私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
――白狐さんに救出された後
「ひぃ、ひぃ・・・も、もう笑えないよ〜お、お腹が・・・」
「はぁ、はぁ・・・の、喉が笑い過ぎてカラカラだわ・・・」
『全く・・・2人共、少し無用心過ぎるぞ。幾ら我の守護があるからとはいえ、これだけの呪術の数を前にしては正直な話、意味が無いも同然じゃ』
変なお茶会に参加させられた私達は、その後に何とか白狐さんに呪いを解除してもらって事なきを得た。
それにしても、多分人生であれ程に笑ったのは初めてかもしれない・・・しばらくはゴメンだけど。
『しかし白狐・・・この呪術の多さは、流石に異常じゃないか?』
『確かに。まるで我らが来る事が分かっていたかのような、そんな数じゃな』
すると狐2人は、このまま狐の姿で隠密を続ける理由は無いと判断したのか、一瞬で変化を解除して普段の人型の姿へと戻っていた。
「じゃあ僕達もそろそろ――って、ちょっと白狐さん!?」
『よし、行くぞ椿よ』
「うわわわっ!なんで黒狐さんも、変化を解除してないのに私を担ぐのさ〜!?」
突然、狐2人が私達を抱き上げてきたのでビックリしてしまった。
「そ、そうですよ!僕達も変化を解いて、すぐに部屋の陰で着替えてくるから少し待ってください!」
『い〜や。そんな迂闊な事をして、また2人が呪いに引っかかったら大変だからな。というか白狐、椿なら呪いに対処出来る俺が担いだ方が良いだろう?綾なら自分で何とかなるかもしれんし』
「黒狐さん、サラッと無茶を言うんじゃねぇ」
『いや・・・待て黒狐よ。このまま連れていって、我らが椿を着替えさせ――』
「此処の部屋で安全な場所を教えてくれるだけで十分です!」
「珍しくマトモだな〜って見直したら、すぐコレだよ!」
全く・・・美亜と美弥子を助けなくちゃいけないのに、こんな所で時間を無駄にしてどうするんだか。
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――変化を解除後に着替え終わって
着替え終えた私達は、今度は先頭に黒狐さんで2番目に私、3番目に椿で最後尾に白狐さんという並びで、再び洋館の地下を目指して進んでいく。
正直な話、これくらいの呪いなら私と椿でも問題ないという所を見せたかったのだが・・・完全に某"神は言っている、ここで死ぬ運命ではないと"みたいな事になってしまった。
「本当にごめん、白狐さん・・・」
『椿に綾よ、そう落ち込むな。こんな強力な呪術、2人には初めてじゃろうから仕方がない事だ。次からは気を付ければ良い』
そう言いつつ、白狐さんは前を歩く椿の頭を優しく撫でている。
とりあえずは椿が満更でもなさそうな様子なので何も言わないでおいているが、今度は1番前を歩く黒狐さんの尻尾がプルプルと震えていた。
多分、黒狐さんも椿に構いたいのだろうが・・・それを知ってか知らずか、白狐さんはニッコリしながら椿の頭を撫で続けている。
すると、それを察知したのか椿がハッとした様子で口を開いた。
「あっ・・・皆待って、そこが曲がれそうです。階段とか無いですか?」
「お、本当だ。何部屋か通り過ぎた、こんな所に開けた場所があるね。黒狐さん、地下へと行けそうかな?」
『ん、確かにあったな。だが、こういう洋館には幾つか階段がある。ここから美亜の居る所に行けるかは分からんぞ』
「うん、それは僕も綾ちゃんも分かってる。美亜ちゃんの妖気は僕達2人で常にチェックしているし、ここから行ければ1番近いかもしれないんだよ」
「私も椿に一票かな。変にウロチョロして時間と体力をジワジワ減らすより、手近な所からガンガン調べていくのが最善だと思う」
その私達の言葉に、狐2人はそれぞれ自身のスマホを取り出して周囲の確認を行った。
