私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
第壱話 この4人、初対面で失礼過ぎやしませんかね!?
――旅行から帰ってきて
私と椿は自分達の部屋へ荷物を置いて、お土産の箱菓子を持って真っ先に座敷わらしこと、わら子の部屋へと向かっている。
「やっぱりわら子って、家に住む座敷わらしの妖怪だから下手に外出出来ないみたいだね・・・ずっと留守番してもらっちゃってたから、なんか気まずいなぁ」
「おじいちゃんからは大丈夫だって言われてるのに「この家から出ちゃうと"幸福の力"が弱っちゃって恩返しが出来ない」と言ってたからね。でも、世話役の人が戻ってくるとも言っていたから生活の方は問題無かったみたいだよ。早くわら子ちゃんの所に行って、明日まで一緒に居てあげよう」
「うん、そうだね!」
すると、そう言って廊下を進む足を早める私達の後ろから、何故か荷解きを頼まれていたハズの楓も着いて来る。
「さ、流石っす・・・座敷わらしと友達だなんて、やっぱり姉さん達は違うっすね!」
「楓ちゃん、まずは荷物を――」
「それは里子さんがやってくれてるっす!」
「しれっと酷い事言ったなオイ」
なんというか・・・そこを面倒臭がってしまうのは色々と駄目だと思う。
「あのね、あんまり里子ちゃんにやらせたら・・・」
「でも姉さん達も、旅行の荷物放ったらかしっすよね?里子さんにやらせる気満々じゃないっすか」
「「うっ・・・」」
そう楓に言われてみると、確かにそうだった!
元はといえば、里子自身が勝手に私達へ世話を焼いてくるのが一因ではあるのだけど・・・まぁ、今はわら子の方が心配なので一先ず勘弁してもらいたい所だ。
「そ、それは、ちゃんと後でやるからさ・・・」
「でも里子さん・・・姉さん達の旅行の荷物から真っ先に、下着とか汗の匂いが付いたTシャツとかを取り出していったっすよ」
「一旦戻るよ、綾ちゃんに楓ちゃん」
「うん、それは言われなくても分かってるよ。絶対嫌な予感しかしねぇ〜っ!!」
すぐさま私達はグルリと方向転換して、駆け足で自分の部屋へUターンするのであった。
うん、里子が結構ヤバい子だったのを今の今までスッカリ完全に忘れていたよチックショウ!
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――それからしばらくして
何とか里子が下着をハスハスする前に取り押さえて軽くお仕置きをした私達は、やっとわら子が居る離れの部屋へ行ってコンコンと扉を叩いた。
その私達の後ろで、楓が複雑そうな表情を浮かべている。
「姉さん達、アレお仕置きになってたっすか?里子さん、恍惚そうな顔をしていたっすよ・・・」
「言わないで・・・アレが僕の限界なんだから」
「正直、あそこまで深刻な子だとは私も予想外だったんだけど」
さて何があったのかというと、椿がお仕置きとして里子の耳を強く引っ張って彼女が「キャウン!」と悲鳴を上げた・・・のまではとりあえず普通なのだが、その後に「やるようになったわね、椿ちゃん」
と言いつつ何と腹を見せるように転がって"犬の服従ポーズ"っぽい事までしてきたのだ。
これには椿や楓、そして荒事には慣れているハズの私ですらドン引きしてしまった。
「あっ!椿ちゃん、綾ちゃん、お帰りなさい!」
そんな事を思い出していたら、向こうから扉が開かれて、わら子が嬉しそうな様子で私達を出迎えてくれた。
「ただいま、わら子ちゃん。ごめんね、寂しかったでしょ?だから・・・はい、お土産」
「わぁ!ありがとう、椿ちゃん!あっ・・・でも、今は危ないかも・・・」
「ん?そりゃ、どういう――だぁ!?」
「えっ、何が――あぅっ!?」
突然わら子の表情が暗くなったので、一体何があったのかと一先ず部屋へ入ろうとした私達は、その途端にいきなり見えない壁らしき物にぶつかってしまった。
「な、何これ!?」
「姉さん達、これ凄い力を感じるっす!」
「ああ、それは分かってるけど・・・旅行に行く前までは、こんな物なんて張られてなかったハズだぞ!?」
慌てた私と椿の頭は"何者かがわら子を閉じ込めたのでは"という焦燥感でいっぱいになる。
