私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第参拾壱話 タンスの角が怖ぇ〜!!

 

――美亜を救出してから

 

「吾郎兄様・・・」

 

「よう、美亜」

 

私達が鏡の迷路だった部屋へと戻り、そこで私達の"ある妖具"によって捕まっている美亜の兄の茶虎の男を見つけると、美亜はドン引きした眼差しを彼へと向けた。

 

「何で、その・・・隷属の首輪を?」

 

「変な目で見るな。その子達に聞け・・・」

 

「いや、あの・・・ごめんなさい、美亜ちゃん。そんなに睨まないで。確認しなかった僕達が悪いんです」

 

「うん、私も今回はすり替えられてないって思ったのが間違いだったから・・・だから、積もる文句は里子に言ってくれ〜!」

 

なんというか、あの子には多分凄い執念があるわ。まぁ、それでも部屋で首輪のリードを繋いでおけそうな場所があったから、一応は良しとしておくけどさ。

 

「はぁ・・・全く。椿に綾、アンタ達は相変わらずね。そういえば兄様、あの人達は今何処に居るの?」

 

そして美亜は、自身の兄へと近づいて父親の居場所について質問をする。

 

確かに、この人は美亜と同じ家の生まれでオマケに厳格そうな家族から適当な扱いをされている訳でもなさそうだ。

もしかしたら有力な情報が――

 

「美亜、悪いが・・・俺から教える事は出来ない」

 

「そう、ごめんなさい」

 

「むむむ・・・」

 

どうやら駄目みたいだ。

 

その言葉を聞いて、美亜も少し悲しそうな顔をして立ち去ろうとするが、その途端に美亜の兄はわざとらしい大声を上げだした。

 

「あ〜しっかし。こんなのしんどいよなぁ・・・!何で俺がこんな目に!親父達は他の奴らに警備を任せ、悠々としているんだもんなぁ!正直やってらんねぇよ、あんな親父の元ではよ!どうせ"いつもの所"でノンビリしているんだろうなぁ!」

 

突然の彼の行動に私も椿も驚いて振り返ってみるが、美亜の兄は"単に不満を独り言にしているだけですよ"といった顔で首を横に振っていた。

 

いやいや、演技にしても少しは何か捻らないのか?

 

「あ〜しまった!ついでに美亜の服、傷んでたから直して洗ってやったけど、そのまま干したまんまじゃねぇか!やっべ、誰か2階に行って取り込んでくれないかな〜」

 

も、もうツッコミは入れないぞ、私は・・・絶対これ美亜に聞こえるよう、わざとやってるってのはバレバレだもん。そして案の定というべきか、美亜は少し嬉しそうに頬を緩ませていたし。

 

ここでようやく白狐さんも口を開いてくれた。

 

『ふっ、とにかく急ぐぞ。向こうも作戦通りに進んでいるとは限らんからな』

 

「うん、分かった白狐さん」

 

「よし、早い所とっとと行こうか美亜」

 

「えぇ・・・分かったわ・・・」

 

「良いお兄さんだね」

 

最後の方にボソッと美亜が何かを呟いた言葉に、椿が優しい笑顔でそう反応した。何と言っていたのかは分からなかったが、今の椿の言葉からしてきっと美亜は兄に感謝していたのかもしれない。

 

まぁ、それを椿に聞かれていたと知った美亜は顔をボンッと真っ赤にして早歩きで先を急いじゃってるけどね・・・やっぱり素直じゃないな〜美亜は。

 

「ほら、綾もニヤニヤしてないで早く行くわよ!あっ、そことそこに呪術が仕掛けてあるから気を付けなさい。此処に来るまでに全部解除していなかったのね、全く・・・」

 

『おぉ、こんな所にまで・・・流石にコレは見落としていたな』

 

「うわぁ〜やっぱりスゲーよ、美亜は・・・。呪術についちゃ黒狐さんよりもエキスパートだね」

 

「ふん・・・褒めても何も出ないわよ、綾?」

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

――それから少しして

 

美亜の案内の元で2階にあった部屋の1つから彼女の衣服を回収し、再び小休止をしている時に椿が美亜へ重要な事について質問する。

 

「ねぇ、美亜ちゃん。君の家族は一体何をしようとしているの?」

 

「そういえば、依頼の紙には詳しい事は何にも書いてなかったもんね。大雑把に"捕まえろ"だとか"情報を聞き出せ"くらいしか記されてないから、具体的に美亜の家族が何をやらかしたのかが気になるよ。椿の爺さんも狐2人も知らない様子だったし」

 

「そうね、それを説明しないといけないわね。でも、その前に他の皆と合流しないといけないでしょ?」

 

そして美亜は普段の黒いワンピースな衣装に着替えてから、今度は私達が入って来た玄関ホールへ続く大きな階段へと進み始めた。

 

確か、そっちの方は椿の祖父達が情報収集を円滑に行えるようにと奇襲をかけていたハズなのだが・・・1階に誰も居ない様子からすると、奇襲が上手くいかなかったのだろうか?

