私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
校長先生が椿の姿に困惑していると、白狐さんが呆れた様子で私達へ声をかけてきた。私達は気づかれないように声を小さくして答える。浮遊丸のリード持ちは黒狐さんに交代してもらったようだ。
『椿よ・・・自分が妖狐だという事、そろそろ自覚してくれんとな。』
「いや白狐さん、数日くらいしか経ってないのにそれは無理があり過ぎでしょ」
『それもそうじゃな、綾。まぁ、しばらくは椿が触られないように気を付けよ。触れている間だけとはいえ、普通の人間からすれば狐の耳も尻尾も無いものじゃからの』
「なるほど・・・どうりで」
チラと校長先生に視線を移すと、まだ困惑してるのかブツブツと呟いていた。
「う〜ん・・・昨日行ったコスプレ居酒屋の衝撃が、まだ残っていたか・・・?」
目の錯覚だと思ってくれてるみたいで助かったけど、まだ生徒が居るのにそんなヤバそうな話をブツブツ喋っちゃいけないと思うよ、校長先生。
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その後、私達は学年主任に連れられて自分の通っていた教室へと向かう。だが可哀想な事に椿はイジメの光景がフラッシュバックしているらしく、猫背になって息を荒くしていた。
『椿、落ち着け!大丈夫じゃ』
「ほら椿、私も居るし大丈夫だから。・・・私の手、握ってて」
白狐さんが椿の顔を舐める。私も彼女を安心させる為に手を握ったのだが、酷く汗ばんだ手から感じる温もりに異性として緊張してしまい別な意味で心臓がバクバクとしてくる。今まで何度もやってきた事なハズなのに、どうしてだろう。
「ん、まだ朝のホームルーム中だな」
学年主任が扉の窓から教室の様子を覗いて呟いた。今は謹慎となった担任の代わりに、副担任の先生が椿に対するイジメの事で注意をしているようだ。中にいるクラスメイトの数人が私達の存在に気づいたのか、教室の外を気にする素振りを見せている。
そして副担任からお呼びのジェスチャーをされて私が先頭になって教室へ入ると、椿の姿を見た瞬間にクラスの皆がざわめきだした。
やはりというか、椿が女子であった事に驚いているみたいだ。
「あ〜静かに。さっきも話したが、彼女は槻本椿だ。家の事情で男として育てられていて、制服や名前まで徹底していたらしい。綾も彼女を手伝っていたようだが、それではマズい事態になったようで、こうやって本来の姿で登校してもらう事になった」
副担任の言葉を聞いても、クラスメイト達は未だ信じられないといった顔をしている。
「よし、お前ら。まずは槻本と烏森に言う事があるだろう?」
副担任にそう言われると、クラスの皆は一斉に立ち上がって私達へ頭を下げて謝った。
「槻本君、それに綾さん!本当にごめんなさい!」
「槻本、ゴリ・・・烏森。俺からも謝らせてくれ、すまなかった!ただ、これで無かった事にとは言わない・・・けど、ある程度は許してくれるか?こいつら皆、どういうワケだか自分達でやった事を全く覚えていないんだ」
呆然としながらも私は白狐さんや黒狐さんが話していた通り、本当に皆妖怪に操られていただけだったんだと思った。クラスメイト1人ひとりの顔が不安や後悔しているのが何よりの証だ。
私はすぐにでも妖怪の仕業だと、そう言いたかった。
でも、それで椿へのイジメの全てが解決するって事にはならないだろうし、椿自身もそれで心の傷が癒えるかといったら・・・きっと癒えないだろう。
私がどう答えたら良いのか、悩んでいると椿が頷いて答えた。
「うん、わ、分かりました・・・」
「え・・・椿?」
その言葉を聞いて皆ホッとした表情を浮かべる。
私はそれ以上に、椿がクラスの皆を許した事が意外だった。いじめたくなかった――そう言葉では取り繕えても、私は心からそれを信じる事が出来ない人間だからだろうか。
心底自分が嫌になりそうなのをこらえていると、ふと頭の中に色んな声がワサワサと聴こえてくるのを感じた。
【ホントに良かった〜こんな空気の悪い中で過ごしたくないもん!そもそも、いじめていた原因がよく分かんないんだもんね〜烏森はとにかく、槻本はこんなに可愛いのに〜】
【あ〜良かった!ってか、悪いのは主犯だったあの3人だよな・・・いや、そんな考えじゃダメだ!俺はどうしたっていうんだ?自分も小学校の時にいじめられていたのに、なんでこんな事をしてしまったんだ・・・】
【正直、こんな可愛いのにいじめるとかどうかしていたぜ・・・。しかも元々女子だった?それじゃいじめる原因なんか、何処にもないじゃないか!ゴリラ女だけが味方だったなんて、いくら何でも可哀想すぎる!】
ちょっと何人か殴りたいのは山々なんだけど、この今の状況は何?皆の口が動いてないのに喋っているなんて・・・
「どう?皆の心の声」
突然、私と椿の間から声が聴こえてきた。思わず視線を声の方へ向けると、そこには猿とは違うような・・・黒い毛むくじゃらの人っぽいのが居た。
まさか、コイツも妖怪だったりする?
