私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第拾肆話 同じ親友として

――数日後

 

ゆっくり回復して身体の調子がスッカリ戻った私と椿はカナから"話したい事がある"と呼ばれて、ペットである霊狐のレイちゃんに乗って待ち合わせの場所となっている公園へと向かっていた。

 

今回、狐2人は旅行に行っていた間に溜まっていた任務を片付けなければいけないそうで、朝から相当忙しそうな様子で来られなかった。

 

何にせよ、こうしてカナが私と椿を呼んでくれたという事は、きっと彼女は旅行の時に約束した"カナ自身の過去"について話す決意が出来たという事だろう。

 

「しっかし・・・8月になったからか、この前以上に暑くて溶けそうだよ〜椿〜」

 

「うぅぅ、あんまり僕にくっつかないでよ綾ちゃ〜ん・・・僕だって、フサフサの尻尾があるせいで余計に暑く感じるんだからさ〜」

 

「こんな事なら氷雨さんか氷魚ちゃん、それに雪の3人の中から誰かにでも一緒に来てもらえば良かったよ・・・」

 

「いやいや、3人とも夏が駄目で家でダウンしてたよ・・・後でアイスでも買っていく?」

 

「マジで!?よっしゃ、それなら我慢するわ〜!」

 

そんな暑さに耐えながら少しでも涼しくなるようにと、レイちゃんにより高く空を飛んでもらうよう指示をする。

それから、椿が自身の中に居る妲己さんへ声をかけた。

 

「それにしても・・・妲己さ〜ん?箝口令は解けたよ〜何で僕の過去の事、教えてくれないんですか?」

 

「そういえば、椿の言う通りだね。それに妲己さん、思い出せた私の過去にも関わってたみたいだし、少しでも良いから教えてくださいよ〜」

 

【2人共、うるさいわねぇ・・・っていうか、良いの?私の悪事なんかを聞いちゃってさ。私がやった事を聞いたら、アンタ達は警戒するでしょう?それが困――って、アンタ達何ニヤニヤしているの!?】

 

「「別に〜?」」

 

妲己さんが無理に悪人ムーブをしようとするので、私達はわざとらしくイタズラな笑みを浮かべて見せた。

 

【ちょっと、椿に綾。さっきサラッと言ってたけど、まさかアンタ達・・・どっちも私と会った所の記憶まで戻っているんじゃ・・・】

 

「戻ってませ〜ん」

 

「そりゃ聞き間違いじゃないか、妲己さん?」

 

【嘘つきなさ〜い!!】

 

まぁ、ぶっちゃけた話・・・椿も私も、妲己さんの事については出会った直後までしか思い出せていないので、彼女が本当は何をしたのかは分からないのだが。とはいえ、まだまだ完全に気を許してもいないので現在はグレーゾーン・・・といった所だ。

 

【こら〜!椿!身体乗っ取るよ!】

 

「出来るならやってみてよ?」

 

妲己さんがそう言うので、椿は巾着袋からあの刀剣を取り出して見せた。これからは何が起こってもおかしくないと判断した私達は、こうして普段から刀剣や防具を持ち歩くようにしたのである。

 

【あっ、ちょっと・・・ま、待ちなさい。2人共卑怯よ、それは。くっ・・・アンタの身体の中にいるのに、なんで記憶を覗けないのかしら】

 

「それは僕の魂まで一緒にはなっていないからでしょ?」

 

「地味にサラッと怖い事言わないでよ、椿・・・」

 

確かに妲己さんが椿と記憶を共有出来ていない点については正しいのだが、それはそれで私は"実は呼び出している時は、妖気を介して魂が小次郎と繋がっていたのでは"と考えてしまって怖くなってしまう。なるほど、それなら妲己さんも私が小次郎と切り離された状態が危険だったと言いたくなる話だ。

 

「それはそうと・・・カナと待ち合わせしてる公園の上に着いたね、えらいぞ〜流石だレイちゃん!」

 

「でも、どうしてカナちゃんは伏見にある公園じゃなくて、市内の京都御所に近い所にしたんだろう?カナちゃんの家からは遠くなるだろうし、それならそれで僕達が迎えに行ったのに・・・」

 

