私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第肆話 ガッツリ罠にかかりました、最悪

 

お昼の弁当で妖気を蓄えた私達は、下校の途中で校長先生から教えられた雪の家へと向かった。

 

「大っきいですね・・・」

 

「美亜の家って程じゃないけど、それでもかなりデカいな〜・・・」

 

一瞬、家を間違えたのではないかと思ったが「如月」と書かれた表札から、どうやら此処が雪の家で当たりのようだ。

 

それにしても、学校から歩いて行ける距離にある山の麓で住宅地も近いというのに、わざわざこんな大きな家や土地を持っているのは怪しい・・・のかな?あまり深く考えるのは止めた方が良いかも。

 

【ふん、何で私まで協力しないといけないのやら】

 

「まぁまぁ、そうブーたれないでよ妲己さん。相手が私と椿を狙ってる可能性がある以上、現場で他に頼れるのは妲己さんだけしか居ないんだからさ」

 

「それにね、妲己さん。どうやら雪ちゃんは風邪で休むって、雪ちゃんのお父さんから学校に連絡を入れていたようなんですよね。だから、多分こうして僕達が見舞いに来る事も想定済みだと思います」

 

【はぁ・・・アンタ達って、本当にお人好しなんだか何なんだか】

 

妲己さんは呆れた声を上げているが、私達だって何も無策で敵の罠に飛び込む訳じゃない。むしろ逆に雪を助けて、悪どい事をやっていた証拠を見つけてやろうか――なんて考えているよ。

 

そうして私達がゆっくりと家のチャイムを鳴らすと、少し時間を置いてインターホンから男性の声が聞こえてくる。

 

『はい』

 

「あの、雪ちゃんの友達の槻本椿と言います」

 

「私は烏森綾です。同じく如月さんの友達で、彼女が風邪を引いたと聞いたんで2人でお見舞いに来たんですけど」

 

『・・・少々、お待ちください』

 

それから一旦インターホンの音が途切れる。

 

「何か、ちょっと間があったな」

 

【安心しなさい2人共、妖気は感じなかったでしょ?手筈通りにすれば、まず問題無いわ。全く椿は・・・綾も居るんだから、私が手助けする必要なんて無いわよね?】

 

「遠回しに私が頼りないみたいな言い方してません、それ?」

 

「いやいや、綾ちゃん・・・君は僕にとって十分過ぎる程に頼りになるからね。それでも念には念を入れて、僕や綾ちゃんが油断しないようにって事だよ」

 

「ほいほーい。ま、たった2人で踏み込むようなモンだし万が一って可能性もあるもんね」

 

そんな会話をコソコソとしていると、再びインターホンから男性の声が聞こえてくる。

 

『どうぞ、お入りください。扉の鍵も開けておりますので・・・』

 

そう男性が言った直後に、見た目がデカい門の隣にある扉の鍵が開く音がして、私達は扉を押して中へと入った。

 

そこから家の玄関の間までには、やや大きい庭や小さいものの立派な池が広がっていた。それらに少し圧倒されつつも私達は高級そうな石畳を進んで、ゆっくりと玄関の扉を開く。

 

ぶっちゃけ、敵地へ入るのとは別な意味で緊張してきたんだけど・・・よく雪もこんなバカデカい家に住めるなって思うよ。私からしたらオジサンと一緒に暮らしてる家や椿の祖父の家と比べても、この家はデカ過ぎて逆に落ち着かないぞ。

 

「やぁ、2人共に良く来てくれたね。娘の為にわざわざ御足労願い、此方も申し訳ない」

 

「えっ?あっ、いえ・・・」

 

「そ、そんな事は〜・・・あ、ははは」

 

扉を開けたら、すぐにテレビや選挙の紙で見る顔が出てきたので、私達は緊張と驚きで一瞬だけ口ごもってしまった。

うん・・・やっぱり地元で知ってる人だけあってか、実際会った時の緊張感ハンパないわ。

 

「あぁ、すまない。つい仕事モードになってしまった。そこまで遠慮はいらないよ。2人共、私が市長だからといって気を遣わないで良い。普通に、友達の父親として接してくれて構わないよ」

 

「あ、えっと・・・はい。すいません、ちょっと緊張し過ぎちゃってて」

 

向こうの柔らかな態度にタハハと愛想笑いをしつつも私は、先を歩いていく"如何にも政治家然とした見た目"をした京都市長の如月努の後ろ姿を眺める。なんというか、パッと見だと普通に取っつきずらい印象だ。単純に私が真面目な人間に慣れてないってだけなのかもしれないけど。

 

ふと隣を見ると、椿も怪しんでいるのか少し眉間に皺が寄ってきている。

 

【椿、顔に出てるわよ】

 

「む〜・・・」

 

【綾も綾で、なんか珍しくポカーンとしちゃってるわね】

 

「あっ、え〜っと妲己さん。こういう堅苦しい感じ、実は結構苦手なんだよね」

 

下手に相手へ悟られないように警戒しながら、私達は雪の父親の後を着いていく。

 

そういえば、最近は良く皆から「以前よりも表情が多くなって話しかけ易くなった」と言われるような気がする。

逆に椿は皆から「偶に怖い顔をしてる」って話が出ては、当の本人から・・・っと、危ない危ない。

何故か分からないけど、椿が私の方をジトーっと見てた。ちょっと考えた事がバレそうになるなんて、覚りの妖怪みたいな"心を読む能力"とか何時の間にか手に入れてたりしないよね?

