私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第弐話 "烏森の力"

 

私達はわら子の部屋へ入ってすぐに楓に自己紹介をさせると、その後にわら子の部屋に居た謎の4人の女性も自己紹介を始める。

 

「それで、結局そっちの4人は何者なんだよ?」

 

「一々口が悪い方ですね・・・さて、私達は座敷わらし様の守護をさせてもらっている者です」

 

「はぁ・・・守護、ねぇ。これまた大層な」

 

「あの、えっと・・・それは分かりましたけれど、誰が誰か分からないので・・・先に名前と、見分ける方法をお願い出来ませんか?」

 

そこへ椿が依然困惑したまま、4人をそれぞれ見て質問した。確かに、今のままでは例え4人に自己紹介されたとしても、彼女達全員が同じ姿なので見分けが付かないどころの話じゃない。

 

「あぁ、失礼致しました。私達は一卵性の4つ子ですから、見分けが付かないのは当然ですね」

 

「マジですか・・・そんな同じ姿の兄弟姉妹が沢山とか、漫画の中だけの話かと思ってたよ」

 

「それにしても――いえ、貴方には関係の無い話でしたね。失礼しました」

 

ふと4人の内の1人が私の方を見て、何故か意味深そうに眉を一瞬だけ顰めた。何か私の性格とかで気になる事でもあったのだろうか?

 

「さて、私達の紹介ですが・・・私は龍花(るか)」

 

「私は虎羽(このは)」

 

「私は朱雀(あやり)」

 

「私は玄葉(くろは)」

 

「うん・・・うん?悪い、やっぱり誰が誰なのかサッパリですわ・・・」

 

4人に自己紹介をしてもらったは良いが、今の喋りすらも全くの同一人物のようにそれぞれ違和感を感じなかったので私も椿も首を傾げてしまった。

 

「け、結局どう見分ければ良いんですか・・・?」

 

「椿さん、それに綾さんもやはり混乱していますね。ですから、私達を簡単に見分ける方法としては・・・この髪を束ねているリボン、その色で見分けてください」

 

そう言って、4人の中の1人は後ろを向いて自身のポニーテールを結んでいるリボンを見せてきた。4人のリボンをよくよく見てみると、確かに全員違う色のリボンで青、白、赤、緑、と分かれている。

 

「なるほどね〜・・・で、どの人がどのリボンなのか、もう1回お願いしても良い?まだ混乱してるせいか、忘れちゃってさ」

 

「えっと・・・ですから。私、龍花が青のリボンで、虎羽が白に、朱雀が赤で、玄葉が緑のリボンとなっています」

 

「よっし、今度こそ覚えた」

 

ようやく私達は、その説明で4人の区別が判明した。どうやら青いリボンの龍花が、先程からあれこれメインで喋っていた人のようだ。

正直、私達は4人にかなり失礼な事をしてしまったと思っていたが、彼女達は特に気にした様子も無く再び淡々と説明の方へ戻る。4人にとっては、割と世間からも間違えられる事が多いのだろうか。

 

――と、そんな事はさておき。今度は私達も自己紹介する番だ。

 

「あ、そうそう。とりあえず私も自己紹介しとくよ。私は烏森 綾、それで隣の方は――」

 

「烏森・・・?」

 

「えっ、どうかした?」

 

「あぁ、いえ・・・綾さん。続けてください」

 

すると、私が自己紹介した途端に更に4人は訝しげな眼差しを向けてきた。それも一瞬だけだったとはいえ、こうも意味ありげな行動を取られると幾ら何でも気になってしまいそうだ。

 

「あ〜・・・あぁ。それで隣の妖狐は、槻本 椿・・・で良いんだよね?一応苗字付けたけど」

 

「うん、大丈夫だよ綾ちゃん」

 

「あぁ、"あのオカマの"椿ですか」

 

「おぅ何いきなり喧嘩売りに来てる訳?」

 

「僕は"妖狐の椿"です!!」

 

緑のリボン・・・確か玄葉だったか、が椿を小馬鹿にしたような事を言ってきた。流石に今のは悪意ってレベルじゃなく酷いと思う。

 

「そちらの方は鞍馬天狗の翁から聞いていますよ。人間でありながら妖気を持っている綾さんはともかくとして、椿さんの方は男になっていたとか?あぁ、失礼・・・という事は、オナベですか」

 

「う〜・・・」

 

椿や私が睨みつけても全く動じない青の――龍花が更に椿へ妙な敵意を飛ばしてくる。

 

