私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第弐拾捌話 今の私の目には刺激が強すぎる

 

島と見間違える程に巨大なエイの妖怪"赤ゑいの魚"が、浜辺にいる人間を襲うべく一旦その巨体を海中へと隠す。

 

しかし、その巨大で赤い身体のせいで簡単に一般の人達にも気付かれてしまい、一瞬だけ大パニックが起こってしまった。とはいえ、椿が杉野さんへ連絡をしてくれていたおかげで、現場に到着した零課の人達と共に避難誘導を迅速に行えたので被害が出ずに済んだ。

 

ここからは、私達による妖魔退治の時間だ。

 

『それで・・・妲己が言うに、アイツは"寄生する"妖魔に取り付かれていると?』

 

あの後に妲己さんから色々と説明をされ、その答えとして「"赤ゑいの魚"は特殊な妖魔に寄生されている」という事が判明した。

 

「はい、だからその・・・妲己さんじゃないと解決出来ないそうです」

 

「あんまり、あの人には頼りたくはないんだけどね・・・今回は状況が状況だし」

 

そして、椿は浜辺に集まった旅館の妖怪達や家に住む妖怪達へ、状況の説明と彼女自身が考案した作戦を伝える。

 

『・・・それで、その妲己と考えた作戦としては、椿が妲己に身体を貸して、赤ゑいに寄生している妖魔だけを食うと』

 

「はい。赤ゑいの身体の何処かに寄生している妖魔の一部が出ているらしいんで、そこまで何とかして行って、その部分から妲己さんが吸い出して食べちゃえば、赤ゑいは元に戻るそうです」

 

「って言っても皆は、そう簡単に納得はしてもらえないと思うけどね・・・」

 

なんせ今の所、未だに妲己さんの考えが分からないのだ。白狐さんも黒狐さんも、露骨に訝しげな様子を浮かべているが、赤ゑいによる被害を最小限に抑えるならば今はこの方法しかないだろう。

 

『折角弱っておるのに、わざわざ餌を与える必要など・・・』

 

「白狐さん、気持ちは分かるけどね。でも、一応黒狐さんの奥さんでもあるんだよ?もうちょっと言葉に気を付けた方が・・・」

 

「ごめん黒狐さん、白狐さんにあんな事言わせちゃって。妲己さんの事は大丈夫?」

 

あまりにハッキリと白狐さんが言ってしまったので、私達は慌てて彼の言葉を遮り、それから黒狐さんの機嫌を伺った。

 

『椿も綾も、気を遣わせてしまってすまんな。しかし聞く限りでは、俺はアレとはまともに夫婦生活をしていないようだ。情も何も無い、形式上のものだったらしいから・・・まぁ、気にするな』

 

すると、黒狐さんの言葉を聞いたのか椿の中に居る妲己さんがシクシクと泣き出す。

 

【そ、そんな・・・黒狐・・・酷い】

 

「あ〜妲己さんがショック受けてる。黒狐さん酷いよ〜?」

 

『なっ!はっ?いや・・・えっ?お、俺が悪いのか?』

 

「そ、そりゃ記憶が無いとはいえ、自分の旦那からそんな言葉を言われりゃね・・・ぷ、くく」

 

周囲の目も完全に"黒狐さんが悪い"みたいな雰囲気となって、それに黒狐さんは見てて面白い程に取り乱している。

 

『いや、す、すまん・・・』

 

「もう黒狐さん、それは妲己さんに直接言ってください。今、妲己さんと替わるから」

 

椿はそう言って瞼を閉じた。

すると椿の雰囲気が変わり、毛色も漆黒のような物へと変化する。どうやら無事に妲己さんと交代出来たようだ。

 

【黒狐、酷いわ・・・私に情が無いなんて・・・】

 

『いや、その・・・すまん。悪かった、だから――』

 

よくよく見ると妲己さんは嘘泣きをしているというのに、それに気付かず慌てながら謝る黒狐さん。なんというか、普段では考えられない程に取り乱していて不思議だ。

 

【まぁ良いわ。とりあえず交代は出来たし、さっさとアイツに寄生した妖魔を食べちゃうわね】

 

『なっ・・・!?あっ!し、しまった!!』

 

そこから一瞬で切り替えた妲己さんを見て、ようやく黒狐さんは騙された事に気付いたみたいだ。

確かに、まさか椿と妲己がこんな風にしてイタズラしてくるとは思ってもみなかっただろう。

 

多分、私だって騙されるかもしれないし・・・って、ちょっと待って!ちょっと待って!

