私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
「美瑠!美弥子!大丈夫!?しっかりして!!」
「頼む、美弥子!目を覚ましてくれ!」
元凶である妖魔が妲己さんに倒された事で、操られていた2人もその場に倒れ込む。すぐに私と美亜はそれぞれ2人へ駆け寄って抱き上げながら呼びかける。
椿も、妖魔が入っていたぬいぐるみを拾いながら(――その際に、近くで倒れている鬼2人を踏んづけていたのは黙っておくが)私達の呼びかけで目を覚ました2人を優しく見守っていた。
「あ・・・れ?私、なんでお部屋の外に?それに・・・なんで美亜お姉ちゃんがお家にいるの?」
「あ、綾さん・・・?これは、夢・・・じゃないですよね?」
「うん、私はちゃんと此処に居るよ・・・美弥子」
どうやら2人共に、妖魔に操られていた時の記憶は無くなっているようだった。とはいえ、2人が無事だった事に美亜は大きく安堵の息を吐きながら彼女達を抱きしめる。
「良かった、美瑠も美弥子も・・・アンタ達、大丈夫?何処から記憶が無いの?」
「ふぇ?え、えっと・・・」
「う〜ん、ちょっとまだハッキリとは・・・」
美瑠と美弥子は大分困惑した様子で頭を傾げている。
「あっ、美瑠ちゃん。はい、お友達」
そこで椿が美瑠を安心させようとぬいぐるみを手渡したのを見て、私も美弥子の頭を撫でて少しでも心が落ち着くようにと宥めてみた。
「あっ、ふぇ・・・えへへ、くすぐったいです綾さん」
「う、うん・・・これはえっと、まぁ美弥子へのご褒美みたいな感じかな」
そして頭を撫でられて喜ぶ美弥子の横で、ぬいぐるみを渡された美瑠も満面の笑顔で椿へと礼を言ってくる。
「ありがとう!あ、えっと・・・」
「僕は椿だよ、妖狐の椿。よろしくね、美瑠ちゃん」
「あっ、初めましてだもんね。私は綾、烏森 綾って名前だよ」
「うん、よ・・・よろしく、椿お姉ちゃんと綾お姉ちゃん。それとミアちゃん拾ってくれてありがとう、椿お姉ちゃん」
そして美瑠は、椿からぬいぐるみを受け取ってシッカリと抱えながら照れ笑いを浮かべる。
その美瑠の言葉に、私と椿はニコニコとしながら美亜の方へ振り返る。
「その子も"ミアちゃん"って名前なんだね〜そっか〜良い名前だね〜」
「へぇ〜美弥子ちゃんの時もそうだったけど、よっぽど美亜ちゃんはこの子達から慕われているんだね〜」
「くっ・・・べ、別に。この子達が、私と一緒のような感じだったからよ」
「えっ、どういう事?」
美亜の言葉を聞いて、椿は少し不安げな表情になる。ひょっとすると、美瑠や美弥子も自身の家族から遠ざけられているのだろうか。
「此処の家族はね・・・優秀で使えて、親に利口な子供しか愛さないのよ」
「なんなんだよ、それ。ただ使い勝手の良い人間を手元に置きたいだけみたいな家族じゃねぇか!」
「アイツは・・・十郎は、そんな奴なのよ」
そう言って、美亜は眉をひそめつつ拳を握り締めていた。その表情からして、それだけでも彼女が子供の時から酷い扱いをされてきたのだろうと予想出来る。
「そして、それは自分の妻ですら同じなのよ。その上アイツは沢山の妻を娶っているから、1人や2人雑に扱っても平気な顔をしているのよ。私の、お母さんのように・・・」
「美亜姉様・・・」
少しずつ小さくなっていく美亜の声に、美弥子も憂鬱そうな眼差しを彼女と私へ向けてくる。
旅館で美弥子と2人で遊んでいた時に、美亜と美弥子は腹違いの姉妹であった事等は聞いたが、まさかここまで酷い家庭だったとは・・・私も怒りで拳に力を込めた。
すると、そんな話を美弥子より幼い美瑠も理解出来たらしく、何かを思い出したかのようにスクッと立ち上がる。
「そうだ、お母さん・・・お父さんに酷い事されて、何処かに連れていかれそうになってた。でもその時に美瑠、お父さんに見つかって"このぬいぐるみで大人しく遊んでろ"って・・・。何だか怖かったから言う通りにしてたら、そこから記憶が無いの。折角、大好きな美亜お姉ちゃんの名前付けたのに・・・」
「私も、お母様が連れて行かれそうになっている所を見つけて問い詰めようとしたのですけど、逆に捕まえられてしまって・・・その先の記憶は分からなくなってしまいました」
「美瑠、美弥子・・・それ、何時の話?というか2人共、今日が何日か分かる?慌てなくて良いから、落ち着いて。私達のお母さんを助けるには、アンタ達の記憶が重要になってくるの」