「さぁ?カナに何か理由があるから、そこを選んだって事じゃないか?――っと、そう言ってたらカナを見つけた。周りに人は居ないっぽいし、一気に降下しても大丈夫そうだよ、レイちゃん!」

 

「ムキュッ!」

 

「わぁぁぁあ!綾ちゃん、高い所は駄目なんじゃなかったの〜!?」

 

「そんなのは、とっくに慣れたねヒャッホーイ!!」

 

そんなこんなでレイちゃんを急降下させた私達はレイちゃんが着地する直前で飛び降りて、地面に足が着くと同時にカナへと声をかけた。

 

「おーっす、カナ!ちょっとだけ遅くなっちゃった!」

 

「カナちゃん、お待たせ!」

 

「きゃっ!?えっ?椿ちゃん、綾さん!?2人共、なんて方法で降りて来ているの!」

 

「ごめん、カナちゃん・・・綾ちゃんが勝手にレイちゃんを急降下させるから・・・」

 

「だって私も椿も妖異変化の力とかで、あれくらいの高さなら何の問題も無いと思ってさ〜」

 

「周りに人が居なかったとはいえ、何かあったらどうするの!?危ないでしょ!!」

 

「・・・はい、すいません」

 

「ご、ごめんなさい・・・」

 

時間に間に合うようにと頑張ったら、逆に怒られてしまった。そして、こんな怒られ方をしているとカナが私と椿の姉になったような感じさえしてきてしまう。・・・今回は本当に私のせいなのだが。

 

すると、そんな私達がショボンと反省している姿を見てかカナは顔に手を当てて悶えているような声を漏らしていた。おい、ちょっと欲望のストッパーが緩いぞ、この子。

 

「くっ・・・ま、まぁ、良いよ。2人共、とにかく行こうか」

 

「ほいほ〜い。カナ、大丈夫か?」

 

「だ、大丈夫大丈夫!ちょ〜っと2人が可愛いなん・・・いや、何でもないよ!」

 

「ほ〜ん・・・」

 

そう言って先を進んでいくカナであったが、私達の姿に悶えてしまっているのは一目瞭然だ。しかも、歩いている時ですら椿の尻尾がユラユラ揺れているのを見て「可愛いな〜」なんて小さな声まで聞こえて来ている始末だし。

 

公園近くの道を歩きながら、椿がカナへ質問する。

 

「それにしてもカナちゃん、何でこんな遠い所に?ここに何かあるの?」

 

「・・・」

 

「おーい、カナー?」

 

返事が無い、ただの変態のようだ。

 

・・・なんて冗談はさておいて、カナは本当に何処か上の空といった様子でぼうっと歩いていたので、私と椿は「これは危ないな」と思い、互いに頷いてから――

 

「ニャ〜ン・・・」

 

「キュ、キュ〜ン・・・」

 

「ちょっ・・・!?」

 

耳元で可愛らしく動物っぽい声を出せば、幾らカナでもすぐさま普段通りに戻るかと実行してみた。

 

結果は・・・こうかはばつぐんだ!

 

その効果の程というと、カナが一瞬で鼻血を噴き出しかけていたくらいだ。

とはいえ元は男だった椿は勿論の事、私ですら非常に羞恥心を押し殺して実行に移したので、例え"構わん、やれ"と言われても1日1回が限界である。雪や里子にも効きそうだし、椿ならそこに狐2人も加わってもおかしくない効力だ。

 

――それからしばらくして

 

何とか復活したカナへ案内されて住宅地を進んでいくと、ある場所で彼女が止まって私達の方に振り向く。

 

その場所は家が建っていない更地でありながら、何年も買い手がつかなかった為か古ぼけた『売地』の看板が斜めに立っている場所だった。

 

「カナちゃん、ここって・・・」

 

「カナ・・・まさか?」

 

「うん、そうだよ。私が小さい頃――ここにあった家で、私はお父さんとお母さんの3人で暮らしていたの」

 

此方から見ても重々しく感じるような、何ともいえない表情を浮かべながらカナは自身の過去について話し始めた。

 

この場所が空き地になっている事、カナが不安げな様子で私達を見ている事から察するに、きっと彼女自身にとって良くない事が起こったのは疑いようが無い。

 

「椿ちゃん、綾さん・・・私は悪い子だよ。それでも・・・良いの?」

 

