私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第肆拾弐話 ぶっ飛ばす方が話すより早い!

 

巨大な八岐大蛇を一瞬にして本へと呼び戻した所を見るに、どうやら和月の妖具は出し入れが簡単なようだ。

 

そして妖具は妖術とは違って、妖具そのものに妖気が込められているので戦闘が長引くのは実は和月よりも私達にとってはキツい。

 

「さて、やはり私の想像の方が素晴らしいと再認識しました・・・ので、大量にいきますよ!」

 

和月は再び本のページを捲り出し、次々と妖怪を呼び出してくる。そして本から1度呼び出された妖怪は、それを閉じないと倒さない限り消えないという事は、つまり――

 

「わぁ・・・いっぱいだ」

 

「ま、まるで妖怪のバーゲンセールみたいだぁ〜」

 

「ちょっと2人共、感心してる場合じゃないわよ!」

 

美亜から椿と一緒にツッコミを入れられてしまったが、そりゃ相手が私達を二重三重と取り囲むくらいの量を呼び出してくるんだから、現実から目を逸らしたくなるわ!いや逸らさせてくださいお願いします。

 

こうなったら、もう"アレ"を使うしかなさそうだ。

 

「さぁ、やってしまいな――」

 

「これはもう、仕方ないよね・・・神刀、御剱!!」

 

「うん、結局使う羽目になるよね!神甲、麒麟甲!!」

 

そう、此方の妖術が相手に簡単に対処されてしまうならば"初見でメッタメタに打ちのめす"のが1番だ。いわゆる、ぶっ飛ばす方が話すより早い!!

 

椿が御剱を薙ぎ払うように振るい、私も麒麟甲を装備した腕で地面を殴りつける。

そこから発生した円の形の衝撃波は囲っていた妖怪達を一瞬で消し飛ばしていく。

 

「なんと、まさかこんな事が・・・」

 

その様子を和月は盾の妖怪で防ぎながら驚いて見ていた。

 

今の攻撃だけでも私と椿は意識を"向こう側"に乗っ取られかけたっていうのに、この一撃で決められなかったのはマズかったな・・・。

 

「椿に綾。アンタ達、その力はマズいって言ってたんじゃあ・・・」

 

「分かってるっつーの!けど、相手は"あのオカマ野郎"と同じようにナンバー2を名乗ってるし、それに実力だって同等以上だ」

 

「うん、綾ちゃんの言う通りですね。だから、この"神妖の力"で一気に勝負を着けないと、その内こっちが妖気切れしちゃうよ」

 

そう言って私達は、心配する美亜へと振り向いて精一杯の笑みを浮かべて見せた。

ひとまず神甲での攻撃の方は、後1回くらいなら何とかなりそうだ。

 

「金色の妖狐と、妖気以上の力を持つ人間ですか・・・なるほど、美しいものですね」

 

そんな和月の感想を無視しつつ私と椿は各々の武器を構えて、一瞬で敵の目の前まで接近する。

 

「参りましたね、私の考えた妖怪は全滅ですか・・・」

 

「貴方の呼び出した妖怪は"意識から作られた存在"でしょう!」

 

「そんな強い"想い"を持たない人形なんかで、私達を倒せると思ったら大間違いだ!」

 

確かに和月の呼び出してきた妖怪達は数こそあれども、その1体1体は美亜がタイマンで戦っても少し余裕を残して勝てるくらいに弱い。

 

こんなちっぽけな戦闘能力しか持たない妖怪なんて、想像した人の"想い"が込められていないも同然だ。

 

「"想い"とは、なんでしょう?」

 

「えっ・・・?」

 

「は・・・?」

 

すると突然、和月は冷たい言葉で何かを羨むような言葉を発してきた。常識的な人とは違う、その異様さに私達は途端に背筋がゾッとして、つい立ち止まってしまった。

 

「お前、一体何を言って――」

 

「心?そんなものは、私には分かりません。それは何処にあるのでしょうか?そしてそれは貴方達のような妖怪、そして人間1人ひとりにもあるのですか?」

 

「何を言っているの?それは誰にだって、心はあるに決まってるでしょう?だから、僕達はこうやって貴方を倒して捕まえようと――」

 

「あぁ、それです・・・それも聞きたかったのです。何故貴方達は、私達の邪魔をするのです?」

 

何なんだ、コイツは?さっきから全く言っている言葉の意味が分からないぞ・・・。

でも思い出してみれば和月は、美亜の父親達と話していた時も、そして私達との戦闘中も凍りついたように、どういう訳かずっと無表情のままだったのだ。

 

そんな相手の質問に、椿は和月へ至極当然な答えを返す。

 

「そんな理由、聞かなくても分かるハズでしょ!?貴方達が大麻よりもずっと強力で危険な妖草を売りさばいているからですよ!」

 

「何故、それが駄目なのですか?それを欲しいと言っている人達が居る。彼らが欲しがっているなら、より良質な物を作ってあげて売ってあげるだけの事です。そしてそれで彼らは更に満足して貰える、それが商売という物でしょう?」

 

「だから、売ってる物が駄目だって言ってるんだろうが!」

 

駄目だ、完全に私達と話が噛み合っていないのではないか・・・そう思ってイライラを積もらせていると、そんな私達の肩を冷静な様子で美亜が掴んで制してくる。

しかし、その彼女の手の力の入りようからして、きっと美亜も私達と同じく怒りを感じているのだろう。

 

「2人共、落ち着きなさい。こんな奴を相手にして、真剣に話し合う必要はないわよ」

 

「あぁ・・・ごめん、美亜。私、ちょっと頭に血が上りかけてたよ」

 

「うん、そうですね。どんなに性格がおかしな人が相手でも、僕達の目的はこの人達の確保だったよ。ここは冷静にならないといけませんね」

 

美亜に諭されて頭を冷やす事が出来た私達を他所に、和月は独り言を呟き続けながら再び本のページを捲り始める。

 

「分からない、分からないですね。駄目?何が?毒ですか?それならばタバコも法で禁止するべきでしょう?そもそもこの妖草は、最新の検査をもすり抜ける代物なので関係ないですけどね・・・」

 

これ以上、下手に敵の数を増やされても私達がジリ貧になるだけだ。だから――やっぱり向こうが妖怪を呼び出す前に先手を打つ!