そうして美亜は必死になりつつも、2人を気遣いながら少しずつ当時の状況について話を聞き出し始めた。
そして、先程まで伸びていた鬼2人もようやく意識を取り戻して起き上がってくる。
「ん〜?誰だ、俺を踏んだのは・・・クソ、あのぬいぐるみ・・・って、あぁ?何だこりゃ、一体どうなった?」
「どうやら、僕達が気絶している間に全て丸く収まってくれたようだね。というよりも、ずっと酒呑に乗られていたせいか腰が・・・」
「伊吹さんの言う通りですね。ぬいぐるみに取り憑いていた妖魔は、とっくに妲己さんが消滅させてくれました」
「ちっ・・・クソ。あの野郎に貸しかよ、あ〜気持ち悪いな」
椿から事の顛末を聞いた酒呑童子が、腹の虫の居心地が悪そうに頭を掻いた。
「そういや酒呑童子さんと伊吹は、妲己さんと知り合いだったりするのか?何か、互いを知ってるように話してたけど」
「あぁ!?知り合いじゃねぇよ、怨敵だ!」
「うわっ、そこまで怒らなくても・・・ビックリするなぁ、もう」
突然酒呑童子が物凄い剣幕で怒るものだから、その怖さに椿も耳や尻尾を縮こまらせてしまったではないか。いやまぁ、元はと言えば聞いた私が原因なのだが。
【あ〜ら、まだ"あの事"を根に持っているのかしら?相変わらず、器が小さいわね〜】
「あ〜・・・"あの事"はまぁ、酒呑にも非がある話だったと思っているよ、僕は」
「妲己さん、伊吹さん。あの事って何?」
椿が不思議そうに首を傾げてきた。
【別に何て事ないわ〜。アイツが1番大事にしていた、最高級のお酒を全部飲んだだけよ】
「ふ〜ん。何かヤバい事かと思ってたら、本当に何て事でもないじゃん」
【全く・・・価値のある物だか何だか知らないけど、飲まずに置いておく神経が分からないわよ】
「妲己さん・・・それ、幾らのお酒だったの?」
【100万よ】
「へぇ〜100万ね〜・・・100万!?」
「それは怒るよ〜」
椿の言う通り、そりゃ酒呑童子も怒るなと納得出来た。今でもあんなに怒るのだから、多分何か特別な時用に残してたのかもしれない。
そんな話をしていると、私達の所へ美亜が慌てた様子で美瑠と美弥子を連れて戻って来る。
「椿に綾、アイツの居場所が分かったわ。美瑠と美弥子が何とか思い出してくれて、それが昨日の事なのが分かった。だから、急げばまだ間に合う!」
「お、おう・・・でも、何か美瑠ちゃんと美弥子ちゃんが怯えてるように見えるんだけど?」
「えっ、ちょっと2人共どうしたのよ?」
その美亜の言葉に美瑠と美弥子は彼女の後ろへ隠れながら、震える指で酒呑童子を指す。
「その妖怪、怖い・・・」
「はい・・・私も、その方は少し苦手かもしれないです・・・」
「変な昔の事で怒鳴るからじゃん、酒呑童子さん」
「いやいや、綾!アレは流石に我慢ならねぇだろうがよ!」
「う〜ん・・・何だかんだで酒呑童子さんは強力な味方だから、居ないと不安だし――あっ、そうだ!」
すると椿は何か良い案を思いついた顔をして、巾着袋から"ある物"を取り出して、スッと瞬時に酒呑童子の頭へと取り付けた。
「あっ?おい、何だコレは?」
「え?猫耳ですよ」
「てめ・・・」
「お〜なるほど!コレなら確かにちょうど鬼の角が隠れるし、結構印象も柔らかく見えるね」
「ふ、くく・・・ほら。あの猫の子達も、今の酒呑の姿なら安心しているようだ」
伊吹が笑いをこらえながら、首で私達に美亜の方を見るように振ってくる。
そっちを見てみると、確かに美瑠と美弥子は先程よりも警戒を緩めた様子で、猫耳の付いた酒呑童子の方を不思議そうに眺めていた。
「猫・・・猫さん」
「お前も猫だろう?」
「あっ、猫さん。貴方の名前、鬼丸ね」
「そうですね、美瑠ちゃん!私も良い名前だと思います!」
「鬼丸・・・センス無ぇなぁ。食うぞガキ共!ふにゃぁあ!」
「きゃぁぁ、あははは!鬼丸、怒ったぁ〜」
「えへへへっ、可愛いです〜」
そして酒呑童子も、あんなぶっきらぼうそうな姿をして、実際ノリノリで満更でも無いんじゃないだろうか?
「っていうか、それよりも美亜・・・美瑠ちゃんと美弥子ちゃんは、あんな感じで猫耳が付いてれば何でも大丈夫なのかよ?」
「そうよ、綾。まだまだ2人共に甘えたがりな子なのよ。というよりも椿、アンタもアンタで何で"あんな物"を持ってたのよ?」
「いや、それはほら・・・出掛ける時にね?」
「「あぁ、里子(か・ね)」」
「話が早くて助かります」
なんというか、里子の趣味もドンドンとんでもない方向にシフトアップしていっている気がする・・・。