私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第参拾陀話 突然のダブルパンダヘッド

 

美瑠と美弥子が思い出したという両親の居場所を目指して、案内の為に2人も連れて私達は屋敷内を進んでいる。

 

うん、進んでいるのだが・・・

 

「おい、降りろ」

 

「嫌だ」

 

「完っ全に美瑠ちゃんに懐かれちゃってるね〜酒呑童子さん」

 

「ふふ、そうですね綾さん。でも、あの子がこうして他の誰かに懐いてくれているのを見ると、少しだけ安心します・・・私も、綾さんが手を握っていてくれるから安心していられますし」

 

「へ?どういう事?」

 

酒呑童子の頭に乗って、角を操縦ハンドルみたく握って嬉しそうな美瑠を見ながら、美弥子は少し顔を赤らめつつ私の方を見上げてきた。何か彼女に対して恥ずかしい事でもしちゃっただろうか?

 

「綾ちゃんの鈍感・・・」

 

「えっ、椿?何、どういう事よ?」

 

「自分の胸に聞いてくださ〜い」

 

「むぅ〜・・・」

 

椿に理由を尋ねようとしても、何故か少し不満げな眼差しを向けられたし。や、ヤバい・・・本気で身に覚えが無さ過ぎて胃が痛くなってきた。

 

「――ったく・・・まぁ何にせよ、俺や綾の近くに居てくれた方が安全か」

 

「確かに酒呑童子さんの言う通り、目の届く場所なら守れるしね。ただまぁ、あの2人はちょっと・・・」

 

そして、私は酒呑童子の言葉を聞いて、後ろにいる椿と美亜の方を見るように促す。

 

「美亜ちゃん、そんなに睨まなくても」

 

「美弥子はまだ分かるとしてもよ、椿。だってまさか、美瑠があんな変態に懐くなんて・・・くっ、良い?絶対美瑠には手を出さないでよ!」

 

「まぁ・・・そりゃ不安にもなるよね、うん」

 

「安心しな、俺は綾とは違ってロリコンじゃねぇ」

 

「待てやオイコラ、サラッと私にまで美亜の怒りを向けさせるなやぁ!美亜もそんな睨むなってぇ〜!!」

 

おのれ酒呑童子、まさかこんな卑劣な真似をしてくるとは。お陰で、美亜は完全に"手を出したら即座に引き裂いてやる"といわんばかりにフーフーと猫のような威嚇をしちゃってるじゃないか。

 

「べ、別に私は綾さんになら、その・・・えへへ」

 

そして美弥子も、そんな私に照れ臭そうにしながら両手で手をギュッとしないで〜!更に誤解が深まっちゃうって!

 

「あっ、ここ!ここに地下への秘密の階段がある!」

 

「ぐえっ!?何すんだ!ったく、引っ張る必要は無ぇだろうが〜」

 

すると、そんな私達のサツバツとした雰囲気を知らぬ美瑠がハッしたように声を上げて酒呑童子の角を強く引っ張ったのであった。

 

「それにしても、まさか美亜達の両親が3階じゃなくて地下に居るなんてな。普段なら3階に居たって事は、地下に行くのは余程の理由に違いないね」

 

「そうだね、綾ちゃん。多分、さっきおじいちゃん達が言っていた"金華蘭"に関する物を隠してるのかも」

 

美亜達に聞こえないようにしながら、私は椿とコソコソそんな話をした。

 

そして、その地下へ続く階段がある通路に向かう為に一旦1階の玄関ホールに戻って、今度はそこから左側に通じている細い通路の方を進んだ。

 

その通路には右側だけに部屋の扉が集中しており、しかも左側には明かりの蝋燭どころか窓すら無い壁なので他の場所以上に薄暗くて歩きづらい。唯一頼りになりそうな光も、足元にある小さな蝋燭だけなのが何とも不安だ。

 

しかし、美亜達は流石は猫の妖怪というべきなのか夜目が良く効いていて、そんな私達の前をスイスイと先を進んで行けていた。

その為に時折椿はついつい美亜の尻尾を掴んでしまったり、私も美弥子の肩に両手を置いてしまう程慌てたりしてしまったので、椿は引っ掻かれたり私は美弥子から更に密着されたりしてテンヤワンヤになってました。

 

「えっと、確か・・・お父さんは、この先のコレを動かしてた」

 

すると美瑠は酒呑童子の頭から降りて、迷わず一直線に壁側へ置いてある幾つかの銅像の1つの前へと歩いていく。

 

「なるほど、そこに隠し階段があるって事ね。なんか薄気味悪い銅像だな〜・・・」

 

