私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
――肝試しから一晩明けて
結局、あれから私はカナに"美味しく頂かれて"しまい、同じく狐2人にめちゃくちゃ愛されてしまった椿と共に素っ裸で布団を頭から被っていた。
途中でカナが寝落ちしたので、そのスキに椿の所へ何とか助けに入れたから良かったものの・・・放っておいたら本当に何時か椿が2人の女にされてしまいそうだ。
「うぅ・・・もうお嫁に行けない〜」
「な、何言ってるのさ椿・・・私だって、同じ女の子からあんな事されたら嫁に行けないよ・・・うぅ」
『そうだぞ、何を言うとる椿。お前は我の嫁になるというのに』
『俺のだ、白狐!』
「コイツら・・・」
全く、この2人はブレないというか天然だというか。本当なら椿と一緒に皆と楽しく後夜祭といきたかったのに・・・その上、カナから"女同士の良さ"まで味あわされたのだから落ち着かない話だ。
もし私が椿に"そういう感情"を抱いてしまったら、それこそ絶対親友の間柄から発展してしまいそうで怖い。やらかしたらきっと恥ずかしくて彼女の顔を見れなくなるぞ、こりゃ。
いつの間にか目が覚めたら朝になっていたし、多分途中で気絶したのだろうが・・・何にせよ、昨晩みたいな事は二度とゴメンだ。
『本当はもっと寵愛をしたかったが、綾が飛び込んでくるし椿はそのまま寝入ってしまうしで大変だったわ』
『だが白狐、椿のあの声は・・・むぐっ!ぶっ!?』
「くっ・・・」
「うん。とりあえず1発は入れさせてもらうからね、黒狐さん」
狐2人がまだ何か余計な事を言いそうだったので、私は椿と共に2人を睨みつけつつ、彼女が黒狐さんの口を手で塞いでいる所へ腹に拳を入れたのであった。
それでも、狐2人は恥ずかしげにする椿を見てニヤニヤしていたので、負けた感覚しかしないのが悔しいけど。
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――それから着替えて、大広間での朝食にて
「う〜ん、うぅむ・・・やっぱり来るのかよ〜」
『ふっ、当たり前であろう綾よ。椿は我の嫁なのだからな、こうして隣で朝食を食べるのも――』
『だから、椿は俺の嫁だ!それに綾も、俺達を遮るように間へ座ってこないでくれ!』
「絶対嫌だね〜!こないだ椿から私や湯口先輩共々まとめて怒られたばかりでしょ〜が!!」
『『ぐ、ぐぬぬ・・・』』
「何が"ぐぬぬ・・・"だ、何が!」
そうして未だ恥ずかしくて無言な椿を、狐2人から守るようにして朝食を食べていると、私達はふと食卓に1人足りない事に気が付いた。
「あれ?美亜ちゃんは?」
「朝食に来てないみたいだけど・・・里子、何かあったのか?」
「うん・・・美亜ちゃんなら、さっき起こしに行った時に部屋で着替えていたよ」
そう返事をした里子の表情は何処か暗く見えた。
思い出してみれば、美亜は別な用事で出かけていたらしく、昨日の肝試しにも顔を出していなかった。そして里子も、そんな美亜を心配して家に残っていたのである。
わら子が身の危険から離れの部屋から出られないのもあると思うが、そちらはそちらで守護の4人姉妹が居る。
すると、私達が居る部屋の前を美亜が通り過ぎようとしているのが見えた。
「えっ?美亜ちゃん!?」
「おいおい、朝飯も食べないで何処に行こうとしてるんだよ!」
そう言って美亜の腕を掴むが、彼女はそれを無理やり振りほどいてくる。
「あら?別に良いじゃない。何処に行こうと、そんなの私の勝手よ」
「ちょっと美亜ちゃん、何だか普段より言い方がキツくないですか?」
椿も困惑した様子を美亜に向けていると、そこへ里子も部屋から出てきて心配そうに声をかけた。
「み、美亜ちゃん・・・何かあったの?もし何かあったのなら、私や皆が相談に乗るよ?」
しかし、美亜はそんな里子を無視してパタパタと玄関へ向かっていこうとする。
「ちょっと、美亜ちゃん!?」
里子が慌てて美亜を呼び止めようとするが――
「うるさいわね!アンタは椿と綾に飼われてなさいよ!」
「なぅ!?そ、そんな言い方・・・」
「おい美亜、流石に今の言葉は酷いんじゃないのか!?」
「そうだよ美亜ちゃん。折角里子ちゃんが心配しているのに、そんな言い方はあんまりだと思うよ」
私達が見かねて美亜に苦言を呈するが、その途端に彼女はキッとした目で私達を睨んで叫んでくる。
「どうでも良いでしょ、そんな事!アンタ達は何時もみたく、白狐と黒狐に弄られときなさいよ!そんな幸せそうな顔をしているアンタ達2人を見ているとムシャクシャするのよ!!」
「へぇ!?」
「どうしたんだよ、美亜!お前らしくないぞ、本気で!?」
椿も私も困惑するような事を叫んだ彼女は、そのまま全身の毛を逆立てて私達へ威嚇をしてきた。
そして、美亜が大声を上げた事で皆も不思議そうに部屋から顔を覗かせ、白狐さんが彼女へ注意を入れてきた。
『美亜よ、流石に今のは見過ごす事が出来んぞ』
