私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

136 / 390
第拾玖話 N〇Kの集金だオラァ!!

 

作戦を立てた私達は、早速それを行動に移すべく準備を始める。

この作戦の肝は、私と椿それぞれの行動のタイミングと登場のインパクトが主軸だ。

 

とにかく早い話、私が盛大に囮となって相手の注意を引き、椿はそれを行うタイミングを図ってもらう感じである。

 

「さて、中の様子を見た感じだと、どうやら敵は全員此処に詰めているかもしれないね」

 

「うん、それならラッキーだよ綾ちゃん。上手くいけば、一網打尽に出来る」

 

「後は私の登場で、向こうがどんな反応をしてくれるかだけど・・・」

 

改めて中の様子を伺うと、楓や彼女の家族が無事な姿が確認出来た。そして、椿の祖父や狐2人の方も少しだけではあるが姿を見つける。

 

「おじいちゃんも無事そうだし、白狐さん黒狐さんも無事だね。でも、誰1人として倒せていないのは何で?」

 

「私達より強い人も沢山居る上に、向こうは数で勝っているとはいえ人間だよね・・・ん?あれは!」

 

その疑問について考えている最中に、椿の祖父と狐2人の前へ立つ何者かの姿が見てとれた。

詳しい姿は分からないが、そいつが長い得物を振るう度に彼らは真剣な様子で攻撃を防いでいるようだ。

 

「あの人だね・・・此処の襲撃を指示した人は」

 

「椿。私の方は何時でも行けるよ」

 

私がそう言っても、椿からはまだ突入の指示は来ない。

 

しかし、実力が高い椿の祖父や狐2人を真正面から相手にしているだけあって、確かにあの敵の強さは分からない部分が多い。

 

「何だ、あの白い札は・・・!?」

 

「えっ?」

 

ふと、私はその人物が手に持っている札の異様さに気付いた。それは何にも書かれていないというのに、妙に嫌な予感がする妖気が溢れてきている。

しかも、それを手にしたそいつの口元が「ここまでだ」と言わんばかりに、異常な程に吊り上がっているようにも見えた。

 

「まさか、アレで捕まえようとしているんじゃ・・・」

 

「マジか、なら早い所動かないと!」

 

「そうだね、綾ちゃん。今しかない、作戦開始だよ」

 

「よし、任せて!」

 

私は大きく深呼吸をして、扉の近くにあった休憩用のソファを持って思いっきり大ホールに向かって投げ入れた。そして、そのままドン!とわざと大きく足を踏み鳴らしてホールへと入る。

 

「――おい、N〇Kの集金だオラァ!!テメェら死にたくなかったら、大人しく武器を捨てやがれ!!!」

 

「綾ちゃん・・・それじゃ完全にヤクザの人だよ・・・」

 

椿が小声で私にツッコミを入れてきたが、今のN〇K集金の怒号のお陰で敵も味方も全員ポカーンとしているようだ。これはある意味で成功したと言えるだろう・・・とりあえずN〇Kの皆さん、お許しください。

 

「妖異顕現、黒槌土塊!」

 

何はともあれ、その一瞬の隙に椿が敵陣へと切り込んでいったので、私もそれに続いて拳を振り上げながら白い札を持っている人物を狙って次々とぶん殴って倒していく。

 

「オラァ!そこ動くんじゃねぇ!――あっ」

 

でも、椿と協力しているにも関わらず何故か私達が叩いた連中は、またしても地面へ"逆犬〇家"の格好で突き刺さってしまっているようだ。一応、力は加減しているはずなのだが・・・まぁ、今はそれどころではないので気にしないでおこう。

 

そして、狐2人も私達の作戦を勘づいてくれて周囲に居た連中を倒していってくれていた。

 

『椿!綾!大きな鎌を持っている奴に気を付けろ!』

 

「なんだって、黒狐さ――どわっ!?」

 

「えっ?うわっ!」

 

しかし黒狐さんから注意が飛んできた瞬間、突如として私や椿の足元に大きく切り裂いたような亀裂が走る。

 

「ったく・・・雇った連中ばかりとはいえ、ここまで場を乱してくれるなんて思ってなかったよ」

 

そして、その攻撃が飛んできた先程まで狐2人や椿の祖父が居た方向へ目を向けると――そこには、かつて体育館で戦った、大鎌を持っていて露出度が高く片腕が鎧のような物で覆われている、あの女がそこに立っていた。

 

「お前は、あの時の!」

 

やはりというか、そいつは私を見てすぐに殺意を剥き出しながら近づいてくる。

 

「折角、バイトって名目で集めたのによ。一々こっちの邪魔――しないでもらえるかなぁ!?」

 

「えっ・・・バイト?――っ!綾ちゃん、危ない!」

 

