私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
拝啓、少し前までの私へ。
残念ながら脅かしチームは今の所、全部椿に見つかってはダメ出しを食らって大ダメージを受けて帰って来てる状況です!
やだ、あの子・・・私が思ってた以上に肝が据わり過ぎてるよ〜!
2組目に出撃した楓は、人体模型に化けてたのが耳と尻尾で丸分かりしてバレた上、椿に説教しに連れて行かれてしまった。予想してた通りではあったけど。
『綾姉さ〜ん、すまなかったっす〜!』
「あ〜、それはドンマイだね楓」
3組目では、よりにもよって酒呑童子が酔っ払った状態で目覚めてしまって椿のスカートを捲って返り討ちにあっていた。ちなみに伊吹は廊下の途中で、さも当然の如く椅子に座って、そこへ来た肝試しチームにインタビューしようとして椿から頭をしばかれていた。やっぱり、この鬼2人はダメダメだったか・・・南無三。
『ごめん綾、つい僕も色々と気になってしまってね・・・』
『ぐがぁ〜・・・くかっ、zzz・・・』
「な、なんてこった・・・全滅じゃん、今の所」
そして、私が2度目の出撃をする4組目――
「って意気込んではみたけど、さっき変態会長の悲鳴が聞こえてきたから怖いんだよな〜・・・」
私は4組目が最後に来る事になっている神社の張りぼての中に隠れて、札を貼り終えてから立ち去ろうとした瞬間に後ろから脅かす準備を整えていた。
それにしても、まさか自由研究の為に作っていた"コレ"をこんな所で使えるかもしれないと思いついた時は、我ながら喜んだものだ。
「――で、此処が最後の札を貼る場所だよ」
そう感傷に浸っていると、椿が4組目の肝試しチームを案内しながら、私が待機している教室にやって来た。
まだだ、まだ出るのは早い。落ち着けよ、私・・・
「こ、これでお終い?」
「もう、怖い物は出てこないよね?」
「大丈夫だよ、これで全部貼り終えたから。じゃあ皆、後は――」
よし、椿が振り返ったのに合わせて肝試しチームも後ろを向いた!
今だ!行くぞ!!
「グォォァァァアア!!!」
「え、ちょ・・・何ですかコレは!?」
「きゃぁぁぁああ!!」
「やっぱりまだ出てきたァァァ!!」
良し、皆私の突然の登場に怖がってるぞ!!
勝ったな・・・って、あれぇ!?
私の姿を見てから、椿さんの顔がなんか怖いんですけど!
あらら?ヤベェやらかしたか!?
「あ〜や〜ちゃ〜ん?その変な格好は何ですか!コレ絶対、お化けとか妖怪のコスプレじゃないでしょ!!」
「げっ!やっぱりバレた!?こ、これは自由研究用に自作した汎用人型決戦兵器の・・・」
「なんでそんなアニメのロボットみたいな物を着て来たの!?最近、楓ちゃんとなんかコソコソやってるな〜って思っていたら、こんな物を作ってたんですか!!」
うっわ怖い!ゴゴゴ・・・って文字が見えるくらい椿が、周りの他の人達を完全に震え上がらせている程に怒ってる!!
「それに今、"自由研究用"って言ってましたよね?それについて・・・後で詳しく説明してもらえるかな?」
「は、はい・・・」
終わった・・・グッバイ、私の夢。
紙粘土を10キロくらい使って丁寧に作ったけど、案の定というか椿には敵わなかったよ。
「い、言われてみれば確かに似てたよね・・・烏森さんのアレ」
「咆哮なんか、完全に本物みたいだった・・・」
「すいません・・・今は結構メンタル傷付いてるんで、変に褒めて死体蹴りするのは止めてもらえませんか?」
そして、この後で私は椿から"学校の自由研究で趣味に走りすぎだ"と、楓も再び呼び出されて2人で説教を受ける事になってしまったのであった。
駄目ですか?と目をウルウルさせても、タカやワシみたいなギラッとして眼差しを返されたので、私の自由研究は水の泡になる事も確定してしまったようだ。
アレ、ケーブルまで再現したから自由研究としていけると思ってたんだけどなぁ・・・。
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――肝試しが終わって
「あ〜ごめんね、皆。妖怪さん達の演技が下手過ぎて。仕掛け以外、全く怖くなかったよね・・・」
椿が私達脅かしチームの反省会を取り仕切りながら、肝試しチームの皆に苦笑いをして謝った。
そういえば、体育館の時点で此処の生徒達には妖怪の存在が認知されちゃってるんだっけね・・・。
まぁ、今回は変態会長がサプライズ的に種明かししたかったから、妖怪達がお化け屋敷に参加する話を隠していただけらしいのだが。
だが椿の言葉に反して、肝試しチームの方から返ってきたのは意外な反応であった。
「あ、あぁ・・・い、いや、そ、そんな事はないよ」
「お、おぉ。だ、だだ大丈夫だ、ちゃんと怖かった。主に槻本さ――」
「おい、バカ。いらん事を言うな、血祭りにされたいのか」
「う、うん、凄く怖かったから。もう、夢に出そうなくらい」
「「・・・へっ?」」
その肝試しチームの皆が一様に怯えて震える姿に、私達へダメ出しをしていた椿も、失敗したショックを受けていた私も素っ頓狂な声を上げてしまう。
そこへ狐2人が現れ、椿の頭を優しく撫でて説明をしてくれた。
『まぁ、気にするな椿よ。そして綾達の為にも補足しておくが、妖怪はその姿だけで簡単に人を怖がらせる事が出来る存在じゃ。忘れたか?』
『つまり、演技なんてしなくても十分なんだ。仕掛けさえシッカリしていればな』
「・・・って〜事は。うふ、うふふ、うふふふふふ」
妖怪の皆に慣れてしまっていた私と椿の感覚を基準にあれこれ試行錯誤した事が無駄にならなかったと理解して、私は嬉しくなってついつい笑い声が出てきてしまった。
椿にダメ出しされた時は「あ、これはもう皆全然怖くなかったんだろうな」って落ち込んでいたけど、本当は椿だけが微妙な反応だったって事なんじゃん!皆シッカリ怖がってビビり散らかしてくれてて良かった〜!!