カナはそう尋ねてくるが、椿も私も彼女を拒否するつもりは無かった。例えどんな過去があろうと椿や私の身を案じてくれている今のカナは、私達にとっては絶対に変わる事のない"親友"なのだ。

 

「はぁ・・・今更それを私と椿に聞くのかよ?普段はちょっとアレだけど、椿の事を信頼してくれているんだから、その親友である私だってカナを信頼しているさ。だから、同じ親友としてカナの心を裏切ったりするつもりなんて無いよ」

 

「カナちゃん、僕も・・・まだ全部ではないけど、過去の事を教えたよね。それでもカナちゃんは、僕から離れないで居てくれたから、僕だって綾ちゃんと同じくカナちゃんから離れたりしないよ」

 

「ふふ・・・ありがとう、椿ちゃん、綾さん。2人共、大好きだよ」

 

カナから優しい笑顔で再び同じような事を言われて、私も椿もついつい顔を赤らめてしまった。

椿と初めて知り合った時もそうだったが、こうして真っ直ぐな好意をぶつけられるのには私自身、実は結構慣れていないのかもしれない。

 

きっと、以前にいじめを受けていた椿も、そういう私と同じような気持ちなのだろう。

 

「それと・・・ごめんね。私ね、2人に1つだけ嘘をついていたの」

 

「ん?嘘?どういう意味だよ、そりゃ?」

 

「えっ?それって・・・?」

 

「実はね、私――輪入道の半妖じゃないの」

 

そのカナの言葉に、私は少しだけ動揺する。

 

どういう事だろうか・・・カナとそんな話をしていた時だって、彼女の目には嘘をついていたような感じは見られなかったし、妖具だってちゃんと扱えていたではないか。

 

「なぁ、カナ・・・もっと分かりやすく説明してくれないか?」

 

「うん・・・私ね、自分が何の半妖か・・・それが分からないの」

 

「なるほどな・・・」

 

カナの返答で、やっと私も椿も彼女の言っている事が理解出来た。

 

要するに、自分自身が何の半妖か分からないのが怖くて、それで例え嘘であっても自分の心を保てるようにと"輪入道の半妖"であると思い込むようになったのだろう。

だが、そうしている内に彼女自身ですら嘘を言っている自覚が無くなってきて、不安になって私達へと話す事にしたのかもしれない。

 

「私、拭いきれないの。何の半妖か分からない恐怖が・・・だって、私は・・・お父さんを――殺したから」

 

「カナちゃん・・・」

 

「カナ・・・」

 

私はカナへかける言葉を見失ってしまう。

 

こんな事を話すのは、きっと彼女自身が辛かったからなのだろう。今にも泣き崩れてしまいそうな、そんな表情に私は何と慰めの言葉をかけてあげれば良いのかが分からない。

 

すると何も出来ないでいる私より先に、椿がカナの前へと歩み出て頭を撫でた。

 

「話して、カナちゃん自身の事。それをおじいちゃんに相談すれば何か分かるかもしれないし、僕と綾ちゃんは絶対に逃げないよ」

 

「くっ・・・ぬっ、うぅ・・・」

 

その椿の言葉で、私もカナへかけるべき言葉を見つける事が出来た。彼女は、これまでずっと1人で悩みを抱えてきたのだ。

それならば、私達には彼女を助けるのが"親友"というものではないだろうか。

 

「椿の言う通り、1人で全部我慢しなくたって良いよ。どんな事があったって、絶対に私達はカナの味方だ。椿の尻尾をモフモフする権利を賭けたって良い」

 

「ちょ、綾ちゃん!真剣な話をしているのに、何変な事言ってるのさ!?」

 

「ま、私からしたら、それくらい本気だって事よ」

 

その私達のやり取りを見て、カナは少し元気が戻ったらしく小さな笑みを向けてくれた。

 

「もう・・・椿ちゃんも、綾さんも。何で貴方達は、いちいちそんなに可愛いのかな」

 

「それは僕にも分かりません。綾ちゃんが可愛いのは、何となく分かるけどね」

 

「ちょぉい!?え、私って意外と誰からも可愛いって思われてたりする訳!?」

 

なんか余りに意外過ぎる事を言われてビックリしてしまったが、そのお陰でカナは私達を"親友"としての眼差しで自分の過去を話す覚悟が出来たようだった。

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