私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第参拾参話 やり残しが嫌いだからね

 

「さて、と・・・いい加減に出てきなさい」

 

鬼2人が鎧の集団をアッサリ片付けた後、美亜はため息をつきながら柱時計へと声をかける。

すると、その後ろから美亜より少し低い身長のショートヘアに茶虎の耳と尻尾を持った男の子が姿を現した。正直に言うと、見た目はとても可愛らしい美少年な子である。

 

「み、美亜お姉ちゃん・・・ズルい」

 

「あ〜ら、優秀なげb――仲間を持つ事も、実力の内よ」

 

「サラッと何かヤバげな事言いそうになったぞオイ」

 

こんな幼い子の前で下僕とか言われたら、多分私はメンタルを結構抉られるんですけど。そして美亜とのやり取りからして、あの子はどうやら彼女の弟といった所だろうか。

 

「それよりも弥太郎"兄さん"、いい加減に私を「お姉ちゃん」と言うのは止めてよ!」

 

「え〜良いじゃん、美亜お姉ちゃん」

 

「なんか、バカにされているみたいなんだけど!?」

 

「「・・・」」

 

『おい、椿と綾がフリーズしているぞ?』

 

『綾の方はとにかく、椿はキスでもしたら戻るじゃろ。どれ――むぐっ!?』

 

「もう、皆の前で止めてください白狐さん・・・」

 

「あ、しまった。ごめん椿、ついビックリし過ぎて何か心が何処かにすっ飛んでたよ・・・」

 

ふと白狐さんがそんな事を言い出した事で私達はハッと我に返り、椿がギリギリで彼のそれを両手で止めていた。

 

「とりあえず、そっちの弥太郎く・・・さんは美亜の兄さんって事なんだよね。結構ややこしいんだけど、どうして美亜を"お姉ちゃん"呼びに?」

 

「あ〜もう、あの時の罰ゲームは既に期限切れよ!だから弥太郎兄さん、ちゃんとした呼び方で呼んで!」

 

「いやいや、何だかこっちの方がシックリときちゃってて〜。だから別に良いでしょ、美亜・・・お姉ちゃん?」

 

「うっわぁ、今度のは凄い意地悪そうに言ったな〜・・・」

 

なんというか、多分これは小さい頃の遊びで美亜がやらかしてしまった感じだろう。自業自得とはいえ、美亜本人は拳を握り締めて怒りを堪えているのがジワジワくる。

 

そして美亜はそこから深呼吸して落ち着き、もう1人の兄である弥太郎へと質問をした。

 

「ふぅ・・・まぁ、良いわ。それで弥太郎兄さん、あの人と美海は何処に居るの?」

 

「・・・母様を助ける気か?」

 

すると、先程までの子供らしさが冗談だったかのように、弥太郎の雰囲気が真剣そのものへガラリと変わる。その言葉の語気からして、美亜の質問へ答えるつもりは無いらしい。

 

「そうよ、弥太郎兄さん。そうしないと、あれが・・・金華蘭(きんからん)が育ってしまう」

 

「何、金華蘭じゃと!!」

 

その美亜の言葉に、いきなり椿の祖父が反応して発せられた大声に私達はビックリしてしまった。

 

「え〜っと・・・つまり何がどうなってヤバいの?」

 

「白狐さん、金華蘭って?」

 

そして皆も椿の祖父と同じように怒っているような状況となってしまい、椿がすぐに一応まだ冷静な白狐さんへ質問をする。

 

『うむ・・・簡単に言うと、麻薬じゃ』

 

「えっ・・・」

 

「なるほど、麻薬ね・・・って!全力で悪い事じゃん、それ!」

 

不味いですよ、これは不味い!

 

麻薬と同じような物って事はつまり、ほぼ確実に裏で莫大な金を動かすような奴に繋がるって、昔オジサンと一緒に見た刑事ドラマか何かで散々見てきましたよ!

 

それに妖怪絡みの麻薬とか、私の予想だけど多分かなりヤバそうに感じるんですけど・・・!

 

長い沈黙の中、重苦しい表情で美亜が口を開いた。

 

「いくらでも、罰は受けるわ。だけど・・・だけど、せめて・・・この事だけは、私の手で決着をつけさせて」

 

「むぅ、仕方ない。どちらにせよ、このままでは儂らが足手まといじゃ。とはいえ、本当に此処で金華蘭を作っているのであれば、逃がす訳にはいかんぞ」

 

そんな強い決意を込めた美亜の言葉に、椿の祖父は悩ましげに頭を掻いた。

彼女の"想い"に応えてやりたいのは山々だけど、確かにこのままじゃ"物が見えない呪い"のせいで迂闊に動く事も出来ない・・・どうするつもりだろうか?

