私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
とりあえず休み時間は女子トイレへ椿を連れて逃げる事で皆の質問責めを避けられた。・・・というよりも危うく前までの癖で男子トイレに入ろうとしていた椿を助けなかったら一体どうなっていたことやら。
ちなみに昼休みの現在は――
「ねぇねぇ椿ちゃん!今度の休みどこか買い物に行かない?服とかアクセとか、あんまり無いでしょ?」
「それよりもさ、美味しいケーキ屋さん見つけたから一緒に行こ〜!何で男子のフリをしていたのか、その経緯とか知りたいし〜」
椿の机の周りに結構女子が集まってます。なんとかして割って入って止めたいけど、ここまでゴタゴタしてると流石の私でも無理だ。
「あっ、そっか!そうだよね!椿ちゃん、一緒にお弁当食べよう!」
なんてモタモタしてたら何人かの女子が机を寄せてきて、まるでグループ活動でもするんじゃないかってくらいのくっつけ方してきてたよ!ちょっと待って、それに私も混ぜてよ!
「あ、あのさ・・・皆、机を引っ付けてきてどうするの?綾ちゃんまで一緒になって・・・」
「皆で一緒に弁当食べたいだけだから心配しないで!」
・・・なーんてやってたら、円卓かってくらいにデカくなってしまったね。でも、椿の表情が何処か暗く感じる。やっぱり、皆がいきなり馴れ馴れしくしてくる事に抵抗があるのかな。
「心の声、聞こえてるから分かるでしょ」
覚の声が聞こえる。
正直、私はそれをちゃんと理解していた。
誰だって嫌われたくないのは当たり前。いじめてしまった事に対する罪の償いでしかないなんて事は。
・・・きっと、椿にはそれが堪らなく辛いものなんだと思う。そんなのは、ただ出任せな好意に過ぎないんだから。
「お前、意外と優しいね。心も真っ直ぐで」
心が真っ直ぐ、か・・・。
私は自分に嘘をついてまで、椿を自分だけのものにしたがる卑怯者にしか自身を見てないよ。
「でも他人の事、とても思いやれる。そして誰も傷つけたくなくて、虚栄を張る。自分は大丈夫だからって。優しい。でも、それで細かく考えないのはダメ。それ、時に取り返しつかない事になる」
随分お世辞が上手い妖怪だね。細かい事を考えないって・・・いつか、それが取り返しのつかない事に繋がるの?
そう思った瞬間、覚は私に向かって毛むくじゃらの顔に隠れた口を大きく釣り上げ笑ったように見えた。よく見えないせいもあるだろうが、私には私自身の底の浅さを見透かされたような気がした。
「お〜い、綾さん!早くお弁当食べよう!休み時間終わっちゃうよ?」
「あ、ご・・・ごめん、すぐ食べる。」
隣に居た女子の言葉で私はハッと我に返り、すぐにその子の方を向いた。
「だ、大丈夫だよ!ビックリさせちゃってごめんね!」
「平気だよ、私は。ちょっとボーッとしてただけだから心配しないで」
私は彼女を心配させないよう軽く笑ってから、お弁当の蓋を開けて――すぐに閉じた。
・・・ちょっと待て。まさかコレ、里子が作ったのかな?私とした事が、変な所で油断していたらしい。
