私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第弐拾話 話の温度差が酷くない?

 

――それからしばらくして

 

私達は校長先生以外の人を連れ、椿の祖父の家へと戻ってきた。

 

ところで、カナの母親からナイフで刺されたと思っていた椿は、なんと白狐さんの力を解放して防御力を上げていた為に無傷だったのだ。お陰で、先程その事を思い出した私が椿の服を慌てて捲りあげた事で、顔を真っ赤にした彼女から反射的に引っぱたかれてしまった。すまぬ、椿・・・でも本当に心配していたから怪我が無くて良かったけどね。

 

そして校長先生はと言うと、どういう訳か非常に満足した顔をして何処かへと行ってしまったのだが・・・結局、カナを煽るような事をしたり私達を試すような物言いをしたりで何がしたかったのか分からなかった。やっぱり私にとっては苦手な人だ。

 

帰ってくる頃には既に日が傾いて夕方となっており、家が山間部にあるのでカナカナカナ・・・というヒグラシの鳴き声が聴こえる。京都市内の都会な賑やかさも良いが、やっぱり私にはこういう田舎の静けさの方がノンビリ出来て好きだ。

 

「「ただいま〜」」

 

私と椿が皆の先頭となって玄関の扉を開ける。

なんとなく嫌な予感はしているものの、今回ばかりはこんなに遅くなるなんて、1ミリも予想もしていなかったので仕方ない。

 

『おぉ、椿に綾よ。無事に帰って来たか。して、半妖の娘とは・・・あ〜、我も歳か?何か、有り得ない光景が・・・』

 

「止めて白狐さん、その反応は私に効く」

 

案の定というか、出迎えてくれた白狐さんも嬉しそうな様子が一瞬で年寄りの爺さんみたいな反応になってしまった。目をしばたかせてから二度見した挙句、自身の目頭をグッと押さえる程にビックリするのは分かるが。

何せ、私達は"ある人物"を連れて来ている訳ですし。それもリード付きの首輪で引っ張られているという所謂"猿まわし"みたいな絵面で・・・ね。

 

『おっ、帰って来たか2人と・・・っ!?』

 

そこへ黒狐さんも出迎えたが、こっちはガチーン!といった具合に固まってしまった。それを見て椿は私の後ろで「あ〜・・・」と言いたげに頭を抱えている。

 

すると黒狐さんの後ろから、更に更に今度は美亜まで玄関にやって来た。

 

「あら、アンタ達。下僕増やしたの?」

 

「いや違うっての美亜!何、その"ペット増やしたの?"的な軽いノリは!?」

 

「下僕じゃないですよ、美亜ちゃん。ちょっと色んな事情があって、その・・・犬が2匹に増えちゃいました」

 

「おい、翼!誰が犬だ!!お前、なんか性格変わったか!?まさか綾の影響じゃないだろうな!?」

 

「確かに犬って椿の言い方には私も同感だけどサラッとヒデェ!今度は鼻っ柱を平らにしてやんぞ湯口先輩!!」

 

誰か、この場にツッコミが出来る人は居ないのか〜・・・あ、私くらいしかいないや。

 

「ふふ、犬・・・うん、良い響きだ」

 

「杉野君・・・」

 

そして犬吠崎さん、そいつには構わない方が良いと思います。"鬼に金棒"ならぬ"マゾに首輪"って状態ですから・・・って言っても、この家にいる鬼は"鬼に美味い酒"とか"鬼に小説のネタ"の方が似合っているんですがね!

やだもう、今更ながら人間の知り合いより妖怪の知り合いが多くなってるよ〜・・・しかも一癖どころじゃない人ばかりだし。

 

なお、杉野さんは私がそうやって遠い目をしている間に、巾着袋に入っていたもう1つの首輪を見つけて自分で身に付けてました。もうどうにでもなーれ。

 

「あっ・・・えっと、ごめん。何処から説明したら良いんだろう・・・?」

 

「カナは悪くないよ、これは誰にも説明出来ないから・・・」

 

普段こそ椿や私に甘えまくってくるカナですら、ポカーンとして戸惑ってしまっているのだ。

これ最初っから説明した方が、かえって皆には分かりやすいかもしれないね。

 

「おっと、でも説明する前に・・・」

 

「うん、そうだね綾ちゃん。里子ちゃ〜ん、居る?」

 

「はいは〜い!椿ちゃん、綾ちゃん、お帰り〜!そして呼んだ〜?」

 

はい、里子は相変わらず元気でよろしいですな。尻尾までパタパタ振っちゃって・・・

 

だ!け!ど!!

