私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第伍話 やってやったぜ(暗黒微笑)

 

「ん・・・んぅ」

 

誰かの呻く声が聞こえて私と椿は目を覚ます。

どうやら私達は何処かも分からない地下室っぽい部屋で、椿はベッドに縛り付けられ、私も壁にうつ伏せになる形で縛り付けられてしまっていた。

 

そして、声のする方へ顔を向けると――

 

「あっ・・・」

 

「ゆ、雪・・・!」

 

「雪ちゃん!それに綾ちゃんも!大丈――えっ?」

 

椿は咄嗟に身体を動かそうとしたが、そこで自身が縛り付けられている事を思い出したらしく苦々しい顔を浮かべた。

 

確か、強力過ぎる睡眠薬による紅茶の匂いで私達が眠らされてしまった所までは覚えているが、まさか時間差で効果を発する物だとは予想外すらしていなかった。

 

そんな事を考えていると、視界の隅に満足そうな笑顔をした市長・・・もとい雪の父親の姿も見えた。そいつは私達の所へゆっくりと歩いて来るが、その手には予め私達が持ち込んでいたボイスレコーダーと小型カメラがあった。

 

「やぁ、2人共お目覚めかな。やはり、少し頭の回る子供も妖狐も油断出来ないものですね。普通の中学生を演じながら、この私を嵌めようとしてくるとは・・・だが、君達の持ち物はくまなくチェックさせてもらったよ。案の定、こんな物を隠し持っていたとはね」

 

「くっ・・・」

 

「ちっ、クッソ・・・!」

 

私と椿が悔しい表情を浮かべると、雪の父親は更に顔を歪ませて気持ち悪い笑顔になる。

ぶっちゃけ身体が動かせさえすればすぐにでもブン殴ってやりたいけど、流石に妖怪用の睡眠薬とあってか私も椿も全然身体を動かす事が出来ない。

 

ひょっとしたら妖怪を捕獲する用の奴だったりして・・・

 

【せいか〜い!椿も綾も、そういう時だけはカンが鋭いわね〜】

 

うっわ最悪だ、この人知ってて教えなかったぞ!

まぁ、ここは落ち着け私・・・私達は私達で、今は冷静に"作戦通りに"出来る事をやるだけだ。

 

「あぁ・・・やっと、やっとだ!そうだ、こうやってコイツを利用すれば良かったんだ。なんで、こんな簡単な事に私は気が付かなかったんだ・・・!」

 

雪の父親――クソ市長は、そう言って雪の頭を掴んで自身の方へと顔を向けさせる。

 

おい、おいおいおい・・・ちょっと待て。カーテン越しで部屋が暗かったから今ようやく気付いたんだけど、雪は全身すっ裸にされてるじゃねぇか!

しかも身体中、殴られたりしたのか痣とか生傷だらけだし!!

 

この大バカ野郎・・・そこまでして私達を守ろうとしてたなんて。そして、それに気付かなかった私もとんだ大バカ野郎だよクソッ・・・!

 

そんな雪の全力の抵抗も、こうして私達が捕まってしまったせいで失敗してしまった。その様子を見て、口に猿轡(さるぐつわ)までされた雪は悔しさのあまりにボロボロと涙を流してしまっている。

 

「ふぅ〜ふぅ・・・ぐぅぅ!」

 

「この、クソ野郎・・・雪に手を出すんじゃねぇ・・・っ!」

 

「クックック・・・雪〜ざぁんねんだったなぁ。お前が必死になって己自身を犠牲にしようとも、大人には敵わんのだよ。権力を持った大人にはなぁ!」

 

「うぅ、う・・・うぅぅ」

 

雪は悲しそうな目をしながら、私達へ「どうして助けに来たの!?」と言いたげな眼差しで訴えかけてくる。

 

それにしても、うーわ最低だわアイツ!よし、とりあえず事が済んだらクソ市長を1発殴るのは確定したね!!