『うむ、とりあえずは大丈夫そうだな』
『しっかし・・・どうにも拍子抜けだな。結局、1階は呪術しか無かった。それも、俺が居れば関係ない話だがな』
「いや、そんな白狐さんに負けじとアピールしなくても大丈夫ですよ。僕は、ちゃんと黒狐さんの良さも分かっていますから」
『ふふ、そうだろうそうだろう?』
「うっわ〜・・・この2人の扱いに慣れてきたな〜椿も」
そんな事はさておき、私達はその薄暗くなっていて降りずらい階段を、呪術に強く警戒しつつ一段一段しっかりと降りていく。
その途中で階段の踊り場に出て、そこから黒狐さんが扉を発見したので、全員で彼の後ろからそれを覗いた。
黒狐さんが見つけた扉は階段の狭さとは対照的に大きく、重そうな鉄で出来ているようだ。そしてやはり、その先からは美亜の妖気を感じ取れる。
「随分と頑丈そうな扉だな・・・私でも無理には蹴破れそうにないや」
「黒狐さん、その扉って開きます?この先から美亜ちゃんの妖気を感じるんです」
『そうなのか、椿?しかし、ちょっと待て・・・この扉、幾つもの呪術がかけられている。解くのに時間が――』
「こうなったら仕方ないですね!綾ちゃん、"神妖の力"で開けますよ!!」
黒狐さんが面倒そうに頭をかいていると、突然椿が意を決したように声を上げた。
「あ、そういえばその手があったか!よ〜し、張り切っちゃうぞ〜!!」
『えっ、ちょ』
「天神招来(てんしんしょうらい)――神風の禊(かみかぜのみそぎ)!」
「天神招来――稲妻霹靂蹴(いなづまへきれきしゅう)!」
私達は"神妖の力"を少し解放し、妖術を使う時のようにして2人で神術を発動する。
椿の禊の風で呪いが吹き飛ばされていく扉に、私の雷による浄化の力が込められた蹴りが炸裂してドカーン!!と盛大な轟音を立てて扉はボロ鉄へと変わったのであった。
「はい、一丁上がり〜っと」
「よし、開いた開いた〜」
『2人共、開いたじゃない。俺まで吹き飛ばす気か?』
扉の横の壁にへばりついてそんな事を言ってくる黒狐さんだが、そもそも隣で頷いている白狐さん共々に煩悩塗れだから吹き飛ばされるんじゃないだろうか?
まぁ、それはそれとして。私と椿は力を抑えて元の姿へ戻ってから、狐2人と共に破壊した扉を乗り越えて中へと入る。
すると――
「ええっ!?何これ!」
「めっちゃ鏡だらけなんですけど、オイ!?」
『これは、参ったなクソ・・・』
『ふ〜む・・・酔う、うっぷ』
「わ〜っ!わ〜っ!!白狐さんストップ!」
「はい、エチケット袋ありますから!」
入った瞬間に白狐さんがゲロりそうになってしまったが、それもそのハズ・・・なんと私達が入った部屋は、鏡が辺り一面に並べられた迷路のような部屋になっていたのだ!
しかも、その鏡1枚1枚からは妖気まで感じられる。どうやら、この鏡も妖具の一種のようだ。
部屋の様子に驚いていると、今度はスピーカーで発せられているかのようにして、私達の居る部屋全体へと男の声が響いてくる。
「おいおい・・・何なんだ、この侵入者達は。まさか、あんな方法で扉を突破してくるとはな。しかも、迷う事なく真っ直ぐに妹の所へ向かうとは――って、お前ら2人はまさか・・・ニューハーフの妖狐と、貧しい胸の女ゴリラ?」
「誰が"貧しい胸"だゴルルァ!?」
「僕の方も全然違〜う!!」
椿の間違った噂については丘魔阿の時点で何となく嫌な予感はしていたのだが、まさか私についての噂が学校以上に酷ぇ事になってるとは思わなかったよ!こんなモン広めた奴は見つけたら絶対ボッコボコにしてやる・・・。
すると私達が叫んでからすぐに、目の前に茶虎の猫耳と尻尾があるセミロングな髪型の男性が瞬間移動のように姿を現してきた。
「これは失礼。本来なら客人はもてなさないといけないが、如何せん今はそうもいかない。侵入者は全て呪い殺せと、あの親父に言われているんでね」
