私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第弐拾参話 随分血の気が多いんだな〜・・・

 

――その翌日

 

今日も私達は海へと遊びに来ていた。

 

旅館の事については、妖怪達が集まっていた1階の大ホールと宴会場だけが大きな被害を受け、一般側の方は客室が幾つか攻撃されたくらいで済んだらしい。とはいえ、襲撃してきた連中が旅館から妖怪を炙り出す為に行った無差別攻撃のせいで、しばらく一般の方は営業停止にせざるを得なくなってしまったそうだ。・・・だが、そこは流石妖怪と言うべきか、なんと建物の方は既に妖術で修復されていた。なので、営業停止にする理由としては世間の都合として休業する流れになった感じだろう。

 

ちなみに捕まえた犯人達は、零課の人達の到着が遅れるとの事で一旦旅館の地下へと閉じ込めている。場所が遠く離れているからというのもあるが、どうやら他にも重要な事件が起こっていて中々手が回らないのだとか。

 

そんなこんなで、妖怪側の旅館の事は一般には認知されてない為、依然として私達の旅行は続行中なのだ。

 

「綾ちゃ〜ん、そっちいったよ!」

 

「って、おわぁ!?危なっ!」

 

「綾ちゃん、今は試合中なんだから考え事してないで集中しようよ」

 

「ご、ごめんごめん!」

 

そして、今は皆でビーチバレーをやっていた。

それは良いのだが・・・使っているボールが何か妙で、目やら手やらがあって口まで付いて舌がベロベロ出ている。やだ、キモい系のゆるキャラ並みに気持ち悪いわコレ。

 

こ、これも妖怪の世界のビーチバレーという事か・・・。

 

「どうした椿、動きが遅いぞ。相手から楽に止められとる」

 

椿が打ち返したボールが楓にあっさり受け止められ、彼女の祖父から注意の声が飛んできた。

ところで、ビーチバレーで遊んでいるとはいったが、実はこれ普通のビーチバレーなどではなく、女性妖怪の訓練の一環としてやっているものなのだ。

 

その名もズバリ、「羞恥バレー」

 

・・・嫌な予感がしたと思った方は正しい。

このビーチバレーは、あの変な妖怪特製ボールを使って試合し、点数を入れられてしまうと1番近くに居た者へ対して口や手、そして舌で辱めを受けてしまうとんでもないルールである。

 

流石に色々とマズいだろうと不満げな顔を椿としていたのだが、彼女の祖父は「妖怪に人間の尊厳が当てはまると思うか!」と言いたげな目で見てきたので無駄骨に終わってしまった。

 

「椿ちゃん!それに綾さんも!何処見てるの!?」

 

「あっ、やべ!」

 

「へっ、あっ・・・しまっ――!」

 

そんな事を考えていたからか、ふと椿が余所見をした瞬間に返されてきたボールへ反応が遅れて椿の近くの地面に落ちてしまった。すると、その途端にボールが元気良く跳ねて、椿の可愛らしい大きさの胸へと飛び付いてくる。

 

「うぎゃぁあ!!は、離してくだ・・・さい!」

 

『7-4。ふむ、椿よ。押されとるぞ』

 

審判をしている白狐さんが、ボールを何とか引き剥がして踏みつけている椿に心配の声をかけた。

 

試合は椿の祖父側と旅館側で3人ずつに分かれて行っており、此方のチームは椿と私にカナ、向こうのチームは楓と人魚の海音、それに美弥子が参戦していた。

しかし、今は3点の差で此方がピンチに陥ってしまっている状況だ。

 

それに、私と椿が前衛を守っているからネット近くで点を取られてしまう状況が起こりやすく、その度にボールから恥ずかしい目に合わされる私と椿を見てカナが鼻血を出してしまって、それで彼女の動きが鈍くなってしまうという悪循環に陥ってしまっている。

かくいう私も、さっきうっかりボールをコート外に落としてしまって腋の下をコチョコチョされてしまった。あの時はめちゃくちゃ笑ってしまって、今思い出しても凄く恥ずかしい。

 

「ふふん、どうしました姉さん達。このゲームは自分達がよくやっているものですから、こちらが有利っすね」

 

「楓ちゃん、ナイスよ。さぁ、鬼ごっこの時のリベンジをさせて貰うわ!」

 

「き、昨日みたく簡単には負けませんから!」

 

確かに、旅館の方に住んでいる楓と海音なら何時でも練習し放題だし、あそこまで自信たっぷりなのも納得だ。そして、美弥子もそんな2人程ではないとはいえ持ち前の身体能力で見事なディフェンスをしてきてくれる。今回が初めてで完全に初心者である私達とは状況からしても雲泥の差だ。

 

しかし、そんな不利過ぎる状況すら冷静に考えて動き勝利するのを、あの椿の祖父が求めているのだとすれば、これもれっきとした訓練なのだろう。

 

それは納得出来たのだが・・・

 

「いけぇ!楓!その調子だ!」

 

「鬼ごっこでは鞍馬天狗のチームに負けたけれど、ここで取り返すんだ!」

 

「俺達の有利なこのゲームで、負ける事は許されんからな!」

 

昨日、仲間が攫われたばっかりだというのに、旅館の妖怪達がハイテンションで観戦してる事が妙に気になって仕方がない。

 

「なんか、随分血の気が多いんだな〜・・・」

 

「ちょ、ちょっと・・・旅館の妖怪さん達の感性が分からないよ」

 

『ふん。あいつらには、あんまり仲間意識が薄くて互いに干渉し合わないようにしているのか、仲間に何かあってもあの通り、あっさりしたものだ』

 

そんな黒狐さんの説明に私と椿は苦笑いを浮かべた。

 

