私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
――目的地の海岸にて
アクセサリー作りの為に必要な貝殻を集めに来た私達であったが、この場所が妖怪専用の海岸なだけあって簡単には貝殻が拾えない。
・・・というのも、此処にある貝殻1つ1つが妖怪なので、中身が無いはずなのに拾おうとすると次々と砂に潜っていってしまうのだ。
「椿ちゃん、綾さん!見つけたらすぐに捕まえないと、貝殻が砂の中に潜っちゃうよ!」
「何ですかこれ!?中身無いはずだよね?何で動けるの!?」
「だぁ〜!ちくしょう!コイツらヒュポヒュポ逃げる〜!!」
ちょうど良い感じに綺麗な貝殻を見つけた私も椿も、一瞬で逃げていく貝殻へ文句を言った。
しかも私の見つけたのが、海の中でも目立つような黄色と黒の縞模様が面白い貝殻だっただけにとても残念だ。
「これは『貝雲坊(かいうんぼう)』と言うの。中身と貝殻で、2つの意思が宿っている」
「何それ?雪、よく分からないんだけど・・・」
「えっと、つまり・・・中身と貝殻で、別々の妖怪なの?」
「ん〜ちょっと違うよ。意識が分かれているって言った方が良いのかな?記憶や性格は一緒だからね」
雪の説明で頭に?マークが浮かんだ椿と私へ、カナが分かりやすく補足をしてくれた。なるほど・・・とりあえず、全くワケが分からないのは分かったよ。そもそも貝自体に意識があって動きまくるのが不思議だからね!
「あいたっ!?」
「椿、大丈夫!?って、あだだだだ!!は、挟まれたぁ!」
そして椿が貝殻に挟まれたのを心配したら、その途端に私まで挟まれてしまった。しかも、貝殻の縁自体に歯のようなものがあって、無理やり引き剥がそうとしても指が千切れそうな痛みで全然離れてくれない。
「大丈夫!?椿ちゃん!綾さん!」
「めっちゃ痛いけど、怪我にはなってない・・・かな、とりあえず大丈夫」
「僕もだ、大丈夫・・・かな?イタタ・・・あの、今思ったけれどコレ生きてるの?」
どうにか貝殻を外せないものかと、スッポンに噛み付かれた時の水に浸けてみる方法を試したりしてみるが、それでもガッチリと噛み付いたままだ。うーむ、さすがに中身の無い貝殻だけだから無理だったか・・・水中でなくても生きてけるかは甚だ疑問だけど。
「う〜ん、生きている訳でも無いんだけど。中身が死んで消滅した後に、残留した意識というか・・・そういうので動いているからね。だから、一晩箱に入れて閉じ込めておくと、成仏するのか完全に動かなくなるんだよ」
「へぇ〜そしたら、この貝殻は離してくれそうも無いし、ぶっ壊した方が早いかもね」
カナから聞いて、わざとらしく私がそんな話をしたら、椿と私の指に噛み付いていた貝殻はアッサリと離れて地面へと落っこちる。そのまま砂の中に逃げようとしていたようだが、すぐさま私達は今度こそ逃がすまいと噛まれない掴み方をして捕まえた。
「カナちゃんにそう言われると・・・普通の貝殻じゃない、綺麗な輝き方に見えるね〜綾ちゃん。」
「確かに、改めて見てみると光の当て方で色が変わって綺麗だよね」
そうやって椿が貝殻を日差しに当ててるのを見て、私も自身が捕まえたそれを光に当ててみた。
さっきまで黄色と黒にしか見えなかった貝殻が、光が当たる事によって水色と白の縞模様に・・・って!いかんいかん!これだとちょっとエッチな下着の柄みたいな色合いじゃん!
こんなの意中の相手にプレゼントなんてしたら、完全に自分の下着をプレゼントしてる感じがして恥ずかしくなる!
