私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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幕間 番外編その肆 助けてあげなくちゃ

 

「美亜姉様・・・綾さん・・・」

 

陽の光すら届かない地下室で、私は"旅館の件を1人で解決出来なかった"としてお父様に牢屋みたいな部屋へ閉じ込められています。

 

何日閉じ込められているのかは分かりませんけれども、お粥みたいなご飯が時々差し入れられる所から考えて一週間以上は経っているようです。

 

「うぅ・・・怖いよぉ・・・」

 

「もう誰も助けに来ないんじゃないか」、「私なんか実際は誰にも必要とされていないんじゃないか」という疑念が頭に浮かんでは、その恐怖で身体は何度も震えてしまいます。

 

そんな事は有り得ない。

きっと美亜姉様が・・・綾さん達が、"汚れに汚れた"私の家を調べに来てくれる。

 

そうして心の中で自分を奮い立たせていると、牢屋の扉が開けられて知らない女の人が入ってきました。

 

「ふぅん、コイツが今回の・・・ま、とりあえず生きてるみたいだし、何とかなるか」

 

「えっ、貴方は・・・誰ですか?」

 

お父様が仕事の"取り引き"の際に、誰か偉そうなスーツ姿の人を屋敷に招いている光景を何度も見てきました。

でも、この女の人はそんな私でも見た事がなく、背格好や立ち振る舞い全てが異様な人です。

 

「い〜やいやいや、アンタの父ちゃんからちょっと頼まれ事しちゃってさ。ま、コレでも食べて落ち着けや」

 

そう言って、その人は私に綺麗な三角形をしたおにぎりを差し出してきました。

 

「・・・」

 

「ん?食べないのか?結構、自信作なんだけどな」

 

「だ、だって知らない人からは何かを貰っちゃいけないって・・・言われてますから」

 

「ほ〜ん、そんじゃ――ほい、ムグムグ」

 

私がおにぎりを受け取らない返事をすると、女の人は自分でそれを1つ食べて見せ、毒が無い事をアピールしました。

 

「別にアンタが要らないっていうなら、私はどうでも良いんだけどさ。これからの事を考えたら食べといた方が良いと思うけどな〜・・・」

 

「それは・・・どうい――うっ!?」

 

女の人が片手でおにぎりを食べながら私の頭へ手をかざしてくると、何とその瞬間に視界は真っ暗となって何も見えない状態になってしまいました。

 

「いや!止めてください、何をするつもりなんですか!?」

 

「そんな怖がんな、別に酷い事はしねぇよ。ただ、アンタにはこれからちょっとした"細工"をかけさせてもらうだけさ」

 

その言葉が聞こえたと同時に、何も見えない状態のまま私の意識が、グワングワンとブランコで激しく揺られている時のような感覚に陥り始めました。

そんな感覚を味わったのは、幼い頃に美亜姉様が悪ふざけで私の乗るブランコを大きく揺らしていた時以来です。

 

「やだ・・・私、こんな・・・!」

 

でも、コレはその時の感覚に加えて、私の心の中に色々な感情が無理やり入り込んでこようとしているのを感じました。

 

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グルグル回る意識に、過去の光景が次々と映し出されてきます。

 

私一人が家に引き取られて、何をすれば良いのか分からず怖くって泣き出しそうだった時に美亜姉様から親身にされて、無意識の内に本当の姉妹のように姉様を心の拠り所にした事。

 

美亜姉様が家から追放された時、とてもとても悲しくって、それと同時にお父様もお母様も、誰も彼も信じられなくなりそうになった事。

 

それから美亜姉様が綾さん達と楽しそうに暮らせていると知った時、姉様が無事に生きている事への喜びと同時に綾さん達へ嫉妬の"想い"を抱いてしまった事。

 

 

「違うだろ?お前が受け入れたいって"想い"は、そんな生暖かい感情なんかじゃないよな?」

 

そんな事を思い出していると、女の人の声が聞こえてきて、途端に私は"あの人"の事が頭にワッと浮かんできてしまいました。

 

――そう、私に美亜姉様以外で屈託の笑顔を向けてくれて、綾さんの事を。

 

初めて綾さんと会った時、あの人は私が自分勝手な言い分で謝った事に対して困惑はしていましたが、お父様が美亜姉様へ失敗を怒るように酷く責め立てたりしてこなかった。

 

その後に私は美亜姉様を見捨てた事を引きずったままライセンスの試験を合格し、自分の心を殺して"お父様の都合の良い娘"として依頼を確実に、かつ完璧にこなしてきた。

 

そんな中、ふと立ち寄ったかき氷屋さんで綾さん達と出会い、綾さんは美亜姉様が無事に生きている事を教えてくれたばかりか、両親や上の姉様兄様達とは違って私に優しく接してくれたのです。

 

その時はまだ綾さん達の事を少し怪しい人だと思っていたのですが、旅館で再会した時になって初めて私は綾さんが本当に優しい人なんだと知って――

 

綾さんに"恋"をしてしまった。

 

本当は、自分の恋が叶わない事は分かっています。

 

綾さんは椿さんの事に夢中で、私の事も心配してはくれてもきっと一段と特別な扱いはされない。

 

連絡先を交換したのだって、叶わないと分かっていても"それでも何時かは"と下心から思いついただけの事。

 

でも、もう私は我慢が出来なかった。

 

私の大切な美亜姉様・・・そして、初めて好きになった綾さん・・・

 

椿という妖狐が完全に2人を私から取り上げてしまう前に、私がちゃんと助けてあげなくちゃ。

 

「・・・ふふ、ふ、ふふふふふ」

 

「良い感じに定着してくれたっぽいな〜。さぁ、後はアイツらが来るだけだから、アンタは自分のやりたいようにやってみるこったな」

 

「ええ、お陰様で私も自分の事を理解出来ましたから」

 

――だから綾さん、一番好きな貴方は早く私の所に来てくださいね?

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