「こういうのは必ず何処かにスイッチがあるハズだ、探してみろ。猫の妖怪のお前達3人にしか見えないんだ、頼んだぞ」

 

「そう言いながら酒を飲まないでください、酒呑童子さん」

 

私と椿は酒呑童子の相変わらずな酒癖にため息をつき、そして伊吹が銅像を興味深そうに夢中でスケッチしている姿を見て、更に深いため息をついた。

 

「う〜ん、基本的にスイッチがあるとしたら像の陰だけど・・・美瑠、それに美弥子、何か覚えていない?」

 

「えっと・・・お父さんが何かを押したとか、そんな動きはしていなかったよ」

 

「はい。私も美瑠と同じで、お父様が銅像の前へ立ってただけで、扉が現われたのを見ただけですから」

 

「ほ〜ん・・・だとすると、仕掛けはスイッチ式じゃないのかな?」

 

像の狭そうな隙間にまで身体を潜らせて探る美亜を見ながら、私達は全員で首を傾げて隠し階段の開け方を考える。

 

すると椿が閃いた表情になって、ポンと手を叩いて像の頭へと人差し指を向けた。

 

「あっ、美亜ちゃん!銅像の顔・・・今、ちょっと光らなかった?」

 

「何ですって!?じゃあ今すぐ――あっ、れ?」

 

「ん?どうしたの美亜?」

 

「痛たたた!嘘!?尻尾が引っかかっちゃった!?」

 

「はぁ?――って、いや銅像と台座の隙間に挟めるとか別な意味で凄い事になってるな〜!?」

 

「何しているんですか、美亜ちゃん・・・」

 

しかし、美亜が尻尾を引っこ抜いてすぐに、美瑠と美弥子は再び悩ましげな顔をして思い出した事を口にしてくる。

 

「あっ、でも駄目。銅像に呪術がかけてあるから」

 

「はい・・・美瑠の言う通り、恐らくは正しい解除をしないと隠し階段は出ないと思います」

 

「正しい解除?美瑠ちゃんに美弥子ちゃん、その時お父さんが何をしていたかは覚えてる?」

 

「ちょっ、痛いって椿!もうちょっと優しく・・・」

 

椿が挟まっている美亜の尻尾を引っ張りながら2人へ質問する。美亜は少し痛がっている様子だが、結構深い場所へ挟めてしまっているのでしばらくは我慢してもらうしかないだろう。

 

「う〜ん・・・お父さんは、ただ立っていただけだったよ」

 

「私が見た時も、お父様は美瑠と同じ様子でした」

 

「ほぉ〜つまりは顔認証みたいなモンか?それだったら俺達じゃ駄目だろうな」

 

「なるほど・・・僕達は侵入者ですから、向こうからしたら通す訳にはいかないですもんね」

 

そうして私達が酒呑童子と話している内にも、まだ尻尾が抜けない美亜は顔を赤らめている。

 

「あっ、ちょっと・・・椿、そこは・・・あっ、やっ!は、早く抜いてぇ」

 

「美亜ちゃんは変な声を出さないでください!」

 

「単に引っかかった尻尾を引っこ抜こうとしてるだけなのに、何で男子共にサービスするかのようなエロい声が出るんだよオイ!?」

 

「ア、アンタのやり方が悪いのよ!って、ひぁっ・・・!?そこ駄目・・・ひっ、私が悪かったから早くしてぇ〜」

 

うわぁ、これは酷い。

何とかして美亜の尻尾を引っこ抜いてやりたい所だけど、こうも変な声を上げられると色々と困ってしまうぞ。

 

「あっ、待って!駄目、そんなに強くしちゃ・・・にゃぅぅぅ〜んっ、ダメぇ!」

 

「「あ〜もう!どうすれば良いん(だよ・ですか)!」」

 

「いやぁ〜良いねぇ。3人共に先程から良いレズ――」

 

「「「言わせるかぁ!!」」」

 

「あばぁっ!?」

 

さっきから大人しいと思ったら、伊吹もいきなりヤバい事を言おうとするな!

私と椿、そして美亜の3人で同時に台座に飾られてた蝋燭をブン投げたから何とか黙ってくれたけど・・・酒呑童子もニヤニヤしてるし、最悪だよ!