 

ふと妲己さんと交代した後に椿が何処へ居たのかを探したら、今妲己さんが主導権を握っている椿の身体の後ろに、生まれたままのすっぽんぽんな姿で椿の意識体みたいな物が浮いているんですけれど!?しかも、なんか皆も見えてるような反応をしている感じだし・・・

 

「ムキュッ!ムキュゥゥ」

 

そして、私がそれに気付いたと同時に霊狐であるレイちゃんがそっちの椿の方へ引っ付く。

 

とりあえず、椿はまだ気付いてないようなので、現在の状況に気付いてもらうよう彼女に声をかける。

 

「・・・椿。今の自分の姿、多分かなり危ない事になってると思うよ?」

 

すると、それに続いて皆も椿へと声をかけてきた。

 

「椿ちゃん。妲己さんが身体を使っている時は、椿ちゃんの魂はそんな感じなの?」

 

「妲己は中なのに、椿はなんで外?」

 

「ふ〜ん、何か変わってるわね。し・か・も、中々良い格好じゃない」

 

キョトンとしていた椿は、カナや雪、そして美亜の言葉でようやく自分の姿が皆に普通に見えている事に気付いたようだ。

 

「うわぁぁあ!!な、なんで!?なんで皆、僕の姿が見えてるの!?」

 

そもそも考えてみれば、私が椿に注意を促した所で、彼女と同じくらい妖気の感知能力に長けているんだから見えてても問題無かったかもしれ・・・なくないよ!流石に全裸の椿の姿は、今の私の目には刺激が強すぎる!

 

意識体の椿が妲己さんをムッとした表情で睨んだ。

 

【椿〜そんなに睨まないでよ〜私は何もしていないわよ。というかアンタ、霊狐から変換された妖気を受け取ったでしょう?姿が見えているのは、多分それよ】

 

「どういう事!?」

 

椿が腕で身体を隠しながら聞くと、妲己さんは少しニヤニヤした様子で答える。

 

【あんた達のその霊狐は、かなり特別だからね。その子が変換させた妖気は、霊体に混ざる事で補充されるのよ。つまりアンタの魂は、その妖気で力を得てしまって、皆に見えるようになってしまった訳ね】

 

「あ、あぁぁ・・・嘘、でしょう?」

 

「まぁ、その・・・ドンマイ、椿」

 

私は椿に慰めの言葉をかける。そして、やらかしてしまったレイちゃんも何の事か分からないまま、椿にご褒美をねだるようにピョンピョンしていた。

 

「あ、ありがとう・・・綾ちゃん、レイちゃん。」

 

椿も気まずそうにしているし、これは流石にレイちゃんを怒れないね・・・悪気があった訳じゃないんだし。

 

「だけど、裸は恥ずかしいよ・・・」

 

「う〜ん、何とかならないのかな?」

 

頭を傾げる私達に、妲己さんが呆れた顔をして椿に視線を向けた。

 

【椿〜アンタ"霊体は裸"って、そんな勝手な思い込みでイメージしてるでしょ?】

 

「えっ?でも、霊体ってそうなんじゃ・・・って、そっか!」

 

「あっ、なるほどね!旅館の人達は霊体だけど服を着てた!」

 

【そう、いつもの自分の格好を意識すれば、服も着る事が出来るのよ】

 

すぐに椿が少し考え込む仕草をして、服を着た姿へと変化するけど――

 

「・・・ねぇ椿。よりにもよって、なんでその格好に?」

 

「わぁ、巫女服だ〜」

 

「ミニスカート、巫女服。最強の組み合わせ」

 

