私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第弐拾玖話 某ス〇ルバーグ監督が喜びそうな絵面だコレ〜!

 

何とか移動手段を見つけた私達は、それぞれ私は白狐さんの乗る方に、そして中身が妲己さんの椿の身体は黒狐さんの乗る方へ一緒に乗っかった。

妲己さんが黒狐さんの方へ乗っかったのは、きっと元々は夫婦だったからなのだろう。

 

『ぬぉ!?妲己!何故こっちに乗る!?』

 

【あ〜ら、アンタの妻なんだから当然でしょう?】

 

やはりというか、そう言った妲己さんは少し嬉しそうな様子で、黒狐さんの腰へ手を回して早く出発しろと首で催促する。

すると、そんな姿を見てなのかフワフワとその近くで浮いている魂の椿の方は、恥ずかしそうやら不満そうやらな表情をしていた。妲己さんが身体を使っているとはいえ、一体椿は何がそこまで気になるんだろう?

 

【ほら、急いで。前と違って、あんまり長く表に出ていられないのよ】

 

「えぇ・・・だったら妲己さん、赤ゑいに近づいてから交代すれば良かったじゃん!」

 

【悪いけど綾、向こうが何してくるか分からないっていうのに、そんな悠長な事やってられないわよ!】

 

「むぅ〜・・・」

 

確かに、そう言われてしまえば返す言葉も無い。

 

彼女がさっき言った通り、椿と私が暴走した時以降に最近妲己さんが椿の身体を借りて出てくる事が無かった。どうやら、椿の持つ"浄化の力"に少しあてられて大分弱まってしまっているらしい。

 

それなのに、今回の件も含めて妲己さんはずっと私達に協力する行動ばかりしているのだから不思議な話だ。

 

なにせ妲己といえば、かつて古代中国の国を滅ぼした元凶ともいえる悪い妖怪だと聞いていたので、なんでこんな私達を助けるような真似をしているのかが分からない。

 

魂の状態の椿も私と同じ事を考えていたのか、とても真剣な表情で妲己さんの方を見ていた。

 

【椿に綾〜・・・言っておくけれど、私は復活する為にアンタ達を利用しているのよ。それを"助けてくれている"だなんて、そんな勘違いはしちゃダメだからね】

 

「「うっ・・・」」

 

そんな事を考えていたら、ふと妲己さんが振り返って椿と私のそれぞれに言葉を投げかけてきた。

 

私達の心を読んだのか、それとも顔に出ていたからなのか分からないが、こんな事態なので今は妲己さんに逆らえない状況だ。

それに椿の魂もあまり妲己さんから離れる事が出来ないようなので、実質人質に取られているも同然だし・・・椿に危害を加えない内はまだ何とも言えないけれど。

 

『黒狐よ、文句を言っている暇など無い。早く行くぞ!』

 

『分かっている!全く、2人共しっかり捕まってろ!』

 

【はいは〜い】

 

「うん、そっちも気を付けて運転してね!」

 

私と妲己さんがそう答えた後に、白狐さん達は水上バイクのエンジンをかけて徐々にスピードを上げながら赤ゑいの居る場所まで向かい始める。

 

そして向こうでは、上空から空を飛べる妖怪や烏天狗の人達が鉤爪の付いた縄を赤ゑいへ大量に引っ掛けて、少しでも沖の方に離そうと全力で引っ張っていた。

海の方でも、海坊主だけでなく他の海の妖怪や人魚の人達が各々の持つ手段を用いて赤ゑいの進行を何とか食い止めてくれている。

 

しかし、簡単にそれで止まってくれない妖魔に寄生された赤ゑいは、大きな身体を捩らせて動きを止めようとしている妖怪達の一部を振り払ってしまっている。

 

ヤバいな・・・妲己さんの事だけでなく、なるべく怪我人を出さない為にも、あまり時間を無駄に使う訳にはいかないね。

 

『天神招来、守護聖鎧(しゅごせいがい)!』

 

そう思っていると、白狐さんが片手で運転しながら皆へ"守護の神術"を発動した。

 

『これで全員、我の守護の力がかかっている!余程の事が無ければ大怪我はせん!怯まず立ち向かえ!』

 

白狐さんの神術のお陰で、たった今吹っ飛ばされた妖怪達はすぐに復活して赤ゑいへと再び立ち向かっていく。なるほど、これならひとまずは怪我人が出る心配は避けられそうだ。

 

それなら、後は戦闘が長引かない内に早い所決着を着けるだけだ!