 

そう思いつつ、ホールの大階段を降りていくと――

 

「あっ、椿ちゃんに綾ちゃん〜!美亜ちゃんも〜無事だったのね!良かった〜!」

 

「ちょっとちょっと!下手に首を伸ばして来るんじゃないわよ、ろくろ首!そこに呪術が仕掛けられてるんだから、あ〜もう!」

 

ホールには家の妖怪達が困惑した様子で立ち往生していて、美亜は此方に首を伸ばそうとしたろくろ首へと注意をしていた。そして彼女は、皆が集まる玄関ホールへ移動しつつ、ホールに集まっていた皆へ呆れたため息をつく。

 

「全く、アンタ達は・・・此処は呪術を得意とする一家の屋敷よ。ガードマンなんて、そんなの雇う訳ないでしょう」

 

「美亜ちゃん、この作戦を考えたのはおじいちゃんだから」

 

「あの妖怪、ボケているんじゃないの?」

 

「今更になってみると、確かにね〜ハハハ」

 

「あっ・・・綾ちゃんに美亜ちゃん、後ろ後ろ」

 

椿の言葉に私と美亜が振り返ると――

 

「ほう、誰がボケとるんじゃ?」

 

「ホゲぇぇぇ!椿の爺さん、いつの間にぃぃい!?」

 

「あら?流石は鞍馬天狗ね。1人で屋敷をウロウロしていても、呪術には一切引っかからなかったみたいね」

 

おっかなビックリして椿の後ろへ逃げた私とは対照的に、美亜は椿の祖父へと強気な発言をする。

いや、ねぇ・・・荒事慣れしてる私だって、あの椿の爺さんの怒った時の迫力はメチャクチャ怖いですもん。

 

「ふん、あんな物でこの儂を呪う事は出来んわ。しかしちょうど良かった、実は楓の奴がな・・・」

 

「あっ、それなら美亜と同じく牢屋に捕まってましたよ。迂闊に外に出したら危ないかと思って、まだそのまま閉じ込めてる状態ですけど」

 

「むっ・・・そうか、綾。それならば、後は情報と美亜――お前さんの家族の確保じゃな」

 

私から楓の安否を確認した椿の祖父は、それからグルリと頭を回して屋敷の中を見渡した。

 

「しかし・・・妙じゃの。この家には誰も居らんのか?1階は全て見て回ったが、まるでもぬけの殻じゃったな」

 

「私達が美亜を助けに行ってた間、椿の爺さんは屋敷の中を調べてくれてたんですか?」

 

「ああ、そうなんじゃが綾よ・・・家の者ばかりか、家具すらも見当たらん。これは一体どうなっとるんじゃ?」

 

「はい!?そんな馬鹿な!」

 

「えっ?でも僕と綾ちゃんが呪われた部屋には、ちゃんと家具が・・・」

 

すると、皆の様子が何かおかしい事に首を傾げている私と椿へ、美亜が驚いた表情で質問をしてきたのだ。

 

「椿に綾、アンタ達2人共に見えてるの?」

 

「んぁ?そりゃどういう意味だよ美亜。私達は普通に見えてたぞ」

 

「うん、僕も綾ちゃんと同じで最初から家具は見えてたよ。ねぇ、そうだよね白狐さんと黒狐さん?」

 

あの時には狐2人も現場に居たので、私達はその事をちゃんと認識出来ていると思っていたのだが・・・なんと2人から、とんでもない言葉が飛んできた。

 

『いや、悪いが・・・我はお主ら2人があの場に座った瞬間にテーブルや椅子、更にはぬいぐるみ等が突然そこに現れたように見えた』

 

『あぁ・・・俺もだ、白狐』

 

「はぁ!?何それ怖っわ!!私と椿にしか見えなかったって事は、まさか今度は家具の幽霊とかか!?」

 

「大丈夫よ、落ち着きなさい。綾に椿、アンタ達の方が正常よ。周りをジックリと見てご覧なさい、そして妖気を隅から隅まで感知してみて」

 

美亜からそう言われ、私と椿は集中しながら玄関ホールを見渡してみる。

 

すると、椿の祖父は何も無いと言っていたハズの場所には、キチンとした様子で高級そうな柱時計やらシャンデリアやらが鎮座しているのが見えた。

 

その事に気付いた椿が、すぐに確認の質問を行った。

 

「おじいちゃん、アレは見える?」

 

「なんじゃ?そこに何かあるのか?」

 

しかし椿の祖父は先程と同じく何も見えていないらしく、狐2人や他の皆もそれらの家具が全く認識出来ていないようだった。

 

「美亜ちゃん。まさか、これって・・・」

 

「ひょっとしなくても、皆には家具が見えてないって事か!?」

 

「ご名答。この洋館に入った瞬間に、皆は既に呪われていたのよ。この洋館に住む者や置いてある家具、それらが一切全部見えなくなるって呪いがね。ちなみに引っかかってしまったら、それは呪った本人が解除するか、そいつが死ぬかしないと解けないわよ〜」

 

「な、な、な、何じゃそりゃあ〜!?こんなのに引っかかっちゃったら、タンスの角が怖ぇ〜!!」

 

「そんな事を言ってる場合なの、綾ちゃん・・・何か2階の方から妖気が近づいて来ているよ?」

 

椿の言葉を聞いて、私も再び集中して言われた方向の妖気を探ってみると、確かに鎧が歩いているかのような音と一緒にそこそこ強い妖気が近づいて来るのを感じ取れた。

 

「なるほどね、最初っから向こうにはバレバレだったって事か!」

 

こうなってしまったなら仕方ない、作戦はプランBへと変更だ!

えっ、その内容?そりゃあ勿論、正面突破ですよ!!

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