私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
・・・試合は結局あの後に椿が妖術を使い過ぎてスタミナ切れを起こして、そこで続けて私も妖気が尽きてヘトヘトとなってしまってアッサリ負けてしまった。
やはり、2セットを先取して勝つタイプのスポーツで妖術を使い続けるのは無茶があったかもしれない。
「カナちゃん、ごめん・・・」
「ば、バカスカ使い過ぎたよ・・・」
「いや、大丈夫だよ2人とも。私の方が役に立ってなかったから・・・」
カナはそう言っているものの、彼女は彼女でしっかり防御の役目をこなしてくれていたし、火車輪を応用して防御の範囲を広げる方法までやってくれていた。
攻撃を任せていた椿だって、敵が早い段階で水流の壁を重ねて対処してこなければ、あのまま点数をかなり稼げたと思う。
そう考えると、何時までも防御を不安視して攻撃に参加出来なかった自分が恥ずかしく思う。
たとえ多少厳しいものがあったとしても、私が椿と協力して妖術を攻撃に組み合わせる事が出来ていたら、また試合の結果も変わっていたのではないだろうか・・・そう思って仕方ない。
「あ〜悔しいなぁ。椿ちゃんと綾さんとなら、連戦連勝だと思ったのに〜」
「うん、そうだね・・・僕も悔しいよ」
「でも、椿のお爺さんが良い試合だったからって、罰の説法が無しになったのは良かったね」
とりあえず、それはある意味で助かったのだが、その本人がやたらと機嫌が良かったので逆に不安になってしまう。
ただ、何時までもそんな事を気にしていたらキリが無いので、私達は今は観戦している皆と一緒に、他で対戦している妖怪達の試合を見ていた。
「それにしても・・・私の妖気を補充するからって事で小次郎も参戦させられてるけど、案外スポーツもいけるんだな〜」
「お〜流石は美亜ちゃんだね!脚力が良いよ〜羨ましい〜」
「綾ちゃんとカナちゃんの言う通りだね。2人とも里子ちゃんとも相性抜群だし。でも、あの3人いつの間に仲良くなったんだろう?」
椿の言葉に、私は小次郎と里子の事で、ふとした理由があったのを思い出す。
「あ〜・・・小次郎の方は、たまに料理作る手伝いで貸してたりしてたからね。多分、その時に仲良くなったのかも」
「えっ?いつの間にか、そんな事をしてたの?というか、小次郎さんは料理出来――てますよね。僕が全然気づかなかったくらいなんだし」
「意外だよね〜まさか、綾さんの使い魔にこんな特技があったなんて。私もそういうの欲しいな〜」
そんなカナの言葉に、下僕の杉野さんでも大丈夫だろうかと思いながら試合を見ていると、確かに小次郎を抜いても美亜と里子の2人は仲が良さそうに見えた。
思えば、あの2人は風呂も一緒だったりするし、椿と私へのイタズラだって・・・なんかちょっとムッとした気分になる。それに何でか、椿も少し嫉妬しているような顔をしていた。
「ん〜?大丈夫だよ。椿ちゃんと綾さんには、私が居るからね」
「別に、何かを気にしてる訳じゃ・・・って、近い近い」
「か、カナちゃん?ち、近いですよ?」
「ん〜?知ってる」
どういう訳なのか、私と椿の間にいたカナが私達の手を掴んで、やたらと引っ付いてきた。流石に距離が密着しているので色々と不安になっていると、カナは私達から離れるばかりか更に此方の匂いまで嗅いできたのだ。な、なんか汗とか臭ってるのかな・・・?
「2人とも、これ私と同じシャンプーの匂いだね」
「「へ?」」
どうやら、彼女が嗅いでいたのはシャンプーの香りだったようだ。なんていうか、自分の匂いを嗅がれていたのではと思っていたので少し恥ずかしくなる。
「何の匂いを嗅いでたのかと思ったら、ビックリさせないでよ」
「ごめん綾さん。でも嬉しいな、2人と同じシャンプーだなんて・・・ふふ」
そう何度も強調しないで欲しい。なんせ私だって実は、今になって椿と同じシャンプーを使っていた事に気付いたのだから。今度は別な意味で恥ずかしくなってしまうではないか。
ジッと目を細めて椿と私を見てくるカナに、いよいよ本気で顔が赤くなりそうだ。なんだってこんな同じ女の子にドキドキしているのだろうか、私は?
「カナちゃん、皆が見てるから」
「あの・・・そろそろ離れてくれませんかね?」
そう私達がカナへと声をかけると、彼女は急に弱々しい様子になって私達へ問いかけてくる。
「・・・椿ちゃん、綾さん。私の過去を知っても、絶対に離れないでいてくれる?」
そんな普段の活発な彼女からは想像もつかない姿に、またもや私はドキリと胸の中を刺激されてしまう。
待て待て私、そこまで同性にときめいてどうするんだよ!?