 

「でぇい!」

 

「えい!」

 

私は即座に儀礼衣装に変身し、白狐さんの力を解放した椿と同時に一瞬で里子の後ろへ回って、ギュッ!と彼女の尻尾を軽く引っ張る。

 

「キャゥン!?」

 

その後、突然尻尾を握られた事でビックリしたのか、里子はプルプル震えながら涙目で私達の方を振り向いてきた。

 

「つ、椿ちゃんに綾ちゃん・・・な、何を・・・?」

 

「おぅしらばっくれてもネタは上がってるんですよ、里子さんや?」

 

「それ何時の時代の任侠物ですか、綾ちゃんは・・・。僕達の巾着袋に入ってたハズの縄。アレを首輪に取り替えたの、もしかしなくても里子ちゃんだよね?」

 

「え・・・?えと、あの・・・」

 

「誤魔化そうとしても駄目だぞ〜」

 

「ひゃん!」

 

里子が目を泳がせて適当に嘘をつこうとしていたので、私は更に少し強く尻尾を引っ張った。

普段こそ理不尽な理由ではキレたりしない私ではあるが、今回の里子の所業は流石にイカンと思っている。なんせ、隣で椿が"ゴゴゴ・・・"という擬音が見えそうなくらいに怒っているくらいなのだ。

しかも笑顔のまま、そんなオーラを発しているので怒っている側の私まで胃が痛くなってきたぞ。

 

「いい加減、白状したらどうなんだ〜?」

 

「あ・・・えと、その、ごめんなさい!まさか他の人に使うとは思わなかったよぉ!それは"隷属の首輪"って妖具なの」

 

「"隷属の首輪"だって?」

 

「ま、まさか・・・」

 

そう私が首を傾げていると、それを確かめるかのように椿は首輪を付けている2人へ言葉を発した。

 

「3回、ぐるっと回ってワンって言って」

 

すると椿の命令通り、2人はその場で3回回って――

 

「「ワン!」」

 

「って、何させてやがんだぁ!!」

 

「うわぉ、スゲー効果だな〜・・・」

 

湯口先輩が変な事をさせられてキレてしまったが、これは確かに強制的に命令を聞かせるという点では縄よりも効果的かもしれない。

それに、見た目や行動的な意味でも屈辱を味あわせられるし・・・まぁ今のは笑ったら駄目だ、クク。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

――少しして

 

私達は椿の祖父の部屋へと集まり、椿の祖父へ公園であった事を1から10まで全部説明した。

 

そして湯口先輩はというと、別な部屋で零課の2人から取り調べを受けている・・・とはいえ一応公安の組織だからなのか、彼からの黙秘権で全て聞き出す事は出来ないかもしれないとの話だった。

 

私達の話が終わって一段落すると、椿の祖父は少し困ったような表情を椿と私へ向けてくる。

 

「ふむ・・・なるほどの。しかし椿に綾、お前さん達はもう少し警戒心を持て。今回の事も、一歩間違えたら危険だったのではないか?」

 

「うぐ・・・ごめんなさい」

 

「ぐぇ・・・反省してます」

 

こればかりは私も椿も返す言葉が無い。

 

まさか彼女の祖父から最初に言われる事になるとは思っていなかったが、今後は気を付けるようにしなくては。

 

「次に・・・お前さん。辻中 香苗と言ったかの?」

 

「あっ、はい!」

 

その次に椿の祖父が声をかけたのはカナだ。彼はいつの間にか天狗の姿となって真剣な眼差しを彼女へと向けている。

それにしても、やはり椿の祖父が放つ眼力は怒られている訳ではないのに、何か見透かされている気がして身体が緊張してしまいそうだ。

カナもそんな眼差しを向けられているからか、緊張するあまり、私と椿の手を握った状態でガチガチに固まってしまっているし。

 

それを見かねて、椿がフォローに入った。

 

「おじいちゃん、カナちゃんも怖がっているよ」

 

「ん?おぉ、すまんすまん。いや・・・まさかあやつが、しっかりと子を残しとるとは思わなくての」

 

「へぇ、カナのお父さんの事も知ってるなんて・・・流石は天狗の元締めってだけありますね、椿の爺さん」

 

「綾よ、そんなに褒めても何も出んぞ。とにかく香苗よ、お前さんからはとても懐かしい妖気を感じていたが、顔や雰囲気が全く違っとったからの。性格は・・・奴に似てなくもないが、今まで確信には至らなかったわい。しかし話を聞いて、間違いなく奴の子だと確信したわ」

 

「あの・・・お父さんと知り合いで?」

 

その椿の祖父の言葉に、カナは火が着いたような反応をして前のめりに身体を乗り出してきた。それでも、無意識からか私と椿の手は握ったままなのだが。

 

「知り合いなんてもんじゃないわい。奴とは同期として、かけがえのない友として、お互いに切磋琢磨した仲じゃ。お前さんの父は"炎狼(えんろう)"で間違いない」

 

「「「"炎狼"?」」」

 

その妖怪の名前に聞き覚えの無い私と椿は、同じく知らない様子のカナと一緒に首を傾げる。

 

「"炎狼"とは、"犬神"に属性を付与させた妖怪になりますね」

 

すると、部屋の入り口で警備するかのように座っていた守護4人姉妹の龍花と朱雀の中から、龍花の方が私達に分かりやすく説明を始めた。

それにしても、相変わらず彼女達を見分ける方法がポニーテールを結ぶリボンの色くらいしかないので、こうして見分けるだけでも一苦労だ。

 