 

「とにかく、今からセンターの方に増援を要請する。これはもう儂らだけの依頼ではない、早急に決着を着けねばならん事項じゃからな」

 

「おじいちゃんの言う通り、敵の素性が明らかになって、戦力も予想出来なくなったから当然ですよね・・・」

 

しかし、その提案に美亜は納得がいかなかったらしく、そこへ焦り気味に食い下がってくる。

 

「待って!それでも、これは私の・・・家族の問題なの!」

 

「言わんかったか?儂らだけの問題ではない、と。それは家族だから等といった私情を挟んでいる場合ではないと、そういう意味で言ったハズだがの」

 

「うっ・・・」

 

椿の祖父の真っ当な正論に頭へ血が登りかかっていた美亜は、まだ目はキッと睨みつけたままではあったものの、興奮して立てていた尻尾を下ろして引き下がった。

 

「さて、儂は増援を要請しに行くついでに、皆の呪いを解除出来る奴も手配してくる。しかし、時間はかかるじゃろうなぁ・・・準備に30分、いや1時間かのぅ。更に此処へ30分以内で来られるとしても、突入しながら解呪をするとなると20分か。う〜む、2時間近くも連中が待っていてくれるとは限らんし、誰か足止めか説得で時間を稼げんかのぅ・・・」

 

「椿・・・この爺さんも、さっき何処かで見た誰かさんみたいな事すんだけど」

 

「綾ちゃん、そこは言わないであげてください」

 

まぁ、つまりは"センターの増援が到着する2時間以内なら美亜の好きなようにしろ"という話なのだろう。

なんというか、どうして誰も彼も素直に彼女の背中を押せないもんかね・・・全く。

 

「あっ・・・ありがとう、ございます。でも、結果がどうなったとしても、私は逃げませんから」

 

それでも美亜には、椿の祖父の伝えたかった事が理解出来たようで、少し涙目になりつつもお辞儀をして礼を言った。・・・言われた本人は照れ隠しのつもりか反応しなかったけれども。

 

そして、椿も美亜に続いて啖呵を切る。

 

「よし、美亜!それなら早い所、お前の親父さんの所へ向かわないとな!」

 

「そうだね、綾ちゃん!それに美亜ちゃん・・・全ての決着を着けるって事は、お父さんに直接話を聞きに行くんでしょう?」

 

「ええ、そうね・・・って、ちょっと待ちなさいよ!何でアンタ達まで着いて来ようとしているのよ!?」

 

「「えっ?駄目(ですか)?」」

 

「駄目よ!」

 

そして、ここにも素直じゃない奴が1人居たよ。

というか、そのツンデレ筆頭と言っても過言じゃないと思うんだけど。

 

「ぶぇ〜・・・美亜のケチ」

 

「それに、また美亜ちゃんを牢まで迎えに行くのはなぁ・・・折角助けてあげたのに」

 

「"助けて"なんて言ってないわよ!それに何で私がまた捕まる前提なのよ!?」

 

「あ〜あ〜聞こえないね〜私も椿も、耳を塞いでるから聞きたくない事は――」

 

「2人共、耳塞ぐんじゃないわよ!」

 

「あだだだ!ち、ちょっとからかっただけだってゴメン!だから耳引っ張んな〜!」

 

「ぎゃうっ!美亜ちゃん・・・耳を捲って怒鳴らないでよ〜」

 

ついつい3人で変な漫才をやってしまった中、狐2人はコソコソと少し不安そうに相談し合っている。

 

『アイツら、大丈夫か?』

 

『う〜む・・・不安だ。しかし、俺達には相手が見えないんだろう?ここで着いて行った所で・・・』

 

『だが、やはり3人だけでは危険じゃぞ』

 

「それから、何の心配もね〜ぜ!お2人さんよぉ・・・ヒック」

 

すると、そう言いながら私達の後ろから酒臭さと一緒に酒呑童子が姿を現した。そして彼の後ろから伊吹もヒョッコリと顔を出してくる。

 

「俺が居れば何の問題もねぇ。全部ぶっ壊してやるからよ〜」

 

「正確には酒呑、"僕ら2人"だろう?それに僕も、まだ洋館を調べ切っていない事もある。僕はやり残しが嫌いだからね」

 

少しは頼もしいか・・・と思ったのも束の間、酒呑童子は椿と美亜の間へ入ってきて、2人の肩に腕を回して勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。

 

勿論、あの2人が黙っているハズもなく・・・

 

『くっ!貴様、椿に手を――』

 

「あ〜大丈夫だ大丈夫だ〜!白狐、お前達の嫁には手を出さねぇよ〜・・・だけど」

 

そう言って、なんと酒呑童子は美亜の胸を揉んできた・・・が、私とドングリの背比べみたいなサイズだった事に少し残念そうな顔になっている。ひでぇ。

 

「ミギャァァア!何してんの、アンタ!!」

 

「んあ〜?綾の時みたく、着痩せしているかと俺が期待したのが悪かっ・・・」

 

「おし、まず1発目ぇ!!」

 

「ぎゃあっ!?」

 

「フシャー!!」

 

「あだぁっ!!」

 

「や、止めてあげてよ〜2人共・・・というか、このメンバーで本当に大丈夫なんでしょうか?」

 

椿が凄く心配そうな顔で私と美亜、鬼2人を見ているけど・・・多分何とかなる何とかなる!ただし"胸が貧しい"なんて事を言った日には、その日が命日になるけどな!!

 

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