『なんじゃ覚(さとり)、何か用か?』
「君、不安がってた。俺、教えてあげたかった。皆、後悔している事。もうイジメなんてしない事。これで、分かった?あと、そこのお前。俺、サルじゃない」
なるほど〜心の声が聞こえるって妖怪を何処かで読んだと思ったら「覚」だったのか〜
・・・そして思いっきり猿って思ってしまってスイマセンでした。
『2人とも何か聞こえたようじゃな。さよう、こやつは人の心を読む妖怪じゃ。危険な奴ではないから安心せい。ずっと学校に住み着き、人の心を聞いて楽しんでおるだけだからの』
「俺の力、君達に直接与えた。だから、聞こえたよね?」
多分、覚には思った事が筒抜けだろうから返事してもあまり変わらないと思いつつ頷く。
「よし、椿も綾も了承したし・・・皆、土下座をするぞ!」
「え、なんだって?」
って副担任の言葉で気が付くと、なんか物々しい雰囲気になっていたんですけれども!?
「あっ、ご、ごめん!僕、ボーッとしてました!僕、何かしちゃいましたか?」
「それよりも、土下座って聞こえたんですけれども!?」
「おいおい、さっきから2人とも難しい顔をしていたから許してくれてないと感じていたんだぞ。そしたら、皆が土下座するって言い出したから了承をとってみたら頷いただろう?」
マジかよ私達そんな風に見えてたの!?早く止めないと結構私達気まずい事になる〜!
「だ、大丈夫ですよ!その・・・ちゃんと皆が反省してるのは伝わったので。あの・・・ゆ、許します!」
「そ、そそうだね、椿!ど、土下座までされたらいくらなんでもね!じ、冗談だよハハハ・・・はぁ」
「「「本当!?」」」
もう一回確認の為に皆が聞いてきたので私と椿は今度こそちゃんと頷いた。とりあえず、今はこの場をしっかり収めておくべきだ。
嬉しそうな皆の笑顔で、つられて笑いそうになっていた椿の横顔を見て私は――やっぱり自分が卑怯者な気がして嫌な感じがした。
【よし、これからちょっとずつ仲良くなっていって、いつか翼と・・・いや!名前もちゃんと女の名前なんだから早く覚えないとな!えっと・・・後で聞いてみよう!】
【女子なんだったら、色々やってあげたい事があるんだよね〜!女の子であんな性格は、なんだか放っておけないな〜・・・烏森さんもこの際一緒に!】
【これを機に、これ以上は問題を起こさないようにしよう。そうしないと俺のイメージが悪くなるもんな・・・烏森が羨ましいぜ】
ん?ちょっと待て。なんか・・・まだ心の声聞こえてない?
「さ、覚さん・・・これ戻してくれる?まだ聞こえるんだけど・・・」
「正直、皆の危なげな部分が聞こえてきてるみたいでヤバいのでなるだけ早く直して?」
小さな声で私達が覚にお願いするも、返ってきたのは彼の嬉しそうな声による残酷な真実だけであった。
「今日一日、心の声消えない♪」
おま、ぶっ飛ばすぞ!?なんでそんなめんどくさい事してくれてんの?
「俺、君達が気に入った。こんな綺麗な心と正直な心、初めてだ」
あんまり気に入られるつもりは無かったんだけどね!そもそも、ずっと聞こえてたら授業とか集中出来なくて困るよ!
「意識しないと聞こえないよ。君は人に敏感。人の行動を知りたいと、いつも意識している。お前は人を疑いすぎ。っていうか、自分すら疑うって」
いちいち一言余計なんだよ、もう!なるほど、意識しなきゃ聞こえなく出来るなら一先ず何とかなりそうだね。
【あぁ、ヤバい!アイツをずっと見ていたら、胸がときめいてきた。嘘だろう、まさかアイツの事好きに・・・】
待て。椿の方を見ながらそんな事思ってる奴居るのか!?ダメだぞ?椿は身体こそ女の子だけど心はちゃんと男の子してるから・・・じゃなくて、とにかくダメなものはダメ〜!
「白狐さん、何とかしてください。このままだと、また綾ちゃんが暴走しそうです」
『無理じゃ』
ふう・・・ごめんごめん。あまりに私が思い詰めるものだから椿が白狐さんに助け舟を求めてたよ。もう大丈夫、私は正気に戻った!
「そうだ、翼。お前、この名前も偽名なんだよな?本当の名前は何なんだ?」
「えっ、あっ。えっと・・・椿です」
そういえば、まだ女子として扱われる事になったのに名前をちゃんと言ってなかったっけね。椿からしたら不服かもしれないけれど、女の子で翼という名前を続けるよりはマシ・・・なんだろうか。
「そうか!良い名前じゃないか!よし椿に綾、席に戻ってくれ。皆も、これからは2人と仲良くするんだぞ!」
「「「「は〜い!!」」」」
【言われなくてもするっつ〜の!】
【改めて見ると、烏森も結構可愛いよな・・・】
【好きな服とか、おしゃれの事とか色々話したいな〜】
【う〜ん、休み時間は人が集まりそうだし。私は途中まで同じ帰り道だから、一緒に帰ってあげようかな】
わーお、皆さんすっごくフレンドリー。
これは早い所隠れ場所見つけないとめんどくさい事になりそうですわよ。後、私を可愛いと思った人、手を上げても良いよ〜?