私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
私達が襲撃してきた4人をボッコボコに打ちのめした後、向こうから旅館の男性従業員の人がやって来て4人を適当な布は紐で拘束する。
従業員の人とはいえ一般の人間が来たので、素性がバレないように私は変身を解いて狐のままの椿を飼い犬のように抱っこした。
まぁ、それでもかなり違和感があるだろうから怪しいかもしれないが。
そして、それがあっさりバレてしまったのか、男性従業員は周囲に聞こえないようコッソリと私達へ話しかけてくる。
「君達、助かったよ。旅行に来てる妖怪の方?もしくは、鞍馬天狗の家の方?」
「あ、そっか・・・あの旅館で働いてるって事は、少なくとも旅館の事については知ってるんですもんね」
「えっと、僕達はおじいちゃ・・・あっ、鞍馬天狗の家の者です」
苦笑いをしながら頭を掻き、椿が小声で男性従業員にそう答えた。すると、その人は何処か納得した顔で私達を見る。
「そうか、道理で・・・」
「へ?何か言いました?」
「あぁ、すまない。君達は、もう此処にいる妖怪達とは戦ったかい?」
何やら意味深そうな言葉に不審がっていたら、唐突にそんな質問をされたので、私と椿はとりあえず頷いてそれを肯定する。
「それだったら、もう分かったかもしれない。此処の妖怪達の嫉妬がね」
「嫉妬・・・?どういう事なの?」
「彼らに悪気は無いんだ、だから許してやってくれ。そして、助けてあげて欲しい。此処の妖怪達は、周りが見えなくなる時があるんだ」
なるほど、詰まる所は私達がライバルでもある椿の祖父の家の存在だから、その強さに嫉妬してあそこまで本気を出してきたりしたのだろう。
さっき倒した、好戦的な蟷螂坂がとても良い例だった。戦う事に夢中になり過ぎて、途中で気絶した美亜の事はさっさと眼中から外してしまっていたし。
ただ、完全に余所者である私達に何が出来るかと言われれば、それは全く分からないのだが。
「その頼みには悪いけど、私達は余所から来た人だし、ずっと働いているアンタ達の方が――」
私が男性従業員を断ろうとすると、彼は困惑した顔で呟く。
「それは・・・出来ないんだ。私達は、とっくの昔に"死んでいる"からね」
「「えっ?」」
訳が分からず呆然としている私達に、今度は男性従業員がゆっくりと近づいてきた。その上、ぶつかる直前になっても止まる気配が無い。
「おい、一体何を――」
「えっ?ちょっと、危な――」
「ほらね?」
は?ちょ、すり抜けませんでした今?
「っ〜!!」
「へ・・・?ほわぁぁああ!?」
いやいやいやいや!
「ほらね?」じゃねえよ!?そりゃ目の前ですり抜けられる瞬間を見せつけられたら、私も椿もビックリするって!!
そうやって、私達が男性従業員の幽霊的な行動に仰天していると、人間用の施設の方からレイちゃんが此方に向かってやって来た。
「そうそう、君達は良い子をペットにしているようだね。ご主人様に言われなくても、自分の使命がちゃんと分かっているみたいだ」
「ムキュッ、ムキュゥゥ!ムッ?」
「うわ!ち、ちょっとレイちゃん・・・私達は大丈夫、大丈夫だから!だから、そこまで心配そうにしなくても平気だから・・・ね?」
「あ、はは・・・ぼ、僕も色んな経験をしたから、い、いい、今更幽霊くらい」
私は顔を舐めてくるレイちゃんを撫でながら優しく言葉をかける。そして、椿もレイちゃんに心配いらないと声をかけているが、その声はめちゃくちゃ震えていて、男性従業員や他にも集まってきた従業員の人が苦笑いを浮かべていた。
それを見た椿は恥ずかしそうな顔になり、慌てて話を逸らして誤魔化す。
「と、ところで、レイちゃん何処に行ってたの?昨日の夜から見なかったけど」
「あ〜、そういえばそうだったね・・・。霊狐は偶に霊魂を探しにふらつく習性があるって聞いたから、出来るだけ自由にしとこうってしてたんだっけ。椿が妖気が探知出来るから、探すのは後にしようと言ってたかもね」
「綾ちゃんは最近のちょっとした事を忘れ過ぎです。ちゃんとレイちゃんの事も覚えててあげてよね?」
「はい、ごめんなさい」
そして、男性従業員の霊(?)がそれを見て優しげに微笑んだ。
「ご主人様が優しいから、ペットのこの子も優しいのかな?この子はずっと成仏しない私達の傍に居て、ジッと見守っていたからね」
「そうだったんですか。なんか迷惑かけちゃったみたいですいません・・・」
私が頭を下げて謝ると、男性従業員は首をゆっくりと横に振って「迷惑ではなかった」といった顔をして見せる。
「いやいや、別に謝らなくても大丈夫だよ。それに私達は訳があって、成仏せずに此処で働いているのさ。――ところで、急で悪いのだけれども妖怪側の旅館の様子を見て来てくれないか?戻ってきた妖怪達が頑張っているみたいだけど、ざっと2、30人くらいで襲って来たからね」
「えっ?まだ敵がいるんですか!?」
「マジか・・・!すぐに向かわないと――って、あららっ?」
そんな話をされて私は急いで旅館に戻ろうとしたのだが、どうにも足に力が入らずにその場へ膝をついてしまった。
