私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第参拾肆話 そんな格好(フンドシーズ)

 

それから更に私達はお祭りの出店を見て周り、今は椿とそれぞれ一緒に買った綿飴を持って夜道を歩いている。

 

「わぁ、妖怪さんの出店も気になるなぁ・・・何だろう、あれ?」

 

「あそこの1つ目小僧さんの出店、1個100円なのにやたらガタガタ動いてる箱があって気になるよね。う〜ん、買ってみる?」

 

「止めておこうよ、綾ちゃん。何となくだけど、多分良くない物かもしれないし」

 

「あっはは、冗談だって椿。でもまぁ、妖怪の出店も見えてると、お祭りもより賑やかに見えるね〜」

 

「えぇ!?本当、綾ちゃんは前向きなんだから・・・」

 

そんな会話をしながら歩いていると、ふと椿はある事を思い出して楓と海音に確認を取る。

 

「そういえばさ、楓ちゃん海音ちゃん。この後に神社で何かあるんだっけ?白狐さんと黒狐さんから来いって言われたんだけど――むぐっ!?」

 

そして椿は綿飴を口に含むが、途端に彼女の頬がハムスターのように膨れてしまった。その様子を見て飛び上がって喜ぶ姿から、どうやら楓がいつの間にか椿の綿飴を妖怪用の綿飴とすり替えていたようだ。

 

「む〜!!」

 

「うひゃぁ〜!椿姉さん、口を膨らませながら睨まないでくださいっす!地味に怖いっすよ〜!!」

 

椿が楓の襟首を捕まえて同じく例の綿飴を食べさせようとしているのを見て、私は苦笑いしながら海音の方へ振り向く。

 

「全く、楓は祭りでも普段と全然変わらないね。それで海音、これから神社の方では一体何が行われるの?」

 

「えっとね〜神社の方は・・・一般の人間には関係ないんだけれども、私達妖怪にはちょっと関係がある催し物が行われるのよね」

 

「催し物?何じゃそりゃ」

 

私が不思議に思って首を傾げると、そこで楓に綿飴を咥えさせた椿も振り返って海音に質問した。

 

「む〜む〜む〜!」

 

「何か特別な物でもあるの?」

 

「特別というか・・・まぁそれは、着いてからのお楽しみって事で。あっ、そうそう。妖気を普通に感じられる綾は勿論、半妖のあなた達も来て良いわよ」

 

そう言って海音はカナと雪に笑いかけた。

 

「へぇ〜、一体何があるんだろう?楽しみだね!椿ちゃん、綾さん」

 

「うん、そうだね」

 

「確かに私も気になるけど・・・椿、まずその前に楓の方を見よっか」

 

「むぐぐぐ・・・!!」

 

私は椿に、綿飴を押し込まれてノックダウンされかかっている楓を指差した。それから椿とすぐに楓を物陰へ運んで、詰まっていた綿飴を何とか口から出させると、楓は今度は綿飴を舐める食べ方で再び食べ始めた。

 

・・・なるほど、どうやらこの綿飴は舐めるように食べるのが正解らしい。

 

「はぁ、はぁ・・・ケホッケホ、つ、椿姉さん酷いっす」

 

「どっちがですか?僕の綿飴とすり替えておいて・・・あぁ、ほらやっぱり。そんな勢い良く舐めて食べるから、口の周りがベタベタじゃん」

 

「む〜良いっすよ、椿姉さん〜自分で出来るっす〜」

 

そうして物凄い早さで綿飴を食べ終えた楓の口元を、彼女が恥ずかしがるのを何とかしつつ椿がハンカチで拭った。

 

ちなみに、その後ろから大人気ない嫉妬の視線が2つ程私達に向けられていたのには気づかないフリをしておいた。なんで、そのくらいでヤキモチを焼くのさ・・・。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

――神社にて

 

それから私達は1人で型抜きの飴をつついていた美亜を道中で拾いつつ、ようやく海岸沿いの道の先にある少し高い丘の神社までやって来た。

 

「しっかし、此処の方には出店どころか神社の人すら出入りしてないね。めっちゃ暗くて見えずらいんだけど・・・」

 

