私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第弐拾弐話 私らしくなかったね

 

それから、私と椿は皆に詳しく事情を説明して、重くなった気持ちを少しでも落ち着けようとホールの隅へ行って座り込んだ。

特に椿は、その事を強く引きずってしまっており、俯いた様子で縮こまっている。

 

『椿に綾、事情は分かった。だがな、誰もお主らを責めたりはせん』

 

「そんなの、分かってるけどさ・・・」

 

「でも、でも・・・」

 

正直な話、美弥子の話を半分くらいは冗談だと聞いてしまっていた自分が恥ずかしい。こんな事になると知っていたならば、もっとあの場で切り抜けられる方法はあったはずだ。

 

「やっぱり、僕のせいで・・・」

 

「クソ!なんで私は全力を出してボコボコにしちゃったんだよ!・・・クソ、クソッ!」

 

「椿、それに綾。誰もが、この展開を読めた訳ではあるまい。本来なら負けた磯撫でと蟷螂坂は、この旅館に運ばれて治療をされてから、儂の説法を受ける――といえ感じで、誰もがそう思っていた。襲撃されるかもしれないから、戦いで手を抜こう等・・・そんな考えが出来る訳が無かろうが!」

 

正座に座り直そうとする私達の前へ、複雑な表情を浮かべた椿の祖父がやって来たと同時に、自身を責める私達を止めるかのように強く怒鳴りつけてきた。

確かにその通りなのかもしれないが・・・それでも私は蟷螂坂が幾ら本気を出して欲しかったからとはいえ、そこで本当に全力を出して戦わなければ良かったのではないかと後悔してもし切れないのだ。

 

すると、それを見ていた美弥子が今すぐにでも泣き出してしまいそうな顔をして、私達と椿の祖父の間へ割って入る。

 

「ひっ!ご、ごめんなさい・・・わ、私がもっと早く皆さんに知らせていれば・・・」

 

美弥子も、まさか本当に敵が襲撃して来るなんて思いもつかなかっただろう。そして、その責任として自分も怒られるべきだと、そんな感じで前に出てきたように見える。私からしたら、そんな彼女が可哀想にすら感じた。

だが、椿の祖父は美弥子の言葉を聞いても、黙ったまま首を横に振る。見ると、彼は手を拳にして血が出そうなくらい握り締めて震えていた。

 

「良いか、椿に綾、そして美弥子よ。この場に居る誰よりも、まず一番に責められなければならないのは・・・この儂じゃ」

 

椿の祖父は、まさか自分の部下の一部が内通者である事を知って酷く傷ついているようだった。

そして、その様子からどれだけ彼が部下を信頼していたのか、それで裏切られてしまったショックと予兆を見抜けなかった自分自身への怒りが、言葉を通していなくても此方に伝わってくる。

 

しかし、それでも他の烏天狗達が彼の所へ集まって、皆一様に謝っているのを見ると彼にも責任を追及するのは酷というものではないだろうか。

 

そんな時、ふと黒狐さんが呟いた。

 

『いや、待てよ。1番悪いのは、その報告が遅れた酒呑童子と伊吹だな』

 

「俺かよ!」

 

「あ、しまったバレた」

 

そんな急を要する情報を、訓練が始まる前に持って来なかった事に気が付いた椿の祖父が黒狐さんに頷き酒呑童子と伊吹の2人に視線を向ける。

 

「そうじゃな、何故遅れた?酒呑童子と星熊――いや、伊吹よ」

 

「いや、遅れちゃいねぇよ!これでも全速力で来たぞ」

 

「そ、そうそう」

 

何か怪しげな2人に椿の祖父は詰め寄るが、2人はその事について理由を説明する。しかし、普通なら内通者が居る事が分かった時点で急いで向かっているはずなので、彼らの言い分が正しいのならば間違いなく沖縄か北海道から走って来た事になる。

 

「ちょっ・・・おい、待て待て」

 

