私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第弐拾陸話 変なスイッチ

 

――翌朝

 

目を覚ますと、椿と私は何故かカナと雪、それに美弥子から挟まれる形で眠っている事に気が付いた。

 

どうやら、狐2人が喧嘩をしている内にウトウトとして眠ってしまったらしい。それで恐らくは、戻らない私達を心配した彼女達に連れられて来たのだろう。

 

「・・・にしても、まさか皆で一緒の布団に寝てるとはね」

 

「うん、本当にそこから何でこうなったのかな?」

 

続けて起きてきた椿もそう呟く。するとその時、部屋の窓から夏美の声が聞こえてきた。

 

「おはよう〜椿、綾。2人とも良い眠りっぷりだったわよ」

 

窓から外を見てみると、夏美は窓際にあった四角いテーブルに座ってスマホを弄っていた。ニヤニヤしながら画面を触っている様子からして、どうやら連絡している相手はショッピングモールで連絡先を交換してもらった杉野さんのようだ。

 

「夏美さん、相手は杉野さんですか?何て来てます?」

 

「あれ?2人とも、あんた達の方にも連絡いってるでしょ?杉野さん、お昼頃に到着するそうよ。楽しみね〜」

 

「楽しくないです、夏美お姉ちゃん。不安材料が増えただけですよ・・・」

 

それから挟んできてるカナと雪からそろりそろりと抜け出して充電していたスマホを確認してみると、確かに夏美の言う通り画面に杉野さんからメッセージが何個か届いていた。

 

文面に関してはやはり下僕のような残念な書き方だったのだが、内容自体はかなり真面目に書き連ねられていた。

 

「杉野さんも相変わらずというか、なんというか。平常運転だね」

 

「はぁ・・・これ以上、僕の周りで事件が起きて欲しくないよ・・・」

 

「杉野さんが来るから?」

 

夏美の言葉に、私は頷きながら大きくため息をついた。それに、彼は上司に色々バレて盆休みを短縮させられているので、夏休みに妖怪絡みの事件か何かでその場に私達が居合わせたなら、ほぼほぼ間違いなく杉野さんがやって来るだろう。

 

「う〜ん、あんな性格じゃなかったら少しはマシだと思うのに」

 

「捜査が早く終われば、今日のお祭りにも来るんでしょ?お金の心配しなくて良いじゃん〜」

 

「杉野さんは、お姉ちゃんのお財布ですか?」

 

「それもあるけど〜・・・どうせならやっぱり、イケメンとお祭りを見て回りたいじゃん」

 

そんな夏美の発言に苦笑いを浮かべながら、私達は近くで眠っていたレイちゃんを起こして、それからまだ寝ている3人を起こそうとする。

しかし、その瞬間に椿はカナに、私は美弥子に突然抱きつかれて再び布団に引きずり込まれてしまった。

 

「えっ!?か、カナちゃん?ちょっと、起きてるの?」

 

「おっととと・・・美弥子ちゃんも、まだ寝てるのか?」

 

2人は私達の言葉に反応しないまま、そこへ更に雪も抱きついてきてまた最初のような状態になってしまう。

 

いい加減にこうやられているのも時間がもったいないので、私と椿は小声でどうやって彼女達を起こそうかと思案する。なんせカナは椿に、美弥子は私に徐々に顔を近づけてきているのだ。なんとなくであるが、多分起きてるような気がする。

 

「う〜ん、普通に叫んでも意味ないし・・・あっ、そうだ」

 

「何が良いの思いついたの、椿?」

 

「うん、実はね――」

 

椿から"ある提案"を聞かされた私は小さくガッツポーズして、静かに椿と共に3人へ声をかける。

 

「先に起きた方に、僕と綾ちゃんからキスしてあげる」

 

「もちろん唇に・・・ね」

 

そう言った途端に、両側で眠っていた3人が一気に起き上がって我先にと声を上げた。

 

「はい、は〜い!起きた、起きたよ!!私が1番先に起きた!椿ちゃん!綾さん!」

 

「違、う!私が先!」

 

「う〜!私が最初に起きました〜!!だから綾さん、キスしてくださ〜い!!」

 

しかも、珍しく雪も美弥子も大声で主張してくる。というか、美弥子は多分私メインなのか?っていやいや、そうじゃなくて・・・

 

「全員寝たふりかよっ!」

 

「やっぱり、3人とも起きてたね」

 

3人に負けないくらいにデカい声で私がツッコミ、椿がニッコリしながらも静かに怒りのオーラを放つのを見て、すっかり嵌められたと気付いた3人はその後にゆっくりと正座して謝ってきたのであった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

――朝食後にて

 

「やぁ、お待たせ!君達の下僕の杉野だ!」

 

「帰ってくれませんかマジで」

 

「綾ちゃん、一応零科の人なんだからそんな事言わないの」

 

朝食を食べた直後辺りに、捜査零科である杉野さんが旅館の玄関口でそう言って登場したが・・・毎回やるつもりなんだろうか、ひょっとして?それは真面目にちょっと止めて欲しい。

 

それから、杉野さんは真っ先に私達の所へ飛んできて、膝をつきながら頭を下げてくる。

 

「ご主人、何でも言ってくれ。俺は君達の手となり足となり、何でもするぞ!」

 

「ごしゅっ・・・!ちょっと、此処いつもの場所じゃないから!旅館の妖怪さん達まで、僕達を変な目で・・・じゃなくて、納得した目で見てる〜!!」

 

もうやだ、この人・・・ショッピングモールの時からどんどん頭のネジが外れてるよ。

椿と一緒に、散々メールの方で間違ってる事を訂正したというのに、全然聞き入れてくれてる様子も無いし・・・。

 

「さぁ!俺は何をすれば?」

 

