私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第弐拾話 なんだ、あの酔っ払いは・・・

 

あのクソ女・・・何の関係もない人を騙して悪事を働かせたばかりか、椿達妖怪をもタダの道具として使い捨てているなんて。

 

たとえ身体を変な意識に動かされる事になっても、奴の事は絶対に許せない。

でも、以前とは違って今回は"敵を倒す"という想いが強いからか、自分の考えで身体を動かす事が出来るし、視界に映し出されるデータを見ても不思議と迷ったり悩んだりとかはしなかった。

 

そして、その私達の気持ちをレイちゃんも分かっているのか、"神妖の力"を解放した椿と"知識の力"を解放した私へ、その力が安定するようにと妖気を送ってくれている。

 

「これならどうだ!」

 

女が大鎌を振って、妖怪が封じられた札の力で衝撃波を生み出して私達へ飛ばしてくるが、そんな大振りな攻撃から出される物など、力が解放されている此方には打ち消す事は造作も無い。

 

「――防御。当機と妖狐"椿"への損傷を確認・・・双方共に、戦闘続行に問題無しと判断する」

 

「どうしました?負なる者。さっきから、掠りもしていませんよ」

 

「マズったな、まさかコイツらがここまで力を振り回せるとはね。けど――!」

 

女が更に衝撃波を飛ばそうと大鎌を振り上げるが、私達だってそう何度もやらせるつもりは無い。

 

「――妖異顕現、金華浄焔」

 

「――妖術を発動。妖異顕現、零度舞璃裂弩(アブソリュートブリザード)」

 

椿が金色の炎を放ち、私も手を銃のような形にして指先から円錐状の氷塊を幾つも作り出して一斉に女に向けて発射した。そして、それらを払うのに夢中で息を切らしたそいつに、私と椿は一気に懐まで踏み込んで同時に下から蹴り飛ばす。

 

「対象の妖気の低下を確認。妖気残量は35%程と推測」

 

「何ですか・・・この弱さ」

 

だがそれでも、信じられない事にリーダー格である女が苦戦しているというのに、他の連中は逃げている妖怪をまだ捕まえているようだ。

こんな欲望に塗れた連中に妖怪達をこれ以上痛めつけられない内に、さっさと片を付けなければ。

 

すると、椿が私の方にチラと顔を向けて微笑んだ。

 

「天神招来、天矢の怒弓(あまやのどきゅう)」

 

それから椿が手を上にかざして、そこから大量の金色に輝く矢をホールに詰めている連中だけに命中するように発射した。その軌道はうねる蛇のように動いて、確実に連中の1人1人を射抜いていく。

 

「ぐはっ!」

 

「ぎゃあ!」

 

「うわぁぁあ!」

 

そして、その射抜かれた連中の状態を"知識の力"で確認すると、一瞬で心を浄化されただけで単に気絶している事も判明する。知らない人格になってしまっているとはいえ、人を無闇に傷付けないなんて流石は私の親友だ。

 

「チッ・・・いい加減に、しろよなぁ!」

 

だが最後に椿が射抜こうとした、あの女は金の矢を避けて大鎌を縦一回転に振り回した。そして、そこから発せられた先程までとは一際威力が違う衝撃波で飛んで来る金の矢を打ち消し、そのまま私と椿も大きく吹き飛ばしてしまう。

 

「くっ、あくまで抵抗しますか、負なるも――っ!?」

 

「と、当機の状況を確認・・・後頭部へ――・・・へ――」

 

どうやら、今吹っ飛ばされた事で私と椿は扉に頭をぶつけてしまったらしい。そのせいか、ずっと戦闘を有利にしてきた、あの機械的な感覚が薄れていくのを感じる。

 

『椿!綾!大丈夫か!?』

 

『む、これは・・・黒狐よ。2人共、頭を打ったからなのかそれぞれ妖気が乱れておる』

 

当機の――機能が、著し・・・く――!

 

そうして頭の中から感覚が消え失せ、霧が晴れていくように意識がハッキリしてきた。

 

「ムキュ!ムキュゥ!」

 

「あ、がはっ・・・戻った、のか。レイちゃんに心配かけたみたいだね、本当にごめん」

 

「う〜ん、レイちゃん・・・耳元でうるさいよ〜。あっ、良かっ・・・た。僕達、戻れた・・・のかな?――って、うわぁ!裸でしたぁ!」

 

「あ、そうだった!椿、私のコレ使って!」

 

椿が全裸である事に気づいた私は、恥ずかしさでへたり込む彼女にすぐさま変身を解除してから、自身が着ていた腰元まで隠れる程のシャツを被せた。

 

そして、先程頭を打って意識が混濁していた際に、椿の"神妖の力"が収まった事で1つだけ分かったものがあった。

 

