私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
朝ごはんを食べた後、私と椿は嫌な予感が悪い形で的中してしまった事を互いに認識して、家の中を2手に分かれて警戒している。
その嫌な予感の正体は――微弱な妖気が複数、この家に向かって近づいてきていたのだ。
ソワソワして落ち着きなく動く私達に、白狐さんは心配そうに声をかけてくる。
『椿に綾よ・・・本当に、滅幻宗か亰嗟の連中が来るのか?』
「白狐さん、私と椿の妖気の感知能力が高い事を忘れないでよ?それが敵かどうかまでは知らないけど、こっちに来ているのは確かなんだから」
「うん、僕の方も間違いないよ。どっちからかまでは分からない・・・けど、確実にこの家に向かって来ているんだ」
つつ、と冷や汗が背中を伝うのを感じる。
恐らく、2つの組織が共通して狙っているのは・・・何らかの理由で連中から重要視されている椿のハズだ。私の方も狙われているといえば狙われているかもしれないが、それは恐らく"処刑人"と呼ばれている半分人間離れした見た目のクソ女だけが執着しているような気がする。
何にせよ、こうして来る事さえ分かっていれば、襲撃に警戒して身構えられるというものだ。
『しかし、黒狐の奴は全く情けないのぅ』
「まさか、椿のアレでぶっ倒れるなんてね・・・」
なお、全く関係ない話としては、広間の方で黒狐さんが椿から"女の子っぽい事"を試された結果、殺人事件でも起こったかのような鼻血を出してうつ伏せに倒れている。ちなみに、その"女の子っぽい事"というのは黒狐さんの腕への頬擦りの事である。
「あ、綾ちゃんも白狐さんも恥ずかしいから忘れてよ・・・」
まぁ、それでぶっ倒れるとは流石は妙に変態な黒狐さんだといった所だろうか。
『ふっ、我ならこの程度は楽々耐えられるぞ?』
「「ふ〜ん・・・」」
そう言っている白狐さんも、椿にやって欲しそうな眼差しを向けているのはバレバレだ。勘づかれたのか、すぐに目を逸らされたけど。
――だが次の瞬間、突然わら子の部屋がある辺りの方から爆発音が響いてきた!
『いかん、椿!綾!連中の狙いは座敷わらしだ!』
「えぇっ!そっちなの!?」
白狐さんが叫んだ事で私は事態を把握して焦りそうになる。
「くっ、しまった!まだ余裕あるからって油断し過ぎた!」
「でも待って、綾ちゃん。わら子ちゃんの部屋の方って確か・・・!」
私達は、すぐに爆発音がした部屋の方へ復活したばかりの黒狐さんを引っ張りながら向かった。
━━━━━━━━━━━━━━━
――わら子の部屋にて
急いで部屋へと到着した私達を待っていたのは、なんと既に襲撃者を撃退した4人の姿だった。そして、私達と同じように椿の祖父や家の妖怪達も助けに来ていたのだが、その光景に呆然としている。
『ふむ、心配いらなかったか』
白狐さんが納得した様子で呟いた。
それにしても、4人がこれだけ強いとは流石に予想していなかった。発している気迫からも隙が見つからない程に張り詰めているし。
「ふん、この程度の強さで座敷様を攫おうなど・・・片腹痛いな」
「龍花、油断は禁物だ。まだコイツらに指示を出している奴が、周囲にいるかもしれない」
打ち倒されて気絶している襲撃者の首に青龍刀を当てる龍花へ、鉄甲付きの鉤爪を付けた虎羽が注意を促す。どうやら彼女達4人を見分けるにはリボン以外にも、使っている武器を見て判断出来そうだ。