「も、もしかして・・・今から此処で肝試しとか、そういった事でもするのかな?妖怪が妖怪を驚かしてどうするんですか・・・?」

 

椿が恐怖で身体が強ばりながらも、先を歩く海音へと尋ねた。

 

「あはは、そんな事しないって。それにやるなら、人間相手に私達が驚かす方だよね」

 

「それを人間の私の前で言うかな〜?怖いのは、あんまりにも慣れすぎて、別な意味で勘弁なんだけど・・・」

 

「ふ〜ん、そっか〜」

 

ついついツッコミを入れてしまった私に、海音は何処かイタズラな笑みを浮かべると、そのまま正面の社の隣にある堂へと歩いて扉を開く。

 

すると開かれた扉の向こうからは、夕焼けのようなオレンジの光が差し込んできていた・・・まさか。

 

「さっ、ここから裏の世界――妖界に行くわよ。実は、何かあるのは妖界の神社の方なのよね」

 

「なるほど、そっちの神社もあったんだっけね。最近はこっちの世界で任務を受けてたから忘れかけてたよ」

 

「えっ、えっ?わ、私達も行くの?」

 

「むっ・・・流石にちょっと、怖い」

 

カナと雪の様子からすると、彼女達は妖界に行った事が無いのかもしれない。しかし、そんな事はお構い無しに海音は2人も一緒に扉の中に引っ張り込む。

 

「大丈夫よ。神社の周りには結界を張っているし、邪な妖気を持つ奴は絶対に入れないからね。それよりも時間が無いから、皆早く入って入って!」

 

「きゃっ!ちょっ、まだ心の準備が!」

 

「あわわわ・・・!」

 

そして、2人がポイポイッと放り込まれたのに続いて海音や楓も扉の中に入っていったので、私達も扉の中の空間が消え去る前に急いでそこへと入った。

 

人間界から妖界に移動する一瞬で、景色がネガフィルムのように反転するような変化はやっぱり、これは何度やっても慣れそうにはないかもしれない。

 

それからもカナと雪を連れて、私達が先を進んでいく2人を追いかけていくと、炎のように紅い夕陽で照らされたボロボロの神社へと到着する。

夜に妖界に移動したというのに、この世界にはひょっとすると時間の概念というのは無いのかもしれないね。

 

「なんか、神社の広場の方にデカい太鼓とか、見覚えがある高台があるんだけど・・・もしかして」

 

神社の前に広がる景色に私が片眉をひそめると、そこへ案の定というか狐2人がやって来る。

 

『おぉ、椿に綾よ。やっと来たか』

 

『祭りの方は随分と楽しんでいたようだな』

 

狐2人は嬉しそうに椿へと話しかけるが、祭りが始まる直前まで2人の寵愛を受けていた彼女は恥ずかしがって顔を背けた。

 

『何故顔を逸らす?』

 

「自分の胸に手を当てて聞いてください、白狐さん」

 

「本当、2人共そういう所は鈍感なんだから〜・・・」

 

『『ふ、ふむ?』』

 

全く、本気で椿の事を娶りたい2人の気持ちは分からなくはないけれども、それでもちゃんと相手の気持ちが分かるようにはなって欲しいと思うね。

 

「あっ!よ、良かった〜椿!」

 

ふとそんな事を考えていた時、今度はボロボロの社の方から夏美が怖い物でも見てきたかのように慌てながら此方に向かって走ってくる。そもそも、いつの間にか夏美も妖界の方にいるのだろうか・・・あの様子からすると、少なくとも自分から来た訳ではないと思うが。

 

「さ、流石に怖かった〜!!前に、おじいちゃんの家の牢でずっと妖怪に見られていたからトラウマなのに!」

 

「いや、その前に・・・何でお姉ちゃんがこんな所に?」

 

「なんとなく想像はつくけどね・・・」

 

椿が困惑し、私も乾いた笑いを浮かべていると、そこへ天狗の姿となった椿の祖父もやって来た。そして、夏美は未だに妖怪の姿での祖父の姿に慣れないのか、更に怖がって椿の後ろへ隠れてしまった。

