私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第肆拾壱話 まるで手品師かよ

 

私達の前に立ち塞がる、亰嗟の男は自信ありげな表情を此方へと向けてくる。

でも、実際は鬼2人がパンダヘッドのデバフのせいで弱っていたから、あんな風に勝てたような感じにも見えるけど。

 

何にせよ、向こうが手にしている図鑑っぽい本の力が分からない以上、迂闊に手は出せなさそうだ。

 

そんな事を思って相手を見ていると、男は何故か自分から色々と説明をし始める。

 

「おや、この妖具が気になるので?宜しい、亰嗟の中でも"2番手"の実力を持つ、この和月 慎太(わつき しんた)が説明しましょう」

 

「えっ、2番手?なんかそれ、何処かで聞いたような気がすんだけど」

 

「確かナンバー2って、丘魔阿さんが自分でそう言っていたような・・・」

 

そう椿が言うと、そいつは表情は変わらないまでもピクッと眉を動かした。なんというか、感情そのものが希薄そうに感じられる。

 

「あんな人がナンバー2の訳が無いでしょう。アレは自称ですよ、自称」

 

「そ、そうですか」

 

「やっぱりな〜どうにも亰嗟のトップって割りには違和感バリバリだったし」

 

うん、なんとなく丘魔阿が噛ませ犬みたいな奴だったんじゃないかって予感は当たってて良かったわ。とはいえ今の会話からすると、どうやら亰嗟では仲間意識とかそういう物は薄いようだ。

 

「・・・で、その妖具は何なんだよ?変な方向に話が逸れちゃったけどさ」

 

「おっと、そうでしたね。この私の妖具は"持ち主が想像した妖怪を一時的に生み出す"妖具です。実は先程のも妖怪だったのですが、あの鬼2人には簡単に蹴散らされてしまいましたね」

 

「なるほど、"想像した妖怪を具現化出来る"って事ですか」

 

「簡単に言えば、その通りですね」

 

「はぁ〜何それスッゲェ。私も1回そういうの――」

 

「「止めてください、危険そうなんで」」

 

「敵味方の両方にツッコまれたぁ!?」

 

ううむ・・・私の考えている事って、そこまで他人にバレ易いんだろうか?もし私が自分で妖怪を作れるのなら、普通に宿題を代わりにやってくれるような奴を作る程度なんだけど。

 

そんな事を思っていると、美亜はそれを見て毛を逆立てて威嚇しながら和月という男を睨む。

 

「ふ〜ん、それは幻妖樹(げんようじゅ)の妖具ね。妖怪の中でも1番長生きって聞いてるけど、その妖具をどうしてアンタが持っているのかしら?」

 

「そこは、ご想像にお任せします」

 

「それじゃあ――アンタが盗んだか、奪い取ったかって事で良いわよね!」

 

そして一瞬で美亜は和月へと飛びかかって、鋭く伸ばした爪で引き裂こうとするが、空中に突如現れた何かへぶつかって攻撃を止められてしまった。

 

「美亜!」

 

「な、何これ・・・盾?くっ、危うく爪が割れる所だったじゃないのよ!」

 

「そんなモン、すぐに私が壊し――」

 

「待って、2人共!その盾・・・顔がある!」

 

「へっ?――きゃあ!?」

 

「なっ、美亜――どわあっち!?」

 

そう椿が叫んだ途端に、その盾の顔からはなんと炎が吹き出てきた。

このままでは、私も美亜も危ないと思った瞬間――

 

「妖異顕現、黒焔狐火!大丈夫、2人共!?」

 

「あ、ありがとう・・・椿」

 

「ふぃ〜ヤケドせずに助かったよ!」

 

椿の黒い炎が吐き出された炎ごと盾を燃やし尽くしてくれたのだ。それにしても、想像で作られた妖怪とはいえ「ギャァア!!」と凄まじい叫び声を上げているのは何とも不気味だ。

 

そんな状況に、和月は少しだけ後ずさって椿を見てクスリと笑った。

 