「はぁ〜・・・とりあえず、それ以上はジョークとして受け取らないからね私?」

 

「さっきから黙って聞いていたら、随分と失礼な事を言うっすね。椿姉さんはオカマなんかじゃないっすよ!」

 

「綾ちゃん、楓ちゃん・・・」

 

すると、私が4人へ威嚇したのと同時に、楓もいよいよ彼女達へ文句を言い始めた。これまで頼りなかったのに、今では嘘みたいに頼もしく感じる。

 

「そうだよ、ちゃんと言ってください2人共!僕はオカマじゃありません!」

 

「姉さんは、椿姉さんは――ニューハーフっすよ!!」

 

「ああ!その通りだ、楓――って、それも違うわぁ!!」

 

な〜んて思っていた私、本当にアホかよ!

 

何だってそんなへんちくりんな回答になるんだよ!?

 

いきなり楓も変な事を言ってしまったので、ついついスパーン!と後頭部をぶっ叩いてしまったではないか。

 

しかも、そのせいで4人の警戒心も更に上がってるし・・・なんなんだ、この子は。

 

「椿姉さんは身体こそ完璧な女の子っすけど、心はまだ微妙に男の子っす。だから、まだ完璧なニューハ・・・」

 

「ちょっと黙っててくれるかな、楓ちゃん?」

 

「えぐっ!?」

 

なお、その直後にすぐ椿が楓を押さえつけたので何とかこれ以上酷い事にはならずに済んだ。そして、楓もニッコリと笑いかけてくる椿にガタガタと震えて必死に首を縦に振りまくっていたよ。

 

・・・うん、やっぱり椿が怒った時に見せる笑顔は結構怖い。

 

「ふむ、脱線してしまいましたね。まぁ、正直ニューハーフだろうとオカマだろうと関係ないですけどね」

 

「誰のせいですか、誰の・・・」

 

「だから、椿は散々そういうのじゃないって言ってるのに〜・・・」

 

未だ納得してくれない事に呆れる私達に、4人は凛とした態度を1度も崩さないまま、今度は別な話題を持ち出してくる。

 

「さて、それでは椿さんに綾さん。何故あなた達は、座敷わらし様にそんなに好かれているんですか?」

 

「う〜ん、どう説明したら良いもんかな?」

 

昔の記憶を封じられている椿は勿論の事、幼い頃にわら子と付き合いがあった訳でもない私も、これについては流石に分からない。

 

そこで私達は、わら子が何か知っているのではと思ってチラと視線を向ける。

 

「あ、あの・・・椿ちゃんは記憶が無くて。で、でもね・・・椿ちゃんが小さい頃、あなた達が任務で居なかった時は椿ちゃんがいつも遊んでくれていたんだよ?そ、それに綾ちゃんも"少し前の昔"には、あまり家に行った回数は多くなかったけれど・・・椿ちゃんと同じくらいに仲が良かったんだよ?それは、いつも言っていたよね?」

 

「なんだって?幼い時に、私もわら子と遊んだ事が・・・?」

 

サラッと気になる言葉が出てきて私は質問しようとするが、そこで赤いリボンの朱雀が口を挟んでくる。

 

「はぁ・・・座敷様、あなたは特別なのです。たったそれだけで気を許していては、何時ぞやの時のように簡単に連れ去られてしまいますよ」

 

朱雀からの言葉に、わら子は強くたじろぐ。

 

とりあえず、私が気になっている事はまた別な機会に聞くとして・・・確かに朱雀の言う通り、そこまで慎重になるのも納得だ。住み着くだけで、その家全体に幸福をもたらす"座敷わらし"という存在は、所在が知れれば周囲の人間は羨ましがり、そして奪おうとしてくる可能性だってある。

 

「それから100年間。私達はあなたを守る為、時にはあなたを狙う輩を潰しに出向いたりして、必死にお守りしてきました」

 

「へっ、100年だって!?」

 

すると、これまたサラッと驚くべき話が出てきた。

 

100年以上生きているという事は、この人達は妖怪なのかと疑うが・・・それにしては彼女達自身から妖気を感じない。その代わりに"別な力"が出ているのは感じるのだが。恐らくは妖怪とはまた別な存在なのかも。

 

そんな風に考え込む私や、同じように驚いている椿を無視して、今度は緑のリボンを付けた――玄葉が話を続ける。

 

「良いですか、そろそろ身勝手な行動は止めていただきたい。自分がどういう妖怪かを理解して、慎重に行動してください」

 