「うるさいわ、本当の事でしょう?毎日毎日、おちゃらけていて真剣さが足りないわよ!」
『おい・・・お前には俺達がそういう風に見えるのか?良く見ろ!真剣におちゃらけて――げごふっ!?』
「「黒狐さんは黙っていて(ください)」」
私と椿で黒狐さんの土手っ腹に肘打ちを入れる。
そんなダメ男アピールを堂々とされても、逆に美亜を怒らせてしまうだけだと思うんだけど?ついでに言っておくと、サラッと椿の耳を触ろうとしていたし。
「ふん、とにかくアンタ達には関係ないわ。コレは、私の問題なんだから!」
「お、おい美亜!」
「あっ!美亜ちゃん待って!」
そして美亜は私達から逃げるようにして、玄関から飛び出していってしまった。
「美亜ちゃん・・・一体、何があったの?私、どうしたら・・・」
「里子・・・いや、悲しいのは分かるけど何で首輪を握りしめているんデショウカ?」
「えっ?あっ、こ、これは・・・その、ね?」
「うん、深くは聞かない事にしとく」
それにしても、美亜が自分1人で抱え込むような事といったら何が・・・って、まさか。
椿も同じ結論に達したらしく、静かに言葉を零した。
「美亜ちゃん・・・まさか、実家の方で何かあったのかな?」
「確かにそうだよね。でも、美亜の事を"一族の汚点"だとか言って罵ったあげく、最後には家族の縁まで切ってきた連中だぞ?一体、何がどうしたら美亜があんなに動こうとするんだよ?」
「綾ちゃん・・・もしかしたらだけど、美亜ちゃんのお母さんと妹の美弥子ちゃんが関係してるかもしれない。美亜ちゃんと家族の縁を切った後、あの2人は美亜ちゃんを心配するような雰囲気をしてたから」
「しまった・・・そうか!美弥子もあの家の一員だって事、私はスッカリ忘れてたよ・・・」
「ひょっとすると、2人共に美亜ちゃんにコッソリと連絡を取っていて、それが家族にバレたのかもしれないね」
そうやって私達が美亜の行動の動機について考えを巡らせていると、白狐さんから椿と共に頭を撫でられて注意をされる。
『椿に綾よ、深く考えるな。帰ってきた時に聞けば良かろう?あの娘の荷物は全部、まだ此処に置きっぱなしだ。つまり、帰ってくる気はあると考えておくべきだろう』
「むぅ・・・」
「そうか、な・・・」
とはいえ、私も椿も白狐さんのその言葉に安心は出来なかった。
辛さを全力で堪えている表情、そして私達に触れられたくないような反応・・・悪い事が起こる嫌な予感がしてくるのだ。
それを察知したかのように、妲己さんの声が私達の頭に響いてきた。私達は大広間に戻りつつも、他の皆に聞こえないように小声で話す。
【椿、綾。あの子多分、このままだと帰ってこないわよ】
「妲己さん・・・やっぱり美亜ちゃんは、自分1人で何かを解決しようとしている・・・よね?」
【えぇ、あの表情は良く見るのよ。私に敵対してくる人達は、大体皆そんな顔をするからね〜】
「なんか長生きしてる妲己さんが言うと、説得力がありすぎるな・・・」
【あら綾、私そこまでオバサンになった覚えはないわよ〜?】
「妲己さん、それでも僕達の思い違いかもしれない。だから、もうちょっとだけ待ってみるよ」
【そうね。今日の夜に、ひょっこりと帰ってきたりしたら恥ずかしいわね〜あの子も、ふふふ】
「ほんっと、妲己さんは性格悪いなぁ〜」
私達の不安が的中しなければ良いのだが・・・。
もし美亜がバカな真似をしようとしたのだとしたら、その時は私もガツンと椿と共に彼女を怒ってやらなくてはいけない。
自分の問題は1人で抱え込むべきじゃない。友達というのは困っている時にこそ、互いに手を取り合って助け合うものなのに。
「・・・」
あんな里子を見ていれば、嫌でもそれが伝わ――
「って、おい。ショックで立ち尽くしてるのかと思ってたら、何で首輪持ったまま尻尾ブンブンさせてんだよ!?」
「首輪なんてつけませんよ、里子ちゃ〜ん?」
「キャゥウン!!」
もうやだ、この子・・・自分の欲望に忠実過ぎるんですけど。
そして椿が里子の尻尾を掴んだまま、ズルズルと引っ張って大広間へ戻っていく。
「里子ちゃんは幸せ者ですね・・・もしかしたら、美亜ちゃんが戻らないかもしれないっていうのに」
「わぅぅ・・・そ、そうだとしてもだよ、椿ちゃんに綾ちゃん。私は美亜ちゃんが絶対に此処に帰ってくるって、そう信じているから待つの。そして、美味しいご飯を用意してあげる。そういうのが友達として、私が美亜ちゃんを信じてあげるって事なんだから!」
その言葉から私と椿は、里子の思いやりの強さに驚いて尻尾から手を離した。
「えっ、そうだったんだ・・・ごめんね、里子ちゃん」
「里子・・・すまん、私もさっきは悪かったよ。なら、何時美亜が帰って来ても良いように部屋も綺麗にしておいてあげなくちゃな」
きっと私達の不安はただの勘違いなのだろう、と今はそう信じる事にしたのであった。
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しかし、そんな私達の"想い"を裏切るかのように、美亜は一度も帰って来ないまま1週間も経ってしまった。