 

そして私と椿は、雪へ今の状況に対して諦めている訳でも辛い訳でもない、至って普段と同じ表情でクソ市長に気付かれないよう彼女へウィンクした。

 

「・・・」

 

雪も私達にまだ策があると分かってくれたらしく、先程とは打って変わって目を強く見開いて希望を持った眼差しになる。

 

「さ〜て、ゆぅきぃ。そこから見ているんだな、お前が全力で守ろうとしていた、大切な大切な友人・・・もしくは親友?いや、その感じだと好きな人か?ぐふふっ、良いよ〜パパは"そういう事"にも理解がある。後でジックリ、3人でイチャイチャさせてやろう。百合プレイという奴も撮ってみたかったからな〜」

 

「えっ・・・?」

 

嫌な予感を感じた椿の見た方へと視線を向けると、なんと雪の後ろにビデオカメラが設置されていて赤いランプを点滅させていたのだ。

 

「おいおい、これからの事を録画する気かよコイツ・・・!本気で気持ち悪い奴だな!!」

 

「分かったかな?君達は、もう逃げられない。さぁ2人共、観念して綺麗なその身体を私に見せてくれ。椿君は、その手触り最高の尻尾や耳・・・綾君は、同じくらいに手触り最高な銀髪や二の腕を・・・存分に楽しませてくれ!」

 

「サラッと人様が寝てる間にヤベェ所触ってんじゃねぇ!このクソ変態市長が!!」

 

そんな私の罵倒をものともせず、いつの間にかクソ市長はカッターシャツを脱いでオッサン臭い上半身を露わにしていた。

 

そして、次の瞬間――

 

「うっ・・・!」

 

「ぎゃああ!ふ、太腿を触んなぁ!!」

 

なんとクソ市長は椿の胸と私の太腿を、高価な壺でも触るようなキモイ手つきで触ってきたのだ!

 

今までは誰に触られても平気っちゃ平気だったのに、ここまで気持ち悪い感覚を感じたのは初めてだ!

 

そんな嫌悪感からか、椿もクソ市長をキッと睨み付ける。

 

「くっ・・・最低!」

 

「後で絶対、ぶっ飛ばしてやる!」

 

「2人共、良いですね〜その顔!屈辱に耐える、その表情!」

 

今ならコイツは何でもベラベラと喋ってくれそうではあるけど、それよりも先に私達の方が気持ち悪さが限界に達して"神妖の力"を暴走させてしまいそうだ。

 

それくらい、このクソ市長は変態生徒会長より気持ち悪いって思うんだよ!

 

【落ち着きなさい、2人共。作戦が台無しになるわよ。全く、それくらいで動揺しちゃって・・・そんなに椿は白狐と黒狐が良い訳?綾も綾で、椿に触られた方が良かった〜って感じだし】

 

いやいや、そんな訳が無い・・・訳じゃないけど!

 

あ、そっか!私は後で何とかなるから、ここは椿に妲己さんと交代してもらえば――

 

【2人共、そんな顔されても嫌だからね私は。私だって今は十分嫌悪感を持ってるんだから、これ以上に気持ち悪いのはお断りよ】

 

ちっくしょう肝心な所でダメだな、この人!

 

しかも無駄に私達の心を読むような事までして・・・っていうかクソ市長もクソ市長で、いよいよ私達の服を脱がせようとしてきたんだけど!

