私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第参拾話 エイというよりも浮かぶ海岸

 

それから、1回吹き飛ばされた事で赤ゑいが暴れても大丈夫な範囲を見つけた狐2人は、再び私達を水上バイクの後ろに乗せて順調にその側面を目指して進んでいた。

 

すると突然、椿が何かに気付いた様子で狐2人へ質問を投げかけた。

 

「ねぇ、白狐さん黒狐さん。今気付いたんだけど、これ鴉天狗さん達に運んでもらった方が早かったんじゃないの?」

 

「言われてみれば、確かに・・・」

 

【ちょっと、どういう事よ黒狐?】

 

私も妲己さんも、椿から言われた事にハッと気付いて不思議そうな顔を浮かべる。

 

もしかすると、この2人には何か考えがあるのだろうか?

 

『ふっ、1度この"水上バイク"という物を使ってみたかったのじゃ。昨日人間達が使っているのを見てな、椿をコレに乗せてやれば楽しんでもらえると思って――げふん!』

 

「うん、少しでも尊敬しようとしてた私がバカだったよ。それ、今やる必要無かったじゃん!」

 

白狐さんが事故らない程度に頭へチョップを見舞い、私は大きくため息をついた。

 

【もう!ここで良いわよ!何時までも、こんなのんびりバイクで走っている時間も無いのよ!】

 

妲己さんが焦っている様子で声を荒らげる。実際、彼女の言う通り妲己さんは万全な状態でない為か妖気をかなり消耗しているのを感じられる。

 

それを見て、案の定何かに気付いた椿が妲己さんへ問いかけた。

 

「妲己さん、一旦替わろうか?それに、これも今気が付いたんだけど、何も最初から妲己さんに替わらなくても良かったんじゃ・・・」

 

【・・・チッ】

 

「なんで舌打ちしたんですか。まさか、そこまで無茶して長く生身の身体でいたかったんですか!?」

 

「ちょっと妲己さん!それなら無理して替わらなくても、妖魔を見つけてからで良かったでしょう!?そんなに不味いんだったら、一旦僕に身体を戻してよ!」

 

【あ〜もう・・・分かったわよ、うるさいわね〜】

 

妲己さんがそう言って少しすると、近くに浮いていた椿の姿が薄くなっていき元の身体へと戻っていた。

 

なんというか・・・妲己さんも妲己さんで変な意地を張らなければ良いのにと思う。

 

『全く、妲己には気を許すなよ椿』

 

「はい、気を付けま――すわぁっ!」

 

『こちらも飛ばすぞ、しっかり掴まっとれよ綾!』

 

「うぉわっ!わ、分かったよ白狐さん!」

 

それから、黒狐さんが水上バイクのスピードを上げたのを見て、白狐さんも同じくスピードを上げた。椿は先程まで魂の姿でフヨフヨと浮いていたからか、突然の水上バイクの勢いに思わず黒狐さんへしがみついている。

因みに、しがみつかれている本人は真面目な顔をしながらも鼻血を出していたよ・・・黒狐さん、締まらないなぁ。

 

【あ〜あ・・・せっかく、久しぶりに生身の身体を堪能しようと思ってたのに】

 

そんな中、椿の身体の奥へと戻っていった妲己さんが不貞腐れた声で文句を言ってきた。それに椿が注意をする。

 

「妲己さん、今は赤ゑいの魚の暴走を止めないといけないんだよ?妖魔も僕と綾ちゃんが見つけるから、妲己さんとの交代は最後に妖魔を吸い取る時だけにするからね」

 

【え〜つまんな〜い】

 

「遊んでる余裕すらないんだから、仕方ないですって、もう・・・」

 

妲己さんの態度に呆れていると、ようやく狐2人の運転する水上バイクが赤ゑいの側面まで近づいてきたのでスピードが緩やかになっていく。

 

『よし・・・2人共、ここから身体に乗るのは良いが、向こうはお前達を振り落とそうとしてくるぞ』

 

『くれぐれも油断しないようにな、椿よ』

 

「分かっているよ、黒狐さん白狐さん。大丈夫、白狐さんの力を解放してから行くからね」

 

「相変わらず2人共、椿の事になると凄い心配性だなぁ〜私もここからは変身して向かうよ」

 