「おっとと、これは危ない。危うく下手したら、この本まで燃やされてしまいそうでしたよ。なるほど、流石ですね・・・丘魔阿を倒しただけはあります」

 

「敵に褒められても、こっちは全く嬉しくないけどね。せめて、スナック菓子のお捻りくらい寄越せってんだ」

 

「綾ちゃん、今はふざけている場合じゃないからね?」

 

そう言ってから椿も、和月を睨みつける私の横へと歩み出て同じようにそいつを睨みつける。

 

「それと美亜ちゃん。この人は僕がメインで戦うから、綾ちゃんと一緒にフォローをお願い」

 

「あいよ、了解!」

 

「分かったわ、椿。呪いをかける妖怪とか出されたら私が返すし、奇襲が出来そうならスキを見てやってみるわ」

 

すると椿は、美亜がアッサリ承諾してくれた事が意外だったらしく、目を丸くして彼女の顔を見た。

そういう私も、まさか美亜がこんなスンナリと話を聞いてくれるとはビックリだったけど。

 

「何よ、2人共そんな顔して。さっきの攻撃を受けたら、流石に相手との実力差くらい分かるわよ!こっちの方は良いから、アンタは相手に集中しなさい!」

 

「ま〜たまた、照れちゃって〜」

 

「綾も茶化さないの!早く椿のフォローに回るわよ!」

 

「へいへーい」

 

図星を突かれたように美亜が顔を真っ赤にしながら私達へと声を張り上げた。

 

そうして漫才みたいな事をしている内にも、向こうは既に本から妖怪を生み出して準備万端な様子になっていた。どれも見た事が無い妖怪だが、何故か全部鬼のような顔をしている。

 

「うんうん、やはり妖怪はこうでないと」

 

とりあえず私がコイツの作る妖怪のセンスについて思ったのは、可愛げが無くてダッセ〜!って事だ。せめてチャームポイントくらい作れ、キュルンとした目とかモフッとした尻尾とか!

 

そう思う間もなく、椿が妖術を発動する。

 

「妖異顕現、影の操!そして――影の弾操!!」

 

すると、私達の影だけでなく相手の影からも作り出された影の弾丸が、一瞬で目の前に広がっていた想像妖怪の群れを全滅させた。

 

・・・なんか知らない内に椿めっちゃ強くなってない?もしかして私がバカなだけかな!?

 

「ほぅ・・・なるほど、そうきますか」

 

しかし和月は特に驚く事なく、まるで予定通りといった表情を此方へ向けてくる。これはどうやら、まだまだ敵に奥の手がありそうだ。

 

「では次は・・・貴方の妖術に倣って、影の妖怪を――」

 

「それは既に戦った事があるので、それはこうです!妖異顕現、黒羽の矢!!」

 

そして敵の放ってきた人型の影の妖怪軍団も、椿の強化された非実体の存在を貫く矢の雨でアッサリ壁へ縫い付けられてしまった。

流石に早すぎて、1つ前の時といい私も美亜も手助けする必要が無くてポカーンとなってしまうね。

 

「これはこれは、あっという間ですか。では次は――」

 

「そんなの考えている間に、こっちはもう終わっちゃうよ!」

 

それでも和月は妖怪を本から呼び出そうとするが、その一瞬だけ出来る思考のスキを突いて、白狐さんの力を解放した椿が攻撃を仕掛ける。しかし――

 

「あっ・・・!ま〜た盾ですか!」

 

「さっき私と美亜の邪魔をした奴かよ!?そんな一瞬の内に――って、待てよ」

 

「どうかしたんですか、綾ちゃん!?」

 

「今、アイツは本のページを捲っただけで呼び出してた感じだったな」

 

「じゃあ、それってまさか・・・」

 

私と椿が同じ結論に達したと同時に、和月はフッと本を閉じながら鼻で笑ってくる。

 

「気が付きましたか?どうやら、判断力も中々あるようですね」

 

「想像して出した妖怪をページに書き記して、何時でも呼べるようにストックしておける――という事ですか」

 