 

これ以上はヤバいので、私達は何とか抵抗してみる。

 

「この野郎!これ以上手を出したら、絶対ブン殴ってやる!」

 

「こうやって、実の娘にも手を出すなんて!市長どころか、人としても最悪です!!」

 

「クックック・・・なんだ2人共、まだ心が折れないか。しかし、悪いが君達に助けは来ない。なんたって私には権力と"更に強力なバック"が付いているからね。私が罪に問われる事など、100%・・・いや1000%有り得ないわ!」

 

ほ〜う"強力なバック"ねぇ〜・・・多分、これ亰嗟だろうな。鬼2人の前情報で組織の奴と会ってるって目撃情報のネタは上がってるし、まず間違いない。まさか妖怪捕獲用の道具を買ってる事までは分からなかったけど。

 

私達が冷静に情報を頭で整理していく中、クソ市長は勝ち誇ったかのように自分から話を続けていく。勝ち誇ったというよりアイツの中じゃ、ほぼ勝ち確定したって思ってるのかもしんないけど。

 

「大体、あの市長も腑抜けなんだよ。観光ばかりに力を入れて、大手企業に目を背けて潰れそうな中小企業ばかり助けようとしてたからね。その結果、結局は街から若者離れを起こして老害ばかりの街へと変貌させた体たらくさ!」

 

もうなんというか、アホかコイツは!って思えてきたよ。

 

そういう政治とか私は全然分かんないけどさ。

京都には京都の、忘れられちゃいけない凄い伝統工芸がある。それを蔑ろにしようとするのは、日本の人間として絶対あっちゃならない事だと思うんだよ。

 

ついでに1つ心の中で言っとくけどな、京都にも有名な大学はあるし若い人も結構いるぞ。それを知らないのか、それとも学生なんてすぐ県外に出ていくって思い込んでるのか・・・聞いててバカバカしくなってくるっつーの。仮にも市長だろアンタ。

 

まぁ、こうしてベラベラと喋ってくれるから助かるけれども。

 

「ふーん、それで?」

 

「だから追い出したのさ、金の力で!亰嗟の力を使ってな!どんな悪い事をしている奴でも実績に金に力さえあれば、市長の座なんて簡単だ!その後には総理大臣になって、この国を私の理想のハーレムに変えてやる!ヒャッヒャッヒャッヒャ〜ッ!」

 

もうボロがボロボロと出まくってるな〜コイツ。

 

自分の欲しかった存在が目の前にいて、なおかつ抵抗出来ないって状況になったら汚い人間の本性を出してくるんだもん。

 

そしてクソ市長・・・つかクソ野郎は私達から離れて、両手を広げて空を仰ぐようなポーズまでキメちゃって、まぁ。

 

「あぁ・・・君達は最高だからね。2人共、私の愛人として傍に置いてやろうじゃあないか。クックック・・・娘と3人で、仲睦まじく此処でずっと暮らしたまえ」

 

ちなみにクソ野郎の今のセリフで、私達の耳に付けた勾玉から状況を確認していた狐2人がブチ切れました。2人の怒鳴り声が飛んできて危うくビックリしてバレそうになったわ!

 

それに私達も私達で我慢の限界なので、もう試合終了の合図をしてやる事にする。

 

「ふふ・・・そうですか、やっぱり貴方は最低ですね」

 

「だから市長の座も社会的地位も、此処で全部おじゃんにしてやるよ!」

 

「ん〜?2人共、何を言っているのかな?社会的に死ぬのは、あな――た・・・ハッ!なんだ、これは!?」

 

どうやら、クソ野郎は私達が仕掛けた罠に今ようやく気付いたようだ。

 

椿が影の妖術で雪の影を操ってテレビの電源を入れ、私が雷の妖術を応用してチャンネルの電波を適当なニュース番組へと合わせてやったのだから。

 

そして、そのニュース番組で流れていたのは・・・

 

『速報!京都市長の最悪な実態!少女へ手を出す凶悪な犯罪者!!』

 

というテロップと共に、緊急生放送で今の私達が捕まっている部屋の内部がガッツリと映し出されている。

 

「はっ?はぁ・・・?な、何故?何故、これが?」

 

クソ野郎はヨロヨロとテレビへと向かっていくので、椿の影の妖術で拘束を解いた私達はネタばらしでトドメを刺す。

 

「あ〜あ〜テステス、テストです。聞こえていますか〜?」

 