 

「あっ、こんばんは。夏美さんが凄く怖がってた様子なんですけど、何かあったんですか?」

 

「儂が拉致って来た。此奴は未だに大量の妖怪を見たらビクビク震えおるからな、だから人間が使っておる"ショック療法"とか言うもので直そうとしたのじゃ」

 

「そ、そうなんですか、はは」

 

なんというか多分、それは夏美には逆効果になっている感じに見えるのですがそれは・・・凄く首をブンブン横に振って嫌がっているし。

 

なんせ妖界へ来ている妖怪達もざっと100人以上はいるので、もし椿や私がまだ妖怪に慣れてなかったら卒倒するような絵面に感じたかもしれない程だ。

 

「そ、それに・・・普通の人間が、こんな所に来て良いの?妖怪になっちゃったりしない?」

 

「安心せぇ。妖気を強く感じられたり妖術を扱える綾なら勿論、お前さんもこの程度の妖気なら半日くらいは大丈夫じゃ」

 

「帰る!!私帰るぅ!!」

 

椿の祖父から、そんなヤバい事を聞いてしまった夏美は物凄いスピードで走って妖界と人間界に繋がっている扉から元の世界へと戻っていってしまった。

 

「全く・・・情けない奴じゃ。まぁ仕方ない。さっ、皆の者。祭りの本番を始めるぞ」

 

そう言って椿の祖父がパンッと手を叩く。

すると、大きな太鼓の所や高台の周辺に様々なお面を付けた妖怪達が現れた――のだが、その誰も彼もが何故か筋肉質な身体でフンドシ一丁という漢らしさ暑苦しさ満点な格好で登場してきた。

そんな面白さしかない人達が出てきたお陰で、椿も私も思わず吹き出しかけてしまった。

 

『さて!今年は我らも気合いを入れるか、黒狐よ!』

 

『ふん、お前よりもデカい音を出してやる!』

 

「――って、な〜んで白狐さんと黒狐さんまで"そんな格好(フンドシーズ)"なんですか!?」

 

「ぶふっ!で、でも細マッチョだから妙にカッコよく見えるというか・・・」

 

しかも、そこで狐2人も浴衣を脱ぎ捨てフンドシ一丁になってしまったので、私達は呆然としてしまった。

 

「ちょっと待って。そもそも、何で守り神の2人が祭りの太鼓を叩くの?なんていうか、周囲にデカい音で逆に迷惑をかけちゃいそうに感じるんだけど」

 

『まぁ、今年は特別だ。椿に我らの勇姿を見せようと思ってな』

 

『本来なら守り神の俺達がやるものではないが、椿の為に一肌脱いだという訳だ』

 

「はぁ、本当に椿の事ってなると凄い行動力を見せるよね〜・・・」

 

「う〜・・・ま、まぁ・・・2人は十分に勇ましいから・・・その、こ、これ以上は・・・」

 

椿が顔を赤くしてその先を言う事を恥ずかしがっていると、カナが後ろからニコニコした表情で椿に声をかけてきた。

 

「これ以上は何なのかな〜?2人共、興奮しちゃう?」

 

「するかボケ〜!」

 

「こ、興奮しちゃうかな・・・って、違う違う!そうじゃなくて、2人共適度に筋肉が付いてて羨ましいというか、僕が男だった時はヒョロヒョロだったからさ・・・その、ドキドキしちゃって、そんな身体で抱きしめられたりなんかしたら・・・じゃなくて!うぅ・・・」

 

「あ〜もう、椿も椿で変に妄想を暴走させないで〜」

 

カナの言葉で、椿は恥ずかしさのあまりに沸騰したヤカンみたく顔から蒸気を吹き出してしまった。

 

そんな様子に私もツッコミが追いつかなくなってきて首を横に振っていると、ふと雪だけが寂しそうな顔をして私達の方を見ている事に気づく。

 

一瞬だけではあったが、その顔は「自分には勿体ない」とでも言いたそうな、そんな諦めの表情にも感じられた。

 

雪は再び元の表情に戻り、私達の元へ走って来る。

 

「ほら、もうすぐ始まるみたいだよ」

 

そして、それからすぐに高台に乗っている妖怪が太鼓を激しく叩き鳴らすと、それに合わせて周囲へいた妖怪達も、お祭りでよく見る盆踊りではないような、不思議な舞いで踊り始めた。

 

上の方ではレイちゃんも踊りのリズムに乗って楽しそうに浮かんでいるが・・・この踊りは一体全体何なのだろう?

