私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第陸話 椿からヤンデレな気配を感じた件について

 

あのオカマ男がジッと4人を見た後に彼女達の手足が石化させられて身動きを取れなくされてしまった事を考えると、奴が付けているサングラスによるものであるのは間違い無さそうだ。あのサングラスからは妙な妖気を若干感じるし。

 

「見ただけで相手を石化させるって力、何処かで聞いた事があるような、ないような・・・」

 

「油断しないで、綾ちゃん。あのサングラス、ゴーゴンみたいな妖怪の妖具かもしれない」

 

「あら、良く分かったわね〜正解よ。そして、正解のついでに貴方達も動かないでくれるかしら?」

 

オカマ男が今度は私達の方へ振り向いてサングラスのフチに手をかけようとする。先程も触っていた所を見るに、どうやら自動で石化させるような感じでは無いようだ。

 

「――甘いわ!!」

 

その途端に私達が飛び退いて逃げようとする前に、椿の祖父が後ろから羽団扇を振るってつむじ風のような突風をオカマ男の方へと発生させた。

 

サングラスごとオカマ男を吹き飛ばさんとする勢いの強風だったが、それでも向こうはシッカリとサングラスを掴んだまま踏ん張って耐え切る。

 

「んなっ!?あんな強風をマトモに食らったのに吹き飛ばされないなんて!」

 

「おじいちゃん、アイツは・・・」

 

「あぁ、分かっとるわ・・・椿。アイツは半妖のようじゃな。何の半妖かは知らんが儂の突風を耐えおるとは、中々に強力な奴じゃの」

 

椿の祖父が私達の前に出てくると同時に、家の妖怪達全員が臨戦態勢を取ってオカマ男を睨みつける。普段こそ椿LOVEでうるさい狐2人も、今回の事には何時になく慎重なようだった。

 

「あ〜ん、こっわ〜い。皆そんなに睨まないで〜」

 

しかし、此方が圧倒的有利な状況にも関わらずオカマ男の方は相変わらず気持ち悪い動きでクネクネと女言葉を使っている。

 

・・・そもそもコイツ、こっちが過度に警戒し過ぎただけで本当は単なるアホなのではないだろうか?

 

「アンタには悪いけど、ここで捕まっててもらおうか!」

 

「は〜い残念〜全員、石化しといてね〜」

 

「なっ、早っ!?」

 

戦闘服姿に変身してオカマ男を捕まえようと構えた瞬間に、それよりも早く変な妖気がサングラスから発せられてしまう。

 

間に合ってくれ!と思ったが、それでもオカマ男まであと一歩といった所で私の手足もズッシリと重い石へと変えられてしまった。

 

「あ〜あ、面白くないわね・・・何これ。最強の妖怪も居るって聞いていたし、それに近い人達も戻ってきたっていうから、こんな所まで遊びに来たっていうのに〜」

 

「くそ・・・っ!」

 

「あらら、そんなに可愛い顔なのに駄目よ〜そんな汚い言葉遣いは?男の子に嫌われちゃうわよ?」

 

「余計なお世話だっつ〜の!」

 

何とか身体を動かせないかと身体中に力を入れてみるが、どうやら石化は身体の中まで固められてしまっているらしくビクとも動けない。

 

しかし――

 

「ん?あら?誰か1人足りないわね・・・」

 

「白狐爪撃!!」

 

「きゃあ!?ちょっと・・・何、アンタ!"なんで動けるの"!?」

 

「つ、椿!!」

 

なんとオカマ男の背後から不意打ちするようにして、上手い事あの石化の妖気から逃れた椿が攻撃を仕掛けてきたのだ。とはいえオカマ男もギリギリで攻撃を回避し、やはり簡単には倒させてくれないのを再認識させられる。

 

「綾ちゃん、無事?あの人から何か変な事とかされてないよね!?」

 

「い、いや特には・・・女の子なのに言葉遣いが悪いっては言われたけれども」

 

そして、椿だけがこうして動けている様子に私だけでなく他の皆も驚きで目を丸くしていた。

 

『つ、椿・・・お主、何故動ける?』

 

白狐さんが不思議そうに椿へ問いかけている内にも、オカマ男の方は何度もサングラスの横を押すように触って首を傾げていた。どうやら向こうにとっても予想外の出来事なようだ。

 

そして彼女は、オカマ男の仕草を見てキッと睨む。

 

「そっか、スイッチはそこだね。それと・・・そのサングラス。貴方のそれは本当にゴーゴンの妖具なの?」

 

「だから、なんで石化しないのよ!」

 

「全く、聞く耳持たずですか。僕が石化しないのは白狐さんの力を使って、"ある能力"を発動しているからなんだよ」

 

「"ある能力"?」

 