そしてダメ出しをしていた本人である椿はというと、完全に余計な事をしてしまったという恥ずかしさから顔が真っ赤になって湯気を上げてしまって・・・。
「あ、あぁぁ・・・!皆、違うんだよ〜!ちょっと、僕が間違えていただけでぇ!」
もっと言うならば、そのダメ出しが更に肝試しチームを怖がらせる事になってしまっていたのだから変な話になっちゃったのだ。
椿の祖父も納得した感じで頷いていた。
「ふむ、しょうがないの。今回の優勝は、椿じゃな」
「あぁ・・・翁。文句ないです」
「そうねぇ・・・私達でもゾッとしちゃったわ〜」
「俺なんか、ちょっとトラウマに・・・」
だって皆、怖がって椿から徐々に後ずさってるし・・・まぁ、アレですな。椿ドンマイ、貴方の頑張りは無駄じゃなかったよ。
「うへぇ〜私がダントツで優勝して、その景品を貰いたかったのにな〜」
「あんな格好してるような綾ちゃんには無理だって・・・って、ちょっと待って。その優勝の景品って、そんなに凄い物なの?」
椿が首を傾げると、彼女の祖父は少し苦笑いしながら狐2人へ目配せをしていた。
あっ、すっげー嫌な予感がするわ。
「よし、椿よ。優勝した者には、他の者からしたら喉から手が出る程に特別な妖具を用意しとったのじゃが・・・お前さんには神刀があって、それでは良くないと思ってな。そこで――」
『お主にだけは、我と黒狐からプレゼントをやろう!』
『そう!俺達から、特別な寵愛を一晩たっぷりと――』
「遠慮しま〜す!!」
「逃げて椿!此処は私が食い止め――って、肝試ししてた時の格好のままだったァァァ!!!」
椿が白狐さんの力を解放して逃げようとした瞬間に、私も彼女の逃亡を援護する為に身構えようとしたが衣装に紙粘土を使いまくったせいもあって肩の重量で思いっきり顔面からズッコケてしまった。
そして椿の方も、白狐さんからアッサリ尻尾を掴まれて宙吊りにされてしまっているし。
「ギャァァア!!離してぇ!」
『まぁ、まぁ。そろそろお主も、女に磨きがかかっとるからな。我らもな、少しばかり我慢が出来なくなってきている』
「やめてやめて、貞操の危機です!誰か、助けてくださ〜い!!」
「うぐぐ、椿〜今私が――ふぇっ!?か、カナ?私に何をしようとシテルノカナ?」
すると這いつくばってでも椿を助けに向かおうとする私に、背中の上からカナが乗っかってきた。
「あぁ・・・椿ちゃんが、遂に女の子に?羨ましいな〜・・・じゃあ、私は綾ちゃんを――」
あっ、やっべぇコレ私も貞操の危機が迫ってるじゃん・・・って、冷静に分析してど〜するよ!?
「イヤァァァ!!止めろカナ!私を薔薇の道に引き摺り込もうとするんじゃあないッ!」
「うっふっふ〜心配しなくても大丈夫だよ、綾ちゃ〜ん。ちゃんと優しくしてあげるから〜」
『ふっ、椿の方も大丈夫だぞ。俺達もそこまで激しくはしない。ただ、裸にひん剥いてから――』
「わぁぁぁ!!それもダメェ!絶対にダメェ〜!!」
こうして私達の必死の抵抗も虚しく、他の皆がそれぞれ和気あいあいとしている中を引き摺られて行ってしまうのであった。
どうしよ・・・明日までに変な性癖に目覚めてないと良いけどな、私。