龍花は装飾が施された青龍刀で、虎羽は鉄の鉤爪。朱雀は背中に燃えるような羽根らしい物体を背負って、玄葉は以前に見せたクリア板のような盾を宙に漂わせていた。そして、それらの武器からは妖気ではなく神妖の力に近いものを感じる。
なるほど、どうやら彼女達が使っている武器は四大守護神から授かった物のようだ。
そんな事を考えて私は1人納得していると、そこへ今度は塀の上から声が聞こえてきた。
「あらあら・・・全く、使えない奴らね〜。まぁ、しょうがないかしらね?相手が相手だもの」
「っ!アンタは一体!?」
その人物はゆっくりとした動きで塀から身を翻しつつ家の中へとやって来る。すぐさま私は椿とわら子の前に4人と共に立つ。
そいつはモジャモジャなロングの金髪で、いかにも高そうなスーツや腕時計、ネックレスを付けている。その見た目からして男なのは間違いないが・・・話し方がどうにも奇妙だ。
「それにしても4つ子なんて、良いわねぇ。それにそこの白髪ポニテの子も、どの子も私好み・・・んふふふ」
以前に依頼でバイトをした、居酒屋の店主の珠恵さんの事を思い出した。これは間違いない――
「そ、その言葉使い・・・まさか、ほ、本物のオカマだぁ!?」
私がドン引きするのを他所に4人の方は警戒した様子でオカマ男へ武器を構え、龍花が嫌そうな顔で尋ねた。
「あなたが、座敷様を攫う計画を立てた者ですか?」
「そうよ〜亰嗟の戦力として、ちゃんと使ってあげようと思ってね〜。こんな所に閉じ込めるより、よっぽど有意義な理由だと思わない?」
その質問にオカマ男は、さも当然といった様子で答えた。そんな個人の意思を無視した言い分に私は怒りを覚えるが、同じく怒る椿や私以上に彼への怒りを覚えたのは4人も同じようだった。
亰嗟の考えというのは、やはり私にはさっぱり理解が出来ないし共感すら出来ない。何故、同族であるハズの妖怪や半妖ですら道具のように扱うのだろうか。
「――その口を、今すぐ閉じろ!」
そしてオカマ男の言葉に龍花が真っ先に反応し、突き付けていた青龍刀を勢い良く横薙ぎに払う。オカマ男はその一撃を後ろへ軽く跳んで難なく避けると、再び気味の悪いクネクネとした動きでまたオカマっぽい事を言ってくる。
「んもぅ、怖いわねぇ〜折角の可愛い顔が台無しよ〜?」
なんというか、そのオカマオカマな動きを見ていると吐き気がしてくる程にイライラしてくる。
「ねぇ、アレ殴って大丈夫だよね?すっごくイライラしてんだけど、私」
「うん、多分大丈夫だと思うよ綾ちゃん。僕も見ててムカついてきたし…」
『2人共、落ち着け。今行くと彼奴らの攻撃に巻き込まれるぞ』
踏み出そうとしていた私達の肩を、黒狐さんがそっと叩いて止めてくれた。
言われてみれば、確かに一触即発かつ先日家を真っ二つにしたような人の戦いに参戦するのは危険なのは間違いない。
そう思った瞬間、今度は朱雀と虎羽がオカマ男に向かって攻撃を仕掛けた。
朱雀は高く空へと飛び上がり、背中の翼を大きく広げて火の粉が激しく舞うように炎の羽根をバラバラと散らす。その羽根は一瞬宙を舞った後にオカマ男を捕捉したようにそれぞれ一直線に矢の如く撃ち出された。
そこへ更に虎羽が朱雀の放った羽根を、まるで何処へ飛んで来るかが分かっているかのように目にも止まらぬ速さで駆け抜けて、気が着けばオカマ男の目前まで迫っていたのだ。
「くらえ!!」
そして虎羽の鉄爪による鋭い突きが繰り出されたが、オカマ男はヒラリヒラリと蝶が翔ぶような動きで2人の攻撃を簡単に避ける。
