私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
――近くの喫茶店にて
亰嗟の2人の話し合いに乗った私達は、なるべく人目が付くようにと喫茶店に場所を移していた。此処なら、例え向こうが何かをしようとしても確実に目立つハズだろう。
それでも、今までに妖怪達の常識外な力を見てきた私達は警戒を解かないけどね。ファミリー席の向かいへ座る相手2人を不審がる態度は崩さないよ。
「困ったわね〜そんなにピリピリされてちゃ、話せるものも話せないわよぉ〜」
「貴方がそうやって、クネクネクネクネしているからでしょう・・・全く、同じ幹部として頭が痛い」
心中お察しします。
まぁ、見る限りでは丘魔亜と和月は仲が良い訳じゃなさそうだけど。なんというか、互いに自身と相手の力量を弁えているから、喧嘩までには発展していないといった感じだろうか。
「さっ、此処は私達大人が奢るから何でも好きな物を頼んで頂戴」
「マジっすか!?それじゃあ自分、チョコレートパフェで!」
「あら〜元気が良いわね〜もちろん良いわよ〜」
「待て待て待て!楓、なんか何時にも増してテンション高くないか!?」
目の前に育ての親を殺したかもしれない連中が居るって事は話したハズだよな!?それなのに、なんでそこまで普通そうに振舞ってるんだよ!
そしてそれは椿も変に思ったらしく、慌てて楓へ声をかけようとする。
「ちょっと楓ちゃ――」
「椿ちゃん、綾ちゃん。今は楓に話しかけても無駄よ。あれでも怒りが爆発しそうで、理性を保つのに必死みたいだから」
すると海音さんは私達に、楓が何故そんな状態なのかを説明してくれた。
楓がそこまで怒っているなんて・・・普段通りに振舞っている分、かえって妙な恐怖を感じてしまいそうだ。
とにかく、この場所は敵地じゃないので私達も各自で飲み物を頼む事にした。カフェラテを頼んだ私やブラックとかを頼んだ亰嗟の2人以外、誰もコーヒーは頼まなかったけど。えっ、まさか皆苦いの苦手なのか?
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「さて・・・それじゃあ、どこから話そうかしら」
皆の頼んだ飲み物が全て届いてから一口ずつ口を付けた後に、丘魔亜がコーヒーを置いて一息つく。
「その前に、ちょっと待ってくれる?貴方達は、なんでそんな機密そうな事を私達に話すの?」
すると、相手が話し出す前にカナが不思議そうな顔で質問する。まぁ、確かに私達からすれば得しかない事だし、向こうだって勝手に内部の情報を漏らすのは色々とヤバいんじゃないだろうか?
「答えは簡単よ。私にとっては、亰嗟の目的なんて関係ない。命令された事はやるけど、それを絶対に成功させてやる〜なんて意気込みとか無いわ」
「それだったら、なんで・・・」
「面白そうだから」
そんな丘魔亜の一言でカナは押し黙ってしまった。というよりも、今の丘魔亜の一言が狂気を感じるような雰囲気だったから無理もないと思う。
「それじゃあ、貴方は?」
そして緊張で口が開かなくなってしまったカナに代わって、今度は雪が和月へと質問する。
「私は、普通の人間です。貴方達のような、半妖や妖怪のやろうとしている事には全く興味はありませんよ。ただ稼げたら、それだけで良いんです。最も、貴方達が邪魔さえしてくれなければ更に稼げたのですがね」
こっちもこっちで頭のネジはおかしいらしい。
亰嗟が妖怪の世界を広げたら、それこそ人間が皆妖怪にされてしまうかもしれないのに。
勿論そんな言葉を聞いた椿は、少し怒った様子で相手に反論する。
「亰嗟の目的を分かってるんですか?このままじゃ人間が妖怪に――」
「それも、興味が無いと言っているんです。そうなったらそうなっただけの話、私はただ運命に身を任せるだけです」
「それって、周りに流されているだけだと思うけど」
「子供に何が分かるんですか?」
「これでも僕、60年生きてますよ」
「なんだ、ババァですか」
「バッ!?僕はお婆さんじゃない!!」
すると和月の余計な一言で椿がキレそうになってしまったので、私は慌ててフォローを入れた。
「だぁ!落ち着け椿!私は椿がロリババァでも問題な――あっ」
「あ〜や〜ちゃ〜ん・・・?」ゴゴゴ
「いや本当にごめん、今のは物の例えというか・・・イデデデ、頬っぺたつねらないでくれ〜!」
「椿ちゃんも綾ちゃんも落ち着いて!今は静かにしないと」
「「はい、すいませんでした」」
