私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第拾話 とうとう出発の準備だけで日が落ちよった!

 

――その日の放課後

 

私と椿は、狐2人や何故か一緒に着いて来たカナ達と学校近くの公園で待ち合わせをしていると、わら子と4つ子が雲操童(うんそうどう)という雲の妖怪に乗ってやって来た。

 

そして私達はカナ達へこれからの事を説明し、今日やる事は非常に危険なので、先に帰っていて欲しいとお願いしたのだが・・・

 

「その先輩の人は一緒に行くのに?」

 

「まぁ、そう思うよね・・・」

 

カナは嫉妬の眼差しを湯口先輩へと向けていた。

 

何故か先輩まで着いてきたのは、どうやら私達が依頼で山間部へ行く事を聞きつけたらしく、「調べる事がある」と一緒に着いて来たからだ。

 

『どうせ、滅幻宗に関係する事ではないのか?』

 

「あぁ、そうだ。ここ数日に、滅幻宗の奴らが今回の依頼で行く山の周辺で目撃されているらしい。何か悪事をしているのなら、手掛かりが掴めると思ってな」

 

黒狐さんが嫌味を含めてちょっかいをかけたが、先輩は慌てる事すらなく冷静な様子で答える。

 

『黒狐よ、お主の負けじゃ』

 

『ぬぐぅ・・・』

 

「なーに大人気ない事やってんだか、もう」

 

子供っぽく黒狐さんが悔しそうにしているのを見て私はため息をつく。それにしても、先輩はそんな事を気にすらせず考えに耽っているようだ。

 

そして、ようやくカナ達も今の会話を聞いて、今回の依頼が危ない物だと理解してくれた。

 

「そっか・・・なんだか、聞いているだけで危なそうだね。分かったよ、私達は待ってるね。でも椿ちゃんも綾ちゃんも、皆ちゃんと無事に戻って来てね」

 

「あぁ!絶対戻って来るよ!」

 

「あっ、うん!もちろんです!」

 

「2人共、絶対に怪我1つ無くね!」

 

「いや、流石にハイキングじゃね〜けどね!?」

 

「ぜ、善処します・・・」

 

それにSランクの任務に行く訳なんだし、向こうでどんなトラブルが起こるかも分からない。でも、カナ達は本気の目をしてたので"怪我無しで帰ってくる"事を断れなかったよ。

 

ちなみに今回の依頼で行く山は、付近に住む人ですら近付かず「あの山に居る"何か"を何とかして欲しい」と数十年前から市役所とか色々な所へ頼んでいた程らしい。案の定というか、未だ解決は出来ていないようだが。

 

挙げ句、人だけじゃなくて近所の妖怪までが困り果てる事態へ発展してしまってセンターに依頼した話を、別な用事で偶然居合わせていた4つ子が見つけて受注するに至ったのだそうな。

 

まぁ、そんな長期間解決されてないような案件なので怪我無く帰るのは大変だと思う。だが、そこへ更に雪がとんでもない条件を出してきたのであった。

 

「椿、綾。2人共、怪我1つにつき1回弄られる事。良い?」

 

「はい?」

 

「え?ちょっと!」

 

『ほぉ・・・良い事を言うな、雪とやら。よし、ならば我もそれに参加しよう』

 

『待て待て、白狐と女子だけにはさせんぞ!俺も加えさせてもらう!』

 

「何勝手に色々決めてんじゃぁぁあ!?」

 

うわひっでぇ!私と椿がカナの頼みを断れなかったのを良い事にオマケを付けてきたんだけど!!