 

「行くよ綾ちゃん、龍花さんとの共同開発した技!――神刀御剱、飛天斬(ひてんざん)!!」

 

「OKだ、椿!食らいやがれ――神甲麒麟甲、地照撃(ちしょうげき)!!」

 

椿が御剱を縦一文字に振り、私はそれに続けて鋭い正拳突きを放った。椿の御剱からは大きく広がった光の刃が光波になって飛び、私の麒麟甲を付けた拳からは一回り大きな光の弾丸が発射されて敵を目掛けて飛んでいく。

 

しかし、その地面や空気を裂いて押し通る私達の一撃は、突如として和月の目の前で起こった大きな衝撃によって止められてしまった。

 

「な・・・馬鹿な!?」

 

「あっ・・・!」

 

「また私以外の者が考えた妖怪で癪(しゃく)に障りますが・・・ここは仕方ないですよね。"私の作品に心が無い"のならば、"心の籠った作品"を出せば良い」

 

なんと和月の前には、2メートル程もある金棒を担いだ2体の大柄な鬼が立ち塞がっていた。それぞれ金と銀の角を生やしている、その2体の鬼が私達の今の攻撃を防いだらしく、その鬼から感じるオーラからは相当の強さを持っている事も認識出来る。

 

「嘘でしょ・・・これってまさか西遊記に登場する、あの"金角と銀角"をモチーフにしているんじゃ・・・」

 

美亜が驚愕の表情を浮かべ、呼び出された鬼の正体を口にする。

 

しかしギリギリの状態で"神妖の力"による攻撃を放ってしまった私と椿は――もう意識の限界だった。

 

「み、美亜・・・ごめん。私達から、は・・・離れて」

 

「えっ?ちょっと、どうしたの椿も綾も・・・まさか!?」

 

「その、まさかです。"神妖の力"を使い過ぎて、もう抑えられない・・・僕も綾ちゃんも2回の攻撃で限界でした・・・!」

 

椿の中に居る妲己さんも全力で彼女を暴走させないように抑えてくれてはいるが・・・どうやら駄目らしい。

 

【この・・・馬鹿椿!それに、綾も馬鹿やって!】

 

参ったな、これは本当に反論出来・・・な――

 

これだと"あの意識"がまた――!

 

 

 

「接続、完了。これより当機は敵対勢力の排除へと移行する」

 

私の身体が再び"あの謎の意識"によって乗っ取られ、それと同時に椿も別人のように豹変してしまった。

 

「うん?何か・・・2人共に雰囲気が変わられましたか?髪まで一気に伸びていますね」

 

「ふぅ・・・えぇ、そうですよ。もう、これで貴方も終わりです。さぁ共に行きますよ"魔を殺す者"、覚悟なさい」

 

「護衛主目標"妖狐 椿"による命令、了解」

 

「ちょっ・・・椿に綾、アンタ達一体?ひょっとして、それが神妖の!?」

 

そういえば、美亜はこんな私達の姿を見るのは初めてだった。しまったな・・・私が意識を乗っ取り返すまでに巻き込まれなきゃ良いけど。

 

「おやおや、そんなに余裕でいて大丈夫なのですか?ほら、そちらがそうしている内にも金角と銀角が向かっていますよ」

 

そんな私達のやり取りをスキと見て、和月があの2体の鬼を差し向けてくる。

 

「敵対存在への回答――否。当機と護衛主目標の目的は"負なる者"の殲滅である」

 

「いえ・・・あの人物には"心"が無いようですね。恐らくは"負なる者"よりも厄介な"無なる者"でしょう。それならば尚更、滅しておかなくてはなりません」

 

「命令、了解」

 

襲いかかってくる鬼の攻撃を避けながら、私の身体を乗っ取っている意識が暴走している椿と会話を続ける。

 

そして、次の瞬間――!

 

「ふむ・・・"我が刃よその身一筋となりて、敵を潰やせ"」

 

「なっ・・・!」

 

なんと椿が御剱を横へ一閃させただけで、あの強そうな鬼2体は真っ二つとなって光へ溶けてしまった。

 

和月はそれでも怯まずに攻撃を続けようとしてくる。

 

「やれやれ、それならば次を――っと、嘘でしょう。私の本が、いつの間に・・・」

 

「魔点殺(まてんさつ)、下半月(しもはづき)。当機は既に、対象の妖具を無力化している」

 

すると謎の意識が操る私の身体は、その一瞬のスキを見逃す事なく本を切り裂いていたのだ。しかも今の一瞬の行動は、私の意識が中に抑え込まれているにも関わらず、全く認識出来なかった。

 

「それが貴方の力の根源なら、これでもう戦う事は出来ませんね。終わりです――おっと。事件を起こした元凶の"負なる者"が何処かへ行って、まだ勝手をしようとしていますね。私はそいつを追いかけますから、この場は頼みましたよ"魔を殺す者"」

 

そして、目を覚ました美亜の父親が逃げようとするのを見つけて、暴走した椿がそっちへと身体を向けて歩き出した。

 

このままだと、きっと椿は・・・クソ!それだけは何とかして止めないと!!

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