 

「盆踊りじゃないみたいだけど何だろう、あの踊りは?」

 

『ふっ、盆踊りは盆の時期に踊るもの。これは妖怪が、霊魂と共に楽しむ為の踊りさ』

 

「へぇ・・・って、幽霊さんと?」

 

「あっ、本当だ!めっちゃいるぅ!?」

 

「何故か僕達にも見えるよぉ!!」

 

祭りの特性なのかもしれないけれども、これは夏美は逃げて正解だったと思う。それこそ、こんな光景を見てしまったら今度こそ気絶してしまうだろうね。

 

『よし!俺も太鼓を叩きに行くぞ!椿、しっかりと見てろよ!』

 

『ぬっ、負けぬぞ!黒狐よ!』

 

そうして、狐2人も高台の方へと向かって行った。

2人の背中に私達は一応応援のつもりで手を振っておいたが、それにしても椿が何か2人の尻尾の方を凝視しているような・・・。

 

「椿ちゃ〜ん。そんなに2人のお尻を見て、もしかして目覚めたの?」

 

「なんだって!そしたら、すぐに私も脱いで女の子の裸体で、あの2人の汚れた記憶を上書きしないと!」

 

「いっ!?ち、違うよ!それに綾ちゃんも止めて〜!!いや、ちょっとその・・・目のやり場に困ると思って――ん?」

 

すると、また雪が私達を見ながら寂しげな顔をしていたのを見つけたので、私と椿は心配して彼女へ声をかける。・・・ちなみに、今さっきのは半分くらいは本気でやるつもりでいたのだけど。

 

「ありゃ、まーたそんな顔してどうしたのさ雪?」

 

「雪ちゃん?あのさ、雪ちゃんも何か抱えているんだよね?顔を見たらすぐに分かったもん・・・だから、もし話せる時が来たら僕達に話してね。僕も綾ちゃんも、絶対に雪ちゃんを嫌いにはならないから」

 

「えっ?あっ・・・気付いちゃう?でも、ごめん・・・椿、綾。私のは、その・・・」

 

「1人で無理に抱え込むのは後から結構辛くなってくるもんさ。今すぐでなくても大丈夫だから、何時でも私達を頼ってよね。雪の力になるからさ」

 

俯いて黙ってしまった雪に、私はプレッシャーにならないように優しく彼女の頭を撫でた。すると、そこへ先に進んでいったはずの楓と海音が私達の所へ戻って来た。

 

「こらそこ〜!そんな暗い顔をしていたら、準備をしてくれた皆に失礼でしょ!今は楽しんで、ほら!」

 

「そうっすよ、姉さん達!踊るっすよ!」

 

そして、私達3人は楓達に腕を引っ張られて会場の中央へと連れられていく。

 

「あはは・・・なんだかんだで旅館の妖怪も、こっちとそんなに変わらないくらい優しい人達だよね・・・」

 

「全く・・・妖怪はいつもいつも、スキンシップが過度」

 

「そうね。今なら、雪の気持ちも少し分かるかも〜綾さんの言う通り、優しい妖怪さんは多いんだけどね」

 

雪の言葉に私とカナは苦笑いをする。以前の私では想像がつかないなと思う程に、皆と楽しんでいる感覚は心の何処かがくすぐったくなる。

 

――でも、妖怪は単純。人間と違って・・・

 

しかしふと、雪が言葉の最後にそう呟いたような気がした。その言葉はひょっとすると聞き間違いなのかもしれないが、私にはどうしてか妙に嫌な予感を覚えたのだった。

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