私が不思議そうに椿へ尋ねると、彼女は少しだけ振り返り「心配しないで」といった様子で笑顔を此方に向けた。

 

「そう、使い所が分からなくて今まで使ってなかったんだよね――例えるなら"状態異常を無効化する能力"ってものを、ね」

 

「「なんだって(ですって)!?」」

 

意外!それは初耳だった能力だ。

 

ついオカマ男と同時に驚いてしまったが、私達の後ろでも同じく驚いている声が聞こえた事から誰もそれについては知らなかったのだろう。

 

「って、それなら事前に何か対策を用意しといてよ椿〜!!」

 

「仕方ないじゃん、綾ちゃん!まさか石化させる力を使ってくるなんて思ってもなかったんだし――と、危ない!!」

 

ついついツッコミを入れてしまったが、オカマ男が大斧を振りかぶっているのを見て椿が動けない私を抱えて大きくジャンプして飛び退く。

 

それにしても、あのサングラスも大斧も手元に紙らしい物が見える事から、どうやら自在に収納が出来る札を使って隠していたようだ。そこだけは少しだけ羨ましく感じてしまう、もし私が持っていたら忘れやすい勉強道具とかを纏めて持っていきたい所だ。

 

「んふふ・・・良いわね、ちょっとは楽しめそう。貴方、名前は?」

 

オカマ男は気持ち悪い笑顔を浮かべながら椿へ尋ねる。それに対して彼女は視線を外す事なく、向こうに返事をした。

 

「相手に名前を聞く時は、まず自分からでしょ?」

 

その直前に、椿は私を抱えたまま"ある事"を耳打ちしてきた事を思い出す。

 

それは先程、皆が石化させられた共通点には全て"一瞬でもオカマ男から視線を外してしまった"からではないかという事だった。私もアイツを捕まえようとした瞬間に僅かながら周囲に他の敵が居ないかと視線を逸らしてしまったので、恐らくは彼女の言う通りなのだと思う。

 

「あら、それは失礼。私は亰嗟でナンバー2の男であり、ナンバー2の女でもある"あの方"の右腕的な存在。丘魔阿(おかまあ)よ!」

 

「いや、アンタがオカマなのは分かってるって!!」

 

「というか、そもそもオカマじゃなくてニューハーフなんじゃないですか、それ?」

 

「あら、よく知ってるわね〜そうよ、私はニューハーフ。オカマじゃないわよ〜」

 

「んん?でも、今さっきオカマって名乗って・・・」

 

「そうよ、丘魔阿よ」

 

なんだろう、なんか話が噛み合っていない気がしてきたのだが。

 

「ちょっと待って。まさかアンタ、ひょっとしなくても"オカマ"の方は名前って事か?」

 

「貴方、どうやらニューハーフとごっちゃになって勘違いしていたみたいね。良い?私の名前は"丘魔阿"、こうやって書くのよ〜」

 

そう言ってオカマ男もとい丘魔阿は適当に拾った木の棒で小石を操って私達へ自分の名前を形作って見せた。

 

ここでようやく私達はそれが名前である事に気付けたが、何にせよ変な名前である事に変わりは無い。

 

「ええ・・・ず、随分すごい名前だな〜」

 

「ややこしいね、これ」

 

「そうなのよ〜私の父親も"同族"でね。それで男の子が生まれたら、この名前を絶対に付けるんだって決めていたんですって。嫌になるわよ〜私はオカマじゃないんだから全く〜」

 

「うわぁ、そりゃとんでもないね。んじゃ、私もとりあえず自己紹介を・・・私は烏森 綾って名前だよ」

 

「ご、ご愁傷様ですね丘魔阿さん・・・あっ、僕は妖狐の椿です」

 

なんというか、緊張感があまり無い相手だからかついつい気が緩んでしまいそうだ。狙われてるかもしれないのに、椿と一緒に自己紹介までしてしまったし。

 

「あら、貴方達がそうなの?"ニューハーフの妖狐、椿"と"万物クラッシャー、綾"っていうのは〜」

 

「おい、ちょっと待てや何だそれ」

 

「その情報は何処からですか?僕と綾ちゃんはそんなんじゃないですよ!僕はちゃんとした女の子の妖狐だし、綾ちゃんだって・・・綾ちゃん・・・う〜ん?」

 

「えっ、なんでそこで否定しないの椿」

 

「だ、だって綾ちゃん・・・割と良く暴れてるイメージが、ね?」

 

「えっ!うっそーん!?」

 

「あら〜そっちの貴方は残念ね〜」

 

『お主ら、何をのほほんとしとるんじゃ・・・』

 

サラッと私の呼ばれ方が否定されなかった事に泣きそうだが、そんな戦闘中とは思えない様子に白狐さんは呆れてため息をついている。

 