えっとですね?タコさんウィンナーがガチのタコさんしてたり、ヒジキが触手みたいにウゴウゴしてらっしゃった。
「・・・ご、ごめん!私、何か疲れてるみたいでさ〜保健室行ってくるわ〜」
「ぼ、僕もお腹痛いから、綾ちゃんと一緒に行ってくるね・・・」
ああ、椿の様子から察するに向こうも同じ感じだったんだね。里子さんよ、貴方のお弁当で昼休みが氷河期に突入しかけたんですがそれは。
『やれやれ・・・里子には、もう少し人間の事も勉強してもらわんといかんな』
白狐さんが私達の後ろをついて来ながら溜息をついた。黒狐さんは浮遊丸を未だ遊覧――もとい幽閉飛行させている。
そして屋上へ続く階段までたどり着いて、入り口付近に座って私達はもう一度弁当の蓋を開けた。
・・・やっぱり、コレは妖怪食で出来てるようだ。
米ですらよく見ると、1粒1粒に小さい目玉や手足がある。集合体恐怖症の人からしたら、この時点で地獄のお弁当になるのは間違いないだろう。私ですらちょっと嫌だと感じているし。
「か、可愛い・・・」
「嘘でしょ椿?よく触れるね〜・・・」
「でも、コレも食べ物なの?生きてるのに?」
椿が1粒箸で掴んで持ち上げると、その疑問に白狐さんと浮遊丸の監視を交代した黒狐さんが答えた。
『妖怪食というのは、妖気の含まれた特殊な飯の事じゃ。人間の食べ物をベースに作られているから、生きている訳ではない。だから安心せい』
「変わった物を作るね〜」
すると、椿がその怪奇極まりない「ご飯っぽいの」をおもむろに口にした。
『お、おい!無理せんでも良いぞ椿!』
「ご、豪快にいった・・・」
「んぐぅ・・・口のなふぁで、モゴモゴ動いてたひぇづらい」
私はそうして椿が頑張って食べているのを見て、折角里子が作ってくれたものを不意にしたくない思いから一緒に食べ始めた。
『おいおい・・・綾までもか!』
「だ、だっふぇ、里子ぐぁ・・・んぐ。一生懸命作ってくれたんだから、モグ、のふぉすのはひつれいれしょ?」
食への感謝は日本人としての基本だからね!例えどんなに食べづらくっても、出された物は全部食べるのが礼儀って物です!
「んぐっ、ふう・・・何とか食べられた」
「食べてみたら、意外と普通に美味しい白米だったね」
「そうだね〜・・・って、白狐さんと黒狐さんはなんで鼻血出してるの?」
見ると確かに2人が鼻血を出してプルプルと手で顔を押さえて悶えていた。
『つ、椿よ・・・素じゃよな?今のはなんだか、卑猥じゃったぞ』
「ひ、ひわ・・・!そんな事言わないでよ!」
「また2人はそんな事ばかり考えて!このむっつりスケベ狐が!」
私は2人の心の声でも叫んでやれば少しは黙ると思ったのだが、どうにも妖怪には効果が無いようで何も聞こえてはこなかった。そして、それと同時に他の人の声も聞こえなかった事から、心の声が聞こえる範囲があるのも分かった。
まあ、そんな事はさておき。飯の続き――
「うわっ!?」
「ぷぁっ!な、何これ!」
にしようとしたら、今度は卵焼きから汁をぶっかけられた。食べられる物なハズなのに、どうしてコイツら素直に食べられてくれないの!?
