私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
結局、あの美亜と里子の普段以上に仲良し〜な演技に騙されてアタフタしてしまった私達は、家に帰ってからも約束通りカナや浮遊丸からコスプレ撮影をされまくってヘトヘトにされてしまった。
――翌日
そんな事があった訳なので、私も椿も学校へ到着してからもずっと不貞腐れている状態だ。
「ちょっと椿に綾、昨日は悪かったってば。だから、2人共そんな不機嫌にならないでよ」
「なぁ美亜、そう言いながらもそこで椿の尻尾を触るかね普通?」
そして椿の後ろの席となっているからか、さっきから美亜は椿の尻尾を触ってばかりだ。
よくよく考えると椿の左隣の席は私で、椿の前にはカナが居るどころか右隣は雪の居る席なので、なんというか親しい仲の人で固まってる感じである。
「椿ちゃん、綾ちゃん。折角雪を助ける事が出来たんだから、2人共もうちょっと笑顔でいたら?そうしないと・・・」
「私、拗ねる・・・」
「うひゃぅ、冷た!?」
「ギャァ!!いきなり首元冷やすなよ雪!ビックリしたな〜もう!!」
とはいえ、まだまだ真夏日和だから丁度良い冷たさなんだけどさ。それにカナや雪の言う通り、いつまでも不貞腐れててもキリが無いから仕方ないね。
「ったく・・・私達も悪かったよ、ごめん」
「でも雪ちゃん、身体の方は大丈夫なの?校長先生からは、まだ無茶しないようにって言われてるんじゃなかった?」
「それなら大丈夫。私も自分の身体を犠牲にしたとはいえ貞操は守っていたし、そこまで馬鹿じゃない。それにアイツは私を殺すつもりは無かったし、ちゃんと水分や食料を貰ってた・・・その引き換えに色々されたけど」
「はぁ・・・雪が良いんなら、別に私もそれ以上言わないけど」
「綾ちゃん、一言余計です。雪ちゃんも、僕達に心配をかけないようにしてるんだから」
「はい、すいませんでしたよ〜」
そう言いつつ、私は雪が後ろから椿にベッタリな様子を眺めた。例え本人が大丈夫だと言ってても、雪自身がどれだけ辛い目に合ってきたかは想像しなくても良く分かる。実際、クソな親父からあんな酷い事をされていた訳だしね。
そんな事を考えていると――
「うふふ〜少し羨ましそうな綾ちゃんも可愛いな〜」
「カナも雪の真似して私に引っ付かないでよ・・・地味に重い」
「酷い!女の子に重いって言葉は禁句なんだよ綾ちゃん!?」
「そりゃ男女の時の話でしょーが。私だって一応女子なんだぞ、我慢出来る重さにも限界はあるっての」
「でも、そう言ってても振り払わないのが綾ちゃんの良い所だよね〜」
「うぐ」
ぐぬぬ・・・それは確かに否定出来ないかも。
だから、今みたく椿へ引っ付くくらいなら私は全然嫌じゃないかな・・・狐2人レベルのスキンシップに達したら流石に止めるけど。
すると、そんな感じの雪へ美亜が少し嫉妬した感じの声をかける。
「雪って言ったっけ?アンタ・・・椿と綾は私のなんだから、あんまり引っ付かないでよね」
「ちょっと美亜ちゃん!?いきなり変な事言わないで!!」
「「む〜!!」」
「ほら見ろ言わんこっちゃない!カナも雪もバチバチ視線で火花を散らさないでくれ〜!!」
あ〜もう!妖怪の世界に関わる前より周りがやかましくて大変だよ〜!
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――放課後
それから何やかんやで3人は仲直りしたらしく、雪から皆で駅前のかき氷屋へ行こうと誘われた。
どうにも3人は、私や椿を取り合うような単なるライバルといった関係じゃなく、例え友達でも譲れない物があるだけみたいだ。
そして暑い真夏日が続いているから、当然というか此処のかき氷屋は繁盛していたよ。
それだけならまだ普通なのだが、どういう訳か雪が考案した例の激辛かき氷が大ヒットしてる状況なんだよね・・・わ、分からんね〜最近の流行りって!