「白狐さん達にネックレスは似合わないかな・・・」
私がとんでもない事に気付いて色々悩む中、どうやら椿はアクセサリーの形について考えていたようだった。咄嗟に貝殻を後ろへ隠しながら、私の貝殻に話題がいかないようアクセサリーの話をする。
「椿、どんなアクセサリーにしようと思ってたの?」
「あっ、綾ちゃん。実は貝殻のアクセサリーで白狐さんと黒狐さんが指輪にしていたから、僕はイヤリングにしようかって思っていたんだけどね。ネックレスも良いかな〜と思ったけど、多分白狐さん達には似合わないかもしれないし」
「なるほどね・・・私はヘアピンとか、かな?ちょこんとしたアクセサリーの方が、きっと使い易いかもと思ってさ」
「流石、綾ちゃんらしいね」
作る物が決まった私達は、それぞれ作るのに必要な数の貝殻を集める為に再び海岸を探索し始める。すると、そこへ美亜と里子もやって来た。
「あんたら、何やってるの?」
「あぁ美亜、それは――」
「あっ!貝殻アクセサリーを作って、お互いに交換するのね!」
説明しようとした矢先に里子に遮られてしまった。なんというか、相も変わらずに2人は仲が良さげだ。
「ところで、今回は魚を持ってないみたいだけど、何かあったのか?」
「美亜ちゃん、海坊主さんとはもう良いの?」
「あぁ・・・それなら今、魚を捕って来て貰っているわよ。それよりも椿に綾、さっきの言い方が引っかかるわね。まさか何か勘違いしていないわよね?」
「「ソンナコトナイデスヨ」」
ちょっと美亜の事をからかうつもりだったのだが、彼女が一瞬だけ見せたギロリとした眼差しで気が引けてしまった。ううむ、これは後が怖そうだな・・・。
「それで、椿は白狐と黒狐、どっちにプレゼントするの?それとも、ひょっとして綾だったりする?」
「う〜ん・・・そうなんだよね。綾ちゃんは2つ作った方が良いって言ってたけど、でも白狐さん達は作るのは1つだけで良いって言っていたから、出来れば白狐さん達の方を優先したいかな。だけど、まだ僕は悩んでる最中だし・・・う〜ん」
「どうしても決められないんなら、本当に2つ分作る事を考えてた方が良いと思うけどね。変に片方だけに渡したりしたら、絶対あの狐2人はまた喧嘩するだろうし」
「そうは言うけどさ綾ちゃん、2人共に渡して喜びのあまり寵愛はされたくないんだよ・・・」
「そうか、それも有り得るね・・・う〜ん」
美亜の椿に対する質問で私達が頭を悩ませていると、いつの間にやらカナと雪が後ろでそれをコッソリ聞いていて、椿へニッコリと満面の笑みを浮かべていた。
「ふふふふ。やっぱり、椿ちゃんはどっちかなんだね〜」
「椿、可愛い」
「えっ?あっ!いや、それはその・・・うぅ」
「こらこら、2人とも。椿をからかわないの」
全く・・・美亜もこうなる事が分かってて、わざとあんな質問をしたんだろうか。椿が急に顔を真っ赤にして、それを隠す為に必死に俯いて貝殻を探し始めてしまったし。
「椿ちゃん、そんなに大量には要らないよ〜」
「カナ、椿は恥ずかしがってるんだから今は放っておいてあげて・・・」
それはそうと、私も3人と椿に渡す分を作るべく貝殻集めを再開しなくては。とりあえず、余分に多いぐらい集められれば十分なのかな?
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――しばらくして
貝殻を集め続けていると、ふと私達は海の向こうから此方の海岸に向けてやって来る、赤い山みたいな物体の存在に気付いた。
「綾ちゃん、カナちゃん、あれ何?」
「へ?あ〜・・・何だろ、あれ。初めて見るや」
「ごめん、私にも分かんない・・・」
だんだん近づいて来ているようにも見えるし、その物体からは妖気も感じるので、何だか嫌な予感がしてきた。
えっと・・・まさか、あんな島みたいなのが妖怪だったりはしないですよね?そんなの有り得ない有り得ないハハハ・・・
「皆、早く逃げるだす!あれは"赤ゑい(あかえい)の魚(うお)"だ!」
「赤えいの・・・?えっ、あれ魚?」
うん、やっぱり嫌な予感が的中したよ!見るからに絶対ロクな奴じゃなさそうだもん!
「赤ゑいの魚は、巨大なエイの妖怪だす!その大きさは3里、普通は大海に居る妖怪のはずだす!」
「3里・・・!?って、1里は何キロなんですか?」
「よ、よく分からないよ・・・」
椿もカナも、そして私も分からず首を傾げる。雪も分からないようで指を折って数えており、里子も困惑した様子で同じく首を傾げていた。美亜に至っては、そもそもそれについて考えてすらいないようだった。
「3里は、約12キロだす!」
そんな私達の様子に海坊主は痺れを切らして叫んでくれたので、大体理解は出来た――
「「「「って、12キロ!?」」」」
ちょっと待って欲しい。幾ら何でもデカ過ぎやしないか!?それは巨大エイじゃなくて島エイだよコレ!
