「り、旅館が爆発しただと!?」

 

美亜が驚きの声を上げ、彼女と蟷螂坂を回収しに来た烏天狗がとんでもない事を言ってきた。

 

「なんだって?旅館が・・・?」

 

私も慌てて木の上に登って、少し"知識の力"を使って周囲を見渡すと、確かに旅館のある方角に向かって他の烏天狗達が慌ただしく移動しているのが確認出来た。

 

そして、美亜と蟷螂坂を連れた烏天狗達も、すぐにその方角へと飛んでいってしまった。

 

「あ、ちょっと!・・・こんな非常時でも、私は脱落してないから置いてけぼりってオイ」

 

なんというか、まぁ・・・こうなってしまった以上は仕方がない、急いでダッシュして旅館の方へ向かう事にしよう。きっと他の妖怪も訓練どころではないだろうし、変に邪魔をされたりする事も無いはずだ。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

――数十分後、旅館前にて

 

ほぼ休み無しに走り続けて、ようやく辿り着いた旅館の方では既に大事が発生していた。

 

一般の施設で働いている人が一般の人の客を避難させており、その一般用の施設と奥にある妖怪用の施設からは火災が発生している。どうやら、あの爆発は無差別に行われたものらしい。

 

だが次の瞬間、再び一般用の施設が爆発を起こした。

 

「きゃぁぁぁあ!」

 

「うわぁぁ!に、逃げろ!!」

 

「ひぃ、ひぃぃいい!警察は、自衛隊はまだか!?」

 

なんか約1名程おかしな事を言ってたような気がするが、とにかく一般の人達は今の爆発で完全にパニックになってしまい旅館の人達の言う事を聞いてくれない状態だ。

 

というか、そもそも自衛隊がこんな爆発事件で動くとは思わんのだけど。こういう時に動くのは、確か警察の機動隊だった気が・・・って、そんな場合じゃない!

 

「皆さん!慌てず落ち着いて、ゆっくりと避難を――きゃあ!?」

 

「うるせぇ!それどころじゃねぇ!!死ぬかもしれね〜んだぞ!」

 

「どけ、こら!!」

 

最早、混乱している彼らには何を言っても聞いてくれなさそうだ。こうなったら、とりあえず被害が拡大しないうちに何とかしないと!

 

すると、何故か狐の姿になっている椿が此方へやって来て、私は彼女を受け止めるようにして抱きしめる。

 

「綾ちゃん!良かった・・・大丈夫?」

 

「椿の方こそ、無事で良かった!でも、先に脱落した人や旅館で待機していた人が大丈夫なのか確かめないと・・・」

 

「うん、そうだね!皆、無事でいてくれるよね?」

 

その椿の震えた声に、私は黙って頷くしか出来ない。せめて、彼らが無事であって欲しいと願うばかりだ。

 

「妖気を放っているぞ!妖怪だ、捕らえろ!」

 

しかし、そんな私達の不安を踏みにじるかのように、前方へ札を持った数人が私達へ声を上げながら向かってくる。

 

それにしても、札を持っているからてっきり滅幻宗の連中かと思っていたのだが、全員スーツを着ているしどうやら捕獲が目的なようだった。

 

「まさか、あの連中は・・・」

 

「なるほど、亰嗟って事ですか・・・」

 

だが、たとえそうだとしても連中からは以前の下っ端の半妖の時みたいな妖気は感じ取れない。

とはいえ、こんな所で捕まってしまえば確実に厄介な事になると思ったので、ここは戦うしかないだろう。

 

「くらえ、爆砕符!!」

 

「うわっ!」

 

「危ない、椿!」

 

互いに顔を見合わせ頷いてから、椿が影の妖術を発動しようとすると、連中の1人が椿に札を投げつけてくる。

妖気が膨れ上がっていく、明らかにヤバい代物だと判断した私は、咄嗟に椿を抱きかかえて横に飛び退いた。その瞬間に札が爆発した所を見ると、やはり避けて正解だったようだ。

 

「おら!爆炎符!」

 

しかし、そこへすぐにもう1人が更に別な札を投げつけてきて、今度は後ろに避けた私達の目の前を燃やしながら爆発を起こした。

 

「あっつ・・・!」

 

「あちちっ、くそ!この爆発からすると、やっぱりコイツらが旅館を襲ったのか!」

 

そう私が推測している最中にも札が次々と投げ込まれて、気が付いた時には周囲を激しい炎に囲まれてしまっていた。

 

「よし!捕獲縄を投げ入れて、そのまま2匹とも捕獲しろ!コイツらの妖気、すげぇ高ぇぞ!報酬もガッポリだぜ!」

 

ただまぁ、なんというか・・・そこで慢心してしまう様子からすると、意外と大した事無い相手だと心が落ち着いた。

 

それに、此方には"炎を喰う、より強い炎"すら扱える椿が居る。

 

「ったく、これで捕まえた気になるとか甘いっつーの。椿、アレをお願い!」

 

