私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
「――さて、今度は私達半妖の事についてだね」
ようやく校長先生が待ってましたと言わんばかりに話し始めた。・・・とはいっても、あまり詳しく説明して貰わなくともカナから聞いた心の声で半妖については大体わかったので何ともいえない気分だけど。どうやら覚の能力は半妖までであれば効果はあるらしい。
「さて、私達が半妖なのは既に心の声を聞いて分かっているみたいだね。あっ!という事は、私の恥ずかしいあんな事やこんな事なんて全部筒抜けに!」
「意識していないと聞こえないよ」
「何処かの青ダヌキみたいなバカ言わないでください校長先生!」
なんというか・・・きっと読んだら凄く嫌な気分になるだろうから、校長先生の心の声はシャットアウトしてるんですよ!前の時みたいな、変なお店とかの話とか聞いたらおぞましくて眠れなくなりそうだし!
っていうか、それを口に出した時点で周りからは冷たい目で見られてるんだから世話無いよ。
「・・・ゴホン。え〜半妖は知っての通り、人間と妖怪の合の子でね。ハイブリッドと言えば聞こえは良いけれど、実際は私達のような人間の血が多く出てしまった人達には妖怪の血が薄くて妖術もマトモに使えないのさ」
「なるほど、それで助けに来る時に道具とか準備しなくちゃいけなかった訳なんですか」
扇子のセンスはどうかと思うけどな!と心の中でツッコんでおく。すると、静かにクスと笑う椿の声が聞こえたので私は少し後悔した。そういえば椿は妖怪だけれど私は人間じゃん、って事はガッツリ心の声聞こえてたよね・・・やらかした〜!
「そんな私達半妖が、妖怪みたいに妖術を使うには専用の道具が必要でね。妖怪達に用意して貰っているので――「妖具」と、私達はそう呼ばせてもらっている。ちなみに、カマイタチの半妖である私はこの扇子が妖具となっているのさ」
「ただの趣味じゃなかったんですね、それ・・・」
校長先生が誇らしげに顔の前で扇子を開く。そこには『お見事』と文字が書いてあった。必要な道具だというのは理解出来たが、やはり校長先生のそれは趣味なんだと思う。
「次に私だけど、私は輪入道の半妖よ!妖具はこの伸縮自在の車輪で、輪入道が使っている物なの!」
校長先生を押しのけるように、カナも自身の正体について元気良く語り始めたよ。類は友を呼ぶ、と聞いた事はあるけど先生と生徒なんて、結構珍しいケースではないだろうか。
「あれ?輪入道って確か・・・怖い顔の付いた、車輪の妖怪?」
「え、マジでそんな妖怪居るの?」
「う、うん。そうだね・・・やっぱりそういうイメージだよね。私のお父さんが多分そうだからね」
椿がうっかり口を滑らせてしまった事でカナが苦笑いをする。そんな話を聞いても私には全くイメージが湧かないのだが、まあ彼女が嫌がっている様子なので今後の話題では控える方向に考えておこう。・・・椿も、もうちょい言い方を考えようね。
「さて、半妖といっても人それぞれ。私のように人の血が強く出た半妖は、全く妖気を感じられなくてね。その為、つい先程まで君の存在に気づけなかった」
校長先生が申し訳なさそうに顔を俯かせる。
全く妖気を感じられない、か・・・言われなければ殆ど人間と同じようなものじゃないのだろうか。
「私も人間としての血が濃いみたいだけど、校長先生と違うのは妖怪の方も濃く出たみたいなの。だから、ほんのちょっとだけ妖気を感じられるんだ!それで椿ちゃんが入学してから、ずっと貴方に違和感を感じていたの」
「まさか、入学式の時に椿をずっと見ていたのってカナ!?」
「綾さんもその時は普通に可愛かったんだけどね〜・・・今じゃ別な意味で違和感ありまくりだよ〜」
「・・・なんか恥ずかしくなってきたから止めて」
そんな事を言われて頬を熱くしていると、カナは席を立って椿へ満面の笑みで近づいた。
「椿ちゃんのコレも、うっすらとだけど見えてるよ〜!」
「ふやっ・・・!」
カナが椿の狐の耳を優しく触り、それに彼女は身体がビクッと反応して小動物みたいな声を上げる。
「あっ、椿ちゃんゴメン!・・・大丈夫?」
「はにゃ・・・ら、らいじょうぶれふ」
「後で私も触ってみたいな〜・・・」
「ふゃ〜・・・って!だ、ダメだからね綾ちゃん!」
チッ、ダメでしたか。椿の可愛い姿が見れるようなので触ってみたいと思っていたが、あの反応だと本人からしたら随分ヤバい感覚らしい。
「うぅ〜白狐さん、黒狐さん。僕の姿、ひょっとして普通の人間にも見えているんじゃないですか?」
『ん?大丈夫だ。基本人間には見えない様になっている。ただ妖気を持つ者なら意識阻害の妖術が効かない場合もある、感知能力の高い綾が良い例だな』
「それってつまり、半妖の人には見えてるって事だよね!?」
「そ、そんなぁ・・・早く言ってよ〜」
「アッハッハ!まぁ、見えているのは烏森君と辻中君くらいじゃないかな?私は君に触らないと見えないからね」
ショックを受けてる椿を慰めるように校長先生が扇子を開きつつフォローの言葉をかける。
・・・『可憐』という文字のせいで台無しだけどね!