「綾ちゃん、大丈夫!?・・・あ、あれ?」
そして、そんな私を見て駆け寄ろうとした椿も、足元がふらついて同じようにヘタリと倒れ込んでしまう。
すると私達のお腹からグゥ、と大きな音が鳴った。
「あ・・・これって、まさか・・・うわぁ」
「君達、もしかして・・・妖気を使い果たしたのかい?」
従業員の人達が慌てて私と椿に駆け寄ってくる。
そういえば、"知識の力"を使ったり強力な妖術をポンポン使っていたのを忘れていた。そして、どうやらそれは椿も同じだったようだ。
こ、これでは助けに行きたくても行けないじゃないか・・・あぁ、ちくしょう。
「ムキュゥ!」
そんな時、なんとレイちゃんが私と椿の身体に寄って来て、ピッタリとその身体をくっつけてきた。そして、そこから私達の身体に妖気が流れ込んで来るのを感じ取る。
「ちょっとレイちゃん、何してるの!?」
「まさか・・・自分の妖気を分け与えてるの!?駄目だって!そんな事したら死んじゃうよ!!」
私と椿は慌ててレイちゃんを引き離そうとするが、頑なにレイちゃんは離れようとしてくれない。
「これは・・・君達、大丈夫だ。その子は霊気を妖気に変換して、それを君達に渡しているようだよ。ついさっき、ここら辺を漂っていた妖怪の魂を食べていたから、霊気は沢山あるんだろう」
「なんだって?その話は初めて知ったよ・・・」
レイちゃんを心配する私達を見て、男性従業員は少し驚いた様子でそう言ってきた。彼らは幽霊になった事で、霊的な存在とかも見えるようになっているらしい。
「ん・・・身体が凄く軽くなった気がする!何はともあれ助かったよ、レイちゃん」
「レイちゃん、ありがとう。もう立てるようになったし大丈夫だよ。でも、いきなり心配させるような事はしないでね?」
妖気が補充された事で空腹が収まり、身体が動くようになった私はレイちゃんにお礼として頭を撫でてあげた。
同じく椿もレイちゃんを撫でようとしたのだが、そこで彼女の姿が狐のままである事を思い出して立ち止まる。
「うっ、ぐ・・・大丈夫。今は僕も狐だし、変じゃないよね」
「あ〜そっか・・・って、椿?何するつもりなの――ふぇぇえええ!?」
すると、椿はなんと狐の姿のままでレイちゃんの頬をペロっと舐めてあげたのだ。その可愛い過ぎる絵面に、つい私は柄でもない程の驚きの声を上げてしまう。
あっ・・・これヤバいわ、あまりの興奮で鼻血が出そう。
「綾ちゃん・・・なに悶えているんですか?もしかして、君も――」
そんな私の姿を見た椿は呆れてため息をつく。
「そ、そんな、やましい事は考えてないよ!?ただ、ちょ〜っと羨ましいな〜って・・・はっ!」
「もう、綾ちゃんったら・・・そこから動かないでね、えいっ」
そして、私が失言してアタフタしてる隙に、椿は私の肩へ飛び乗ってくると、そのままペロとさっきレイちゃんにしてあげたように頬を舐めてくれた。
「あっ――!!」
「そ、その場に倒れちゃうなんて、どれだけ嬉しかったんですか・・・」
あまりの喜びで仰向けにバタン!と倒れる私を見て、また椿は呆れたため息をついた。
椿の無自覚に人を深みへと嵌らせる、その好意・・・私にとっては"薬も過ぎれば毒となる"クラスである。
でも、とても幸せなので何の問題も無いよ!
ちなみにレイちゃんも、今まで以上に椿のお礼が嬉しくて彼女へピッタリと寄り添っている。
「レ、レイちゃん・・・これから危険な所に行くから、此処で待っててくれる?」
「ムキュゥゥ!」
「ありゃ〜、これはしばらく離れてくれそうにないね・・・仕方ない、とりあえず旅館の方へ戻ろう!」
私達は急いで旅館の方へと走った。
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――妖怪専用旅館、宴会用大ホールにて
ひとまず、訓練の本部かつ脱落した妖怪達が集められている大ホールの方へと向かった私達は、その扉の前に立った。
「この先に皆が・・・!」
「レイちゃん・・・危なそうだったら、すぐに逃げてね」
すると、突如として扉の向こうから爆発音が聞こえて、同時に勢い良く扉が壊れて私達に向かって飛んでくる。
「おわっ!?」
「あっぶない!」
私と椿は各々妖術を発動して飛んできた扉を弾き飛ばし、すぐに扉があった入り口の両脇へと隠れた。中を見ると、既に色んな妖怪が縦横無尽に飛び交って戦っているのが分かった。
「おいおい、クソッ!もう中で戦ってるのかよ!」
「待って、綾ちゃん!今闇雲に突っ込んでいっても、下手したら逆に足を引っ張っちゃうかも・・・だから、ここは僕達で作戦を考えて、敵を驚かして少しでも怯ませようよ!そうすれば、相手に大きな隙を作れるかもしれないの!」
「なるほどね!で、その作戦ってのは!?」
それから椿が私の方へと移動して来て、その作戦の内容を耳打ちで知らせてきた。
作戦自体は土壇場で思い付いた物で多少不安が残るが、それでも内部の状況が混沌としている今では最善と呼べる策であった。
それに作戦の行動も、真正面から殴り合うのが得意な私にとっては好都合だ。
――とにかく、これからドンパチ賑やかになるのは確かだろうね!