私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
――それから少しして
『よし、椿に綾。準備は良いか?』
「うん、OKだよ黒狐さん。綾ちゃんの方は?」
「OKだよOK・・・にしても、初めてやるけど"この姿"は何か色々勝手が違って動きずらいな〜」
そう、今の私は思い出した妖術で"カラスの姿"に変身していたのだ。
椿の祖父から大体の作戦の説明を聞いた私達は、狐2人と共に潜入するべく動物の姿に変化して草むらへと身を隠している。
『しかし・・・椿の狐モード。近くでじっくりと見た事はなかったが、これはこれで・・・いでで、がっ!?』
何だか椿を後ろから見る白狐さんの視線が危なかったので、彼の額を私はクチバシで強めにつついて、椿はそれに続けて後ろ足で顎を蹴り上げる。
「あっ、ごめんなさい白狐さん。ちょっと走る練習を、ね」
「おぅ危ない視線を椿に向けんのやめ〜や!バレバレだからな!」
なんというか・・・こんな事でも興奮しているのを見ると、中身が椿なら何でも良いんじゃないかと思ってしまう。
「全くもう・・・白狐さんは、僕がどんな姿でも良いんですか?」
そんな白狐さんに椿も呆れた声を上げると、今度は黒狐さんが反論をしてきた。
『いやいや。椿のその狐の姿が、他の妖狐以上に美しいのだ。フワフワの毛並みに、スラッとしと体躯・・・なんという美形か!』
「そんな事を言われても、僕には良く分かっ・・・!?」
「椿、一体どうし・・・げっ!?」
椿がドン引きしたような目を黒狐さんへ向けているのを見て、私も不思議に思って彼の方を見てみると・・・ヤバい事に気付いてしまった。
動物の姿に変身している時は、体毛で覆われているとはいえ全裸同然であるという事に。
――要は、黒狐さんの"黒狐さん"が凄く、大きいです・・・って、おい!!
「何お前も発情しとんじゃ〜!妖異顕現、稲妻雷霆蹴!」
「くっ・・・!妖異顕現、黒槌土壊!」
『ぐはっ!おぉうっ!?』
なんというイヤらしいモノを見せつけてくれたのでしょう、黒狐さんは!
ついつい私達は妖術を発動して、私が急降下しながら蹴りを放ったと同時に椿もハンマーに変えた尻尾で彼を犬〇家の一族みたいなポーズで地面にめり込ませてしまった。
これには白狐さんも苦笑いをしているようだった。
『全く、黒狐よ。そう堂々とするな、恥ずかしい奴め』
「そうそう・・・白狐さんと比べて、黒狐さんは節操が無いよ節操がね!」
『それにしても椿よ、良い形をしているな。お主のお尻――』
「黒槌土壊!」
「稲妻雷霆蹴!」
『ぐは、ぐほぉっ!?』
「前言撤回、やっぱり白狐さんも同類じゃね〜か!!」
やだもう、この2人・・・しかも良く考えたら、椿も私も全裸って事なのを忘れてたよ。私は鳥だから基本的に高い所に居るから良いとしても、椿は尻尾を上げたら色々と危ないじゃないか。
「もう・・・馬鹿な事やってないで、早く行きますよ!」
「そ〜だそ〜だ!!」
その後は、当然ながら椿は尻尾を脚の間に入れて後ろを隠すように進んでいった。
そして洋館の側面辺りまでやって来てから、危険の対処の為に狐2人を先頭として、私達は囲いの壁を飛び越えて洋館の窓辺付近まで接近する。
ここまでに何の防犯機能にも引っかからなかったのは気にかかるが、事態は刻一刻を争う事になっている。とにかく、私達は白狐さんが開けてくれた窓から洋館内部へと侵入した。
こういう建物は、入るのにも手間取って面倒臭い事になるかもと思っていたが・・・実際はそうでもないのだろうか、と思いつつ私は洋館内部を窓の縁に乗りながら観察した。
妖界の建物というのは、見た目こそボロボロだが中に関しては意外と綺麗な所が多くて、住む事なら問題がないという程度が殆どだ。
しかし、この洋館については外観までもが綺麗で逆に妖界の雰囲気から浮いてしまっていた。
その上、内部は足元を照らす蝋燭が点在してるくらいしか明かりが無く、そんな薄暗さが外の妖界の景色と相まってか、怪しさが強く感じられるのだ。
すると、ふと椿が足元を照らす蝋燭を見て不思議そうな顔付きになる。
「え?この足元を照らしてる蝋燭、顔がある。よ、妖怪かな?」
「うわ、椿の言う通りだ・・・黒狐さん、これ大丈夫なの?」
『あぁ、コイツは声を出せないから大丈夫だ。ただ足元を照らす為だけの妖怪なのさ、だから2人共に心配はするな』
「それなら良いけど。それにしても、結構悪い顔付きしてるよな〜コレ」
『綾よ、油断するな。簡単に内部へ入れたのが引っかかる。何か罠があるかもしれんぞ』
白狐さんが蝋燭を眺める私へ、警戒しながら注意をしてきた。
「こんな簡単に入れるんなら、とっくに零課の方で解決出来てるハズだもんね・・・それが出来なかったって事は、つまり」
「うん・・・綾ちゃんの言う通りだよ。1階に妖気が全く感じられない」
『やはりな。トラップのように呪術を、そこら中に仕込んどるようじゃ』
「なるほど、美亜の一家は呪術を得意とする金華猫だもんね・・・こういう防犯も呪術だから、そりゃ危なくて手が出せない訳か」
私達が目を細めて洋館の防犯システムに頭を悩ませていると、白狐さんは黒狐さんに尋ねる。
『黒狐よ、お主の妖術で洋館内部の呪術を見極められんか?』