「どうやら映像はちゃんと映ってるみたいなんで、多分これも聞こえてるんだと思うんですけど〜」

 

その私達の声は、街中のありとあらゆるスピーカーから少しやかましいレベルで流れてくる。

 

「あっ?ま、まさか・・・まさかぁぁあああ!!」

 

うんうん、これくらいならネタばらしには丁度良いかな〜・・・やってやったぜ(暗黒微笑)

 

クソ野郎の悲壮な悲鳴も街中へ垂れ流しにしてやれた事で、大切な椿や雪を恥ずかしい目に合わされてイライラしてた私は完全に満足ですわ。

 

ついでに椿が窓を開けてくれたので、そこからドローンに変身してた浮遊丸が入ってきた。

 

そして、ここで私達は絶望して脱力しきったクソ野郎へ、このトリックの種明かしを説明する。

 

「僕達が耳に付けていた小さな勾玉――あれは電話みたいに、ある妖狐の人達の勾玉へと繋がっているんです。そこに音を発する全てのスピーカーに繋げられる、ある妖怪さんの妖具を繋ぎました」

 

「その結果、お前は街中全部から盛大に自分がやってきた悪行全部を白状したも同然の事をやったんだよ。人を見下しまくったツケだ、ざまぁ見晒せ!」

 

此処での映像も、ドローンな浮遊丸の姿を見れば一目瞭然なので最早説明は不要かと。

そして映像は校長先生や変態生徒会長達に、京都中の新聞社やテレビ局へ持ち込んでもらって一斉放送させるように手配してくれたという訳。

 

しかも生放送で市長のスキャンダルだから、何処もかしこもオールオッケーだったみたいだけど。

 

ちなみに私達のプライバシーは可能な限り守るようにと浮遊丸へキツく注意してたので、私達の顔や雪の顔はコイツの妖術で加工されて「見せられないよ!」なマークで隠されてるから一先ず安心だ。

・・・その報酬として私も椿も、後でカナと浮遊丸の合同撮影会に強制的に参加させられる訳なんだけど。

 

追い討ちと言わんばかりに家の周囲は警官達が既に取り囲んでいるから、助けが来ないのは誰なのかは言わなくても分かるだろう。

 

「あっ、あぁ・・・」

 

「因果応報って奴だな、観念しろよクソ市長」

 

「あんまり、僕達妖怪を舐めないでください」

 

それと同時に警官達が突入してきたが市長を現行犯で捕まえないといけない関係で、私達は自分達が胸や太腿を触られた映像を隠しながら見せないといけなくなってしまった。

 

とはいえ、雪は私達以上に身体を張ってくれたのだから我慢だ我慢!そもそも完全な証拠を残す為に私達も身体を張った訳なんだし!

 

「市長・・・いや如月努、動くな!強姦と監禁、傷害等の罪で現行犯だ!」

 

そしてクソ野郎はというと、どうやら完全に放心状態となってしまって動くどころの話じゃなくなっていた。

 

それを警官達が引っ張っていったのを見届け、すぐさま私達は雪の拘束も解いて警官から受け取って来た毛布を優しく被せる。

 

「馬鹿、椿も綾も・・・なんで」

 

「おいおい、第一声がそれかよ?まぁ、私達もちょっと無茶し過ぎたとは思ってるけどさぁ」

 

「雪ちゃん、僕と綾ちゃんは君を助けたくて助けたんだよ。そこで馬鹿は少し困るかな・・・」

 

「うっ・・・ご、ごめん。2人共、助けてくれてありが・・・うぅ、うぁぁああ!」

 

そこで雪は溜め込んできたものが限界を迎えてしまったようで、そのまま私達に抱きつくようにして大声で泣き出してしまった。

 

私も椿も、そんな雪へはこれ以上何も言わずにゆっくりと力強く抱きしめ返したのだった。

 

お前は本当に良く頑張ったよ、雪・・・!

 

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