私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
美亜の兄である茶虎の男に勝った私達は、その先にあった牢獄へと足を進める。その部屋の造りからして、どうやらあの鏡の迷路は牢獄から脱走された時の対策も兼ねていたようだ。
そして美亜の妖気を辿りつつ、引き続き黒狐さんを先頭に1番後ろの牢屋まで調べていくと、私達はそこに見覚えのある尻尾が見えて声をあげた。
「美亜!」
「美亜ちゃん!」
1番奥なのもあってか殆ど真っ暗な牢屋に、黒いキャミソール姿でグッタリとしている美亜を見つけて私達は叫んだ。
一瞬まさかと思ってしまったが、その私達の声に彼女の尻尾がビクッと反応したのでホッと胸を撫で下ろす。
「おい、美亜!しっかりしろ!」
「美亜ちゃん、大丈夫!?美亜ちゃん!!」
「うっ・・・な、何で・・・アンタ達が此処に?」
そして美亜は突っ伏した状態から顔を上げて私達を見ると、まだ強がっているのか困惑したような言葉を口にしてくる。
「何しに・・・来たのよ。此処は危険よ、帰りなさい」
「何しにって、美亜ちゃんを助けにだよ。待ってて、今そこから出すから」
椿が白狐さんの力を解放して、鉄格子を強引にこじ開ける。それでも美亜は私達へ強がりの言葉を向けてきた。
「バカ・・・これは私達家族の問題なのよ。部外者のアンタ達は首を突っ込まないで!」
「部外者?残念だけれど、僕達は任務として美亜ちゃんを助けに来ているんだよ」
「任務?それは一体、どういう事よ・・・」
その椿の言葉を聞いて、美亜は目を丸くする。そして白狐さんが、それについて詳しく説明を始めた。
『美亜よ。昨日センターから、新しく依頼が出された。お主の父と妹を捕まえろ、との依頼がな。そして同時に我らの方で、お主の救出作戦を行っている・・・という訳だ』
「そうそう、名付けて"じゃじゃ馬猫娘救出大作戦"って――美亜?」
すると、その説明を聞いた美亜は顔を真っ青にして呆然としてしまった。
「嘘・・・そんな。お、母様・・・」
「えっ?」
椿が美亜の言葉に不思議そうな声を上げるが、とりあえず今は彼女の救出を優先する事にした。
「よし、簡単に開いてくれたな。美亜、早い所ここから出よう」
そして、長い事食事を貰っていなかったせいか妖気まで切らしていた美亜へ、私は椿から妖怪食のおにぎりを受け取って差し出した。
「ほら、まずは腹ごしらえをして元気を戻さなくっちゃね」
「くっ・・・!」
私達にあんな言葉を吐いて出ていってしまったのもあってか、美亜は少し素直じゃない反応をしながらも私の手からおにぎりを取ってガツガツと食べ始める。
「まだ何個かあるから大丈夫だよ、美亜ちゃん。あぁ、ほら・・・喉に詰まりそうじゃないですか」
「全く、ほれ。飲み物もあるから慌てんなっての」
そして私が差し出した水筒を飲んだ美亜は、何が入っていたのか突然ビックリした顔で吹き出した。
「ぶふぅ!あ、甘っ!!椿、アンタ何でおにぎりなのに、めちゃくちゃ濃いカル〇スなのよ!」
「はぃ!?つ、椿・・・これカル〇スだったの!?」
「えっ?美味しくないですか?」
「えぇ〜、っと・・・その、まぁ個人差だよね。うん、あまり深くは言わないでおくよ」
「子供かっての・・・全く」
なんというか、椿のチョイスに私も美亜も驚きつつも、ここでようやく一息がついた。
おにぎりを食べ終えた美亜が、気まずそうな表情で私達へと話しかけてくる。
「アンタ達、なんで来たのよ。例え任務でも、アンタ達が来る必要はなかったでしょ?それにランクの問題で、アンタ達がこんな任務を受けられるハズが――」
「ふっふっふ〜それがそうでもないんだな!」
「確かに今回の任務は本来なら僕と綾ちゃんでは受けられないSランクの任務だけど、おじいちゃんの家の妖怪さん達全員でという事で特別措置を取られているんだよ。ただ、失敗したらすぐに強硬手段を取れるようにって、外にはセンターからの要請でやって来た、Sランクのライセンスを持っている妖怪さんも来ているけどね」
その椿の説明に、美亜は納得した様子で頷く。
「そう・・・やっぱりSランクなのね。というか、全員で来たからだったの。道理でさっきうるさい子が入ってきたから、何となく嫌な予感がしたと思ったわよ」
「ん?うるさい子?」
「なんだろう・・・すっげ〜心当たりがあるような、ないような・・・」
「多分、あの子ね・・・こっちよ」
