私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第肆拾話 デバフだとか聞いてないんですけど、アレ!

 

金華蘭の原料となる花畑の中央へ立つ美亜の父親が、僅かに怒りを含ませた表情で再び"重病となる呪い"を私達へと向けて放ってくる。

その呪いを何とも出来ない私達に代わって、美亜がそれを"呪詛返し"で再度跳ね返した。

 

そして、その返された術をパッと手で払って消した美亜の父親が、少し息切れを起こしている彼女を一瞥する。

 

「ふん、果たして何時までそれが続く?貴様は妖気が少ないハズだろう」

 

「くっ・・・そんなのはどうだって良いわよ。私自身の妖気が少なくても、それなら他に戦い方があるもの。それに私には、いつも助けてくれる馬鹿な妖狐と人間がいるのよ!」

 

「「ちょっと!馬鹿は余計(だ・です)、美亜(ちゃん)!」」

 

まぁ、そうして美亜と私で時間を稼いだお陰で、椿も妖術の吸収を重ねておく事が出来たけど。

 

「むっ?貴様、何かしていたのか。雑魚を相手にするよりも、先に貴様を――」

 

「もう遅ぇよ!ぶっ放せ、椿ぃぃい!!」

 

「うん!術式解放、強化出力――黒槌土壊・極!!」

 

椿が私の叫ぶのと同時に左手を突き出して開き、右手から発動させては左手に吸収させていた妖術を一気に解放する。

 

そう・・・この椿の能力は、なんと自分自身の妖術すらも吸収して強化して放つ事が可能だったのだ!

 

「なっ・・・にぃぃい!!」

 

そして、私達の身体よりも2倍以上あるハンマーで美亜の父親をアッサリ押し潰してしまった。

 

「げっ・・・デカ過ぎたかも」

 

「えっ、と綾ちゃん・・・し、死んでないですよね?」

 

なんか顔面がエラい感じに潰れたようにも見えたけど、ちょっと確認したら気絶しながらも生きてたのでセーフセーフ・・・身体はペラペラになってたけどね。

 

そんな有様を見て、美亜は苦笑いしながら椿へため息をついた。

 

「椿、アンタねぇ・・・また強くなっちゃって。でも、よく気が付いたわね。呪術は"呪う対象が大きければ大きい程、呪うのに時間がかかる"のよ。私と綾の助けがあったとはいえ、そこを突くなんてやるじゃない」

 

「えっ、えっと・・・いや、偶々ですよ」

 

椿がそんな美亜の言葉へ、照れ臭そうに笑う。

きっと彼女からしたら、多分たった2回や3回では弱いと思っていたから多めに妖術を吸収してみたのだろう。

 

少し自信があった様子からすると、恐らく椿もコッソリ練習していたに違いない。

 

「う、嘘でしょ・・・何よアンタ。お、お父様が・・・」

 

そんな椿の力の強さに、美瑠と美弥子によって縄で縛られた美海がショックで口が開いたままになっていた。そして、状況を確認出来ている所からして、どうやら既に"見えなくなる呪い"の方は2人に解除してもらったようだ。

 

こうして完全に勝負が決まった状態で、すぐさま美亜は美海へと質問をぶつける。

 

「さてと、美海。お母様の居場所、そして金華蘭のある場所を教えなさい」

 

「・・・」

 

しかし、それでも美海は答えない。

 

「ったく、どう見てもそっちの負けは決まってるようなもんだろ。まだ強情を張るつもりかよ?」

 

「綾ちゃん、しょうがないです。ちょっと気は乗らないけど、これから君を拷問しますね」

 

「へっ?」

 

「いやいや椿、幾ら情報が必要だからって・・・」

 

「えっ?ちょっと椿、アンタ・・・」

 

「安心してください、2人共。痛い事はしませんから」

 

そう言って椿は満面の笑みで大丈夫アピールをしてくるのだが、いかんせん"こういう時"の椿の笑顔はロクな記憶が無いので私達は不安になってしまう。

 

「妖異顕現、影の操」

 

椿はそんな様子の私達に苦笑いを浮かべながらも、美海へ影の妖術を発動し――

 

「あっ、何・・・これ。や、やだ、止め――」

 

「はい、コチョコチョコチョコチョ〜♪」

 

「ひっ!きゃ〜ぁはははは!」

 

彼女の脇腹を素早い動きによる影の手でくすぐったのであった。あっれ〜なんかコレ前にも似た流れを見たぞ・・・?