椿が慌てた様子で叫ぶ。
「待って待って、何でそんな妖怪がこんな所に!?」
「だから、本来こんな海に居るはずが無いだす!だけど、実際に現れているだすし、しかも何故か凶暴になっていて、海岸にいる人間達を食う気なんだす!」
「なんだって!?」
これは確かに大変だ!
12キロという巨体ならば、此処の海岸どころか一般の人達が集まっている海水浴場まで余裕で納まってしまうくらいのサイズだ。その上、今日は夏祭りなのもあって、海水浴の時以上に人が集まってきているし。
「今からじゃ避難は間に合わないかもしれないし、ここはやっぱり私達が食い止めないといけないみたいだね・・・」
「でも綾ちゃん、あんな大きいのどうすれば・・・」
私達が悩んでいる間にも、赤ゑいの魚はゆっくり近づいて来ている。その姿も徐々にはっきりしてきて、海面から山のようになっている顔を出して、海岸に居る人達の方を見ているようだった。
『椿!大丈夫か!』
『椿に綾よ、旅館からでもこの巨大な魚が見えたぞ。それで慌てて飛んで来たが、椿が無事で良かった』
「こんな時でも、2人は相変わらずだなぁ」
すると、狐2人が狐の姿で駆け付けて来た。そして人の姿へ変身して、海からやって来ている赤ゑいの魚を睨んでいる。
「僕と綾ちゃんなら大丈夫だよ。それよりも、アレを何とかしないと!」
『分かっとるわ。しかし、相手は巨大だ。これは人手が居る。旅館の妖怪達と翁の家の妖怪達とで力を合わせ、こいつを沖に追いやり、そこで倒すぞ!』
「確かに、このまま浜辺の近くで戦ったら一般の人にも被害が出ちゃうかもしれないしね」
とは言ったものの、具体的にはどう撃退したものだろうか。そもそも、こんな奴を浜辺から引き離す方法も思い付かない。それこそ力技で、っていう事になりそうだ。
『おい、白狐。こいつ、手配書の妖怪ではないぞ』
「えっ、それってどういう事?まさか、こうやって暴れるのは今回が初めてって意味なの!?」
スマホで赤ゑいの魚を調べていた黒狐さんから衝撃の言葉が飛び出した。
「だから言ってるだす!こいつは本来、身体に積もった砂を落とす為に僅かな時間に海面へ現れるだけで、こんな風に人を襲おうとした事は無いだす!」
『ぬぉ!?何だ、お主は!』
「あ、しまった。2人には海坊主さんの説明をしてなかったっけ・・・って、今は紹介してる場合じゃない!」
「とりあえず落ち着いてください、綾ちゃんも海坊主さんも。何かするにも人手は必要だし、準備だって必要だよ。でも、この妖気・・・本当に妖怪なの?」
椿の言葉で少し頭が冷えた私は、一度大きく深呼吸してから彼女と共に赤ゑいから感じられる妖気を再確認する。やはり、あの赤ゑいから出ている妖気は妖怪から感じられる物とは全く違っているようだ。
それに、その妖気の質は――恐らく妖魔の物に近い。
椿が狐2人へ振り返った。
「ねぇ、黒狐さん。本当に手配書に登録が無いの?あの妖怪から出ている妖気の質は、妖怪じゃなくて妖魔だよ?」
「そっか!妖魔なら危険度が段違いだから、問答無用で手配書の方に登録されているはずだもんね。流石は椿、私より断然頭の回転が早くて助かるよ!」
「こんな時にお世辞は止めてください、綾ちゃん」
だが、私が感心しているのも束の間、狐2人は思わぬ反応を返してくる。
『何、妖魔だと!?いや、何度調べても出てこないな・・・』
『椿と綾の感知能力は相当じゃからな、間違うはずはないだろう。しかし、それならばアレは一体どういう事だ?』
「それは私達だって知りたいくらいだよ、手配書にすら登録されてない妖魔なんて本当にどうなってるの?」
私達が困惑している内にも、赤ゑいは浜辺へと近づいて来ており海坊主が慌てた声を上げる。
「い、急ぐだすよ!人間のいる浜辺に近づいてるだす!」
「だ〜もう!こうなったら仕方ない、下手に突っ込むのは危ないけど戦うしかない!」
すぐに足を踏み出そうとした途端、私と椿の頭に妲己さんの声が聞こえてきた。
【あはは、久々のご飯・・・!椿、替わりなさい。あれは――"成体"の妖魔よ】
「なんだって!?」
「なっ・・・!やっぱり・・・」
その妲己さんの言葉で疑念が確信へと変わって色々と納得は出来たが、それでもまだ手配書の事など気になる点は多い。
とはいえ、まずはこの状況を何とかしないと!