狐2人が赤ゑいの側面へゆっくりと近づけていき、そこから私達はタイミングを見計らって赤ゑいの上へと飛び移る――が、

 

「うわっ、たっ・・・きゃう!?」

 

「椿!」

 

椿が赤ゑいの上に飛び移った途端、その表面に生えていた苔で足を滑らせてしまい思いっきり顔面から転んでしまったのである。

 

『大丈夫か!?椿!』

 

「椿、怪我は無い!?」

 

「だ、大丈夫です!白狐さん、綾ちゃん!ちょっと滑っただけ!」

 

「良かった〜、今ので怪我したんじゃないかって思っちゃったよ」

 

そう叫んでいた白狐さん達は既に、いつの間にやら赤ゑいの身体から離れていた。

 

「それにしても・・・本当に島みたいな身体してるね、この巨大エイは。こんな景色だと、エイというよりも浮かぶ海岸だね」

 

「うん。それにめちゃくちゃ広くて、これが赤ゑいの背中だっていうから驚いちゃうよ」

 

赤ゑいの身体の表面のあちこちが小高い丘やら海岸と大差無い姿をしているのを見ると、正しく島エイだと感じてしまいそうだ。確かに、こんな巨大な妖怪が海の表面に出てくるだけでも見た人はひっくり返ってしまうと思う。

 

【椿、綾、のんびりしていられないんでしょう?早くしないと、押し返そうとしている海坊主や沢山の人魚が食べられる事になるわよ】

 

「あっ、そっか!急がないと!」

 

「そうだね、すぐに行こう!」

 

妲己さんの言葉で私達が足を進めようとした瞬間――

 

「うわぁぁあ!!」

 

「どわぁああ!?」

 

またまた赤ゑいが身体を捻らせて、周囲に居る妖怪達を吹き飛ばそうとしてきた。いや、この場合だとひょっとしたら身体の上に乗った私達の事も振り落とそうとしているのだろうか。

 

とにかく、それで振り落とされる訳にはいかないので私達は必死に凸凹状の身体へと掴まる。

 

「落とされて・・・たまるか〜!」

 

「ぐぐぐ、ファイト一発〜!」

 

そうしてしばらく踏ん張っている内に、やっと赤ゑいの身体の動きも落ち着いてきた。とはいえ、赤ゑいの身体には砂も積もっていたので、奴が暴れたせいで私達はずぶ濡れどころか砂塗れにまでなってしまった。

 

「うっへ〜、身体中ザラザラして最悪・・・」

 

「むぅ・・・ぺっ、ぺっ!口の中に砂入っちゃった・・・全くもう、出来れば暴れないで欲しいです」

 

そう言ってため息をつく椿の姿を見ると、霊体だった時に着ていた巫女服じゃなく水着の上からTシャツを羽織っているだけなので、濡れたTシャツが彼女の肌に張り付いていて、その思わぬ色っぽさについドキリと顔を赤らめてしまう。

 

・・・まぁ、それは私自身にも言える事かもしれないけれども。きっとカナ達が見たら鼻血を出して卒倒してしまうだろうね。

 

ひとまず、余計な考えは一旦ここまでにしておいて、私達は全速力のスピードで走って赤ゑいの身体の中心を目指した。

 

【さぁ〜て、どこまで育っているかしらね〜?】

 

「はぁ・・・さっきまであんな焦ってたのに、案外余裕そうですね妲己さん」

 

【そうね〜、まぁアレよ綾。「おやつは別腹」みたいなやつ?】

 

「なんですかそりゃ」

 

妲己さんが随分嬉しそうにしているのを見ると、本当は結構ヤバい事をしているのではと思ってしまう。しかし、やっぱり他に赤ゑいの暴走を方法があるのかと言われると悩ましいし・・・う〜む。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

――数十分後

 

流石に私達とはいえ、太陽が照りつける炎天下の中で走り続けた結果、あっさり体力が切れてその場でへたり込んでしまった。

 

いや、本当にどれだけ暑いんだよ今日は・・・

 

【ちょっと椿に綾!何へたってんの!?】

 

「はぁ、はぁ・・・待って、休ませて」

 

「そ、それにここまで来る途中で赤ゑいが2回も暴れてきたから、すごく疲れてきたんだって・・・」

 

私達が肩で息をしていると、再び足元から振動が大きくなってくるのを感じる。まさか・・・

 

【ほ〜ら、2人共。そんな事している間に、また赤ゑいが暴れるわよ〜】

 

「おわぁぁああ!!さ、最悪だ〜!」

 

「うひゃぁぁあ!!やっぱり、妲己さんに代わってもらおうかな〜!」

 

【嫌よ】

 

「ちょっ、酷ぇって妲己さん!!」

 

もうやだ、この人・・・さっき残念そうにしてたと思えば、今はこんな感じだし。何がしたいのかさっぱりだよ〜!