 

「喋ってくれる?」

 

「ひっ、ひっ・・・だ、誰がこんなんで――あははは!」

 

くすぐりに耐える美海へ、椿は影の手を止める事なくくすぐらせ続けている。なお美亜は、そんな様子を呆れたようなポカンとしているような顔で見ていた。うん、その気持ち多分よ〜く分かるわ。

 

「はい美海姉様、コチョコチョですよ〜」

 

「コチョコチョ〜♪」

 

「きゃははは!な、なんで美弥子に美瑠まで、や、止め!あ〜ははは!!」

 

しかも更に追撃といわんばかりに、美弥子と美瑠が美海の足裏や首元をくすぐり始めた。

なんというか、もうどうにでもなーれ♪と言いたくなってくるな!

 

「あは、あははは!わ、分かった、言う・・・言うから、もう止めてぇ!!」

 

「あ、やっと折れた。全く、3人していきなりくすぐり始めるから――」

 

「おっと・・・それは困りますよ、美海様」

 

そんな3人の猛攻に観念した美海へ、ため息をつきながらも私と美亜が近づこうとした瞬間、思いもよらぬ声が後ろから聞こえてきた。

 

「えっ・・・?」

 

そして声が聞こえたと同時に観音開きの扉が開けられ、鬼2人が抑えていたハズの男がなんと美海の喉元へとナイフを投げて突き刺した。

 

「なっ!?」

 

「美海!!」

 

鬼2人は一体何を・・・と思っていた矢先に、扉から男がボロボロとなった2人を片手で引きずって私達の前へと放り投げてくる。

 

「嘘でしょう!?酒呑童子さんと伊吹さんが――負けたの!?」

 

「美海、美海!しっかりしなさい!」

 

「カッ、ガフッ・・・!ヒュー、ヒュー・・・」

 

美亜と2人で美海の傷口へ自身の服を当てて止血しているが、次から次へと血が止まる事なく流れてくる。

 

すぐさま私は、椿へ勾玉から傷を治す妖術を持つ白狐さんを呼ぶように叫ぶ。

 

「クソッ、出血が酷い!椿、急いで白狐さんを!!」

 

「分かってる!白狐さん!白狐さん聞こえる!?」

 

『どうした椿、何か緊急事態か?』

 

「瀕死の重傷者が出たの白狐さん!こっちに・・・来るのは時間がかかるだろうし、洋館の入り口で待ってて!美亜ちゃんに運ばせるから!」

 

『むっ、分かった!』

 

そうして、私達が美亜に重傷の美海を運ばせようとすると、美瑠は自身が抱き抱えていたネコのぬいぐるみを術で大きくさせて、美亜の代わりに美海を運ばせようとしていた。

 

そんな彼女に、すぐさま美亜は止めさせようと声をかける。

 

「ちょっと、美瑠!わざわざ貴方がそんな事をしなくても大丈夫だから!」

 

「・・・あの人、邪魔。それにあの人、多分美亜お姉ちゃんと椿お姉ちゃん、綾お姉ちゃんの3人じゃないと抑えられない。だから、その間に私と美弥子で運ぶ」

 

「それに私達が残っても、綾さん達に迷惑をかけてしまうだけですからね。それなら私と美瑠で可能な限りの最善を尽くす事にします」

 

そう言って美瑠と美弥子は、部屋の入り口に立つ亰嗟の男を睨みつけた。その彼女達の決意に納得した美亜は静かに頷く。

 

「分かったわ。でも美瑠に美弥子、良い?ちょっとでも衝撃を与えたら、喉をやられてる美海は危ないと思って。そして1分1秒と時間を無駄にしないように急いで!」

 

そして美亜は2人へ叫んだ後すぐに、鋭く爪を伸ばして男へ向かって飛びかかっていく。

 

相変わらずとはいえ、それは無策過ぎると思うぞ!私も無策で突っ込んだりするから、あんまり美亜の事は言えないけども!