そんなブッ飛んだ行列が出来ているので、私も椿もポカーンと開いた口が塞がらない。
「ちょっと待ってて、助けてくれたお礼に"特別なかき氷"を用意するから」
「待って、雪!それ例のかき氷じゃないよね!?私、アレはもう嫌だからね!」
「さ、流石に冗談だよな〜雪?」
私が乾いた笑いで雪を見ると、「なんで?」と言いたげに不思議そうな顔をしていた。やっぱり食べさせるつもりだったんかい・・・世間の流行りもだけど、本当に雪の好みって良く分からないわ。
「あら、そのかき氷が人気なんでしょ?だったら良いじゃない、私はそれにするわ」
「ど、どーなっても知らんぞ〜?」
ああ、また哀れな犠牲者が此処に。
美亜は以前の時に一緒じゃなかったから、雪の"特別"がどういう物かは知らないんだよな。
「あれだけ人気なんだから、とても美味しいんでしょう?なんで皆嫌がるのよ」
「美味しいというより、多分ネタとしてだと思う」
「そ、そうだね椿ちゃん・・・」
「ネタ的な意味で美味しい、とは言えるかもなウン」
「?」
あの地獄めいた光景を思い出して冷や汗をかく私達に、まだ予感すらしないのか美亜は首を傾げていた。
――数分後
美亜は雪の持ってきた真っ赤な真っ赤な激辛かき氷を前に、それを現実の事かと疑うように凝視していた。そこをダメ押しと言わんばかりに、そんな美亜の向かいでは雪が待ち遠しかった様子で嬉しそうにパクパク食べるので、美亜は完全に目が点になってしまっている。
「ねぇ・・・このかき氷、目に染みるんだけど」
「激辛かき氷だからね。あっ、お残しは駄目ですからね。それに、僕達も1回食べてて嫌なんで手伝いませんから」
「は、嵌めたわね・・・」
「いや、完全に自分から見えてる落とし穴に落ちていったようにしか見えんかったが」
それに激辛かき氷の幟(のぼり)も出てて、近くでヒーヒー言ってる人も居たのに気付かなかったのは相当だと思うぞ。
「くっ・・・こ、ここまでえげつないとは思わなかったわ。だ、だけど食べられない物を作る訳はないわよね。うん、大丈夫・・・大丈夫よ」
美亜は自分に言い聞かせるかのようにして、スプーンで真っ赤な部分を大きく掬って口に入れた。
そして案の定というか、そのままの姿勢で固まってしまう。
それを見て色々と察した私達は、そっと自分のかき氷を腕で囲って防衛する。
「ミギャァァア!!!」
その辛さが今になって頭へ届いた美亜は、バーン!と椅子から飛び跳ねて転げ落ち、激しく地面でバタバタしだした。
「辛い辛い辛い!!し、舌!舌がぁ!!」
「う、うーわー・・・」
「はい、お水だよ美亜ちゃん」
そんな美亜へ椿が良い笑顔で持って来ていた水を手渡すと、彼女はすぐさまそれを奪い取るようにして一気に飲み干したのであった。
「ひぃ、ひぃ・・・し、舌が・・・雪、アンタ!なんて物を考案してんのよ!」
なお、現在美亜は皆から見えるようになっているので、周囲からは変な人を見る眼差しと哀れみの眼差しが集中している。とはいえ、単に猫耳のコスプレをした人が全力の悲鳴でもモノマネをしているなぁ〜といったくらいだけれども。
「えっ・・・美味しいのに」
そんな美亜を見ても、雪は平然と激辛かき氷を平らげているし。う〜ん、この辛さへの耐性は一体どうやって身に付けたんだろう・・・気になる。
すると、私達より少し離れた席から聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「ちょっとアンタ!何て物を食べさせるのよ!」
「ふん。辛さで胃がやられて死ぬかと思っていたが、精神ばかりか胃の方もおかしかったか。そのかき氷に耐えるとはな」
「耐えてないわよ!かっらいわねぇ!!」
その声に気付いた私と椿は、恐る恐るそちらへ顔をむける。そこに居たのは、なんと亰嗟のナンバー2を自称していた丘魔亜と和月慎太だったのだ!
何でこんな所に・・・と思ったけど、丘魔亜の手元にある真っ赤なかき氷を見て大体察したわ。何これ怖い、激辛かき氷が凄い人気に感じるんですけど。
そんな訝しげに亰嗟の連中を見ている私達へ、3人は不思議そうな目を向けてきた。
「どうしたのよ、椿も綾も?」
「皆、静かにして・・・ゆっくりと、何ともない顔で此処から離れるよ」
「ヤバい事に、亰嗟の丘魔亜と和月慎太が一緒に居るんだよ」
私達の言葉で3人も此方の見ている方向へと視線を向け、それから驚いた様子で静かにテーブルへうつ伏せになるようにしながら身体を屈めた。
「なんで、こんな所に・・・」
「知らない。でも、ピンチだと思う」
「私も、こんな所で戦闘なんかゴメンよ」
「と、とにかく一旦この場を離れて――」
私達はソ〜っと席を立ってコソコソと離れようとすると、前から誰かが突進してくるのが見えた。そして、その人物はなんと――
「辛いっす〜!!」
「ちょ、えぇぇえ!?」
「な〜んで楓ちゃんがこんな所に居るんですか!」
狸の耳や尻尾を隠して、一応はチョーカーみたいな妖具で普通の人のように見えてるのは褒めよう、ウン。
・・・じゃね〜わオイ!まさか楓まで激辛かき氷を食べに此処へ来ているのは予想外だったんだけど!?しかも楓はそのまま私と椿へ突進してきたもんだから、派手にぶつかって一緒に転んでしまったよ!