「う・・・ま、まだ何か?」

 

「そうだった。酒呑、お前は良く寄り道をしては酒のツマミを探しているな。それに伊吹も、良い本の題材になりそうな事があると変に寄り道をしたがるな」

 

そこへ、更に茶釜さんも加わって2人へ詰め寄っていく。それどころか、この場にいる皆が2人に詰め寄っていってるのではないだろうか。

 

「おっ・・・待て、う、嘘じゃない。急いでいたのは確かだ――気持ちは」

 

「ぼ、僕だって、なるべく早く着くようにと我慢して走ってきた・・・つもりだよ、うん」

 

あ、これは2人とも完全に寄り道しまくって来たって事になるだろうね・・・うわぁ。

 

「よし、茶釜。どれか空いている釜は無いか?そこで湯を沸かし、コイツらを放り込め」

 

「わ〜!分かった、悪かったよ!寄り道してたよ!」

 

「さ、流石に釜茹で地獄の取材は、これ以上勘弁して欲しい!僕も寄り道をしていた!そう白状したんだから許してくれぇ〜!」

 

いつの間にか、2人は床へ正座してペコペコと頭を下げていた。――結局、2人とも罰として釜茹での刑を受ける事になったが。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

――その日の夜、昼に遊んだ浜辺にて

 

浴衣に着替えた私と椿は、家に住む妖怪達と一緒に花火をして遊んでいた。

 

なんというか・・・今日は訓練があって、そこで亰嗟の連中に襲撃されて、結果として旅館の妖怪の蟷螂坂と磯撫でが捕まってしまった事が嘘のように感じてしまう。

 

とにかく、今日はあまりに色々な事が起こり過ぎた。

 

「「はぁ・・・」」

 

「椿ちゃ〜ん、綾さ〜ん。絵的には2人とも凄くしおらしく見えて可愛いんだけれどね、あからさまに線香花火でたそがれないでくれないかな?」

 

同じく浴衣に着替えてきたカナが、そう私達へ言ってくるが流石に今回は立ち直れそうにない。

どれだけ自分に「仕方ない」「あれが最善だった」と言い聞かせても、ずっと後悔の念が心に残ってしまうのだ。

 

「あの時、私がもっとちゃんとしてればな・・・」

 

「あのね、2人とも。内通者の捜索はしているし、その人達を誰が連れ去ったかハッキリしているから、まだ探しようはあるよ。それにもしかしたら、これで向こうのアジトが分かるかもしれないでしょ?」

 

「カナちゃんはポジティブで羨ましいです。でも、居場所が分からなかったらそこまでだよね?」

 

椿の返しの言葉にカナは一瞬だけ黙ってしまうが、その次の瞬間にコツンと私と椿の頭を軽く小突いてきた。

 

「あてっ・・・何するんだよ?」

 

「カナちゃん?」

 

「椿ちゃんも綾さんも、あんまり自分のせいだ自分のせいだって、そんなに思い詰めない方が良いよ?・・・苦しいから」

 

「カナ・・・」

 

そう言ってきたカナの眼差しは、悲しげで辛そうな様子に見えた。彼女にも昔何かあったのかと気になる所だが、詳しい話は旅行が終わってから少しして教えてくれるのを待つしかないだろう。

 

「おぅわ!な、何だ!?」

 

「ひっ!?冷た!!」

 

すると、いきなり私達の首元へ冷たい物が当てられる感覚が走る。それに驚いて振り向いて見ると、雪と楓が私達の後ろへ立っていた。

 

「2人とも、しんみりしすぎ」

 

「そうっすよ!姉さん達!せっかくだから楽しみましょうよ!」

 

そして、雪も楓も両手いっぱいに花火を持っている。なんというか・・・2人がはしゃぎ過ぎないように気を付けておかないといけなさそうだ。特に楓は全部の花火に火を付けて浜辺を駆け出しかねない気がするし。

 

「おう待て楓、それ全部いきなり使おうとするのは止めようか」

 

「楽しもうって・・・楓ちゃん、旅館の方は大丈夫なの?」

 

案の定、片手に持った方の花火全部へライターで火を着けようとしていた楓の手を押さえ、椿が心配する声をかける。気を付けていた途端にやろうとするとは、楓は何かヤバい物にでも取り憑かれているのではないだろうか?