 

「さぁ、こちらの部屋に」

 

「は、はぁ」

 

そして案内されたのは、応接室なのか少し広めで小綺麗なオフィス部屋っぽい所だった。

 

まぁ、よくよく考えてみれば雪を監禁しているなら、恐らくは自室のベッドで寝かされたりしていないのだろう。それに、わざわざ私達をそんな所へ案内する理由も無いし。

 

ひょっとしたら何かの罠にかけようとしてるかもしれないので、此方がそんな事を考えているのがバレないようにしつつ、私達は不自然に思われないような反応を返す。

 

「あれ?雪ちゃんの部屋は・・・?」

 

「えっと、すいません。私達、雪の様子を見に来たんですけれど・・・」

 

「あぁ、失礼。娘の風邪は少し重くてね、本人に君達と会える気力があるかどうか聞いてくるよ。私も忙しくて、娘の状況を完璧には把握してなくてね・・・悪い父親だよ。だから、それまで悪いけれど此処で待っていてくれないか?お茶と菓子を用意させる。せっかく来てくれたんだ、ゆっくりとしていきなさい」

 

そう言ってバツが悪そうな顔をした雪の父親は、一緒に居た執事っぽい人へ何事かを指示して部屋から出ていった。

 

【ふ〜ん、そう来たか】

 

「うん、妲己さん。今の所、見た限りは普通だよね」コソコソ

 

「なんつ〜か、校長先生の情報を聞いてなかったら"良い父親"って雰囲気してるよ」コソコソ

 

私達は執事の人にバレないよう、静かな声で言葉を交わす。

 

――それから数分後。

 

私達は執事の人が持って来てくれた、高級そうな紅茶と洋菓子を前に悩ましげな顔をしていた。

一応、変な匂いとかしないかと確認はしてみたのだが・・・何にも感じなかったのが逆に不自然に思える。

 

「う〜ん、怪しい・・・」コソコソ

 

「というか"娘の様子見に行く"って出てってから、全然戻って来ないのも怪しいよな。まさか、私達が食べたりするの待ってたりして」コソコソ

 

そうやって紅茶と洋菓子を警戒している内に、執事の人も部屋から出ていってしまった。

 

【椿、綾。2人共、流石に飲まないのは失敗じゃない?】

 

「いや、でも・・・これ、確実に睡眠薬か何か入っているよね?」

 

「妲己さん。あんまり向こうの思う通りに行動してたら、そろそろこっちも危なくなるかもしれないんだよ。そしたら作戦が色々面倒な事になっちゃうって」

 

妲己さんの言う事は最もかもしれないが、普通そうに振舞って危険な方向へ進むより、ここは少し怪しまれたとしてもリスクを低くする方を選ぶのが良いだろう。

 

さて、次にどう来るのか・・・とはいえ、まだ向こうは私達の事を"単なる中学生"と見ているようだし、完全に油断している可能性もあるかもしれない。

 

もしそうなら、私達はなるべく時間を稼いで――と思っていると応接室の扉が開いて、雪の父親と先程出ていった執事の人が戻ってきた。

 

「やぁ、待たせてすまない。やはり娘は起き上がる事すら辛そうで、君達に風邪をうつしたくないとも言っていたよ。申し訳ないけれど、日を改めてくれるかな?」

 

「えっ、あっ・・・そうですか、分かりました」

 

「あ〜いきなり来ちゃった訳ですし、こっちもすいません。それなら、また別な日に来ますね」

 

そうして私達は自然な形で退出しようとすると、やっぱりというか市長は引き留めてくる。

 

「おや?この紅茶はお気に召さなかったのかな?」

 

「あっ、すいません。僕、ちょっと紅茶は苦手で・・・」

 

「私も、紅茶は普段あまり飲み慣れてないんで少し・・・ね」

 

「おやおや、それは失礼。それでは、どれなら飲めるかな?せっかく来てもらった御客人に対して、何も出さずに帰すのは申し訳ないからね」

 

何とか飲み物を飲まないようにと心掛けてはいたのだが、これでは私達も断りずらい・・・というか、そもそもお見舞い自体が休日とかの時間が空いている時に行く事が多いから、向こうも此方に急用が無い限りは〜というのが分かって行動しているようだ。ぶっちゃけ、考えの鋭さは私達以上かもしれない。

 

だけど、こっちにも60年生きてきた椿が・・・って、あら?

 

「ふぇ・・・あっ?」

 

「なんか、突然眠気が・・・?」

 

「君達、どうした?具合でも悪いのかい!?」

 

げっ、これまさか・・・雪の父親が何かしたっぽい・・・?い、いつの間に・・・

 

【やっぱり、さっきの紅茶に仕掛けがされていたみたいね。アンタ達、匂いを嗅いだでしょ?恐らくは匂いを嗅いでもアウトな程に、超強力な妖怪用の睡眠薬を使われたわね】

 

「それ、を早・・・く、言っ・・・クゥ」

 

「つか、サラッと・・・妖怪用って、ちょ・・・スヤァ」

 

ガッツリ罠にかかりました、最悪!!

 

妖狐である椿はともかくとして、私は普通に人間なんだけど!?もし、こんなんで永遠の眠りについたりなんかしたら・・・どう・・・

 

【大丈夫よ、2人共。まだ作戦通りにいくハズだから】

 

そんな妲己さんの声が聞こえた瞬間に、私達はパタリと机へ突っ伏す形で意識を失ってしまったのだった。

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