私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
私の目の前に現れた金属の怪物が坊さんの攻撃をギリギリ防ぎ、そこへ白狐さんと黒狐さんも駆けつけて坊さんに対峙する。
まだ私の下では椿が痺れたように動けなくなっており、苦しそうな顔でポロポロと涙を流していた。
「ふむ・・・久方ぶりに呼び出されたかと思えば、中々とんでもない場面に呼んでくれたものよな。「我が主」よ」
「え?・・・どういう事?」
すると私達を守ってくれた怪物が口も無いのにスピーカーから出したような声を出した。その声は確かに、以前「電磁鬼」の襲撃を何とか退けた時に耳元で聞こえた声そのものだった。でも、久しぶりに会ったとはどういう事なのだろうか?私には全く覚えが無い。
「ぐ・・・妖怪の分際で!」
「この私の姿を妖怪と呼ぶか。一つ訂正して貰おう、私の名は「佐々木小次郎」。「鉄烏(てつがらす)」の佐々木小次郎と呼んでもらおうか!」
そして、かの有名な剣豪「佐々木小次郎」を名乗った怪物は長い刀を力ずくで振り抜いて、坊さんを大きく吹き飛ばす。
「すごい・・・」
「さて、そこの狐達よ。今が助ける好機だぞ」
『すまぬ!黒狐、まず椿と綾を!』
『おぉ、そうじゃった!大丈夫か、2人よ』
そのスキをついて、黒狐さんが私達へ駆けつけてくれた。そして椿の背中にそっと手を当てて何か呪文のような言葉を呟くと、椿の身体に起こっていた異常が徐々に収まっていったように見えた。
その後、彼が私にも同じようにすると、殴られて身体にジンジンと響いていた痛みが引いていくのを感じた。
「はぁ、はぁ・・・う、うぅぅ。何なの今の、誰なのアレ?」
「くっ・・・いきなり私達を殴ってくるって、相当頭イカれてんじゃないの!?」
普通に考えれば、今のこんな世界なら私達以外にも妖怪を倒す存在が居てもおかしくない。だが、あの坊さんのやり方は通常のそれを遥かに超えた、生命の危険をも及ぼすものだ。
『奴は少し特殊な宗派の坊主だ。・・・いや、宗派も無いか。離別させられたからな。独自で勝手に活動しとる、坊主の組織みたいなものだ』
「つまりは宗教テロリストかよ・・・!」
特殊、どころか恐らく白狐さんや黒狐さんのような能力を使って正義の為にとか言って暴走している。私には殺気立つあの坊さんがそんな風にしか見えなかった。
椿は完全に怯えて子犬のようになってしまっている。傍から見たら、どちらが悪かなんて明白だ。
「大人しく帰ってくれるかと思ったが、残念。まだやる気のようだな」
「ふん。滅幻宗の名に置いて、貴様達妖怪は滅する」
それがアイツの属する宗派・・・もとい組織の名前らしい。椿が訝しげに黒狐さんへ質問する。
「何?今のめつ・・・何とかって?」
『奴らが勝手に名乗っておる宗派じゃ。だが知っての通り、そんな宗派は無い。あくまで自分達のしている事を正当化する為に、そう名乗っとるだけじゃ』
「これだから宗教ってのは・・・!」
「なんだか厨二病みたいですね」
すると私達の言葉に向こうは憤りを感じたのか、懐から封印する札みたいな物を取り出し指に挟んで顔の正面でお経を唱え始める。
やはりというべきか、そのお経も聞いた事すらないもので、それを唱え終えてから札を白狐さんに向けてそれを矢のように放つ。すると、その札からとんでもない勢いの突風が周囲に吹き荒れて私達に襲いかかってきた!
「くっ・・・!なんて風!」
「うっ!わっ、た・・・な、何これ!」
『しっかりと我に捕まっておけ、2人とも!』
私と椿は必死に黒狐さんへ掴まり、強風に流されないよう耐え続ける。白狐さんと小次郎は飛び上がって、風の渦から抜け出して坊さんへそれぞれ攻撃の手を加えようとする。
だけど、その直前に坊さんはダンベルみたいな仏具を2人へ投げつけてきた!