【危なかったわ〜!全く、2人とも封印されてる力を少しは使えるようになったからって、無闇に多用はしない事!】

 

「はい、すみません・・・でも、お陰で分かったよ。僕の"神妖の力"を封印しているのが、実は妲己さんだって事。センターの人達がやったのは封印というより、蓋の付いた壺の中にただ戻しただけなんですね」

 

「やっぱりね。妲己さんが直接封印に関わる程なんて、本当に一体昔に何があったの?」

 

【あ〜らら、バレちゃったか。でもまぁ、やっぱり椿にこの力はまだ早いわね。もっと修行して、今より強くなってからね。綾の方も同じよ〜それじゃあ、おやすみ〜】

 

「ちょっと、質問に――また寝たよ、もう」

 

私が呼び止めるのも構わずに妲己さんは眠ってしまった。なんというか、椿に害を与えるつもりが無いのは分かってきたが、それでもイマイチ私達を助けてくれる理由が不明だ。

 

『椿に綾、大丈夫か。服は・・・綾が貸してくれたのだな』

 

「うん、そうだよ白狐さん。ちょっと訓練中に破けちゃってね。でも、心配してくれてありがとう」

 

『しかし、綾の方は着る物は良いのか?』

 

「椿の為にやっただけだし、それくらい平気だよ黒狐さん。それに、この姿に変身してれば衣服がどうなってても隠してくれるから特に問題も無いからね」

 

それから、白狐さんがジロジロと期待した感じの眼差しを椿に向けながら、やれやれといった様子で首を横に振る。

 

『全く、2人共・・・頑張るのは良いが、あんまり心配をさせるな』

 

「椿をエロい視線で見ながら言っても、説得力が全然無いと思うけど白狐さん?まぁ、でも・・・気を付けるよ」

 

そして、椿がシャツを着直したのを見て、あのクソ女はため息をつきながら大鎌を担いで周囲を見渡している。

 

「やっと戻りやがったか。けど、"裏切り者"であるお前はともかく・・・まさか、そこの子狐が"神妖の力"を持っているなんてな。それに、この状況じゃ分が悪いか・・・はぁ〜、面倒くせぇ」

 

ブツブツと文句を垂れ流すクソ女の言う通り、他に襲撃してきた連中は、既に狐2人や椿の祖父達の手によって取り押さえられていた。

 

「このまま退くのもなぁ・・・どうしよっかな〜?」

 

「だったら、大人しく捕まって」

 

「そっちがまだ戦うつもりなら、こっちだって止めるつもりは無いよ」

 

私達はフラフラになりながらも、限界そうなレイちゃんから残りの妖気を受け取って立ち上がる。

だが、仲間がほぼ全滅している状況でも、クソ女は黙って捕まる気は無いようだった。

 

「はんっ、誰が「はいそうですか」ってホイホイ捕まってやるものかよ。それに私は言ったはずだ、私の目的はそこに人間ヅラして立っている"裏切り者"の消去だとな。その為だったら、お前ら妖怪を使い捨ててでも何度だって立ち上がってやる!」

 

「ふざけんな!そもそも、そっちが最初に手を出してきたんだろうが!何なんだよ"裏切り者"って、私はお前みたいな奴に何かしたっていうのかよ!?」

 

「落ち着いて綾ちゃん!」

 

そのクソ女の、訳の分からない言い分に私が言葉を荒らげると、椿が手を私の前に出して止めてくる。そして、そのまま彼女はクソ女へと視線を向けた。

 

「・・・あのさ、君が依頼されている所って、亰嗟だよね?」

 

「あ?それがどうしたよ?」

 

椿の質問に、クソ女は一度私から目を離して彼女を睨みつける。

 

「その亰嗟なんだけどさ、そこにも半妖がいるはずだよね?妖怪と人間の合の子の、がね。話を聞いていると、かえって君の方がそいつらに上手い事使われているだけだから、本当は誰かを綾ちゃんと間違えてるだけで全然関係無いんじゃないのかな?」

 

「・・・なんだと?亰嗟の連中も妖怪だって、そう言いたいのか?」

 

クソ女の顔が訝しげな表情になる。

 

その様子からして、どうやら椿は何とかして言葉でアイツを退かせようとしているのではと感じ取れた。

もし、椿の話の方が正しければ、クソ女が間違って私を付け狙っている事になるので、それこそ襲撃してくる理由が無くなるはずだ。

 

「ふ〜ん、なるほどね・・・それなら確かに、わざわざアンタらを狙う必要も無いって言いたいんだな」

 

だが次の瞬間、クソ女の目付きが急に憎悪が篭った鋭いものへと変化する。

 