 

「湯口先輩!先輩からも何か言ってください!」

 

椿も先輩へ助けを求めるが――

 

「んっ?あぁ、安心しろ椿。俺も参加する、椿目当てにな」

 

「そうじゃなくて〜!」

 

「サラッと本性まで出さないで先輩!?」

 

なんかドンドン椿への負担が大きくなってる気がするんですけど!狐2人やカナ達は本気だから尚更困るって・・・。

 

だが、先輩は真面目な表情のまま話を続ける。

 

「あのな、2人共。お前らの方が、皆の気持ちに気付いていないんじゃないのか?どっちも、見て見ぬフリをしていないか?」

 

「えっ?私はとにかく、椿は皆の気持ちを良く分かってると思うけど・・・」

 

「綾も椿も同じだ。俺にはどうも、お前らはそれぞれ別な形で皆と正面から向き合っていないように見える。皆、お前ら2人に好意を寄せているのは分かっているだろうが、その先は分かっているのか?いつも綾は誰から少しは距離を取ろうとするし、椿もいつも何か考え込んでしまっているから、せめて一緒に居る時は楽しんでもらいたいと皆から思われている事に気付いているのか?」

 

「・・・っ」

 

「・・・」

 

その先輩の言葉には、私も椿も何も言う事が出来なかった。

 

全くこの人は、どうしてそこまで格好良い大人な事が言えるんだろう?私達より少し上な中学生とは思えないよ。

 

けど、言われてみれば確かに皆は私や椿の事を良く気遣ってくれている気が――

 

「はぁ〜・・・椿ちゃんの尻尾フワフワ〜」

 

「綾の髪、椿の尻尾と同じくらいに最高」

 

う〜む、こうしてカナや雪が私達にいきなりベッタリしてくるのも、なんというか不思議だとは思っていたよ今更。

 

そう考えて思い出してみると、私達はどれだけ皆から心配されてたのだろうか?

 

あぁクソ、私ったら全然皆を安心させられてないじゃんか。椿を、そして大切な人達皆を守るって決めたのに・・・。

 

「ごめん、先輩。私、ちょっと自分の事を考え込み過ぎちゃってたよ」

 

「ありがとうございます、先輩。僕も綾ちゃんと同じように、色々抱え込み過ぎてました。でも、そこまで先輩が僕達の事を気遣っているという事は、先輩も妖怪について考え直してくれたんですね」

 

「そ、そんな訳じゃ・・・ないけどな」

 

そう言って、先輩は恥ずかしげに鼻の頭を擦った。ふと、私は"ある事"を思い出したので思い切って先輩に質問する。

 

「それと1つ気になってたんだけど、先輩が妖怪退治に使っている道具――アレはやっぱり妖具だよね。前に戦った時から、何回も妖気を感じていたし」

 

「やっぱりか・・・アレは"練気"ではなく"妖気"だったか。妖怪に対する知識ばかりか、大人達の話している事が自然と理解出来たのは、やはりおかしい事だとは思っていたんだ」

 

まさか私達へ指摘した今の言葉も、それを気にしての確認だったのだろうか。恐らく先輩の本心も入っているんだろうけど、ちょっとだけ不安だ。

 

――先輩が人間から徐々にかけ離れていく。

 

最近、先輩の身体を纏うように出ている微弱な妖気。それはきっと滅幻宗から渡された道具を使い続けた結果、身体に少しずつ妖気が蓄積されていったからだと思う。

そして、その大人びた考え方をするようになってしまったのも、その蓄積された妖気で脳にまで影響を及ぼし始めているからなのだろう。

 

「湯口先輩、それ以上滅幻宗の道具を使い続けたら――」

 

「綾、それなら尚更の事だ。俺のように、妖怪退治は正義の為だと信じて疑わない奴らは沢山居る。そいつらに警告する為にも、俺は滅幻宗の実態を暴かなくちゃいけないんだ」

 

「けど、それじゃ先輩が!」

 

「俺には俺の・・・絶対に着けなくちゃいけない"ケジメ"があるんだ。だから綾、お前の気持ちは嬉しいが今は止めないでくれ」

 

「くっ・・・」

 

その先輩の必死な"想い"が込められた言葉に、私は何も言う事が出来なかった。

 

多分、滅幻宗の中には先輩の友達も居たりするのだろう。その上、今まで自分が正義だと信じて行ってきた事に対する償いも込めて、そんな事を言ってきたのかもしれない。

 

椿も先輩の"想い"を理解したのか、心配の言葉を彼へとかける。

 

「先輩・・・身体に異変を感じたら、すぐに言ってくださいね」

 