モタモタしてると妲己さんが力を使い果たしてしまって、取り返しが付かなくなってしまうからね。

 

「綾ちゃん!妲己さん!妖魔の妖気の出どころ、分かるよね?」

 

「OK、椿!探知なら任せておいて――って、この感じ・・・なんか嫌な予感がするんだけど!?」

 

【椿、アンタ誰に向かって言っているのよ?それくらい朝飯前よ。黒狐、赤ゑいの身体に飛び乗るから、出来るだけ近づいて】

 

なんというか、この妖魔の妖気が出ている場所からするに、どうやら赤ゑいの身体に乗らなきゃいけないみたいだ。

 

すると、妲己さんの言葉を受けた黒狐さんは大きく右へと迂回して、赤ゑいの側面方向へと移動しようとする。

 

その行動に妲己さんが困惑の声を上げた。

 

【ちょっと・・・何処に――】

 

『その身体は椿のだ。出来るだけ危険が無いように、奴の身体の側面につける』

 

黒狐さんの椿への気遣いに"私と同じくらい椿の事が大切なんだな"と思っていると、そこで椿が焦った様子を浮かべる。

 

「そんな事よりも、早く寄生している妖魔を見つけないと!」

 

「椿、ちょっと落ち着いて!」

 

『綾の言う通りだ、椿。そんな事とはなんだ、お前は自分の事をないがしろにし過ぎだぞ。もう少し、自分の身体の事を考えろ』

 

「うっ・・・」

 

黒狐さんの言葉で椿がたじろいだ。でも、すぐに彼女は自分の抱えていた、正直な気持ちを口にしてくる。

 

「ごめん・・・綾ちゃん、黒狐さん。でも、僕はもう誰にも傷付いて欲しくない、犠牲になって欲しくないんだ。だからその為には、僕は何だってするよ!」

 

その椿の決意に、今度は私と黒狐さんがたじろいでしまった。

 

そして、私は椿の事だけを守りたい故に、彼女自身がそれをどう思うかなんて考えていなかった事に気付かされたのだ。

 

やっぱり、そういう椿の優しさは私なんかよりも余程"誰かの為"になるって思うよ。

 

『ふっ、言うようになったな・・・椿よ』

 

「うん、そうだね。なら、早いところ赤ゑいに寄生している妖魔を取り除かないとね!」

 

私と白狐さんが椿へ感心していると、黒狐さんが仰天した顔で後ろを振り向いてくる。

 

『ぬぉ!?白狐、綾、何故お前達まで着いて来ている!』

 

『お主だけでは危ないと感じたからじゃ!』

 

「あ〜もう、こんな時に口喧嘩しないでよ2人共〜!」

 

よりにもよって、集中しなきゃいけない場面でなんでこの2人は小さい事で喧嘩するんだか・・・。

 

そのせいか、再び赤ゑいが動きを抑えようとする妖怪達を振り払うべく身を捩らせ、それによって起こされた大きな津波に打ち上げられて私達の乗っている水上バイクが宙へと放り出されてしまった。

 

『ちっ!しまった!』

 

『喧嘩なんぞしとるからだ!』

 

「ほら言わんこっちゃない〜!!っていうか、某ス〇ルバーグ監督が喜びそうな絵面だコレ〜!」

 

「そんな事言ってる場合ですか、綾ちゃん!?」

 

確かに、このままでは全員海に真っ逆さまだ――と思った瞬間、なんと黒狐さんが妖術を発動して落下する地点周辺の海を氷に変化させたのだ。

 

そして、そのまま私達は無事に広がっていく氷の上へ着地する。

 

『ふぅ、危ない危ない。あんまり連発は出来んからギリギリまで使いたくなかったが、今のは仕方がないな』

 

「そっか、黒狐さんは"変異"の神妖の力が使えるんだっけ。それで海を氷に・・・って、サラッと結構すごい事するね」

 

『褒めても何も出んぞ、綾よ。それと、とにかく急げ白狐!これから水上バイクを海に戻す!俺の変異は1分も持たないからな!』

 

『分かっとるわ!』

 