「じゃあお前は、妖怪共に踊らされてる私がピエロだって言いたい訳なんだな!?・・・ふざけんなよ、この子狐が!私は"烏森家の最後の命令"を受けてここまで来たんだ、今更その目標が「実は間違ってました」なんて事が有り得るか!こんな口先で騙してでもソイツを守ろうとするなんて、いよいよ気でも狂ってるんじゃないのか!あぁ!?」

 

「な、なんだよコイツ・・・いきなり逆ギレしだしたんだけど・・・」

 

クソ女が何故か椿の言葉に逆上して怒鳴り散らし始める。そして丁度その時に、椿の祖父がそいつの真上に飛んで天狗の羽団扇を使って取り押さえようとした。

 

「見えてないからって、捕まると思ったかよ天狗の爺さんが!とはいえ、気は進まねぇが今は撤退するしかなさそうだな・・・!」

 

しかし、その攻撃をクソ女は意図も容易く回避する。不意打ちだったとはいえ、椿の祖父がほぼ一瞬の内に繰り出した今の攻撃を避けるとは、相手は本当に人間なのだろうか?

 

そして、そのまま彼は身を翻して着地するとクソ女へ怒り心頭した顔を向ける。

 

「人間のクセに意外とやりおるわ。だが今の内に大人しく縄につけば、痛い目を見ずに済むぞ」

 

「悪いが、私だって目的を果たすまでは死ねないんでね。ここで退くのは悔しいが、今はひとまず退散させてもらうとする!」

 

クソ女はそう言うと、おもむろに腰元へ付けたポーチから札を取り出して真上へと投げ上げた。

 

――瞬間、その札からは激しい光が発生する。

 

その光によって、私達は一瞬だけ目を眩ませて立ち往生してしまった。

 

「ぐっ・・・しまった!あの札、滅幻宗も使っていた奴だ!」

 

「ぬぅ!くそ、逃がすな!白狐、黒狐!」

 

『す、すまん翁・・・我らも油断しておった』

 

確かに、それは狐2人も後ろで「しまった!」と叫んでしまうくらいに一瞬の出来事だった。

 

そして気付けば、足音からクソ女がホールの出入口に向かって走っている。しかし、"知識の力"を使いまくった私と"神妖の力"を使いまくった椿は、急いでそれを追いかけようとしても身体に力が入らずに互いを支える形で座り込んでしまう。

 

「"裏切り者"にここまで手を焼かれるとは・・・!だが、今度こそ――何っ!?」

 

すると、逃げようとするクソ女の足音がホールの出入口手前で急に止まった。それに、誰かにぶつかったような音まで聞こえたような気さえする。

 

すぐに状況を確認したいのだが、まだ目の前がチカチカと真っ白になっていて何も分からない。

 

「チッ、新手かよ!さっさとそこから退きやがれ!」

 

「あ〜こりゃ、すまんな〜ちょいと飲み過ぎてよ。あ〜確か此処に旅館があると思ってたんだが、何か襲撃されてるよな〜・・・えっ?もしかしてこれ、泊まれないのか?」

 

やはりクソ女は誰かにぶつかっていたらしく、そのぶつかったと思われる人物に向かって怒鳴っていた。

そして、その人物は随分と酔っ払っているらしく、呂律が回っていない様子で困惑した声をあげている。妖気が何となく感じられる所からしたら多分半妖なのかもしれないが、まさか真っ昼間から酒を飲んでいたんだろうか?

 

「退けって言ってるだろうが!死にたいのか、あぁ!?」

 

「えっ?あっ、危ない!」

 

やっと視界が晴れてきてホールの出入口へ目を向けた途端、椿がクソ女の前に立っている大柄な人物へ叫んだ。

よくよく見れば、なんとクソ女はその人物に向かって大鎌を振り上げているではないか。

 

急いで助けないと!と思った瞬間、更に驚くべき事が目の前で起こった。

 

「おぉっと!と、ととと・・・あ〜ぶね〜ぞ、てめぇ・・・こらぁ!!」

 

「な!?ぐわああぁぁぁ・・・」

 

「「えっ!?」」

 

なんと驚く事に、その大柄な人物はフラフラした動きでクソ女の一撃を避けたかと思えば、そこから一瞬で前のめりとなって拳を下から振り上げて、クソ女を立っていた床ごと上空へと吹っ飛ばしていってしまったのだ。

 

「ふん・・・俺にケンカ売ろうなんざ、100年早――ぐがぁ〜・・・zzz」

 

「「寝た〜!?」」

 

そして、そのまま仰向けになって寝転がってしまったのを見て、つい私は椿と一緒になって叫んでしまった。

 

な、なんというか・・・妖気がハッキリ分からないので、彼が妖怪であるのだけは分かっても、それ以上は全く分からなかった。

 

なんだ、あの酔っ払いは・・・とんでもない強さだぞ!?

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