「くっ!わら子ちゃん、待ってて。レイちゃんを連れて来て、すぐにその結界を――」
「あっ、待って・・・違う、違うの!」
「違うって、どう見てもこりゃ閉じ込められてるでしょ――って、は?」
椿がレイちゃんを呼ぶのを、わら子が首を横に振って止める。
すると、私達の目の前――部屋の入り口に突如として、亀の甲羅のような多角形の物体が幾つも現れて、それらは重なり合って白く丸い盾の形となった。
不思議だったのは、それらから感じられたのが妖気だけでなく、神術が発動した時に感じた力・・・"神妖の力"も感じた事だ。
「くっ、何なんだ?あの白いやつに、とんでもなく力が凝縮されてる感じがする!」
「何・・・これ。白狐さんの守護の妖術より強力かも」
そう私達が呆然とした時――
「当然です。座敷様を守る為の、特殊な盾なのですから」
わら子の後ろから、私達よりも年上そうで長い黒髪をポニーテールにした、高校生らしい制服を着た女性が現れた。
その黒髪は良く手入れしているのか艶があって、髪型だけでいうならば私とほぼそっくりなくらいに長い。しかし、顔つきは喧嘩をしていた私と比べて、凛としているのに荒事で荒んだような感じはしなかった。
なんというか・・・例えるならば"大和撫子"といった雰囲気で、見た目が少し羨ましく感じてしまう。
「悪いですが、座敷様へは何人たりとも近づけさせません」
だが、驚いたのはここからで、何と彼女の後ろからもそっくりな容姿の女性が次々と現れてくる。
「しかも、2人揃って座敷様の事を"わら子ちゃん"とは・・・許せません」
おいおい待て待て、これは何かの幻術か!?これで3人目――
「ですので・・・申し訳ないですが、貴方達は2度と座敷様には近づかないでください」
って、4人も全く同じ姿の人かよ!しかも・・・この4人、初対面で失礼過ぎやしませんかね!?
そんな光景を目の当たりにして完全に混乱してしまった私達とは真逆に、どういう訳なのか楓は物凄く興奮している。
「ね、姉さん達、この人も忍者っすか!?これ、分身の術っすよね!?」
「わ、分からんよ楓!流石の私でも、本当に忍者なんか見たらNRS(ニンジャ・リアリティ・ショック)を起こしてるハズだし!」
「な・・・何すか、それ?」
おや、珍しい・・・楓が忍者関係で知らない物があるとは――じゃなくて!まず、この4人は一体全体何者なんだって話が先だと思うよ!
「4人ともダメェ!そ、その子は、椿ちゃんは・・・小さい頃から私の友達なの!それに、綾ちゃんも人間だけど、私にとっては椿ちゃんと同じくらい大切な人なの。私の・・・とても大切な友達なんだから、そんな酷い事はダメェ!!」
すると、わら子は私達へ警戒している4人へ向かって大声で怒鳴った。半泣きとはいえ、いつもは椿に並ぶ程に温厚そうな彼女がここまで大きな声を出せるなんて・・・でも、どうやら彼女をこれ以上怒らせるのは不味いようだ。
「あっ・・・し、しかし座敷様、この者達は・・・」
「ダメったらダメェ!!」
「はっ!い、いけない!」
そして、わら子が一際大きな声を上げた途端に、謎の4人が慌てだした。それと同時に、わら子の"幸福の力"が暴走したのか4人へ異変が起き始める。
「きゃっ!?」
「ちょっ!」
「ざ、座敷様・・・落ち着いてください!」
「くっ!そ、そんなに、この者達を・・・!?」
わら子の力は相当ヤバいらしく、4人はそれぞれ床を踏み抜いてしまったり、突如発生した突風によってスカートが思いっきり捲られたり、何故か何処からともなく野球のボールが飛んできたり等・・・そこそこヤバい事が起こっている。
そういえば、私達も旅行へ行く前に似たような経験をした事があったのを思い出した。
その時は、旅行へ一緒に行けない事に対して彼女が少し文句を言った後で、その日の夕飯に雪特製の激辛ペーストが混じっていた事をわら子が謝ってきたのだ。
その一件のお陰で彼女を不機嫌にすると、"幸福の力"が反対に働いて不幸な事が起こる事が分かったのだけど・・・今回は結構ヤバかったらしいね。
ちなみにこの後、4人は渋々ながらではあるけど私達を部屋の中へ入れてくれました。
まぁ、流石にわら子がこれ以上暴走するのを止めたいからだとは思うけれど・・・また大変な人達が出てきたもんだなぁ。