あんな範囲の攻撃に加えて、一瞬で近づいてからの攻撃まで回避するなんて・・・あのオカマ男、とんでもない実力を持っているようだ。
「あっぶないわねぇ、乙女の肌に傷を付ける気?あっ、もう〜火の粉が掠ってたわ。火傷してるじゃないの、もう〜」
それにしても、先程からオカマ男は妙に戦闘に対して気迫を感じない・・・というか、やる気があるかすらも怪しい。しかも、此方をイライラさせるような言葉ばかり喋っているし・・・いや、これはまさか。なんか嫌な予感がする。
「ふっ、そうやって余裕で突っ立っていれば良いわ!」
私がオカマ男の違和感に気づいて、それを知らせようとした瞬間には、龍花は青龍刀を掲げて力を溜め切っていた頃だった。さっき朱雀と虎羽の2人が攻撃を仕掛けたのも、どうやら龍花が大技を出す為の時間稼ぎだったらしい。
「白狐さ――!」
椿もオカマ男の違和感に気づいたのか、すぐさま白狐さんへ声をかけた・・・だが。
「散れ、身の程知らずの賊が!守護青龍奥義、"散華(さんげ)の舞い"!!」
それを遮るように龍花が高らかな声を上げ、掲げていた青龍刀を強く振り下ろした。
すると、その切っ先から青よりも濃く、蒼よりも深い色の斬撃光が無数に現れてオカマ男を四方八方から切り裂こうと飛び出してきたのだ。
「きゃぁああ〜!私、ピ〜ンチ・・・なん、ちゃって☆・・・どりゃあ!!」
だが、そんな強力な龍花の攻撃は、オカマ男がわざとらしい演技から突如として野太い声で取り出した大きな斧の一撃によって簡単に掻き消されてしまう。
しかも、それだけに留まらず地面へと振り下ろされた一撃から、クレーターを作る程に大きな衝撃波と土塊が4人を襲った。
「あぁ!龍花さん!!」
「そんな・・・っ!」
椿と私が衝撃波の陰に飲み込まれてしまった龍花へ慌てて駆け寄ろうとするが、他の妖怪達は「なんだ、それくらいなら大丈夫か」といった様子で平然としていた。
『椿に綾、よく見よ。まだ1人居るだろう?"攻め"は不得手だが、"守り"は鉄壁の奴がな』
「へっ?あっ・・・」
「なんだって?まさか・・・」
私達が晴れていく土煙の向こうを見ると、そこには透明でありながら非常に分厚い壁で守られた無傷の4人の姿があった。
「この程度、私の盾を壊す事など出来ませんよ」
そう、私達はさっきまでの3人が攻撃をしていたせいで、玄葉の持つ不思議な盾の事をスッカリ忘れてしまっていたのだった。
もちろん私と椿はそれに気づいてしまい、今取り乱した事が途端に恥ずかしくなって互いに顔を真っ赤にして両手で隠したのであった。
うわぁ、めちゃくちゃ恥ずかしい・・・しかも、狐2人は椿の恥ずかしがる姿に微笑ましい顔をしているし。色んな意味でやだもう、この人達。
「あらあら、ざ〜んねん。貴方達の"負け"ね」
――だが次の瞬間、オカマ男の言葉で私達は4人に対して、更に信じられない事が起こっている事を目の当たりにした。
「な、なんですか!?これは!!」
なんと、4人の手足が石膏のように変化していき、その場から動けなくされてしまったのだ。空を飛んでいた朱雀も、手足が石化した重さからか耐えきれなくなって地面へと落ちてきてしまう。
「おかしいわねぇ・・・普通なら完全に石化するハズなのに、中途半端な所で止まるなんて。"コレ"の妖気が足りなかったのかしら〜?まぁ良いわ、目的は果たせそうだしね」
オカマ男が不思議そうに首を傾げながらも、得意げにサングラスを傾けて4人を眺める。
ひょっとすると、あのサングラスのせいで4人の手足が石化させられてしまったとでも言うのだろうか・・・?