私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

188 / 390
第参拾弐話 私達の苦戦とは一体

 

"家の中にある存在が何も見えなくなる呪い"に引っかかっていない私と椿、そして美亜はガシャリ・・・ガシャリと歩いて来る音の方へと視線を向けた。

 

「クソ〜思ってたよりも、結構な数が来てやがんな・・・1人や2人ってレベルじゃね〜ぞ!」

 

「椿も綾も、何かが見えているのか?」

 

そして湯口先輩も皆と同じく"見えなくなる呪い"に引っかかってしまったらしく、錫杖を構えてキョロキョロと周囲を警戒していた。

 

「うん、見えているよ湯口先輩。さっき僕達が来た方向とは反対側の通路、そこから沢山来ている音がする」

 

「ふん、他の呪術が効かないと分かったようね。それで物理的に追い出そうとしているみたいだけど・・・もう遅いわよ!今までのお返しとして、トラップ式の呪術を仕掛けておいたわ!」

 

「おぉ〜流石じゃん、美亜!」

 

ホッと一息ついて、その集団の足音が止まるのを待つが・・・何時まで待っても、全然止まる気配が無い。

 

「あの〜、美亜さん?ほ、ホントに呪術を仕掛けたんデスヨネ?」

 

「み、美亜ちゃん・・・大丈夫、だよね?」

 

不安になって私達は美亜へと尋ねるが、彼女は顎に人差し指を当てて考え込んでからビックリする一言を放ってきた。

 

「あっ、いっけない。さっき仕掛けた呪術、アレ生身にしか反応しないんだった」

 

「ホワィ!?ちょ、ちょちょちょっと〜!!」

 

「嘘でしょ〜!?今来てるの、鎧を着た人達なんだよね!?」

 

その私達の驚きぶりに、美亜は少し焦りつつもまだ余裕がある笑みを浮かべてみせた。

 

「あら、椿に綾〜その通りよ。だけど、中身なんて無い奴ね」

 

「空っぽの鎧!?それじゃあ全然意味ないじゃん!」

 

「そしてサラッと重要な事を今更言わないでくれ〜!だったらアレは、完全に某生物災害ゲームの4作目で見た事がある奴って事かよ!?」

 

「そ、そうなると後は、まさか――」

 

椿が振り返ったのに合わせて、私も美亜の方へ振り返る。この流れは嫌な予感が・・・

 

「椿に綾、2人共にファイト!」

 

「そうなるよね、やっぱり!!」

 

「僕と綾ちゃんで何とかしなきゃいけないの〜!?」

 

「あら、心外ね。私は皆にかかっている呪いの解除と、鎧に呪術をかけた奴を探してくるわよ。私なら"見えなくなる呪い"の方は解けるし、鎧の方の呪術も誰がかけたのかは既に分かっているけどね」

 

なんというか・・・美亜も中々冗談がキツくて困る。

"かけた本人にしか解除出来ない"なんて言っておいて、実際は同じ金華猫だから解除可能だみたいな話は最初に言うべきなんじゃないだろうか?

いや、美亜の事だから最初から私達をからかうつもりだったのかも・・・。

 

そうこうしている内に、玄関ホールの上階から西洋の甲冑の集団が姿を現した。

 

「美亜ちゃん、これ何体来るの?」

 

「50体くらいよ。あっ、そうそう・・・術者を倒さないとアイツらはずっと襲ってくるから、私がそいつを見つけるまで――」

 

「だったら問題無いね。椿、行くよ!」

 

「うん、綾ちゃん!」

 

大きく深呼吸をしてから、私は儀礼衣装に変身し、椿は白狐さんの力を解放して鎧の集団へと突撃をかます。

 

鎧の連中は私達のそれに応じて、各々が手にした武器を振り下ろしてくるが、私達の動きはそれよりも早く敵の懐へと辿り着く。

 

「てぃ!」

 

「どぉりゃあ!」

 

そして私達は攻撃の瞬間に、勢いをつけた脚や鋭くした爪へ妖気を集中して硬く変化させ、鎧の足を破壊して歩けないように転ばせた!

 

「お見事ね、2人共。そういえば、足を壊せば動けなくなるんだったわね〜」

 

「ま、私達だって伊達に修行は怠ってないからね。殆ど、わら子の守護をしている4人のお陰だけど」

 

「ふ〜ん・・・ただ、まだ数十体もいるから気を抜くのは早いわよ」

 

「美亜ちゃん、それは分かっています!」

 

美亜と会話を続けながらも、私は椿と互い違いになる形でそれぞれの後ろから襲ってくる鎧の足を砕く。その勢いに乗って更に私達は攻撃のスピードを早めて、ドンドンと鎧集団の足を壊してその場に転ばせていく。

 

「よし、あらかた――って、あぶねぇ!流石に足を壊されただけじゃ、攻撃を諦めてはくれないよな〜・・・おおっとぉ!?」

 

「ふっ!おっとっ・・・!綾ちゃん、そこ!ほっ!」

 

そんな鎧の攻撃を避けながらも足を破壊している私達へ、湯口先輩は何とも言い難い表情で首を傾げていた。

 

「椿と綾の奴・・・端から見たら何も無い場所を攻撃しているが、動きからして多分その鎧に襲われているんだよな?」

 

「確かに皆から見たら、僕達がパントマイムしてるような感じですよね!でも湯口先輩、まだ戦っている途中なんですから余計な口は挟まないで――うわぁ!?」

 

「つ〜か美亜、まだ皆の呪術は解けないのかよ!?これじゃ、何時まで経っても埒が明かないんだけど!」

 