「でも良かったよ、あの時のアレは飲みすぎなんかじゃなくて・・・」
「飲みすぎで片付けられてたら、私達今頃どうなっていた事やら・・・おかげで助かりました。本当にありがとうございます」
朝の出来事を思い出し、私は苦笑いしながらも校長先生に感謝を述べた。しかし、そんな風に妖気を感知しにくいとなると半妖も妖怪と同じかそれ以上に中々苦労してそうだ。
「とにかく私には見えないが、2体の妖狐も辻中君にはうっすら見えているよ。だから先程も咄嗟に私に報告しに来てくれてね。全く関係の無い生徒達を裏口から避難させる事も出来た訳だよ」
「いつの間に、そこまで・・・」
「そしてこの学校には、そういった半妖の生徒達が学年の一クラスに最低でも1人は居る。けれども妖怪には敵わないから、電磁鬼にいとも簡単に皆操られてしまったのさ。その為、重ね重ね謝罪させてもらうよ。・・・本当にすまなかった」
私はソファから立ち上がってまで土下座して謝る校長先生に申し訳なさを感じていた。その件についてはもう済んだ事なのに・・・
「もう良いですよ、校長先生。それよりもこの学校にそんなにいっぱい半妖の人達が居た事に驚いてるから」
見るに耐えかねたのか椿が校長先生へ声をかける。そして、それに反応して顔を上げた校長先生の手には『感謝』と書かれた扇子が広げられていた。いい話っぽく終わりそうだったのに、雰囲気ぶち壊しである。
そして何事もなかったように校長先生はそこから更に話を続けた。いや誤魔化しきれてないからね色々?
「――実は、この学校は昔から半妖達を守る為にあったんだ」
「なんだって?一体、何から・・・」
私はその先を言おうとして、ハッと思い出した。
「まさか、あの坊さんが?」
「そう、君の予想通り――さっき君達が出会った「滅幻宗」と名乗る坊さん達さ」
すると椿はさっきの出来事がフラッシュバックしたのか、耳を倒し尻尾までも身体を恐怖で震わせた。そこをカナが安心させようと触っている。
『翁よ。あの坊主共、椿を狙っているようだったが?・・・一体何故だ?』
黒狐さんが椿の祖父へ険しい顔で迫る。
「それも、椿の封印された記憶に関係しておる。とにかく奴らは、何かを復活させようと動いておる。しかし人間界にいる妖怪、悪霊、そして妖魔を滅する為に修行を重ねた僧の集まり。・・・何を復活させようとしているのかは分からんが、儂らには良くない事じゃろうな」
「復活・・・」
校長先生も椿の祖父に続けて扇子を強く握り話へ割り込む。
「そして奴らは妖怪や妖魔だけじゃなく、私達半妖すらもターゲットにしている。・・・家族も含めてね。それこそ奴らに捕まった半妖とその関係者は、酷い拷問をされた後に殺される。そこには慈悲も何もあったものじゃない、坊さんの風上にも置けない奴らだよ」
「ひどい・・・狂ってる」
私は今まで自分が知らなかった、妖怪に対する負の面を強く語られて思わず校長先生から視線を逸らした。
どうして?なんでただ妖怪の血が混じってるって事だけで、半妖もその家族も酷い目に合わされなくちゃいけないの?と、現実を直視するのが怖かった。
すると今の話の中で気になる点を見つけた椿が質問の声をあげる。
「あっ、そういえばさ・・・さっきから1つ、気になる単語があるんだけど――「妖魔」って何?それって妖怪とは違うの?」
『妖魔とはな、妖怪が何らかの原因で変異した特殊な存在の事を指す。先日この学校で捕まえた電磁鬼も、実は妖魔と呼ばれている奴だったのじゃ。電磁波の妖怪など、これまで存在すらしていなかったからな』
椿の疑問に、白狐さんが分かりやすく説明してくれた。言われてみれば確かに、他の妖怪と比べて禍々しい気が強かったのを思い出す。
