私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
第壱話 黒狐さん、素に戻る
朝になり、本日はよく晴れた土曜日です。
私はいまだ眠いまま、布団に潜ってもうちょっとだけ心地よい睡眠を味わっていたかった所――
『椿、綾、起きろ〜!何時まで寝ているんだ!』
「ぐぇ・・・せ、せめて後5分だけでも寝かせてよ・・・」
『全く、白狐や里子が待ってるぞ』
「む〜り〜・・・zzz」
なんか黒狐さんの口調が普段と違うような気がするけれど、私は睡魔に勝てず更に布団へ潜ろうとする。
『こら起きろ!』
「どぁ危ねぇ!」
いつまで経っても起きない私達にしびれを切らし、黒狐さんが強引に布団を剥ぎ取ろうとしてくる。私はそれに対抗しようと布団にしがみついたが、そこはやはり妖怪と人間。あっさり力負けして布団から引き摺り出されてしまった。ちなみに椿はまだ布団から引っ張り出されずに済んでるようだ。
『この、強情な奴だな』
「う〜・・・今起きますよ〜」
そういえば今日は妖怪の世界にある妖怪センターへ行って、妖怪退治のライセンスを取れと椿の祖父から話されていた。本人が行かなくても済むのならば、今日は一日寝ていたかったのに・・・
「ほら椿も行きたくないのは分かるけど、起きないと駄目だよ」
『やれやれ、しょうがないな・・・そんなに嫌なら、今日は一日俺の寵愛を受けて――ごはぁ!!』
「こうなりたくなかったら、早く起きてね〜?」
「ひぃぃ!い、行きます、行きますからぁ!」
ヤバそうな発言をしかけた黒狐さんの股間をハイキックで蹴り上げた私はニッコリしながら椿へ起きるよう促した。ちょっと油断するとすぐ下ネタな話になる所は、きっと女の子にモテないと思うよ黒狐さん。
そうして布団から慌てて出てきた椿の格好に、私と黒狐さんは驚愕する。何故なら、椿が扇情的なネグリジェを着ていたからである。
『うぉっ!つ、椿・・・お前、誘ってるのか・・・その姿』
「え、ちょ・・・女の子の姿に慣れろっては言ったけどさ・・・それはやり過ぎじゃない?」
「へっ?あっ、な、なにこれぇ!」
どうやら全然本人も気づいていなかったようで、自身の身体を見回してからビックリしていた。
「嘘でしょ、僕こんなの着て寝てないよ!ちゃんとTシャツと短パンだったのに・・・いつの間に!?」
「ま、まさか・・・」
私と椿は部屋の入り口に視線を向ける。そこには里子が目を爛々と光らせて、舌を出して息まで荒くしている姿があった。
「椿ちゃん・・・すごく似合ってるよぉ。はぁ・・・はぁ・・・」
「やっぱり里子の仕業かぁぁあ!!」
「黒狐さん・・・服取ってぇ」
『全く、しょうがない奴だ』
あまりの恥ずかしさに椿が再び布団に潜って、そこから手だけを出して黒狐さんから着替えを受け取るも、やっぱりそれも可愛らしい巫女服だった。
「・・・これって、里子ちゃんが用意したの?」
「そうですよぉ・・・はっ、はっ」
もうやだ、何この子。ここまで危ない子だとは思わなかったよ、私。
「それより黒狐さん、その喋り方なんですか?いつもと違うよね?」
「そういえば、なんかより砕けた感じになったというか、どうしたの?」
『むっ?あぁ・・・いや、実はこっちが素なんだよ。今までは特別な妖狐だからと、意識して奥ゆかしくしていたんだ。だが、やはり性にあわんし何より白狐に負けているからな。素の俺でアピールする事にした』
フッと格好良さげに説明してくれたけれど、正直いってあまり大きく変わったなとは感じられなかったよ。
「言葉遣いだけですよ、奥ゆかしかったのは・・・それも微妙ですけどね。僕はそっちの喋り方の方が黒狐さんらしいし、親しみ易くて良いと思いますよ」
「私も今の喋り方してる黒狐さんの方が、いつもよりかは喋り易く感じるよ」
すると、それが嬉しかったのか黒狐さんが着替え終えて布団から出てきた椿へ抱きつく。
「うわっ!ど、どうしたんですか?」
『・・・椿、俺は白狐には負けないぞ。絶対にお前をものにしてやる』
「わかった、わかりましたから!離れてください〜!」
「好かれてるなぁ、椿」
「仲良いですねぇ。じゃあ、私も〜」
「それより早くご飯食べようよ!」
そこへ里子も乱入しそうになったので、私は椿が黒狐さんからするりと抜け出したのを里子から助け出し小脇に抱える形で廊下へと出た。
『おぉ中々のコンビネーションだな、椿も綾も』
「あらら・・・椿ちゃん、身体は昔の事を覚えているんですね。でも綾さんとそんな感じに出来るなんて、ちょっと羨ましいです」
昔の椿、か。里子の意味深そうな言葉に私は少し心が暗くなるのを感じた。
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『遅かったではないか、黒狐よ。・・・さてはお主、抜け駆けしようとしたのではないだろうな?』
「私が居るんだから、そんな事させる訳ないでしょ?」
『フッ、白狐よ。やはり女は親しみ易い方が好かれやすいぞ』
ドヤ顔で語る黒狐さんに嫉妬して、白狐さんも唸りながら自身の膝をポンポンと叩いた。
『ぬぬ!椿よ、我の膝の上に来るがいい!』
『白狐よ、負けず嫌いは程々にしないといけないぞ?椿よ、俺の膝へ来い』
「朝から何やってんの、2人とも・・・」
私が呆れて見ている横で、椿が2人を無視して自分の食事の場所へ座る。私もそれに続いて、2人が変な動きをしないように彼女の隣へと座った。
「今回は洋食チックな朝食だ、ね・・・あぁ」
「良かった、僕達の所は普通の朝ごはんか・・・な?」
パッと見は目玉焼きにウィンナー、グリーンサラダとフルーツの盛り合わせで良い取り合わせなのだが――残念な事に、白いご飯も含めてそのどれもが元気良さげに動いていた。
「やれやれ・・・またか!って、こら!飯が逃げるな〜!」
「ご飯は昨日のお昼にも食べたし何とか食べられるけど、他のはどういう妖怪食なんだろう?・・・ん?」
また格闘しなくちゃいけないのかとため息をついて白ご飯から食べようとすると、茶碗の中からどんどん米粒が逃げていき掴もうとした私達の箸は空振った。
「あ〜2人とも。お弁当に入れたご飯は食べられたとはいえ、それは逃げ場が少ない状態だったからでしょ?それが「ご犯」の真骨頂だよ」
「うっそだろ里子!アレでまだまだ序の口だったって事なの!?」
「くっ、しょうがない。一旦目玉焼きを――って、わぁぁあ!目玉焼きに黒い瞳がある!ギョロギョロ動いてるよ〜!」
「ふふふ、これが本当の『目玉』焼きです」
誰が上手いダジャレを言えって言ったんだよ!こんな目玉焼きは生まれて初めて見たよ!
「うひゃ!ウィンナーが伸びた!僕の額を突っついたよ〜」
「ちょ・・・おま、しつこく私の口に押し込もうとするなぁ!」
とか油断していたら、よりにもよってウィンナーが完全にアウトな動きをして私達の口へと入り込もうとしてくる。この場面の光景はきっと成年指定されてもおかしくないのではないだろうか。
「うふふ〜2人とも可愛い〜」
里子が私達へほっこりとした笑顔を浮かべた。