 

「大丈夫・・・ではないっすけど、自分はお客として来て貰っている、翁の家の妖怪さん達の・・・!相手を任された・・・っす!」

 

「だから、ジタバタすんじゃねぇっての!危ないでしょうが!」

 

私達が押さえる手を振りほどってまで、全部の花火に火を付けようとするとは、どれだけ花火で遊ぶ事に執念深いんだか。

こんな具合で調子に乗ってやらかすから、結果的にめちゃくちゃになるって思われて雑な対応をされるんじゃないのか?本当に困った子だ・・・。

 

『とりあえずは、楓の言う通りじゃ。旅館の方は半年ほど営業出来んくらいにやられてはいたが、本業は妖怪食の工場じゃからな。そこまで痛くもなかろう』

 

『それよりもだ、旅館側の妖怪の中で他に数人が磯撫でや蟷螂坂のように連絡が取れないんだ。どうやら、奴らと共に連れ去られたかもしれないな』

 

「えっ?」

 

「なんだって?」

 

そこへ、浴衣を着た狐2人がサラッとヤバい事を口にしてきた。

 

「クソッ・・・やっぱり、あの時に気付いてさえいれば・・・!」

 

『綾、それに椿よ。言っておくがな、あの時気付いてしまっていたら、逆にお主らの方が捕まっておったぞ』

 

白狐さんの言葉に、椿が不思議そうに首を傾げる。

 

「え?それって、どういう事なんですか?」

 

『おいおい、椿も綾も磯撫でや蟷螂坂に勝ったんだよな?つまり、その内通者は2人の力を見て捕まえるのは骨が折れると感じたから、酷く消耗した2人を狙ったのだろう』

 

「でも・・・そうだとしたら、僕達のせいで犠牲になったとしか――」

 

その途端、椿はカナに頬を強く叩かれる。そして、それに続けて私も頬を叩かれた。

 

「えっ?」

 

「なっ!?」

 

私達の頬を叩いた彼女の顔を見ると、「やってしまった」といった感じに若干後悔した様子で震えていた。どうして?というよりも、カナが何でそこまでして頬を叩いてきたのだろうか・・・。

 

「はぁ・・・はぁ、ごめん・・・2人とも。あのね、悪い言い方をするけども、私は2人が連れ去られずに済んで良かったって思ってるよ。だって、あなた達2人が連れ去られたらきっと、もっと大変な事になるでしょ?だから自分のせいでなんて、悲しい事は言わないで」

 

そのカナの言葉に、私も椿も自分の事についてハッと思い出させられた。確かに、椿の中にはとんでもない秘密がまだ多く眠っているし、私だって自分でも知らない過去が数多く残されていた。

 

「「・・・」」

 

それに気付かされた私達は、何も言う事が出来ない。

 

「良い?椿ちゃんと綾さん。その悔しさをバネにして、もっと強くなって・・・そして絶対に磯撫でさんや蟷螂坂さん達を、攫われた妖怪さんを皆助ける。それで良いんじゃないの?」

 

「ん、うん・・・そう、だよね」

 

「は、はは・・・確かにね、こんな事でヘコむなんて私らしくなかったね」

 

カナの正論で、私も椿も肩からスッと重いものが落ちたように顔を上げる事が出来た。そして、狐2人も優しい眼差しで椿と私を見てきた。彼女は照れくさくなったのか、慌てて視線を2人から逸らす。

 