 

「あれ?綾ちゃん、さっきより海岸に近づいているような・・・」

 

「まさか――!」

 

『2人共、急げ!海坊主達に限界が来ているようじゃ!』

 

椿の言葉に私が反応する瞬間、私達がイヤリングの形で耳に付けている勾玉から白狐さんの声が聞こえてきた。そういえば、これで狐2人と連絡を取れる事をすっかり忘れてしまっていたね。

 

「うぅ・・・分かりました。急ぎます!」

 

「うん、こっちも了解だよ!」

 

すぐに私達は赤ゑいの暴走を止める為に、体力を消耗した身体を無理やり起こす。

 

「――って、わぁぁあ!!連続で身体を揺すってくるなんてぇ!!」

 

「椿、危ない!!」

 

すると、いい加減に怒りが頂点に達したのか、赤ゑいが先程まで以上に身体を大きく揺すってきた。

 

そして、それによって運悪く椿が身体にしがみつくのが遅れて宙へと放られてしまう。

 

――不味い、このままじゃ椿が・・・!でも、私が助けに行って対処が遅れたりなんかしたら・・・。

 

「あぁもう!考えてても仕方ない!何とか椿に届いて――!!」

 

ふと気が付けば、私は宙を浮いている椿に向かって足を踏み出していた。

 

「あ、綾ちゃん!何、その速さは!?」

 

「へ?えっ?・・・何じゃこりゃあ!?」

 

だけど、その瞬間に不思議に思ったのは、以前までの変身した時以上に踏み込んだ後のスピードが出ている事だった。

 

どうなっているのかと足を見ると、なんと両足の膝から下にバチバチとした電気のような力が鳥の羽根の形となっていたのだ!

 

「と、とにかくこれなら椿を助け――って、うわっ!たったたた・・・おぉう!?」

 

「おっとっ、わっ・・・!た、たっ、たっ、ひぇ・・・!?わぁぁあ!!」

 

――とまぁ、そのまま椿をお姫様抱っこで受け止められたのは良かったのだが、そこで目的地までひとっ飛びしようと欲張ったせいで、グネグネとうねる赤ゑいの身体へ着地するのに失敗してしまった。

 

そこからゴロゴロと海へ落ちそうになるが、何とか海岸のようになっている窪みの水溜まりに入れたので、落ちるのを止める事が出来た。

 

まぁ、また全身ずぶ濡れにはなってしまったのだが。

 

「ぷはっ!う〜ぺっぺっ、下に水着を着ていて正解でした・・・って、あれ?綾ちゃん、意外と妖魔の妖気が近くにあるよ?」

 

「げっほ、げほ・・・え、本当!?ラッキー!こりゃ"泣きっ面に蜂"だね!」

 

「それを言うなら"怪我の功名"です。"泣きっ面に蜂"じゃ、更に酷い目にあってるからね?」

 

「たはは・・・」

 

椿にことわざの間違いを注意されて、私は水溜まりから上がりつつ自身の髪から水を絞って苦笑いをすると、そこへ妲己さんが小言を挟んでくる。

 

【全くもう、2人共危なっかしいたらありゃしないわね】

 

「はい、すいませ〜ん・・・」

 

「でも、結果オーライですよ。えっと・・・もうそろそろ、妖魔の妖気が1番濃い所に着くけれど・・・」

 

椿がそう言って訝しげな顔を浮かべる。

 

「う〜ん・・・なんで何にも妖魔っぽいのが見当たらないんだろ?」

 

そこで私も妖気を探ってみるが、確かに妖魔の妖気は近くにあるというのに周囲には特に異変のあるような物が見当たらない。

 

・・・これは一体全体、どういう事なんだろうか?

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