「なんじゃお主ら、よく電磁鬼を捕まえられたの。アレはAクラスの難敵じゃぞ?特に隠密に優れていて、見つけにくい奴だというのに、よく見つけたの」
『ふっ、なに。俺達にかかれば――』
「ウソおっしゃい、黒狐さん。私と椿のおかげで見つけられたようなもんでしょうが」
格好よく威張ろうしていた黒狐さんの頭にチョップを落として私は正直に言った。なんでこんな時にウソが見え見えな見栄を張ろうとするのか、心臓に毛でも生えてるんじゃないのか。
「ふん、だと思ったわ」
「あっ、でも!綾ちゃんと黒狐さんが動きを止めてくれたから、捕まえられたんだよね?」
「そういえば・・・今思うと、あの時にも小次郎が助けてくれたのかな?」
「まぁ、あの時はまだ主が私を強く呼んでいなかったから不完全な形であったがな」
「「うわぁ!?」」
そんな事を考えた瞬間、突如として私の真後ろに光が集まって小次郎が現れる。いきなり出てこないでよ!ビックリしてソファから転げ落ちそうになったじゃん!
「む、驚かせるつもりは無かったのだがな。それと其方にはお初にお目にかかる、私は鉄烏の佐々木小次郎と申す。以後お見知り置きを」
そんな小次郎にあんまり驚く事もなく、納得した表情で校長先生が私達へ向き直った。ちなみに更に後ろでは、褒められて嬉しそうだった黒狐さんを白狐さんが茶化して喧嘩をしている。何してんだお前ら。
「そうか。厄介な奴を捕まえてくれてありがとう。そして、君達のその高い感知能力を見込んで頼みがあるんだ。」
「頼み、ですか?」
「学校の無くし物探しはゴメンですよ、私」
「フフ、この学校を、他の妖怪達の魔の手から守って欲しい。私達半妖の、この微弱な妖気にすら反応して妖怪達が此処にちょっかいを出してくるのさ。そして、それに釣られてあの滅幻宗も来ちゃうんだよね。だから君達に守って欲しい。・・・どうかな?」
私は答えるのに躊躇した。私と椿の2人だけでこれから先学校を守りきれるのかといえば、正直自信が無いからだ。下手をすれば、私達どころか学校そのものにも危険が及びかねない。あまりに重すぎる。
「すいませんが――」
「えっと、あの――」
だが、そんな私達の意思とは無関係に椿の祖父が先に答えてしまった。
「うむ、良かろう。その役、椿と綾にやらせよう」
「な、なななな・・・!!」
「待ってよ、私のオジサンには説明を――」
「既に通したわい」
ちっくしょう話が早すぎるだろおい!そしてオジサンもそんな私の扱いをホイホイ簡単に了承したりするんじゃないって!前にも似た感じで詐欺にあったばかりでしょうが!!
「良いな、椿と綾。この際だ、椿は妖怪への恐怖心を払拭する為に、此処の学校にちょっかいを出してくる妖怪をしっかり退治せい。わかったな?」
「・・・は、はい。わ、分かりました」
「どうせやらないって言っても聞いてくれないんでしょ。だったらやるだけの事はやってみるよ」
結構威圧感たっぷりで聞かれてしまって断れなかったので、めいっぱいの反抗として精一杯強がりを言った。
『椿に綾よ。安心せい、我らもついとる』
『そうじゃ。白狐と共に、我も妖怪退治を手伝ってやる』
すると白狐さんと黒狐さんが頼もしげな表情で私達へ、そう言ってくれた。――けれど、
「む、それはいかんぞ。それでは椿の修行にも、綾の修行にもならん」
『なっ!?それでは椿が危険に!』
ちょっと待って白狐さん、サラッと私を省いたよね今?
「白狐よ・・・口答えするのか?良いな、必ず椿と綾にやらせよ」
『は、はい』
『わ、わかりました』
どうやら椿の祖父は相当偉い立場な人だったようで、あの2人が全く言い返せない程に丸め込まれてしまった。そしてちゃんと椿の祖父は私もカウントしてくれてた事が嬉しいよ。あの2人、椿の事しか見てないんだもの。ちょっとは学校の事とか色々目を向けて欲しいよね。