 

「おやおや、困りましたね。私とした事が、少し急所を外してしまうとは。それならば、コレはどうでしょう?」

 

男は図鑑のような本を広げ、パパパッとページを勢い良く捲っていく。ちなみに鬼2人は完全にダウンしてしまっており、その男に足蹴にされてしまっている始末だ。こんな緊迫した場面だというのに、まだ2人共にパンダヘッドなので地味ながらも腹筋に悪い。

 

そんな事を考えている途中にも男は開いたページを突き出してきて、美海を運ぼうとしている2人目掛けてサーベルのような刃物を幾つも発射してきた!

 

「「させるかぁ!」」

 

美亜と私で刃物を弾き飛ばすが、それでも2本程が脇を通り抜けていこうとする。

 

ヤバい!と思った瞬間――

 

「はっ!!」

 

「ごめん!助かったよ椿!」

 

石の状態の御剱で椿がそれを弾いてくれた。

 

「美瑠、美弥子!早く行きなさい!」

 

「うん!」「はい!」

 

「だから、行かせ――」

 

「稲妻雷霆蹴っ!!」

 

「おっと!」

 

それでもまだ2人を狙おうとする亰嗟の男へと雷を纏った飛び蹴りを見舞ってやるが、それはアッサリと避けられてしまった。とはいえ、そのスキに美瑠のぬいぐるみが3人を抱えてダッシュで部屋から抜け出していく。

 

「ですから、そうは・・・ぬっ?」

 

「そうはいかないのは、こっちの方です!妖異顕現、影の操!!」

 

そして椿が私の攻撃に合わせて影の妖術を発動した事で、男は自身の影に手足を掴まれて身動きを封じられた。

 

「よし、今の内に縄で――」

 

「しょうがないですね・・・えっと、確かここに。あぁ、ありましたね」

 

「えっ?」

 

「んなっ、影の拘束が解けた!?」

 

すると、なんと男は手首だけで本のページを捲って、そこから謎の白い玉を影に落として椿の術を無効化させてきたのだ。

 

そして、男は部屋から美瑠達が逃げていった事を確認して、本を閉じつつため息をついてくる。

 

「ふむ、逃がしてしまいましたか・・・まぁ、良いでしょう。どうせ貴方がたの呼んだ増援も、此処を通らなくてはいけないのでね」

 

その異様なまでの男の冷静さに、私達は不気味に感じて戦闘態勢をとって警戒する。

 

しかし、沢山の鎧お化け相手に無双していた鬼2人が、まさかこんなアッサリ負けてしまうとは正直予想すらしていなかった。

 

すると、その本人達が敵に踏みつけられながら困惑した声をあげる。

 

「ぐっ・・・うっ、こりゃどうなってやがる。何故力が出ないんだ・・・」

 

「普段の僕達なら、こんな無様な姿は見せないというのに・・・くっ」

 

「え?あっ・・・」

 

「ちょっと美亜ちゃん。もしかしなくとも、今の"あっ"は悪い事を思い出した時のだよね?」

 

「いや、あのパンダの被り物の呪術アイテム・・・実は弱体化の能力が付いていた事を思い出したのよ」

 

「「・・・」」

 

うっわぁ、といった感じの目で私達は美亜を見る。

 

「いやいやいや!デバフだとか聞いてないんですけど、アレ!」

 

「そもそも綾!アイツらが、鬼2人があんな事言ったのが悪いんでしょうが!」

 

「あ、そういやそうだったわ!」

 

だからといって、まさかこんなピンチに繋がるなんて思ってもいなかったけどな!

そう考えたら、逆にあの亰嗟の野郎がやたら強そうだと感じていた私がアホみたく思えてくるよ・・・。

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