『本当は、それを我らが言いたかったのだがな。やれやれ・・・しかし椿よ、綾だけでなくとも良い友達を持ったな』

 

「って言っても私は、その親友の座を譲るつもりはサラサラ無いけれどね」

 

白狐さんの言葉に私がそう返して笑顔を浮かべて見せると、今度はそこへ里子が大量の妖怪食を持って此方へとやって来る。

 

「椿ちゃ〜ん!綾ちゃ〜ん!美味しい物を食べて元気出そ!今日の晩御飯は、このままここでバーベキューをするよ〜!」

 

「椿に綾、海坊主が大量に魚を捕って来てくれたわよ。2人とも何時までもウジウジしてないで美弥子を見習って、シッカリ食べて早く元気出しなさい!」

 

「あの、これ新鮮なサンマです!これを食べて、明日からまた一緒に頑張りましょうよ!」

 

そして、美亜もその場に現れて沢山の魚を私達の目の前に持ってきた。美弥子も海坊主の魚捕りを手伝ったのか、身体を濡らして口にサンマを咥えている。・・・それ、夏場じゃ旬ではないはずなのだが、一体何処から捕まえて来たんだろうか?

 

「椿ちゃ〜ん!綾ちゃ〜ん!何なら、2人とも私が今晩一緒に寝て――」

 

「母さん、駄目。2人と一緒に寝るのは、私。」

 

「ちょっと雪〜私よ!」

 

どういった訳だか氷雨さんも私達へ母親っぷりをアピールしてきたのだが、当然の如く雪とカナにストップをかけられた。

 

「椿ちゃんに綾ちゃん、気分が晴れる特別な石を持って来たよ。ほら、あげるね」

 

「2人とも〜、大きく背伸びをすれば気分もスッキリするわよ。しっかりと首を伸ばして・・・は〜い、上を向いて〜!」

 

「た、たはは・・・」

 

ぬりかべさんと、ろくろ首さんも前の人に続けて私達を励ましてくる。なんというか、ここまでくると色々と反応に困ってしまって笑いしか出てこなくなってしまう。

 

「椿ちゃ〜ん」「綾ちゃん・・・」「椿ちゃん!」「綾ちゃ〜ん」

 

それからも次々に家の妖怪達が、私や椿の所に来て励まそうとしてきて最早大混雑状態だ。これでは、落ち込むものだって落ち込めなくなってしまう・・・えぇい、こうなったら意地でも元気を出すしかないようだ!

 

すると、後ろから楓の悲鳴が聞こえてくる。

 

「ひぇぇえ!姉さん達、助けてぇ!」

 

「何!?どうしたの、楓ちゃん!?」

 

「まさか、まだ敵が――って、えぇぇええ!?」

 

慌てて私達がその方向へ目をやると、なんと楓は両手に持った花火を全部点火して浜辺を大暴走していた。そして、よくよく見ると尻尾に燃え移ってしまっているようにも・・・って、あ!しまった、楓が変な事やらかさないようにって押さえてた事を忘れてたぁ!

 

「楓ちゃん、海!すぐ海に飛び込んで!」

 

すぐさま椿が楓に叫ぶが、何故か彼女は海へ向かおうとはしてくれない。そこで私も何とかして彼女の火を消そうと追いかけ回す。

 

「嫌っす!浴衣が濡れるっすもん!」

 

「バカ!そんな事してたら焼きダヌキになっちゃうだろうが!逃げんな、この!」

 

「綾ちゃんの言う通り、そんな事言ってる場合じゃないでしょう!!もう!妖異顕現!」

 

「えっ、へ?椿、それはヤバ――あぶくくく・・・」

 

その後に椿が水の妖術で、海の水を動かして私ごと楓の尻尾へ水をかける事で、何とか尻尾に着いていた火を消火できた。

 

皆が皆、椿と私を励まそうとしてくれるのは良いのだが・・・少しは加減というものを覚えて欲しいものだ。

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