美亜はまだふらつきながらも立ち上がって、私達を案内する為に前を歩こうとする。
とはいえ体力を酷く消耗している彼女に無理はさせられないので、すぐさま私と椿は両側から美亜へ肩を貸して支えた。
「あっ・・・椿、綾。その、えっと・・・あの時はごめん。それと、助けに来てくれてありがとう」
「ったく〜自分で勝手に突っ走るのは良いけど、私達だって美亜を心配してるのは忘れんなよな」
「綾ちゃんの言う通りです。美亜ちゃんは僕達の友達なんだから、助けるのは当然だよ」
「バ〜カ、私が言ってるのはライバルとしての話よ」
「素直じゃねぇな〜」
「まぁ良いわ。あっ、此処よ」
そして美亜の案内で、その"うるさい子"とやらが捕まっている牢屋へと辿り着いたが――
「あっ、姉さん達!よ、良かった〜!た、助けてくださいっす〜!!」
「やっぱり楓かよ・・・まだライセンスを持ってないってのに何してんの!?」
「楓ちゃん・・・家に戻れって、おじいちゃんからも言われたでしょう?それなのに、結局ここに入ってきちゃったんですか?」
「いや、その〜・・・」
「あ〜もう、本当にいつの間に入って・・・しかもシッカリ呪われてるし!」
足を案山子のような姿に変えられた楓に、私は呆れた声でため息をついた。椿も私と同じく、首を横に振りながらため息をついている。
「ご、ごめんなさい〜自分、早く皆に認めてもらってライセンス試験を受けたかったっす〜」
「だからって、こんな任務に着いて来ても意味ないんだけどな。ちょっとは頭を落ち着かせろって、楓はさ」
「仕方ない・・・楓ちゃん。全てが終わるまで、君には此処に居てもらうね」
「そうね、その方が安全ね」
『うむ。帰ったら美亜と共に、翁にたっぷりとお灸を据えてもらおう』
「へっ?何で私まで!?」
白狐さんの言葉に美亜が予想外だと言わんばかりに驚くと、彼はそのまま美亜へ話を続ける。
『当たり前だ。お主はもう立派に、翁の家の妖怪じゃ。だから、誰の許可も無く1人で勝手に事件を解決しようとするな』
「あっ・・・でも、でもこれは」
「今更あれこれ言ったって遅いんだからな。もう皆は此処に来ている訳だし、とっくに美亜1人の問題じゃなくなってるんだ」
「そうですよ、美亜ちゃん。それに、君は居候していると思っているようだけど、今じゃ皆はもう美亜ちゃんの事を家族同然に想っているんだよ。それだったら、なんで皆が此処に来てくれたのかも分かるよね?」
すると、その私達の言葉があまりに嬉しかったからなのか、美亜は顔を俯かせてポロポロと涙を流して泣き出してしまった。
「うっ・・・ぐぅ。あ、アンタ達は大バカよっ、何で・・・何で私みたいな無能なんかに、そこまでぇ・・・」
「おいおい美亜、そんなモンは気にすんな。これでも私は、美亜の事を強い奴だって認めてるんだからさ」
「それに無能だと思っているのは、美亜ちゃんだけでしょ?僕も綾ちゃんと同じように、美亜ちゃんの事を強い妖怪だと思っているよ」
「あの〜、もしかしなくても自分放ったらかしっすか?」
「・・・うん、すまん楓。もうちょい待ってて」
気まずそうに困惑する楓へ人差し指を立てて静かにするジェスチャーをしながら、私は椿が美亜へ話を続けるのを見守る。
「だって美亜ちゃんは、どんな逆境になっても諦めないで努力を続けて強くなろうとしている。それは普通なら、心が弱い妖怪には出来ないよ。だから僕達は、誰よりも君の事を強い妖怪だって・・・そう思っているんだよ」
「椿。あ、アンタ・・・」
「ふふ、だって僕と綾ちゃんのライバルなんでしょ?"神妖の力"を持つ僕達のライバルなんて、相当強い妖怪じゃないとね?」
「グス・・・言うようになったわね。ふん・・・そうよ椿、私は強いのよ。だから、私の家族が犯した馬鹿な計画なんか叩き潰してやるわよ!」
椿の説得で美亜は完全に心が立ち直って、力強く顔を上げて叫ぶと私達へと普段の気丈な笑みを浮かべて見せた。
「うぅ・・・自分はどうでも良い扱いなんすかね・・・」
「正直、私達は潜入してるって事だからさ。だから楓、今回は勝手な事をしちゃった罰も兼ねて、しばらくそこで頭を冷やしとけよな」
「ふふ、楓ちゃんは偉い子だよね?」
「椿姉さん・・・何だか怖いっす」
すまんな楓、本当にすまん。今すぐ助けたいのは山々なんだけど、私と椿でも引っかかりまくるような罠だらけの屋敷で連れ回せる自信は無いんだよ・・・トホホ。