「ふ、複雑だなぁ・・・妖怪の仲ってのも」

 

「それより椿ちゃん、今はあなたがサーブの番だから集中しよ!」

 

「うん。でもねカナちゃん、鼻血を出しながら言われても困るよ・・・まずはそれを止めて欲しいです」

 

ちなみに、この訓練は半妖にも効果があるという事で、カナと雪も自分から参加してきている。

そして、面白そうといった理由から椿の姉である夏美も参加しているのだが、ボールから恥ずかしい目に合わされる程度で大きな危険が無いとはいえ、参加している人の殆どが妖術や身体強化の妖具を使うのでかなり試合は厳しいと思う。

 

とにかく、カナの鼻血も止まったので何とかして一転攻勢といきたい所だ。

 

「いくよ・・・はっ!!」

 

椿が白狐さんの力を解放した身体能力で、高くジャンプサーブを放ってコートのライン端ギリギリを狙う。普通のビーチバレーではないので、こんなサーブを放てるのも妖怪の世界ならではだ。

 

「甘いよ!妖異顕現、海壁(うみかべ)!」

 

そして、それは勿論相手にも言える事なので、こうやって海音が海水を利用した水流の壁で弾きかえしてくるのもお約束だ。こんな妖術やら身体能力やらの応酬を繰り返していたら、確かに半妖でもかなりの訓練になるかもしれないね。

 

「・・・っていっても、ここまでド派手に来るとは思ってなかったけど!」

 

「大丈夫、綾さん。私がフォローするから!」

 

「ナイスだカナ、助かるよ!」

 

私の位置からでは届かない場所へ落ちてくるボールを、カナが力いっぱい走って飛び込んでくれたおかげで何とか上へ上げる事が出来た。

 

そのボールは椿の方へと飛び、彼女が今度は妖術で阻まれないようボールを打つと同時に妖術を発動する。

 

「妖異顕現、黒羽の矢!」

 

「なるほどね、これなら水の壁にボールが通る道を作れる!流石は椿だね!」

 

水流の壁を黒い矢が貫いて大きな穴が空き、これでボールを相手のコートに返せると思った矢先、今度は楓が声をあげてくる。

 

「甘いっすよ、椿姉さん!」

 

楓が水流の壁に空いた穴を通り抜けたボールのすぐ目の前へ現れ、それをアタックする形ですぐさま私達のコートへと返してきた。楓も、慣れているとはいえ流石にくノ一を目指すだけの力があるね。これはますます負けられないな!

 

「どりゃ!なんの!妖異顕現、緊急祭繰龍!」

 

私も、椿やカナに負けじと風の妖術を発動して、ギリギリ地面へ落ちそうになっていたボールを椿の方に向けて浮き上がらせた。

 

とりあえず人数などのルール的に、このスポーツでは風の妖術と覚えたての氷の妖術しか私の使える力は無いし、アタックでそれを使おうにも風の妖術は竜巻を発生させるタイプのせいでボールの軌道を調整する事は出来ない。氷の妖術の方も、今の所は指先から氷を発射する事しか出来ないので、対戦相手を傷付ける恐れがあるとしてNGだ。

なので、ここはあえて多彩な妖術を使える椿に攻撃を任せて、私はカナと一緒に防御を優先する事にしたのだ。

 

唯一厄介な所があるとすれば、楓が思いの外に強く砂浜でも身軽に動いている事だった。

 

「これが忍者の素早さっすよ!だけど、ここまで動けるなんて流石姉さん達ですね!」

 

「そりゃあ、楓ちゃんの先輩として負ける訳にはいかないからね!」

 

「特に私達を師匠として慕ってくれてる、楓相手にはな!」

 

そうして、椿が浮き上がっているボールに向かって、今度は黒狐さんの力を解放した妖術を発動する。

 

「妖異顕現、黒焔狐火!」

 

白狐さんの身体能力で放たれた時程にボールの勢いは無いものの、簡単には消えない黒い炎に包まれた事で相手はボールへ迂闊に触れなくなる。

 

「ちょっ・・・何あれ!」

 

「ぼ、ボールが燃えてて触れません〜!」

 

「げっ!?椿姉さん、卑怯っすよ!」

 

「そういうのも何とかするのが、この訓練なんでしょ?」

 

驚く相手チームの3人へ、椿が意地悪そうな笑みを浮かべて見せた。

そして、黒い炎は海音の水流の壁程度では消えず、あっさりと燃えたまま通り抜けて誰も触る事が出来ないままコートへ落ちていったのだった。

 

「くっ・・・やっぱり強いわね、椿ちゃんに綾ちゃん」

 

「そうっすね、でも姉さ――あぎゃぁ!!」

 

「ぴゃぁあ!?私まで、何でですか〜!!」

 

楓がキリッとした目で何か言いかけた時に、落ちたボールがまた自分から跳ねて楓の尻を舌で舐める。しかし、どういう訳かボールは続けて一緒に近くへ居た美弥子の太ももまで舐めだした。多分これは、ボールが落ちた場所から2人が殆ど同じ距離に居たからなのだろう。

 

「くっ・・・ね、姉さん達。まだっす、まだゲームは始まったばっかりっすよ!」

 

「わ、私達だって翁の説法は嫌なんです!だから、いくら綾さん達でも手加減なんてしませんからね!」

 

それでも、2人はすぐに立ち直ってボールを拾い直した。

 

美弥子の言う通り、実はこの試合に負けた方のチームが椿の祖父による「説法2時間コース」という罰があったりする。

 

正直、椿の祖父がどれだけ説法したがっているのかとも思うのだが、長時間正座させられる事を考えると流石に負けたくはないね!

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