「よーし、さっき何でもするって言ったね?なら、さっさと捜査の方に取り掛かってもらえませんかねぇ!?」

 

「それに何をって、杉野さんは捜査に来たんでしょう!?仕事してください!」

 

「良し分かった!」

 

私達の言葉で杉野さんは俄然やる気を出し、すぐさま旅館の主である茶釜さんの所へと走っていった。

 

それから程なくして、なんと犬吠崎さんも後から私達の所へやって来て謝ってくる。

 

「本当にすみません・・・彼、普段こそあんな性格じゃないはずなんですけど・・・」

 

犬吠崎さんが皆へそう謝っていると、さっきまでの想い人による酷過ぎる有様を見ていた夏美がウットリした声を私達に向けてきた。

 

「あぁ、椿も綾も・・・羨ましいな。私もあんな風に、杉野さんを使いたいわ・・・」

 

「えぇ・・・?」

 

ヤバい人はここにも居たよ、うん。

何をどうしたら、あんな人が「素敵な人」みたいな感じで見えるんだろうか?

 

そして私と同じく、彼女の妹である椿も一緒に頭を抱えた。

 

『2人とも、どうした?』

 

「頭が痛いです・・・」

 

「うん、なんかもう色々と酷くてね」

 

白狐さんが椿へ心配そうに顔を近づけてくる。ちゃんと意味は理解してますよね?私達の悩みの種が多いって事ですからね?

 

『ふっ、お主は可愛いな。悩みを相談したいのなら、いつでも話を聞くぞ』

 

「その最大の悩みの種の妖狐さんに言われてもなぁ・・・」

 

「少しは自覚して欲しいよ・・・もう」

 

私と椿がそう呟いても、白狐さんはニコニコとしたままであった。健気というか、一途過ぎるというか・・・まるで、杉野さんとは別な意味で大きなワンコみたいだ。

 

「そうだ、椿ちゃんに綾さん。どうせ杉野さんの捜査も、ここから時間かかるんでしょ?」

 

「まぁ、それはそうだけど・・・」

 

「なら、お祭りは夕方からだし、ちょっと美亜ちゃんの所に行かない?あの子、また海坊主さんの所に行ってて、お魚貰ってるからさ」

 

後ろからカナが出てきて、私達へそう提案してくる。何故かニヤけているのには気になるが、確かにこのまま待ちぼうけしているのも暇なので丁度良いかもしれない。

 

その提案を聞いて、美弥子がパァと明るい表情になる。

 

「良いですね。そしたら、また砂浜で何かして遊んだりしませんか?」

 

「それも良いんだけどね、美弥子ちゃん。でも、それだけじゃないんだよね〜そこの海岸にある貝殻拾って、それでアクセサリー作ろう?」

 

「は、はい!喜んで!」

 

そんなカナの提案は少し子供っぽいような気がしないでもないが、どうしてもと言いたげな彼女の眼差しと美弥子の嬉しそうな様子を見て断るのは野暮だと思った。

 

「なるほど・・・それも良いかもね」

 

私がそう呟くと、そこで雪が貝殻アクセサリーについての小話をしてくる。

 

「皆で遊んだ海岸。あそこの貝殻でアクセサリーを作って、男女で交換するとその2人は恋人になれる。そんな伝説がある」

 

「えっ?おいカナ、お前・・・」

 

「ちょっと雪、バラさないでよ!何とか言いくるめて、こっそり交換しようと思ったのに〜!」

 

うん、やっぱり裏があったね。

そして、雪は少し頬を膨らせて言った。

 

「抜け駆け、駄目」

 

「とてもロマンチックですね・・・私、初めて知りました!」

 

「へぇ、そんな伝説があったんですね〜僕も知りませんでした」

 

「ちゃっかり雪も椿を恋人にしようとしてるのは置いといて・・・でも、それって女の子同士じゃ意味無いと思うんだけど」

 

2人とも椿の事がそれ程までに好きだというのは分かるのだが、とりあえず限度があるというのは認識して欲しい。それで本当に恋人になってしまったら、椿を親友として見ている私の方だって困るし・・・。

 

「関係ない関係ない。あくまでおまじないだってば」

 

「そうそう、善は急げ。そうしないと、香苗や美弥子に取られる」

 

「椿や私は物じゃないっての!・・・って、襟首掴んで連れてこうとしないで〜!」

 

椿と私は3人から、いつの間にか襟首を掴まれて引き摺られていく。この2人の変なスイッチが入ってしまったから止めようが無いとは思っていたのだが、まさか美弥子まで変なスイッチが入るなんて思っていなかった。とりあえず、単なるおまじないだから気にはしてない・・・はずなんだけど、私は。

 

『夕方になったら、海岸近くの神社に来い。その辺り一帯が祭りの会場になっているからな』

 

「は〜い!」

 

「ちょっと!白狐さんも黒狐さんも!僕がカナちゃん達の恋人になっても良いの!?」

 

狐2人が、にこやかに手を振って見送るのを見て椿が慌てて叫んだ。確かに普段の彼らから考えると、今回は随分と余裕そうな顔をしているように見える。

 

すると狐2人は笑顔のまま、貝殻で作られた綺麗な指輪を見せてきた。

 

『椿よ、とりあえず1つだけで良いぞ。どちらかと交換じゃ』

 

「うわぁ、逃げ場無しかよ・・・椿、一応もう1つくらい用意しとく事を考えておこうか」

 

「なんで綾ちゃんも乗り気なんですか・・・」

 

「半分はヤケクソだよ・・・もう」

 

そんな狐2人を見た椿と私は力無く項垂れて、ズルズルとカナ達に引き摺られていくのであった。

 

ある意味で椿の方が地獄になってると思うけど、私も私で3人から狙われてるから何とか考えておかないと・・・本当にどうしよう。

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