「あら、貴方達は」
「むっ、お前達は・・・」
「ぎゃあ!やっぱりバレた!!」
もう、本当に最悪だ〜・・・それに楓は何処でこんな劇物の存在を聞いたんだよ?おかげで意図してない大ピンチに陥っちゃったじゃんか。
「楓〜大丈夫!?そんなに辛かった?・・・って、何この空気は」
「楓が此処に居るの、ひょっとしなくても海音さんが連れて来たんかい!」
大体納得いったわ!
ついでに楓が普通の人間のように変化出来てるのも、海音さんの協力のおかげみたいだし。なんせ
楓本人から海音さんの妖気も感じるからね。
「イデデデ!痛いっす!姉さん達、なんでこんな所に!?」
「楓ちゃんは黙ってて、今ピンチなんだから!」
「自分も命がピンチっす!海音ちゃん、助けてっす〜!」
ちなみに楓は椿からコメカミグリグリの刑に処されております。逃げなきゃいけない状況ではあるけれど、これ何とかなるかな?下手に戦っても勝ち目は無いかもしれないし、かといって"神妖の力"を使ったら私も椿も暴走する可能性もあるし。
「この人達、只者じゃないわね・・・」
「うん、亰嗟の幹部な連中だしな」
そして未だ状況を掴めてない楓とは違って、海音さんは彼女を無視して丘魔亜と和月に視線を向け続けている。
「ヤバいわね、それ。椿ちゃん、応援は?」
「僕と綾ちゃんの勾玉を繋いだから、この会話は白狐さんにも黒狐さんにも聞こえています。多分、すぐに来てくれると思う」
「つっても、早くて数分かかるよな・・・それまで持ちこたえられるか、私達?」
そうして私達が臨戦態勢を取っていると、目の前の2人は少し困った様子で首を横に振ってくる。
「あらあら、そんなに警戒しなくても良いわよ〜。私達、今は休暇中だから〜」
「というより、お前達に敗れてしまった事で亰嗟の目的が遅延した為に"あの方"から怒りを買い、しばらくの間待機を命じられただけですがね」
「ちょっと!!」
敵の2人による言葉で、どちらも幹部とはいっても実際は微妙な立ち位置にあるのかと推測出来た。
だからといって、私達は警戒を簡単に解くつもりは無いけれどね。むしろ、さっきよりギラッとした眼差しを向けてやる。
「んふふ、そんなに眉間へシワを寄せてたら可愛い顔が台無しよ〜」
「そんな馴れ馴れしそうにされても、こっちは全然信用出来ないね」
「安心しなさいよ。今貴方達に何かした所で、私達にも何の得にはならないわ。そこでどうかしら、少し私達とお茶しない?」
「いや、そっちにとっちゃ"汚名挽回"のチャンスのハズだろ!」
「綾ちゃん、そこは"名誉挽回"だよ・・・でも、丘魔亜さん。それくらいじゃ、僕達は貴方達と話す理由にはならないよ」
私と同じように警戒してる椿から四字熟語の間違いをツッコまれてしまったけど、彼女もやっぱり向こうの態度に違和感を感じているようだ。
「少し、亰嗟の事を話してあげるわ。それならどうかしら?」
「「・・・っ!」」
その丘魔亜の言葉に思わず私達は動揺してしまう。これはこっちからしても亰嗟の情報を得られるチャンスなんじゃないか?でも、それ自体が罠の可能性も――
「良いわ。その代わり、ちょっとでも怪しい動きを見せたら・・・分かってるわよね?」
「ちょっ、美亜ちゃん!?」
「椿、敵の情報が得られるチャンスでしょうが。"墓穴に入らずんば虎子を得ず"ってね」
「美亜ちゃんも綾ちゃんみたいな間違いして・・・それを言うなら"虎穴に入らずんば虎子を得ず"です」
「な、何でも良いでしょ!とにかく敵の策略だろうと何だろうと、リスクは承知で突っ込むのよ!」
「滅茶苦茶ヤケクソじゃね〜かよ!だ〜もう、このままじゃ埒が明かないし仕方ないな!」
とりあえず敵の出方を伺って先手を打つ為にも、私達は一旦美亜の言う通りに、向こうの話し合いへ乗る事にしたのだった。