とはいえ・・・流石に何でもアリ、という訳にはいかないようだ。

 

こうなりゃ、すぐにでも水上バイクを動かせるようにしたい所だが、その水上バイクは海と一緒に凍りついてしまっていた。

 

「あの・・・黒狐さん。水上バイクも、海と一緒に凍っていますよ」

 

「こ、これちょっとヤバいんじゃない?」

 

『ぬぉ!?何をやっとるか、黒狐!』

 

なんてこった・・・これじゃあ結局海にドボンするのと変わらないじゃないか。それに赤ゑいがまた暴れたりなんかしたら、今度こそ津波の餌食にされてしまいそうだ。早く何とかしないと・・・

 

「ムキュゥ、ムキュッ!」

 

「えっ?レイちゃん!?いつの間に着いて来ていたの!?」

 

「ダメだよレイちゃん!ここは危ないから、浜辺にいるカナちゃん達の所で待ってて!」

 

私は内心慌てながらも、何故か着いて来てしまっていたレイちゃんへ注意をするが、レイちゃんは椿へ何かを訴えかけるような目でジッと見つめている。

 

「ちょっと・・・レイちゃん、何?そんなに僕の方を見て、どうしたの?」

 

「レイちゃん。ひょっとすると椿なら、あの凍りついてる水上バイクを何とか出来るって言いたいの?」

 

そんな私の考えは正しかったのか、問いかけに対してレイちゃんは全身を使って頷いた。

 

「なるほど!綾ちゃんの言う通りなら、この姿でも妖術が使えるのかな?じゃあ、妖異顕――」

 

「ムキュゥ!!」

 

しかし椿が妖術を発動しようとした途端、レイちゃんが怒ったように激しく跳ねながら大きく鳴いた。

 

「あ、あれ?レイちゃん、違うの?」

 

妖術で水上バイクを動かすのでないとするならば、他にとって何をどうすれば良いのだろう?

まさか、霊体だからポルターガイスト現象よろしく動かせって訳じゃ・・・まさか、ね?

 

「レイちゃん、まさかとは思うけど・・・椿に、ポルターガイストみたくして動かしてって言いたいのかな?」

 

「ムキュッ!」

 

その私の言葉にレイちゃんが頷く。とはいえ、初めて霊体として動いている椿にとっては中々無茶のある話だ。

 

「レイちゃん、妖術の方が早いですよ?それにポルターガイストって、あれは死霊の怨念によるものです。僕は怨念じゃないから、多分出来ないと思うよ?」

 

「ムキュゥ!」

 

椿の説得にも頑なに応じてくれないレイちゃんに、私はため息をついてから苦笑いを浮かべる。

 

「こりゃ聞いてくれそうにないね、椿。こうなったら、とりあえずダメ元でも良いからやってみたら?」

 

「うん、綾ちゃん。これじゃ埒が明かないもんね・・・。レイちゃん?あのね・・・こうやって手を当てて、強く念じるだけで氷から剥がすなんて事――」

 

そうして椿がレイちゃんへ納得してもらうように、それっぽく水上バイクへ触れて見せると、その途端に何か割れるような音とドボーン!と海に落ちる音が聞こえたのだ。

 

・・・うん?今、目の前で椿が触った水上バイクが海に吹っ飛んでいったのは気のせいかな?

 

『椿よ、お主何をした?』

 

「えっ?あれ?な、何があったの?」

 

【椿・・・アンタが水上バイクをいとも簡単に氷から外して、そのまま海まで吹き飛ばしたのよ】

 

「ま、マジで?今、マジで水上バイクが吹っ飛んだの?」

 

呆然としながらも椿と共に海の方を見てみる。

すると、やはり水上バイクが海へ着水しており、しかも傷1つ付いていないようだった。

 

ちなみに、それを椿に勧めた張本人であるレイちゃんは、まだかまだかと私達から撫でられるのを待っている。なんというか、この子も褒められる事を覚えてきたのかもしれないね。

 

『何はともあれ、お陰で俺達の力を温存出来たんだ。椿、助かったぞ!』

 

「あっ・・・う、うん」

 

それから椿と私はめいっぱいレイちゃんの頭を撫でてあげたのであった。こんな感じにレイちゃんが時にすごく頼りになるから、とても感謝してもしきれないね。

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