とはいえ、私にはこれが椿の作戦である事を薄々感じ取っていた。

 

「あっ、そうだ。そのサングラス凄いね、ゴーゴンの力じゃないの?珍しいね〜」

 

「あ〜ら、お目が高いわね〜。そうよ、これはゴーゴンの・・・というよりは"グライアイ"の妖具の1つ、と言った方が良いかしらね」

 

「「グライアイ?」」

 

「ええ、三姉妹の魔女の事よ。その有名なゴーゴンはグライアイの姉妹とされているわね。まぁ、そもそもゴーゴン自体が三姉妹の設定ですし、かなり出自が曖昧な妖具と言えるわね〜。ちなみに、コレの能力は"見たら石化する"のと"視線を外したら石化する"力よ!こうやって両サイドのスイッチで切り替えるのよ〜」

 

丘魔阿はそう言って得意気にサングラスの縁を触った。なるほど・・・以前にオジサンや椿の祖父から海外にも妖怪のような存在が居ると聞いた事があったが、亰嗟がまさかそこまで手を広げているとは思ってもみなかった。

 

「んふふ、今やグローバル化の時代よ。このサングラスの様に、海外の妖怪の方がより強力な妖具をを持っている事が多いのよ〜!」

 

「へぇ〜、なんというか凄いですね・・・」

 

「確かに、海外の妖怪とか凄そうですよね〜」

 

「あら、貴方達分かってるじゃな〜い」

 

「ちょっと見ても良い?」

 

「私も、どうなってるのかって気になるな〜」

 

「良いわよ〜ほら、手元でもっと間近に見てみなさい」

 

え、ダメ元で椿と頼んでみたらアッサリいけちゃったよオイ。

 

それから丘魔阿からサングラスを持って来た椿と、そのサングラスの左右にスイッチがある事を確認する。

 

それにしても、あの丘魔阿とか言う奴は幾ら何でも間抜け過ぎやしないだろうか。

 

「どう?すごいでしょ〜う?って、あれ!?」

 

「今頃気付きました?本当に貴方、亰嗟のナンバー2なんですか?」

 

「や〜い、こんな私達の見え見えな嘘に引っかかってやんの〜!」

 

椿が舌をちょこっとだけ出してイタズラな笑みを浮かべ、私も石化しておらずに動かせる頭を全力で動かして丘魔阿をからかってやる。

 

「椿、それを壊して早く皆を元に!」

 

「うん、分かってるよ綾ちゃん!」

 

「待ちなさい!」

 

向こうが何かしてくる前に椿がサングラスを地面に叩きつけようとすると――なんと、その途端に丘魔阿はとんでもない事を言ってきたのだ。

 

「それを壊しても意味が無いわよ!その妖具で石化した者は、同じくそれを使わないと石化が解除出来ない仕様になってるのよ〜」

 

「なんだって!?」

 

「綾ちゃん、こんな奴の話に耳を貸さないで!」

 

「で、でも・・・もしアイツの言ってる事が本当だとしたら、石化してる私達はかなりヤバい事になるんだけど・・・」

 

「うっ・・・そ、そうだよね。もし白狐さんや黒狐さん、それに綾ちゃんや他の人が戻らなかったら・・・」

 

そうして椿と頭を傾げて考え込んでしまっていると、いつの間にか彼女の目から光が消えてハァハァした様子で涎まで出している。

あっ、これは何となくヤバい感じがするよ・・・例えるなら、椿からヤンデレな気配を感じた件について。

 

『椿、戦闘中に何を想像してるんだ』

 

『う、うむ。涎を垂らして、どんな想像をしとるのやら・・・』

 

「おーい、椿〜戻ってきて〜」

 

「あれっ!?ぼ、僕・・・涎出てました!?」

 

椿が慌てて服の裾で涎を拭いて項垂れる。

 

少なくとも、椿が石化を解けなかった時の事を深く考え過ぎちゃっていたのは良く分かったよ・・・だからって、顔をイチゴのように真っ赤にして恥ずかしがる程ではないと思うんだけどね。

 

「貴方達・・・いい度胸してるじゃないの。敵の目の前でさぁ〜」

 

何はともあれ、どうやら今のプチハプニングも手伝って丘魔阿を怒らせる事には成功したようだ。

 

「さぁ、それを今すぐ返しなさい。そして、貴方達2人も座敷わらしも皆攫っていくとするわ。と・く・に、貴方達は私を怒らせた・・・アジトでた〜っぷりと可愛がってあげるわよ〜」

 

しかし私達は、その瞬間に丘魔阿から背筋がゾクリとする程の怒気と妖気を感じ取った。

椿が頑張って彼から石化を解く方法を聞き出せれば良いのだが・・・こういう時に限って、私まで石化させられてしまった事がもどかしく思える。

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