『椿に綾よ、頑張れ』
黒狐さんは特に手助けしてくれる事もなく見ている。結局私達は昼休みの時間をめいっぱい使って弁当との格闘に勝利したのであった。
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やっと放課後になり、皆から解放された私達は帰り道につこうと校門へ歩いていた。
『さて、椿よ。人気の無い公園に着いたら、浮遊丸で帰るぞ。ただ・・・次は別の方法を考えよう』
「それには私からは賛成しておくよ・・・」
「黒狐さん、綾ちゃん、そんな殺生な〜」
流石にあんな変態妖怪に椿の送り迎えをお願いするのは私としては非常に不安だ。いくら便利だからっていっても毎回あられもない姿を撮られたりするなんて事になりかねないからね。
・・・と、何やら後ろから必死な感じの心の声が聞こえてきた。
「椿ちゃ〜ん!綾さ〜ん!待って〜!途中まで一緒に帰ろうよ〜」
クラスの女子の1人が追い掛けてきた。う〜ん・・・このままだと椿が公園から妖怪で帰れないし、どうやって撒いたら良いものだろうか。あまりに露骨だとバレそうだしね・・・
「んっ、うん・・・」
「あ〜、まあ・・・いいけど」
「ありがとう〜2人とも〜」
笑顔で隣を歩く彼女を見る。椿を守る事に必死でクラスの人を覚えるつもりも無かったので気が付かなかったが、その少女の髪は長い黒髪が2つに分かれて先端が少し赤みがかっていた。
「ん?私の髪ばっかり見てどうしたの?」
「・・・いや、綺麗な髪だな〜ってさ」
「えっ、あっ、ご、ごめん!ちょっと特徴的だなって思って」
「えへへ・・・2人ともありがとう」
私達の返答にはにかむ彼女は何処か幼いように見えた。二重なのにキリッとした眼差しは椿とはまた違った良さを感じさせる。胸は・・・正直言って、椿よりやや大きい程度だ。というか、私があまりに薄いので3人の中では浮いて見えてるようにしか思えない。
・・・なんか凹む。
「ねね、どうせクラスの人達の名前、覚えてないでしょ?」
「あー・・・」
私達に名前を呼んでもらえなかった事に若干不満げな彼女の心の声が聞こえた。だが、更に私は彼女から意味深な言葉すら聞こえてきていたのだ。
・・・彼女の為にも、今はそっとしておくべきだろう。
「私は辻中香苗だよ。皆からはカナちゃんって呼ばれてるから、2人ともそう呼んでね!」
「あっ、う・・・うん。ごめん、ありがとう。か、カナちゃん」
「はいはい。改めて自己紹介するけど、私は烏森綾。これからは綾で大丈夫だから」
「アハハ、椿ちゃん何だかぎこちないなぁ。ま、しょうがないか!・・・それとごめんね、イジメに気づけなくて。今度からはちゃんと名前を呼んでね、椿ちゃんに綾・・・ちゃん」
「べ、別に無理して「ちゃん」付けしなくて良いよ。普通にさっきみたく「さん」で平気だし」
昔からなのだが、なんでか私はよく同年代の人から名前に「さん」を付けられる事が多い。小学校時代はそれこそ外国人的な雰囲気もあったからだろうが、現在ではきっと暴力的な面から物怖じさせてしまっているのだろう。――私はあまり気にする方じゃないけれども。
『むっ、椿に綾。校門に誰かおるぞ?』
突然の黒狐さんの言葉に私と椿は前を見やる。
そこに居たのは――
「えっ、お坊さん?」
「おいおい、学校の前で托鉢なんて止めてほしいな・・・」
だが、よく見るとその坊さんの格好は私の見た事がある宗派のものとは似ても似つかず、更にはそいつを見た白狐が叫んだ。
『浮遊丸!!椿と綾を連れて逃げろ!!』
「任しとき!!」
そして次の瞬間、椿が突然身体を強ばらせ地面へ倒れてしまったのだ。
「ぎゃう!!」
「椿!」
『しまった!椿!!』
『白狐!椿を抱えて逃げるんじゃ!』
香苗はすぐに踵を返して学校へ戻ろうとする。
「椿ちゃん、待ってて!すぐ校長先生呼んでくるから!」
だが坊さんは一瞬にして椿の目前まで迫り、手にした杖みたいなもので殴りかかろうとしていた。
私は椿を守る為に彼女に覆いかぶさった。
2度、3度殴られ、その衝撃による酷い痛みが背中へ走り、脳が揺さぶられる感覚で吐きそうになる。
「悪霊、妖怪。滅すべし」
やめろ、なんで襲うのかは知らないけど椿は私の――
「私の友達に、手ぇ出すなぁあああ!!」
そう叫んだ瞬間――突如として私の目の前が眩く光り、視界が戻った先には・・・
くすんだ金属で作られた身体の、肩や腕などから鳥の羽根のように金属片を付けた、鳥の頭とカメラを合体させたような紅く光る一つ目。
私が夢でかつて見た、あの人型の怪物が1メートルもありそうな刀で坊さんの杖を受け止めていた。