「あぁ、分かってる」

 

なんというか、私達も先輩も結局の所は同じじゃないか・・・誰かの為を想い続けて、自分の事は何にも考えない。雪とは別な意味で似た者同士だよ、本当に。

 

「・・・んで、カナと雪はいつまで椿の尻尾を触ってるつもりかな〜?」

 

すっかり忘れかけて振り向いてみたけど、いつの間にか雪まで椿の尻尾をサワサワしてたんですけど。

 

「本当に何しているんですか、2人共?」

 

「あ〜ん!椿ちゃんが尻尾で悶えなくなっちゃった〜!」

 

「綾も髪を触ってるのに反応しなくて、つまら・・・ない」

 

「いや、そりゃ髪は髪なんだし」

 

雪は私の髪を何だと思っていたんだろうか?まさか椿の尻尾と同じように、触ると悶えちゃう弱点とでも思ってたり・・・してましたね、あの仏頂面だと!

 

「んっ・・・良いから、早く離してください2人共。明日は休日なんだから、帰ったらいっぱい触らせてあげます」

 

「本当に!?」

 

「絶対、だからね?」

 

カナ達が嬉しそうな中、私は狐2人みたく椿に断られそうな予感がして恐る恐る尋ねてみる。

 

いや、私だって触りたいんです。

 

「あっ、えっと・・・私、は?」

 

「全く、仕方ないですね。綾ちゃんも触ってOKにします」

 

「わ〜い!ありがとう椿大好き!」

 

お許しが出た!これでやる気出る!!

 

ちなみに狐2人は自分の嫁を自慢しているかのように、どちらも誇らしげな表情でフフンと鼻息を鳴らしていた。

 

そして気付いたら先輩までもが、そんな私達を見て少しニヤニヤして見ていたので、そこで色々見られて恥ずかしさがMAXになった椿が抗議の眼差しを向けてたよ。

 

「む〜」

 

「悪い悪い、そんなに可愛く睨むな椿。必死に我慢しているのがバレバレだぞ?」

 

「あっ!ちょっと、それ言わな・・・い、で!?」

 

なんか椿の顔が、みるみるうちに青くなっていくんですけど。

 

どうやら、さっきから椿が尻尾を触られても反応しなかったのは、別に慣れたりした訳じゃなくて我慢してただけみたいです。

 

「あっ・・・待って、カナちゃんも雪ちゃんも止めてってば!!」

 

「やっぱり、椿ちゃんは椿ちゃんだね!」

 

「だから、止めてって・・・はうっ!」

 

そんな先輩の言葉を聞いてしまったものだから、カナと雪はニヤ〜っとしながら椿の尻尾を掴む手に力を込め始めちゃったじゃん!

 

「それで座敷様の"あの力"を使えば、鎮める事が出来るのですが・・・」

 

「如何せん、おかしな報告が来ているので油断が出来ません」

 

『ふむ、分かった。十分に注意をしておこう』

 

「宜しくお願いします」

 

「座敷様の守護は、この玄葉がやります」

 

すると、そんな私達の脇で他の皆が今回の依頼について話を進めていく・・・じゃなくて!なんで私と椿抜きで勝手に話を進めてくんだよ!?

 

「ちょっ、私達も話に――」

 

『やはり椿は、耳が1番弱いな』

 

「あぅ!!こ、黒狐さんは作戦の内容確認に参加してくださ〜い!!」

 

「あ〜もう、何やっとんだ!?これからSランクの任務をやるんでしょーが!のほほんとしてて良いのかよ!?」

 

『ふっ、椿も綾も案ずるな。お前達2人は我々の言う事を聞いて、その通りに動いていれば良い』

 

先輩の話もあったとはいえ、なんで皆ここまで過保護になっちゃうかな!?アレか、私も椿も結局は女子中学生にしか見えないからイカンのか!?

 

なお、この後もグダグダしてしまって私達が依頼主の所へ出発する時には夕暮れになってしまったのであった。

嫌な予感はしていたけれど、とうとう出発の準備だけで日が落ちよった!

 

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