「でも・・・」

 

「友達も、此方が信用出来る人物以外は許しません!」

 

「うっ・・・」

 

そして流石に4人の精神的なガードは固く、まるでわら子に厳しい親のような感覚さえ覚えてくる。

 

「おいおい、幾ら何でもそりゃやりすぎだと思うんだけど」

 

「うん、あの、ちょっとそれは厳しいかと・・・」

 

「「「「あなた達は黙っていてください!!」」」」

 

「ぐっ・・・」

 

「ひっ・・・」

 

私達も何とか4人を説得しようとしたが、残念ながら4人全員から同時に怒鳴られてしまった。しかし、それにしても4人姉妹なだけあって息はピッタリしているのが驚きだ・・・感心しても仕方ないけど。

 

「良いですか!?幾ら座敷様が駄々をこねようと、こればっかりは許しま――つっ!!」

 

「うっわ、天井から木箱が落ちてきたよ」

 

それから龍花が再びわら子を説教しようとすると、その瞬間に突然真上から木箱が落ちて彼女の脳天にカコーン!と小気味良い音を立てて砕けた。

 

・・・やはりというか、わら子は不機嫌になっているようだ。

 

「座敷様!幾ら不機嫌になられても駄目ですよ!ここは譲れ――いっ!?」

 

「うわわわっ、危ねぇな〜」

 

「あの、大丈夫ですか?えっと・・・虎羽さん?」

 

今度は虎羽の方に五寸釘が何処からかすっ飛んで来て、彼女の額を掠めていった。一応、椿が怪我の具合を確認したが血が少し出ているだけで無事らしい。

 

そして、とうとうわら子が泣き出してしまった。

 

「うっ、うぅ・・・でも、でも、椿ちゃんや綾ちゃんと・・・」

 

「いい加減にしてください、座敷さ――って、きゃぁぁあ!」

 

「も、もう無理して説得するのは諦めた方が・・・っていうか、そのオオスズメバチは何処から湧いて来たんだよ〜!?」

 

なんというか・・・これ以上は流石に放っておいたら4人が危ないかもしれないし、その本人達も折れる気配がないようだ。

 

こうなったら、もう私達がこの場で取れる策は1つだけだ。

 

「あ〜もう・・・椿、こりゃどうしようも無いよね」

 

「分かりました、綾ちゃん。つまり言葉で幾ら行っても無駄・・・ですよね?」

 

私達が立ち上がって部屋から出ようとすると、わら子は悲しそうな表情を此方へ向けてくる。

 

「椿ちゃん、綾ちゃ・・・」

 

「勘違いしないでよ、わら子ちゃん?まだ私達は諦めた訳じゃないんだからさ」

 

「大丈夫だよ、わら子ちゃん。要するに、この人達に認めて貰えれば良いんでしょ?」

 

それを聞いたわら子は少し笑顔になったが、どうしてかすぐに暗い顔になってしまう。

 

「ご、ごめんなさい、椿ちゃん・・・じ、実は、椿ちゃんと私の過去の事にも、そして綾ちゃんの事にも、箝口令が出されていて・・・は、話してあげられないの」

 

「なんだって?私の方にも何かあったの?」

 

「えっ、綾ちゃんにまで?」

 

椿とわら子の間に何か関係性はあると薄々思ってはいたが、まさか私自身の方まで箝口令が敷かれる事が起こっていたのは予想外だった。

 

だが、それについては正直どうでも良い。椿の事の方が最重要だ。

 

椿の過去に何かあったかもしれないと、そう聞いた事で底知れぬ不安が込み上げてしまうが・・・でも、私は椿にとっての"初めての親友"だ。

まだ彼女から信頼されている以上は、離れる訳にはいかない。

 

「あっ・・・椿ちゃんに綾ちゃん、そんなに思い詰めた顔をしなくても大丈夫だよ。2人と私との事は、そんなに大した事じゃないから。椿ちゃんは"神妖の力"の事で、綾ちゃんは"烏森の力"の事だから」

 

「いや、それ結構重要そうな話だと思うけど!?」

 

それに私が持っている"視界に写った情報を得る力"の事についても何か知っているのだろうか?思いっきり"烏森の力"とか言ってしまっているし・・・その上、あの4人も驚いて私達を見てきていたから、ひょっとしたら私の出自はとんでもない所だったのかもしれない。

 

何にしても、私と椿の過去を知るのにはまだまだ道は長そうだ。

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