「つ、椿ちゃん!やっぱり、その服気にいってくれて・・・!」

 

なんでか分からないけど、椿が家で着ているあの巫女服の姿になってしまった事で、皆が目を輝かせてしまっている。その服の提供者もとい元凶でもある里子に至っては感激して泣いてしまってるし・・・大変な事になってしまったよ。

 

「ちょ、椿・・・何処へ行くの〜!?」

 

【椿〜そっちは山に行くわよ】

 

「・・・」

 

椿が恥ずかしさのあまりに、あんな風に混乱してしまうのも無理はないと思う。それにしても、椿の身体で妲己さんが意地悪そうな笑みを浮かべると、本当に何か悪事を企んでいそうな顔になって不気味に感じる。ほ、本当に大丈夫だろうか・・・今になって不安になってきた。

 

「と・に・か・く!赤ゑいの元に行かないといけないんでしょ!のんびりしてないで早く行きますよ!」

 

「やっべ、すっかり忘れてたよ!」

 

【あ〜大丈夫よ。アイツ、標的を私達に変えたから】

 

「「へっ?」」

 

妲己さんの言葉を聞いて、私達は赤ゑいのいる海の方を再度確認してみると、いつの間にやら赤ゑいはゆっくりではあるが確かに私達の方に向かって来ていた。

どうやら、獲物を取り逃がした事でかなり御立腹のようだ。

 

「とりあえず注意がこっちに向いたのは良いけど・・・」

 

「妲己さん!」

 

【うるさいわね〜2人とも準備は出来ているんでしょ?後は一旦アイツを止めないといけないんだけれど、どうしようかしらね】

 

「え、ちょっ!?」

 

「そこはノープランなの!?」

 

【だから〜こっちに襲って来るとは思わなかったのよ】

 

う〜む・・・これは、赤ゑいの動きが案外早かったから、杉野さん達に対応してもらったからこそ起こった事態かもしれない。

とはいえ、今回の妖魔が人間や妖怪の見境無く食べて妖気を強くしようとしている辺り、下手に被害が出るよりかは幾分かマシだろうか。

 

でも、こんな奴をどう相手したら――

 

「ぬぉぉお!!ここはおらが、おらが止めるだす!」

 

対処法に悩んでいると、突然海坊主がやる気を出して真っ直ぐ突っ込んでくる赤ゑいに向かって立ち塞がった。

しかし、幾ら10メートル程ある海坊主でも、12キロもある赤ゑい相手には大した足止めにすらならず、依然としてこっちへ進み続けている。

 

「ぬっ・・・ぐ、おぉぉおっ!!」

 

「なんてこった・・・サイズが違いすぎるとはいえあの巨大エイ、見た目通りの馬鹿力なんてものじゃない!」

 

「皆、急げ!さもないと、折角人間達が楽しみにしている祭りが中止になるわ!」

 

「おじいちゃん!それだけですか!?」

 

椿の祖父も椿の祖父で、もっとこう緊張感ある言葉を言って欲しいよ・・・まさか、椿以外で此処にいる皆がそんな理由で動いているんだとしたら何ともいえない気分になってくる。

 

【白狐、黒狐!赤ゑいに近づく方法はあるの!?】

 

『うむ、不本意だが手伝ってやろう。しかし、我らも妖気を残したいからな。そこで、人間達が使っている物を使う!』

 

妲己さんの言葉に、白狐さんは浜辺から少し離れた場所へ停められている"ある物"を指差す。

 

「なるほど、水上バイクね・・・って、はい!?」

 

「えっ?アレ、誰が運転するの?」

 

『もちろん、俺達だ!』

 

思いがけない提案にキョトンとする私達へ、黒狐さんは自信満々な様子でドンと胸を叩いた。

 

いやいやいや、待って!

私、水上バイクとかそういうのに乗った事すら無いんだって!免許とかそういうのも心配だけど、何よりこれで落っこちたりしないかが不安になってきたよ!

 

初めての海で、まさかここまで初めて尽くしになるなんて思ってもみなかった・・・ひぇぇ

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