「なんだって?それじゃあ、お前がこの部屋の鏡を操ってる奴なのか!?」
そのまま周囲を警戒しつつ椿へ目を向けると、何故か彼女はポヤ〜とした様子で男を見ているように感じられる。
「椿〜?まさか、アイツがイケメンだ〜なんて考えてないよね?」
「え?あ、ごめん綾ちゃん!ついボーッとしちゃって・・・」
『全く・・・椿、少しは俺達が居る事も考えてくれ』
『こうも誰にでも見蕩れられると、流石の我でもちょっとばかし嫉妬を――ぅぶ』
「あ〜もう、だから!白狐さんはまだ部屋に酔うんなら、無理に喋るな!」
そんな私達の漫才なやり取りに、茶虎の男は呆れた表情をしつつも話を続ける。
「しかし、俺としても"今回の件"は不服なんだわ。とはいえ、俺にも相応の立場がある」
「まぁ、私達も話し合いで解決出来るんなら、そうしたいけどさ」
「そこで・・・どうだ?この場所で、俺と鬼ごっこをしないか?」
「って、なんでそうなるの!?」
なんというか、いきなりの変な提案にこっちが拍子抜けしてしまいそうだ。
だが、更にそこから狐2人は結構とんでもない方向に話を進める。
『ふん、わざわざそんな事をせずとも。この鏡ごと叩き割れば・・・』
「残念。特殊強化された鏡だから、力ずくで壊す事は出来ない」
『それならば、俺の妖術で!』
「それも無理だ。この鏡は、ある妖怪の妖具でね。如何なる妖術をも跳ね返し、呪術すらも跳ね返すという・・・とても強力な妖具なのさ」
「ふ〜ん・・・あ、そっかぁ」
普段なら、こういう場面だと私が1番ヤケになってジタバタする所なのだが、今回は自分でも変に思えるくらい妙に落ち着いていた。
「綾ちゃん、何か考えが?」
「ん?いや、まさかとは思ってるけどね。黒狐さん、妖術が通用しないんなら"アレ"はどう?」
『なるほどな、綾。それならばコレだ!』
私の言葉の意図を察した黒狐さんが目の前の鏡へと手を触れる。すると、その途端に鏡は砂へと変化してサーッと簡単に崩れ去ってしまった。
「なっ!?」
『ふふ・・・どうやら、神術は跳ね返せないようだな』
「それを最初に考えついたのは私だけどね」
『ぬ、ぬぅ。しかし、俺の"変異の力"じゃなければ、こうして鏡を完全に無力化は出来なかっただろう?』
「はいはい、ちゃんと分かってますっての。それよりもほら、早いとこアイツをとっ捕まえないとね!」
私は、鏡が砂へと変えられた事に驚いている茶虎の男へと人差し指を向ける。
「う、嘘だろう!稲荷の妖狐が、こんな力を持っている訳が・・・!」
「知ってるか、こういうのは"グローバル化"っていうんだよ!」
「綾ちゃん、それだと亰嗟の丘魔阿さんの受け売りだよ・・・」
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――それから数分後
黒狐さんがどんどん鏡を砂に変えて男を追い詰め、とうとう壁際で逃げられなくなった所で私達と対面となった。
「さぁ、観念しろよな!」
「あ〜あ・・・こんな簡単に負けたら、後で親父に怒られる。まぁ、呪術も効かないような奴ら相手じゃ、これが限界だな」
そんな言葉に私と椿は"一体どういう事なのだろう?"と首を傾げる。
「えっ?効かないって?」
「まさか、黒狐さんが・・・?」
『当然だ。鏡を砂に変えるだけじゃなく、仕掛けられた呪術の方も別の力へと変異させていたからな。しかし・・・これはあんまり多用するものではないか・・・』
なんと、黒狐さんは全力で私達を守りながら男を追いかけていた状態だったのだ。そして、そこで力を使い過ぎたからか、肩で息をしながら疲れた様子を見せている。
「とりあえずサンキュー、黒狐さん・・・」
『ふっ・・・そう申し訳なさそうな顔をするな、綾。俺は椿の為にやっただけなのだからな』
一先ずはまだ戦えるといった感じではあるが、この疲れぶりからしてしばらくは神術を使えないかもしれない。