椿の祖父は龍花に頷いてから、その話を引き継いで続けた。

 

「うむ。そもそも犬神という妖怪は、呪詛に使われる存在でな。その生み出し方は様々なのじゃが、共通しておるのは"負の感情"を与える事じゃ」

 

「マジで?随分と酷い事を思いつくんだな・・・」

 

私は椿と顔をしかめていると、そこへ美亜が目の色を変えてノリノリで話し始めてくる。

 

「まぁ、それの猫バージョンもあるくらいだし。ホント人間って呪いが好きよね〜」

 

「んなモン、思いつく奴も使う奴も余計に色々気にしすぎるから厄介な事に繋がると思うんだけどな。"人を呪わば飯二つ"って言うだろ?」

 

「え?そんな言葉あったかしら、綾?」

 

「それを言うなら"人を呪わば穴二つ"です、綾ちゃん・・・ご飯を用意してどうするんですか。それと、美亜ちゃんの言っているのって"猫神"だったっけ。中国にもそれに似た妖怪が居るって聞くし、それだけ動物や虫を利用した呪いを人間はやってきたって事だよね」

 

「なんだ、全然違うじゃないの綾」

 

「ぐ・・・と、とにかく椿の言う通り、あまり一般的には知られていないだけで、これも人類にとって"負の歴史"だよな〜・・・」

 

なんか後味が悪い方向へと話が逸れてしまったが、タイミング良く椿の祖父がゴホンと1度咳払いをして話を戻した。

 

「さて、"炎狼"は犬ではなく狼から生み出された妖怪じゃ。そして殺し方も違っており、犬神を生み出す方法とされる首を刎ねるやり方ではなく、生きたまま骨になるまで燃やしてしまうんじゃ。その時に呪いたい相手の写真を見せれば、燃やされた狼の霊魂がそいつの元へ行って火事を起こすとされとる」

 

「うっへぇ、胸糞悪くなる話・・・」

 

「時には呪いを成就する事が出来ず、何十年何百年と彷徨った結果に妖怪となる場合もある。香苗よ、お前さんの父もそのクチじゃ。初めて会った時こそ憎まれ口ばかりだったが、何時しか人間の手によって植え付けられた"負の感情"が消え去って穏やかになったからの」

 

ふと横を見ると、カナは椿の祖父の話をただただ何も言う事なく真剣に聞いていた。時々、少しだけ涙目になっている様子から、きっと彼女は自身の父親の事を思い出しているのだろう。

 

「妖怪の殆どはそうやって、人間の手によって生み出されてきた。それを"人に害する者"と無下にするのは如何なものかと思うぞ、滅幻宗の小僧よ」

 

椿の祖父が話を締めくくると同時に部屋の扉へ顔を向ける。私達もその方向へ視線をやると、そこには湯口先輩が複雑そうな表情を浮かべて零課の2人と共に立っていた。

 

うん、それを付けてしまった私が言うのも何なのだが・・・湯口先輩と杉野さんが首輪を付けてるせいで、話の温度差が酷くない?

 

一応、里子に首輪を外す為の鍵を探してもらってはいるのだが"沢山あるから時間がかかる"のだとか。おい、なんでそんなモン大量に持ってるんだ。

 

「ご主人、取り調べは終わった。予想した通り、本拠地の事や仲間の事は一切話さなかったよ」

 

「そうですか。ご苦労様です、杉野さ・・・げ、"下僕"の杉野さん」

 

そして期待した顔の杉野さんへ、椿は嫌々ながらも呼び名を訂正していた。そんな様子を見て、犬吠崎さんは微妙な表情で私にコソコソと話しかけてくる。

 

「綾ちゃん、杉野君のアレ・・・本当に大丈夫かしら?」

 

「多分、手遅れだと思いますけど。まぁ、本人がそれで良いってんなら・・・うわぁ」

 

その後に湯口先輩にも視線を向けてみるが残念ながら当然というべきか、椿にドン引きしながら軽蔑するような目をしていた。

 

「椿・・・まさか本当に?」

 

「くっ・・・僕だって好きで言ってるんじゃないよ、綾ちゃん!とにかく"回れ右して壁に突撃"!」

 

「えっ?ちょっ・・・待て!それはおかしいだろう翼、こら!ぐはっ!!」

 

おぉ〜怖い怖い・・・とりあえずアレを付けられてる内は、湯口先輩も迂闊な事は出来ないね。

 

と、思っていたら――

 

「おぉう・・・これは。中々に、良い刺激だ・・・」

 

首輪の命令が杉野さんにまで発動してるじゃないですかヤダー!

しかも思いっきり身体を大の字にして激突しに行っていたし・・・犬吠崎さんがため息ついて呆れるのも仕方ないよ。私だってヤダもん、あんな変態な相棒は。

 

そうして私と椿が杉野さんのダメダメさに引きつった笑いを浮かべていると、壁に顔をぶつけて赤くしながらも湯口先輩が私と椿の間へやって来た。

 

・・・何か真剣な表情だが、気になる話でもあるのだろうか?

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