あ、あ〜っぶねぇ〜・・・ついつい本音がちょこっと出てしまったよ。私にとっちゃ椿は親友で好きな人なのが変わらない事は本気だし、椿がそこまで自分の年齢とか気にしてるって思わなかったんだ。あのままだと、カナのフォローが無かったら修羅場に発展してたのは間違いないね。
「貴方達って面白いわね〜良いわ〜」
「笑ってないで、早くその"亰嗟の目的"とやらを話しなさい」
そんな中、美亜は堂々とした様子で相手に単刀直入な質問をぶつけていた。まぁ亰嗟の目的が妖怪の世界を広げるだけ、といった事だけじゃなさそうなのは確かかもしれない。
「そうだったわね。とりあえず今の所、亰嗟は目的の第2段階まで達成しているわ。目的の段階は4つで、第1段階は"組織の固定化"・・・これが1番時間かかったらしいわ。そして第2段階は"ある物"を手に入れる事。その為にお金が必要だった場合を想定して、今まで亰嗟は資金集めをしていたのよ」
丘魔亜はそこで一息ついて、再びコーヒーを一口啜る。そこまでの話で妙な違和感を感じて、今度は私が2人へ質問をする。
「でも、確か亰嗟の目的は・・・"妖界を人間界にまで侵食させる事"だったよな?」
「あら、そこまで情報を手に入れているのね。でも残念ね、正しくは"人間界と妖界を反転させて妖界を安定化させる事"らしいわ」
「なんだって!?・・・って驚いちゃみたけど、なんかあんまり変わんない感じでピンと来ないな。ところで今更なんだけど、こんな話を此処でベラベラ喋って大丈夫なのかよ?」
そうして私が周囲をチラチラ気にしていると、和月が例の妖具の本を取り出して唇の形をした妖怪を召喚した。それが口を閉じているって事は、ひょっとして・・・
「気付きましたか?コイツの口が閉じている内は、その周囲数十メートルまでは私達の声は聞こえません」
「なーるほどね、それなら遠慮なく話せるって訳か」
「さて・・・第3段階は、言わなくても分かるかしらね?その"ある物"を使う為の鍵と――貴方達2人よ」
そう言って丘魔亜は私と椿を指差した。どうやら、それが亰嗟が私達を狙っていた理由らしい。
続けて椿が丘魔亜へと質問する。
「でも、なんで僕と綾ちゃんを?」
「正確には、貴方達の中にある強大な妖気ね」
「マジかよ・・・」
なるほど、それなら色々と合点がいくね。とはいえ、幾ら面白そうだからって私達にここまで亰嗟の情報を話すなんて、なんか逆に不安になってきたんだけど。
そう思って更に質問をしようとすると――
「ふぅ・・・んで、自分の育ての親を殺したのはどっちっすか?」
そこで椿の隣で一心不乱にパフェを食べていた楓が、スプーンを少し乱暴に置いて2人へドスの効いた声を向けた。
「おい楓、流石にそれはストレート過ぎやしないか!?」
「ちょっと楓ちゃん、なんだか様子が変だよ?」
その楓の豹変ぶりに思わず私達は困惑してしまう。なんというかブチ切れた私のように非常に殺気立っていて、どこか抜けているけど元気はつらつな普段の性格とは別人かと思う程だ。
「あらあら、何の話かしらね。残念だけど私達は違うわ、仕事で直接的な人殺しはしてないからね」
「それじゃあ、誰っすか?」
「ちょっと、楓ちゃん!」
慌てて椿が暴走しそうな楓を止めようとすると、海音が特に驚いた様子もなく止めてくる。
「無駄よ、楓はチョコを食べると別人になるのよ」
「海音さん、そういうのは先に言ってくれよ!っていうか、なんで止めなかったんだ!?」
「ごめんね、綾ちゃん。楓は楓自身で、この事に決着を付けないといけないの。だから私はそれを手助けしてあげる為に、こっちに来て同じ所へ住む事にしたのよ」
「なるほど、とりあえずは分かったよ。それで海音さんも楓と一緒に居たのか・・・」
それに海音さんの言う通り、楓が自分の事を自分で片付けないといけないのは確かだろう。たとえ受け入れた過去でも、そこに至るまでの因縁は必ず存在するからね。
「早く言うっす、誰なんすか?」
「あらあら、怖いわね〜。さぁね、私達は知らないわ。雇われた殺し屋とか、そんな所じゃないかしら?」
「暗殺など必要な時には人間を雇っていますし、恐らくはその内の誰かでしょう」
「そう、っすか・・・」
すると、そう言って楓は海音さんから何故か飴玉を貰って口に放り込んだ。その瞬間――
「椿姉さん〜!綾姉さん〜!怖かったっす〜!」
「「戻った!?」」
ええ・・・チョコで危なそうな感じになって飴玉で元に戻るとか、楓の性格って訳が分からないんだけど。これって体質、なのかな?