「どうしたの、カナちゃん?大丈夫ですよ、何があっても・・・ずっと、カナちゃんは僕の親友だよ」
「待って待って椿。私だって椿の親友なんだから、椿がカナの事を親友って言うのなら、それは私にとっても親友って事でしょ?だからさ、そこまで不安がらないでよ」
「ありがとう、2人とも・・・どうせなら、その先が良いけどな〜」
「えっ?あっ・・・」
こ、これはやってしまったか?そういえばカナには百合の疑惑がある事をすっかり忘れていた。
本人が自分から言ってきてはいないとはいえ、普段の態度からすると殆ど確信へと変わってきているのだが。
「お、おいカナ・・・これは、とりあえず、その・・・ね?」
「大丈夫だよ綾さん。私、可愛ければ女の子でも男の子でもいけちゃうからね〜」
はい、完全にカナの"どストライク"を射抜いてしまったみたいですね!しかも、私より椿の方に強く惹かれている所からして、バイセクシャルなだけじゃなくショタコンな気まである可能性が出てきたぞ!・・・だって椿が男の子だった時に、私の事も含めたファンクラブ的なものを作ってたくらいだもん!
もっとヤバい事を言ってしまえば多分、今の心まで女の子になりきれていない椿はカナにとって1番大好物な可能性すらあるよ!やだ、いきなり狐2人並みに危ない存在に感じてきたよ・・・まだ私が生贄になれる救いがあるから、今はとりあえず何とかなりそうだけれども。
それに、椿もカナのそんなヤバい気配を感じ取ったようだし。
「あっ、待って待って・・・カナちゃん待って!僕も怖い事に気付いちゃった、少し冷静になって〜!」
「よし、カナ・・・ちょっと落ち着こうか?は、話せば分かる、話せば分かるから〜!」
目がハートになってそうなカナに私達が慌てていると、そこへ思わぬ助け舟が入った。
「香苗、抜け駆け駄目」
「ひゃっ!?冷た!何すんの、雪〜」
なんと雪がカナの後ろへやって来て、手に持った水鉄砲で彼女の首へ水を発射してきたのだ。
少し私達の方にも水が飛んできたが、それが氷水のように冷たかったので多分能力で水鉄砲内の水を冷やしたのかもしれない。
「椿も綾も皆のもの、独り占めは駄目」
「だからって、アイドルみたいな扱いされてもな・・・」
隣へ座ってきた雪の言葉に、私は苦笑いしながら頭を掻いた。別にファンクラブその物は個人の自由だとは思っているのだが、それがきっかけで椿に迷惑がかかる事になるのだけはちょっと勘弁して欲しい。それだったら可能な限り、私が幾らでもモデルだろうが何だろうがやる覚悟だ。
そんな事を考えていると、今度は私とカナの胸元に何者かの手が伸びてきた。そして、気付いた時には――
「ぎゃっ!?」
「ひゃっ!ちょっ、誰!?」
すぐにカナが火車輪を取り出して後ろを振り向き、それに私達も続いて振り返ると・・・やっぱりというか、そこには中腰になった酒呑童子が私とカナの胸をしっかりと触っていたのであった。
「うん、そっちは中々だな。活発な子の方が大きくて良いが、人間のお前は何か逆に罪悪感が芽生えてくるくらいに残念だな。でも、これはこれで――」
「あ、手が滑ったわー」
「いぶぅっ!?」
凄く気にしている事をハッキリ言われてしまった私は、一瞬で変身して酒呑童子の顔へ全力のエルボーアタックをかまして後ろに吹っ飛ばした。
ポーンと飛んでいった彼は、そのまま防波堤へぶつかってギャグ漫画のような人型の穴を開ける。
「・・・ふぅ、スッキリしたね」
「別に綾ちゃんがやらなくても、僕が吹っ飛ばすつもりでいたんだけど・・・早いね〜」
「もう綾さん、そんなに吹き飛ばさないでよ。私がアイツの両腕、切り落としてあげたのに」
なんか2人が怖いんですが。
どっちも先程までの柔らかかった表情が、まるで風神雷神の絵みたいな有様になっているし。あのエロ親父め、なんて事をしてくれやがったんだか。
「いっつつ・・・ったく、ちょっとしたスキンシップだろうが」
すると、すぐに私達の前へ再び酒呑童子が現れる。防波堤まで吹っ飛んでいったというのに無傷で一瞬の内に戻ってくるとは、流石は日本で有名な鬼といった所か。
「・・・まぁ待てよ、そう怒んなって。良いだろうが、別に減るもんじゃね〜し――って、うぉわ!分かった分かった!俺が悪かったから、それ引っ込めろ!」
そんな酒呑童子の態度に、カナはブチ切れて火車輪を相手の首元へ当てていた。その気迫に酒呑童子は流石にヤバいと感じて謝っている。
「強いけど、性格最悪ね」
「うん、これは自業自得だな」
雪がため息をつきながら言った言葉に私も同調する。そんな中、酒呑童子は懲りないのか今度は雪の方をジロジロと見ていた・・・まさか、ね。
「うむ。小振りだが、そっちとは違って細身のそのスタイルは抜群だな。良いね、将来が楽し――」
「くらえ」
「ぎゃぁああ!目がぁぁあ!!」
「うっわ痛そ〜」