 

「はぁ・・・もう良いわ、自分でやるから。んっ、くぅ・・・んっ」

 

「悪いけど美亜、やっぱり私も手伝うわ。誰がやっても色んな意味で危ないなら、椿と協力してとっとと抜いちゃった方がマシだろうし」

 

「くっ・・・綾がそこまで言うなら、しょうがないわね。良い事、出来るだけ優しくよ?あんまり強くしないで、ゆっくりとね」

 

「はいはい、了解ですよ〜・・・っとりゃあ!!」

 

「みぎゃァァァ!!いきなり強すぎよ!!!」

 

「あ、スマン」

 

ううむ・・・思ってたよりもガッツリ挟まってて、某ピク〇ン的に思いっきりじゃ引っこ抜けないようだ。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

――それから十分程後

 

「はぁ・・・酷い目にあったわ、主に綾のせいで」

 

「いやまぁ、あれだけ尻尾が深く挟まってんだから力ずくじゃないと無理だったっての」

 

そう私へ文句を言いつつも、何とか尻尾が台座から抜けた美亜は、それの先端から真ん中辺りまでを毛繕いするかのように撫でていた。

 

すると、そこへ美瑠と美弥子も彼女を心配した様子で銅像の裏に居る私達の元へやって来る。

 

「美亜お姉ちゃん、お疲れさま〜」

 

「えっと、銅像の仕掛けの方は・・・私と美瑠が正面に立ったら、普通に階段が出てきましたよ」

 

美瑠と美弥子が指差す方向を見ると、なんと先程まで廊下があった場所には、それがまるで幻だったかのように階段へとすり変わっていたのである。

 

「わ〜お、私の頭には今"エ〇ラのゴマだれ〜♪"って音が流れてるよ・・・」

 

「えば・・・えっ?綾、何よそれ?」

 

「綾ちゃん、それ多分あんまり知ってる人居ないですよ?」

 

「むぅ〜・・・」

 

なんかまたスベった。やだもう、穴があったら入りたい!いやでも、穴じゃなくて階段は目の前にあるんだけどね!

 

「ったく、こりゃ〜悪い事してそうな匂いがプンプンするなぁ」

 

「酒呑童子さん、それはゲロ以下の匂いって事?」

 

「だから綾ちゃん、それも知ってる人少ないってば・・・本当にどんな少女時代を送ってきたの?」

 

「ん〜ゲームキ〇ーブとかコロ〇ロコミックとか楽しんでたけど」

 

「やっぱり綾ちゃん、小学校の時から結構ヤンチャしてたんじゃ・・・」

 

「恐れ入りますな〜」

 

「「そこの2人、夫婦漫才してるんじゃない」」

 

そして今度は美亜と伊吹にツッコまれてしまった。ま、まぁ私も椿も、ちゃんと階段の先に複数の妖気が感じられるのは分かっていますよ?

大丈夫です、ハイ。

 

「さ〜て3人共、ここからが本番だ。下に入る準備は良いか?」

 

「そんなのとっくに出来てらぁ!」

 

「うん、勿論だよ」

 

「当然!」

 

私達は階段を見据えて気合いを入れ直し、更なる強敵に備えて何時でも戦闘態勢に入れるように身構える。

 

そして、後ろに居る鬼2人や美瑠と美弥子の様子を伺おうと振り返ったが――なんと、そこには"ある意味"とんでもない光景が広がっていた。

 

「ぶふぉっ!?何じゃこりゃあ!!」

 

「ぶふぅ!しゅ、酒呑童子さんに伊吹さん・・・な、何それぇ!!」

 

「あ、あはは!ちょっとアンタ達、なんで2人でそんな可愛いパンダの被り物なんてしてるのよ〜!!」

 

はい、突然のダブルパンダヘッドですよ!

こんなの笑うのを堪えろってのが無理な話だわ!!

 

「テメェらが投げた物のせいだ!」

 

「ま、まさかこんな事になるとは僕も予想はしていなかったけどね・・・」

 

そしてパンダ頭な鬼2人は先程私達が伊吹へ投げ付けた物の中から、デフォルメされた可愛らしいパンダの置物を目の前に出してくる。

すると、美亜と美弥子はそれを見て気まずそうな表情になったのだ。

 

・・・あ、これ凄い嫌な予感。

 

「これ、呪術アイテムですよ・・・どうやら、お2人さんはパンダの置物に呪われてしまったみたいです」

 

「でも大丈夫だよ鬼丸に"桃丸"、しばらくしたら元に戻るよ〜」

 

「はぁ、全くよぉ・・・ん?今の"桃丸"ってのは、まさか伊吹の事か?これまた随分良い名前じゃね〜かよ」

 

「髪の色だけで桃の名前にするのは止めて欲しかったんだけどね」

 

なんというか突入直前だというのに、変なハプニングで場が白けてしまったというか和んでしまったというか・・・元はと言えば伊吹のアウトな発言を阻止したからなんだけどさ。

 

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