「ああもう綾、うっさいわねぇ・・・えっと、あれ?これ、トラップ式じゃないの?ちょっと皆!この洋館へ入る前に何か見なかった!?」

 

「むっ?何かじゃと・・・?いや、何も見とらんが・・・」

 

「う〜ん・・・何かって、まさか!ちょっと待って、それなら僕は心当たりがあるよ!あっ、綾ちゃん足元危ない!」

 

「うぉっと!サンキュー椿、助かったよ!なるほど、洋館に入る直前に見た"3階の窓"に居た人かもね」

 

「はぁ、冗談でしょ・・・それの仕業ね。そうなると、これは私じゃ解除出来ないわ。3階の窓からって事は、あの子ね・・・美弥子に並ぶ程に、この一家始まって以来の天才だけれど、問題児でもある。私の妹の1人、美瑠(みる)の呪術ね・・・」

 

「えぇ、マジかよ!はぁ・・・はぁ、そ、それ結構詰んでない!?」

 

しかも私達の方も流石に体力が切れてきてしまい、30体も倒せない程度で息切れを起こし始めてしまう。

 

「と、とりあえず美亜ちゃん。この鎧を動かしている呪術の方を、先に・・・!」

 

「えっ、あっ・・・そ、そうね!ちょっと待ってなさい!」

 

「あぁ、頼むよ――ぐっ!椿、危ない!!」

 

そして私が一瞬油断した瞬間に足元を引っ張られて転ばされてしまい、更に椿の後ろからも敵の攻撃が迫ってきてしまっていた。

 

椿はすぐに白狐さんの力を防御に回そうとするが、このままだと間に合わない!

 

――そう思った瞬間、彼女を攻撃しようとしていた鎧が殴られたようにして吹っ飛ばされ、そのまま壁に叩きつけられてハンマーで潰されたようにバラバラにひしゃげていた。

 

「「へっ?」」

 

その光景を不思議に思った私達が鎧の居た方向へ視線を向けると・・・

 

「おいおい〜何これくらいで苦戦してんだ〜?妖狐とチビの嬢ちゃん共よ〜」

 

「全く、ネタに出来ない程に酷い戦いぶりだったから、僕の方もつい助けてしまったよ」

 

なんと鎧を吹き飛ばしたのは、ちくわを齧りながら酒の匂いを漂わせてフラフラしている酒呑童子と、相変わらず片手でメモを取りながらもう片方の手に長めの鉄パイプを持った伊吹であった。

 

しかし2人共に一体何をしていたのだろうか?確か、椿の祖父から此処の情報収集を任されていたような話を聞いていたのだが・・・この様子だと2人共に洋館で好き勝手やっていたとしか思えない。

 

「ヒック・・・たくよぉ。この家、ちくわしか無いじゃね〜か!あとマタタビ!アチコチの棚という棚を調べたっつ〜のに、こんなのしか出てこねぇとか・・・ふざけんなよ!」

 

「どっちが悪い奴だよ、それだと!」

 

「う〜ん、余り良さそうな絵画は無かったけど、僕もとりあえずは1枚2枚はデッサンの参考にと頂いてきたね・・・しかし、此処は雅な風情が少なくて本当に残念だ」

 

「残念なのはどっちの頭だっつ〜の!サラッと泥棒すんな!!」

 

「綾ちゃん、この2人最低ですよ・・・はぁ」

 

すると、私達がため息をついているスキを狙ってか再び鎧の集団は襲いかかろうと膝立ちになって起き上がってきた。

 

「あ〜ん?テメェら、ロクな酒のツマミも用意せず、終いには客人に手ぇ出すってか?教育がなってね〜ぞ、出直してきな!!」

 

「悪いけど、僕達にも"我慢の限界"というものがあるんでね。少しばかりストレスを発散させてもらうよ!!」

 

そこへ酒呑童子が風を切るような速さの拳を繰り出し、伊吹が鉄パイプを力任せに床へ叩きつける。

 

しかし、たったそれだけの攻撃だというのに2人の攻撃は異常な威力を持っていたようで、発せられた衝撃波が鎧の集団を吹き飛ばすばかりか、もし中に人がいたら"ミンチよりもひでぇや"としか思えない程に一瞬で鉄クズへと変えてしまったのであった。

 

正直な話、私と椿で苦戦していた相手をアッサリ倒してしまった2人に私達はポカーンとしてしまっていた・・・私達の苦戦とは一体、うごご。

 

オマケに2人も私達と同様に"見えなくなる呪い"が通用していないのだが、これは引っかからない条件があったりしたのだろうか?

 

「はっはっはっ!どうだ、ざまぁ見やが・・・れ、ぐがぁぁあ〜」

 

「大の字になって寝た〜!?ってか、こんな流れ前にも見たわ!!」

 

「僕も休憩がてら、ちょっとネタを整理させてもらうよ・・・ふむ、ううむ・・・」

 

そんな鬼2人の自由気ままさに、椿は呆れ果てて祖父の方へ振り返っている。

 

「おじいちゃん・・・酒呑童子さんと伊吹さんも、地下の牢に入れておきましょうか?」

 

「いや、此処に置いておけ。わざわざ、また地下へ行くのも面倒じゃろう」

 

「なんだかんだ言って、あの2人が強いのは羨ましいよ・・・はぁ、私もあれ程に強ければな〜」

 

「うぅ・・・綾ちゃんはそのままでいてください、出来れば」

 

「なんで!?」

 

あの2人の事を素直に羨ましがっていたら、何故か椿から哀れまれるような眼差しを向けられたんですが。

 

えっ、何?私って椿からも、そんなに将来を心配される性格してるの!?

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。