『さっきから見ているが、かなり手の込んだ呪術ばかりだ。これは・・・1回仕掛けたら2度と外せないぞ。こんな呪術の罠だらけの中で、普通に暮らしている金華猫一家は相当とんでもないな』
「マジですか・・・黒狐さんの沢山ある妖術でも対処出来ないって、本当にヤバいんだな此処は」
黒狐さんが首をグルリと回して悩ましげにため息をつく。
それにしても呪術が得意な一家なのは分かっていたつもりでいたけど、まさか家まで厳重な罠だらけにするとは予想していなかった。良く美亜も美弥子も、こんな家で暮らせていたな・・・と思う。
『やむを得ん。出来るだけ避けていくが、もしかしたら呪術に引っかかってしまうかもしれん。椿に綾よ、その時は――』
「あっ、うん・・・僕達の"神妖の力"ですね」
「ちょっと待って。こういうのって、白狐さんの守護の力で何とかならないの?」
「なるほど、確かにそうですね」
白狐さんの発言に違和感を持った私が質問をしてみるが、彼は悔しそうな様子で首を横に振って答えてくる。
『ある程度は防げる。だが、かなり強力なものになると流石に防ぎきれんのだ。それに二重、三重と仕掛けられたものも防げん』
「そっか・・・でも守護の力で不可能だからって、そこまで申し訳なさそうにしなくても、私達は大丈夫だよ」
「うん、僕達の方は大丈夫です。白狐さんと黒狐さんが力を合わせれば、呪術を回避していける。そうでしょ?」
そして私と椿は僅かに感じ取れた美亜の妖気を追って、地下へ向かうべく玄関ホールとは逆方向にある廊下へと足を進めるが――
「ぶぇっくしょい!ず、ずびび・・・な、なんじゃごりゃ〜!?」
『2人共、言うた先から・・・何をしとる』
「ご、ごめんなさい。ズビ・・・は、鼻水が止まらない〜!」
歩こうとした瞬間に目の前へ札が現れてブワッと煙が出たかと思えば、そこから私も椿もクシャミや鼻水が止まらなくなってしまったのだった。
『この程度の呪いなら、白狐だけでも解けるだろうが・・・問題なのが、なぁ』
『うむ、二重にかけてあるわ。だから、今のは我の守護でも防げんかったのか』
「べぇ!?ぞ、ぞれっで・・・守護の力がながっだら、もっどヤバい事になっでだの!?」
『は、鼻水が飛ぶから叫ぶな綾・・・。2人共、それは花粉症の呪いだ。白狐の守護のお陰で、その程度で済んで良かったな』
「みみっぢい呪いだな〜、ぞれ!完全に流れが呪術ピタゴラスイッチじゃん!!」
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――それから白狐さんに呪いを解除してもらって
「あ〜苦しくて死ぬかと思った!あんなの季節が変わるまで続くとか・・・花粉症の人の辛さが良く理解出来た気がするよ」
「とにかく、もう大丈夫です。美亜ちゃんの居場所は妖気で探知出来ているので、今度こそ僕達に着いて来て――って、なんで横歩きしか出来ないの〜!?狐の姿だから歩きにくいってば!あぁ、転んじゃう〜!!」
「椿、今助けに――って、私も全然思った方向に飛べな〜い!?壁にぶつか・・・あぎゃぁぁあ!!」
また呪術に引っかかって進めなくなってしまった私達に、白狐さんは大きくため息をついてくる。
『2人共、お主達は無理に前を進むな。黒狐に前を歩かせる。2人に任せていると、そうやって次々と呪いにかかりそうで不安になってくるわ』
「ひぇ〜ん!ごめんなさ〜い!ちょっと焦り過ぎてました!」
「へい・・・私達、もう前を進まないから。これ以上は呪いにかかりたくないよ〜!!」
だが私達のそんな意思とは無関係に、身体は進む事を止めないまま近くの部屋へと入ってしまったのであった。
『いかん、椿!綾!』
そう言って白狐さんが私達の動きを止めようとしてくれるが、彼の前にも呪術の罠が張ってあったからか黒狐さんに押さえられて助ける事は出来なかった。
「くっそ、この部屋・・・見ただけでヤバいんですけど!?なんで、こんなオシャレなお茶会みたいな所に引っ張られてる訳〜!?」
「うぅ・・・逃げたいのに逃げられないよ〜!」
そして私達はそのまま、ぬいぐるみが座っているお茶会の空いている椅子へチョコンと座らされて、見えない謎の力で立ち上がれなくなってしまった。
「ちょっとちょっと・・・ティーポットが独りでに動いてお茶を用意するとか、何処のポルターガイストだよ!?」
「この匂い、中身は紅茶みたいだけど・・・何なんだろう、この呪いは?」
「とにかく、コレを飲まなきゃ此処で足止めをされちゃうかもしれないし、私は飲んでみるよ!」
そうやって私が紅茶をグイと飲むのを見てから、椿も恐る恐るそれを一口啜る。
だが、その瞬間に座らされていた猫のぬいぐるみ達が笑い始め、私達もその笑い声が可笑しくて引っ張られる形で笑い始めてしまった。
「ニャ〜ハ〜ハハハ!」
「ニャ〜ハハハ〜ハハ!」
「ギャッハハハ!変な笑い声だな〜ちょっと!」
「アハハハハ!綾ちゃんも何〜?その笑い声〜アハハハハ!」
いや〜可笑しくて可笑しくて笑いが止まらん!
とりあえず、思いっきり笑ってからでも美亜や美弥子を助けるのは間に合うかも・・・ワ〜ハハハ!!
――なお、この後しばらく私達は笑いっぱなしのお茶会を続けさせられる事となってしまったのであった。