「任せて、綾ちゃん!――妖異顕現、黒焔狐火」

 

椿が妖術で尻尾に黒い炎を宿らせ、クルッと回転して周囲の炎へとそれを投げつけていく。椿が放った黒い炎は、瞬く間に私達を囲っていた炎を喰らい尽くすと、今度は椿の周りへ火の玉の形となって浮いた。

 

「おいおい椿、いつの間にそんな芸当出来るようになったの?」

 

「僕にも分からないよ。なんか、身体が勝手に動いたというか、頭に妖術の動かし方が湧いてきたというか・・・」

 

「まぁでも、あの2人はかなりビックリしてるみたいだけどね〜」

 

私達は、たった今椿がやって見せた行動に恐れおののいている攻撃を仕掛けてきていた2人へ目をやった。

 

「ひ、ひぃ!?あの狐、体毛が変化しやがった!何だコイツは!?」

 

「ちっ、油断すんなよ!コイツら、他の妖怪とは違う!っていうか、俺達1匹も捕まえられてねぇ!せめて狐じゃない方だけでも!」

 

そう言って、まだやる気な連中の1人が札を持ちながら殴りかかってくるが、私はそれを簡単に回避し腹にパンチを入れて元の所へ返送してやった。

 

ひとまずは殴る蹴る程度なら何とかなるくらいに体力は戻っているので、ここは何とかして連中の1人や2人でも捕まえて詳しく事情を聞き出したい所だ。

 

「ねぇ、君達の目的は何?」

 

それに椿も賛同して、完全に膠着状態となった連中へと質問を投げかけた。

 

「う、うるさい!お前らは、大人しく人間様の道具になってりゃ良いんだよ!」

 

「妖気か妖具・・・そのどちらかを俺達に渡せば良いだけだ!」

 

「そう。それだけで俺達は、凄い力を使えるようになるのさ!妖気を感知したりも出来るんだぜ!」

 

あ〜・・・これは、やっぱりコイツらは何にも知らない下っ端ですわ。これ以上の情報は多分、手に入らないかもしれないな。

 

――じゃあ遠慮なく殴るか。

 

私は椿に目で合図して、宙へ浮いている黒い炎の玉を連中の縄へ飛ばさせる。

 

「あっつ!あちぃ!くっそ、こいつ!」

 

「お〜お〜、随分熱そうですな〜!ちょっと冷やしてやるからこっち来な〜・・・妖異顕現、緊急祭繰龍(エマージェンシーサイクロン)!!」

 

「「「「どわぁぁああ!?」」」」

 

そして、私はそれに続いて地面にしっかり足を着けた状態で風の妖術を発動し、竜巻を起こして連中をまとめて山の斜面へと叩きつけてやった。

その激しい豪風によって、土埃や木々の葉っぱが辺り一面に撒き散らされる。

 

椿がポカーンとした表情で私の方を見てくる。

 

「あ、綾ちゃん・・・それ、やり過ぎじゃない?」

 

「やっべ、全力でぶっぱなしちゃったわ。ま、まぁ許してちょ〜よ☆・・・って事で」

 

苦し紛れに、私は椿に「テヘペロ☆」といった感じでウィンクしながら舌を出して見せ、その後に大きくため息をついた。

 

うわ、うっわぁ・・・これ、絶対色んな意味でアウトだよな。

 

「く、くっそ!マジで何だコイツら!」

 

「わ、割りに合わねぇ!んだよ、あの人!"内通者"が居るから簡単だって、そう言ってたじゃねぇかよ!」

 

すると、なんか不吉な言葉が聞こえたので、すかさず私達は連中が叩きつけられている場所へ跳んで問いただす。

 

「待ってください、知っている事を全部話して!」

 

「さもなきゃ、1分経つ毎に1発殴る!ってか、まずは駆け付けで1発殴らせろ!」

 

「ひっ!」

 

「うぎゃぁぁああ!!」

 

相手がすぐに逃げ出そうとしたので、私は一瞬のうちにして連中の脳天へ拳を振り下ろしていった。これは向こうが逃げるのを阻止するという正当な理由からであって、決して個人的にイライラしてやった訳ではない――と弁明しておく。

 

ただまぁ、変身している状態で全力でぶん殴ったものだから、連中全員を"逆犬〇家のポーズ"といった具合に下半身が地面に埋まらせてしまった。

 

「あ〜や〜ちゃ〜ん?幾ら何でも、これはやり過ぎですよ〜?」

 

「あ、あはは・・・あれぇ?お、おっかしいなぁ〜?」

 

連中の誰も大怪我をしたり、ましてや死んだりしていないので大丈夫かと思ったのだが・・・。

 

なお、それからしばらく私は後ろから投げかけられる椿の怖い笑顔のプレッシャーに振り向く事が出来なかった。

 

なんというか、ヤバいねアレ。初めて見たけど、怖いなんてものじゃなかった。

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