敵の心の声が読めた事で私が叫ぼうとするも、それよりも投げられたスピードが早く2人はギリギリの所で攻撃を避けた。
この能力さえあれば敵の行動を先読みして何とか逃げられるかもって思ったけど、そうそう上手くはいかなさそうだ。
『白狐!そいつを、あの変な奴と協力して抑えとけ!此方は2人を連れて逃げる!』
『承知した!しっかりと椿を守れよ、黒狐!』
黒狐さんが一気に走り出して学校の塀を飛び越える事で、一度この場から離脱しようと試みる。
しかし、次の瞬間に私は坊さんの心の声を聞いた。此方へ何としてでも追いつき、決して逃がすつもりが無い事――そして椿だけを最優先で狙っている声を。
私はさっきと同じようにして椿を守るべく叫んだ。
「お願い、小次郎!私達を助けて!」
しかし、それよりも早く坊さんが追いつき再び杖を振りかぶった。今度は私と同じく心の声が聞こえる椿が叫ぶ。
「黒狐さん!右に早く避けて!」
『何っ!?』
危うい所で黒狐さんがその攻撃を回避し、坊さんは今の攻撃が命中しなかった事に驚いているようだった。
「貰ったッ!!」
「ふん・・・」
だが続けて追いついてきた小次郎の攻撃を難無く避けるくらいには余裕があったらしく、横薙ぎに放たれた鋭い斬撃から逃れた。そこへ更に白狐さんも到着し、爪で攻撃を仕掛けるが杖で防がれてしまう。
『白狐!何をしとるんじゃ!』
『すまん!思った以上に強力なものを持っておったわい!こやつ、下っ端ではないぞ!』
それを聞いて私は一気に不安を感じた。
本当に勝てるんだろうか、こんな強力な敵に――と。
「なるほど・・・首を落とすつもりだったが、どうりで尽く避けられる訳よの」
「こ、小次郎・・・私達は無事に勝てるの?」
「さあな。少なくともタダで勝たせてくれる相手では無いだろうな、主よ」
すると突然、椿の様子が急変し頭をかかえる。こんな時に、またあの頭痛が起こるなんて!
「あっ、うぅぅ!」
『なっ!どうしたんじゃ、椿!?』
『おい、椿!しっかりせえ!つば――』
白狐さんと黒狐さんが必死に椿へ叫んだ、その時。スッと椿の顔がまるで別人になったように変化して、ハッキリとした言葉で呪文を唱えた。
「――妖異顕現、黒焔狐火」
彼女の作った手の形の狐から、黒い炎の塊が放たれて坊さんへ直撃する。
「なっ!?これは――ぐぅお!」
一瞬で火だるまとなった坊さんから私は視線を椿へ戻す。すると彼女の姿がまるっきり変わっており、顔は大人びた雰囲気を帯びた自信に満ちた目へ、狐の耳と尻尾が真っ黒く変化していたのだ。
「え、つ・・・椿?」
だが彼女はその異様な姿からすぐに戻って、意識が薄れて倒れかけたところを黒狐さんに抱きかかえられた。
『椿、椿!!なんじゃ、その邪気は!?』
「えっ?あれ?こ、黒狐さん・・・?」
「元に戻った・・・?あっ!あの坊さんは!?」
ふと今はそんな事で呆けている場合じゃないのを思い出して、慌てて坊さんの方を見た。
「ぬぅ!!くっ!」
どうやら、さっき黒い椿が放った時の炎が全然消えていないらしく、必死に燃える衣服を叩いている。
だが次の瞬間、再び私達の周囲へ突風が発生したかと思ったら今度は坊さんの方へとそれが向かっていった。
「やれやれ・・・子供達の学舎で血なまぐさいのは勘弁して欲しいものだね。このナマクラ坊主」
私達はその風がやって来た方向へ振り返る。そして私は喜びの声をあげた。
「校長先生!カナ!」
そこには先程学校へ戻ったカナと、いつもみたく飄々としながらも目元は確かに怒っている校長先生が立っていた。