「へ?ぬぉっ!?」

 

椿がそう叫んで私に飛びついて来た途端、今度は私の居た場所に大鎌が勢い良く突き立てられる。

 

「チッ、外した。まぁ、そのバイトってのも"捕まえた妖怪の強さで報酬を高くする"って触れ込みで集めてるから、そこまでアテにもしてないけど――ね!」

 

更にそこから女が鎌の持ち手を利用して回し蹴りを放ってきて、私はすぐに立ち上がってそれを右脚のキックで受け止めた。

 

「ふーん・・・前よりも、少しはやる様になった感じだな?妖気の質がより純粋になってきてやがる」

 

「へぇ・・・まさかアンタも、私と同じように妖気が見えたりする訳?」

 

私は女が繰り出してきた拳を掴んで受け止めながら、相手が何か情報を握っているのではと思って聞いてみる。

 

「お前なんかと一緒にされたくないね。私は、この妖気を感知出来る道具が無いと何にも感じ取れないんだよ」

 

女は自分の首に掛かっている、鎖が付いた銅色の首輪をトントンと指差して心底苛立たしげな顔を浮かべて見せた。その首輪から妖気が出ている所からすると、あれも妖具の一種なのだろうか。

 

「けど、見えてしまえば後は――」

 

そんな事を考えていると、また女は大鎌を引っこ抜いて横薙ぎに私達目掛けて振るってきた。

 

「うわっ!」

 

「あんまり避けんじゃねぇよ。この"魔封じの鎌"が全然斬れなくて泣いちまうだろうが」

 

「お前・・・その鎌は、まさか」

 

女が振るっている大鎌から感じ取れた、持ち手の部分から鎌全体を包み込むように発せられている妖気を見た私達は嫌な予感がして周囲を見渡した。すると、他の妖怪達が次々と人間に捕まったり隙を突かれたりして白い札へと吸い込まれていく姿を目にする。

 

それを見た椿が、女へ怒りの声をぶつけた。

 

「あなた達は妖怪を札に封印して、それを武器に使っているんですか!!」

 

「うるっせぇ子狐だなぁ、この。別にそっちの連中使おうが何しようが、私はそいつさえ殺せれば十分なんだから口を挟んでくるんじゃねぇよ」

 

「コイツら、狂ってる・・・!」

 

私はそう言いつつ、他に捕まっている人が居ないかと不安になって更に周囲を見渡す。

 

楓や彼女の両親、そして椿の祖父に狐2人や美亜と美弥子、それから椿の祖父の家に住まう妖怪達は皆無事なようだ。それに狐2人と椿の祖父が筆頭となって、他に残っている妖怪達を助けている所からして、何とか皆この場からは逃げ出せそうだ。

 

そうなったら、今私と椿に出来る事は1つだけだ。

 

「お前らが変な登場なんかしてくれたせいで、私が立てていた計画は完全に滅茶苦茶だよ。この落とし前、どう付けてくれる気だ?あ?滅幻宗のバカ共から頼まれて来てやったってのに、これじゃ合わせる顔すら無いだろうがよ!」

 

――こんな自分勝手なクソ野郎を"排除"するだけだ。

 

「いい加減にしてください。負なる者」

 

「・・・対象を確認。"同一体"と認識、同個体の速やかな"排除"へと移る」

 

「テメェ、まさか・・・それに、そこの子狐のそれも、まさか"神妖の力"か?」

 

『いかん!椿!綾!』

 

悪いね、白狐さんに黒狐さん。

私が椿を抑えなきゃならないのは分かっているけれども、こんなクソ野郎がこれ以上ベラベラと能書き垂れ流してくるのに、怒りが次から次へと湧いてきて我慢の限界なんだよ。

それに、椿だって何の害も為してない妖怪がこんな目に合わされてるって事に怒っているんだから、それを邪魔する真似なんてしたくないんだ。

 

【椿も綾も、落ち着きなさい!】

 

「妲己さん・・・消滅したくなければ、隠れていて」

 

「敵対勢力の分析完了、これより対象の強制的な武装解除を行う」

 

だって、私は人を殴る事しか――いや、

 

"魔を殺すモノ"でしかないのだから。

 

「その妖気、さては"烏森の秘術"を発動したな。それに、子狐も実は人の姿にもなれるときたもんだ。なら、ここで白黒ハッキリ付けさせてもらおうか!!」

 

そういえば、椿は合流してからずっと狐の姿でいたから、人の姿に戻ったら全裸になっちゃうっけ。

 

まぁ、今はどうでも良いか。

 

たとえ"私と同じ存在"だろうと、それが邪悪な"魔"を孕んでいるのなら私はそれを"殺す"だけだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。