私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
「久しぶりね、"処刑人"いえ・・・"烏森――」
「そんな名前はもう捨てた、今の私には吐き気のする思い出でしかないね。それで、何の用だ"協力者"さんよ?」
滅幻宗から貸し与えられた部屋で座禅を組んでいると、後ろから"協力者"である情報屋の女が声をかけてくる。
「"あの子"から"烏森の力"を取り戻したと聞いていたけれど、その後の調子はどうかしら?」
「ふん、ようやく身体に馴染み始めたって所だな。やはり"魂呼び"を出来るこの力、奪ってもそう簡単には扱いがキツそうだ」
"協力者"と話をする為に座禅を途中で止め、私は振り向いて胡座をかいた。部屋は自分の得物である"魔封じの鎌"と着替えの衣服以外には、集中力を限りなく研ぎ澄ます為に、蝋燭を1本立てた燭台を1つだけしか置いていない。
「なるほど、道理で最近は大人しかった訳ね。ところで一つ凶報なのだけど・・・玄空の義理の息子、湯口 靖が捕まったわ」
「なんだ、アイツが捕まっただけかよ。アンタの事だから、もっと悪い報せを持ってくるかと思っていたけどな。それにアイツは・・・私からしたら色々と探ってくる感じがして苦手だったからな」
「苦手、と言うと?」
"協力者"がまるで私の事をからかうかのようにフッと少し笑ってから首を横に振る。
「まぁ、ちょっと前の話なんだけどな――」
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――数日前
滅幻宗の所に入り浸るようになってから、毎朝行われる連中の今日の行動に関しての会議やら何やらを、私は普段のように柱にもたれかかって聞いていた。
初めこそは"妖怪を退治する気があるのか"等、血気盛んな奴らから色々と言われたりもしたのだが、私がそれから数体の妖怪の首を持って帰るようになってからは誰も何も言わなくなっていった。
そして、この日の会議も終わって私は自身の"滅幻宗としてのノルマ"を達成しに行こうとすると――
「待て、"処刑人"。俺から、ちょっと話がある」
「何だよ、靖・・・だっけ。幹部の1人の息子だからって、あんまり威張っても私は私のやりたいようにやらせてもらうだけだからな」
小言を言われるかと思って、そう嫌味混じりに靖へと返してやる。しかし、次に向こうが言ってきたのは私にとって予想外の話題だった。
「そんな事はどうでも良い。俺はただ、アンタと"烏森 綾"の間に何があったか・・・それを知りたいだけだ」
「なんだって?」
「簡単に言ってやる。"処刑人"、お前はどうしてそこまで"綾を殺す事に執着"しているんだ?」
私は靖の放った、そのふざけた言葉で一瞬で頭に血が上り、ガッと首を掴んで先程まで自分がもたれかかっていた柱へ押し付けた。
「ぐ・・・っ!」
「そんなモン、私に聞くんじゃねぇよクソガキが。私は"何としてでも烏森 綾を殺せ"、とそう指示を受けているだけだ」
「その、指示は・・・誰が、出してる?」
「お前、死にたいのか。これ以上探るようなら、幾ら幹部の息子だろうと――」
そう言って、首を押さえる力を強めようとした時。
「感心しませんねぇ・・・"烏森の家"から直接派遣されてきたという貴方が、まさかこんな小さな事で仲間割れを起こそうというのですか?」
「チッ・・・栄空か。運が良かったな、靖」
栄空から咎められた私は靖の首から手を離してそのまま両手を上げて、わざとらしく降伏のポーズを取る。
「靖君も、他人のプライバシーに土足で立ち入るものではありませんよ。君だって嫌でしょう?自分の過去の事を探られたりするのは」
「げほっ、ぐっ・・・す、すいません」
「分かれば良いのです。それと"処刑人"、今回は大きな行動を起こす事に予定が変更されました。それに伴って、貴方の力が必要です」
「あ〜はいはい、分かりましたよ・・・で、その仕事は?」
頭を掻きながら聞いた私に、栄空はフフッと微笑んで言った。
「――"烏森の力"を貴方自身のターゲットから奪って、妖怪側の戦力の弱体化をお願いしたいのです」
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当時の話を終えて、私は大きくため息をついた。
「靖ってガキ・・・私とアイツの事を探って、何が狙いだ?とんと掴めねぇな」
「あら、貴方が一番良く分かっているんじゃないかしら?"あの子"を慕っていた貴方に――」
「もうそんな昔の事は忘れた。だから、お前もこれ以上は何も言うんじゃねぇよ」
「怖い怖い。でも、貴方が"烏森の力"を扱えるようになったからといって、簡単に本来の仕事が終えられるとは思わない事ね。"あの子"も、神甲を手にした事で"神妖の力"が使えるようになったのだから」
"協力者"の釘を刺すような一言に、私は大きく息を吸ってから返答してやった。
「・・・なら、アイツがそれを扱えるようになる前に、私が"烏森の力"を完全なものにするだけだ」
この力を手にしてしまえば、後はもう力を扱える身体にしていくだけだ。
そうすれば"神妖の力"だろうと何だろうと、魂を操る秘術である"烏森の力"に敵う力は存在しないのだから。