案の定、また嫌らしい眼差しを向けていた酒呑童子に雪が真っ赤な水が入った水鉄砲を発射する。それをマトモに目にくらった彼は凄く痛そうにのたうち回っていた。あぁ、あれ絶対に唐辛子とか辛い何かが入ってるね。
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――しばらくして
「それで、何の用なの?」
酒呑童子が落ち着いた辺りで、椿が何故ここに彼が来たのかについて質問する。
もしも特に何の理由も無く来て、こんな事をするつもりだと答えるのなら、今度はさっき以上に雪にお仕置きしてもらわないといけないね。
「うぉぉ・・・目が、くっそ・・・ん?あ〜そうだった、亰嗟の狙いを言っておいてやろうと思ってな」
「「えっ?」」
その突然の話題に、私は椿と一緒に驚いて酒呑童子をジッと見た。
「伊吹の奴に任そうかとも思ったんだがよ、こんな時に限ってまた何処かふらついてるみたいだったから仕方なくな。それにこれはな、白狐や黒狐にもまだ言っていないし、鞍馬天狗にも言っていない事だ。もちろん、人間のお前を育ててるゴツい奴にもな」
「オジサンにも?それって、一体どういう事なの?」
「なっ!?何でそれを、僕達に?それなら、おじいちゃん達に――」
「亰嗟の狙いが、お前ら2人だからだ」
「――っ!?」
「・・・なんだって!?」
衝撃的な言葉が酒呑童子から放たれて、椿も私もそれ以上は何も言えずに呆然としてしまう。
なんで、また椿が・・・?それに滅幻宗の連中も彼女を狙っていた・・・どうして、椿ばかりが狙われるのだろうか?
「と言ってもだ、それは亰嗟の狙いの1つだがな。奴らは今、戦力の増強と資金集めを優先している。ただその間に、お前らを捕まえられるなら捕まえておきたいんだろう。60年も探し続けてきた妖狐の椿に、"裏で日本の平和を作り上げた立役者"の血を引く綾をな」
そうして、酒呑童子は今の言葉を言う時だけ、私達を強く睨んで威嚇するかのように強調した。
それにしても、私が"裏で日本の平和を作り上げた立役者"の血を引いているとは何なのだろうか?もしかしたら自分でも知らない秘密があって、私の覚えていない頃の過去と何か関係があったりするんだろうか?
「あの2人にこれを言ってしまうと、責任を感じるだろうからな。60年――椿が正体を隠されていたのは、亰嗟から見つからないようにする為だったんだからな。それは綾も同じだ、"滅んだはずの一族"の正当な後継者が見つかったとなりゃ、連中も黙っちゃいない」
「何でなの?何で椿ちゃんと綾さんなの?」
すると、そこでカナが悲痛な声で酒呑童子に話しかけた。カナと雪も居るというのに、どうしてこんな所でそんな話をしたのだろうか。
「お前らは2人の親友だろ。これはな、こいつらだけで抱え込んでも解決しねぇんだよ。それによ、白狐達に言っても良いんだが、その後どうなるかは・・・簡単に想像がつくよな?まぁ、今後どうするかはお前ら次第だ」
酒呑童子がそう言って立ち上がり、その場から離れていこうとすると、そこへ椿が声をかけた。酒呑童子は少し立ち止まって、首だけを後ろに向けてくる。
「待って・・・酒呑童子、さん。本当に、そいつらのアジトの場所は知らないんですか?」
「あぁ、知らないね。――それと最後にな、忠告しとくぞ。椿も綾も、お前らは記憶が戻れば、白狐達の元には居られなくなる」
「おい!何なんだよ、それって!?」
「なっ、えっ?ちょっと!どういう事!?」
とても意味深な酒呑童子の物言いに、私達が更に問い詰めようとするも、彼はそのまま歩いていきながら霧のようにして姿を消してしまった。
あの姿の消し方は以前に見た美亜の家族のものに似ていたが、酒呑童子のそれは妖気も何もかもが一瞬で消えている。
だが、それ以上に椿も私も先程までの話が信じられない状態だった。
椿が狙われている事は何となく気がついていたが、まさか私自身にまで何かとんでもない事が隠されているだなんて・・・。
一体私は、本当は何者なんだろう?
『椿、どうした!綾も、何があった!?』
『変な妖気を感じた気もするが、ここで何かあったのか?』
すると、そこへ狐2人が慌ててやって来る。彼らの様子からするに、どうやら私達と酒呑童子の話は周囲に聞こえないように何らかの方法で隠されていたらしい。
「あっ、その・・・実は、さっき――」
「多分、そっちの気のせいだよ。私達は平気平気!」
「うん、綾ちゃんの言う通り何でも無いよ、白狐さん黒狐さん。それより、2人とも訓練は終わったの?」
そこで今あった、酒呑童子との話を出そうとしてきたカナを止めて、私達はなるべくいつも通りに振舞って狐2人へ返事をした。まだ酒呑童子の話が嘘かもしれない以上、こんな事で下手に皆に心配はかけたくなかった。
椿と2人で「さっきの事はまだ言わないでくれ」と、カナと雪に視線で訴えながら・・・。