「その通りです。しかも、それは持ち主が変わっても残り続けます。つまり、前の持ち主が想像した妖怪も使えるという訳ですね」

 

「かなり面倒くせ〜力だな!?」

 

そんなヤバそうな妖具を幹部っぽい人物が持っているとなると、組織には他にもまだまだそんな代物があったりするのだろうか?仮にそうだとしたら、亰嗟は随分と規模も戦力もデカい組織なのかもしれない。

 

「へぇ〜、そうなんですか・・・だけど――妖異顕現、影の操!」

 

「なっ!?」

 

「"呼び出している本体"の戦闘の方は、全くの素人ですね」

 

すると椿は一瞬にして和月の影を操って、後ろから相手の本を奪い取る。

 

「これは参った――なんて言うと思っていましたか?そいつを食べてしまえ!」

 

「えっ?わぁっ!?」

 

しかし、その本は向こうがいつの間にか呼び出していたダミーだったらしく、本が口のように開いて鋭い牙で椿に噛み付こうとしてきたのだ!

 

「危ない椿!たぁっ!!」

 

「妖異顕現、緊急祭繰龍(エマージェンシーサイクロン)!だりゃぁあ!!」

 

とはいえ私も美亜も黙って見ていた訳ではない。すぐさま椿の手元から本の妖怪を弾き飛ばして、風の妖術でズタズタに引き裂いて撃破する。

 

「いつの間にか、奪い取った本がすり替えられていたようね」

 

「その通りです。そして本物はこの通り、まだ此方にありますよ」

 

「んな早業、まるで手品師かよ・・・!」

 

私と美亜の言葉に、和月はからかうようにしながら先程まで本を持っていた方とは逆の手から本物の本を見せつけてくる。まさか椿の影の妖術を1回見ただけで対策を思い付くとは、頭の回転も"自称ナンバー2"だった丘魔阿より早いようだ。

 

「しかし、長引かせても良い事はなさそうですね。なるべくなら他の人の考えた妖怪で勝負を決めたくはないのですが、ここは仕方ありませんね」

 

そして和月は再び本を捲り始めて、切り札と思わしき妖怪を出そうとしてくる。

 

私達はこのまま呼び出されるのもヤバそうだとは思ったものの、下手に突っ込んで先程の美亜のようなピンチに陥る可能性を考えて迎え撃つ事にした。

 

「あぁ、ありましたね。さぁ――出なさい!」

 

和月が本を両手で開いて突き出すと、その中からは8体もの龍が飛び出してくる・・・が、手やら何やらが出てこない所を見ると首だけが出ている状態のようだ。

 

「まさか・・・それは」

 

「知っているの、椿!?」

 

「あら、定番な化け物なのに綾は知らないのね」

 

「流石に定番過ぎて私は使う気にはならなかったのですが、これは強いですよ。貴方達なんて、それこそあっという間にコテンパンです」

 

「綾ちゃん、あの龍は"八岐大蛇(やまたのおろち)"だよ!」

 

「なっ、八岐大蛇だって!?」

 

なんと和月が呼び出してきたのは、あの日本神話の代表的な怪物だったのだ!そして部屋いっぱいになる程の巨体が姿を現すが、どうにも様子がおかしい。

 

「あれ?なんかコイツ、妙に大人しいな」

 

「あの〜・・・ひょっとすると、動けてないんじゃないですか?」

 

「・・・」

 

椿の言葉に和月は何も言い返してこない。

 

あっ、なるほど。単に出された場所が"狭すぎて"身動きが取れなくなってただけか・・・って、それ色んな意味でダメだろ!!

 

「これだから私が考えた妖怪以外は使いたくないんですよ・・・」

 

「いやいや!それはそっちの呼び出す妖怪のチョイスが外れてただけだっつ〜の!!」

 

そうして和月は本を閉じて、呼び出したばかりの八岐大蛇を引っ込めたのであった。

何か切り札っぽいのが来るかと思いきや、変な肩透かし食らっちゃったなぁ。

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