まぁ楓の変貌はともかくとして、資金集めの為に妖怪の子供を攫って売り飛ばしたり、麻薬以上にヤバい妖草を売り広げようとしてたのは大問題だから、そこは少しでも罪を償ってもらいたいね。
「やっぱり面白いわね〜。だから貴方達に亰嗟の目的を教えれば、もっと面白くなると思うのよね〜」
「まさか・・・それだけの為に、僕達へ亰嗟の目的を教えたという事ですか?」
「訳分かんない性格してるな〜」
そして椿は相手に裏がありそうだと考え込む仕草を見せ、私も丘魔亜のマイペースさに大きくため息をつく。
「誤解されているようなので言っておきますけど、このオカマの行動なんて分かろうとしない方が良いですよ。近くにいる私ですら、全くコイツの考えている事は分からないのでね」
「ちょっと〜ニューハーフと言いなさいな」
「どちらでも同じでしょう。それに私からするとニューハーフというのは男なのに女の格好をしている方で、男の格好のまま女っぽい事をしている方がオカマだと思うのですが?」
「わ、私ったら・・・今まで、なんてミスを。良いわ、もうオカマでも・・・オカマでも良いわよ」
うわぁ、凄くど〜でも良い漫才を見ちゃった気がするわ。私からしたら、結局どっちも男なんだし大した違いは無いと思うんだけどな・・・また椿が巻き込まれそうだし、下手に口に出すのは止めとくけど。
でも2人がノビノビと長く話してくれたお陰で、喫茶店の外に零課の人達が来る時間は稼げたかな。
とりあえず、後の話は署の方で〜って事にしてもらおうか。
「さて、あんまり時間もないですし。丘、貴方の気まぐれも十分でしょう?」
「えぇ、良いわよ〜。本当は、そこの半妖の子達を此方に引き込みたかったけれど・・・どう見ても無理そうだしね〜」
「おいおい、そんな目的もあって私達に声をかけてきたのかよ!?やっぱり油断ならね〜な!!」
「でも、もう貴方達は逃げられないよ。だって、この喫茶店の周りには既に、捜査零課の人達が取り囲んでいますからね」
『その通りだ。2人共、大人しく投降してもらおう』サッ
そうして亰嗟の2人が席を立つのと同時に私と椿も立ち上がり、喫茶店の出入口からはオジサンがフリップを首に提げた状態で弓矢を2人に向ける。もちろん、オジサンの姿はマントのような妖具で私達や亰嗟の2人以外には見えていない。
しかし、何故か丘魔亜はオジサンを見て少し嬉しそうな顔になり、和月は本を開きながら私達を睨みつけてくる。
「あらヤダ、ゴテゴテな物着てるけど結構良い感じの男じゃない」
「なるほど、お前達の方は外へ連絡を取れていたようですが・・・この結果は読めていましたよ。では次に会う時は、容赦なく2人共に確保させてもらいます」
すると和月の本からは煙の姿をした妖怪が大量に現れて、私達の目の前は店内一杯になる程の濃い煙によって見えなくなってしまったのだ。
「うっく・・・しまった!」
「あはははは!また遊びましょうね〜貴方達」
「くっそ〜!逃げんなやぁ〜!!」
すぐに煙を払おうと風の妖術で突風を起こすが、それでも煙は全然消えず2人に逃げられてしまったようだ。なんせオジサンも何も見えないまま、出入口から逃げるのを止められなかったらしいし。
「あ〜もう、アンタ達!戦った事があるんだから、これくらい予想しときなさいよ!」
「ご、ごめんなさい・・・」
「まさか全力で逃げる手段が来るなんて思ってなかったよ・・・私も悪かった」
『それを言うなら、俺も連中を止められなかった事を謝るしかない』スッ
そんな体たらくを美亜に怒られ椿はショボンとして、オジサンもガックリと肩を落としてしまった。私も、確実に捕まえられるって自信があったから気分がズーンと落ち込んでしまう。
それからは捜査零課の人達に続けて、狐2人もやって来て私達の無事を確認してホッと安堵していた。後の調査の結果は、やはりというか店内には亰嗟の2人の姿は見つからなかったそうだ。
クソ〜、今度は絶対に2人を捕まえないと・・・。