私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第拾壱話 廃村

 

――京丹後市、とある山間部にて

 

日が暮れ始める前に、ようやく私達は依頼主の妖怪が身を潜めているという場所へと到着する。

 

霊狐のレイちゃんに乗って空を飛行しながら、なおかつ私と椿の感知能力があるのに、霧の如くハッキリと見つけるのが厳しい謎の強い妖気が、谷の近く辺りから発されているのを感じる。

 

「ムキュゥゥ・・・」

 

「やっぱりレイちゃんも何かを感じ取ってるみたいだね。龍花さん、そっちは何か見つかった?」

 

そして後ろで皆が乗っている雲操童へ声をかけると、龍花さんは見つけたらしく手を振ってから下の方を指さした。

 

「居ました、綾様。連絡の通り、あの提灯の灯りで間違い無いようですね」

 

「ありがとう、龍花さん。私達もこれからそっちへ向かうよ!」

 

「行くよ、レイちゃん。谷の方が気になるのは分かるけれど、今は依頼主から話を聞かないといけないから皆の後ろを着いて行ってくれる?」

 

「ムキュ・・・」

 

椿の言葉にレイちゃんはコクリと頷き、先を行く雲操童の後に続いてくれた。

とりあえず言う事は聞くようにって練習をしておいた事は良かったのだが、どうしてか椿と私の言う事しか聞いてくれないのは不思議といえば不思議だ。レイちゃんによる飼い主認定・・・とかによる物なのだろうか?

 

そうして皆で降り立った場所は完全に山のド真ん中といった所で、そこに不自然な感じにポツンと建つ納屋のような山小屋があった。その山小屋の前には、古臭そうな木こりの格好をした如何にも老齢そうな爺さんが立っていて、長い枝に提灯を付けて私達に知らせる為にフーラフーラと高く掲げてくれていたのだ。

 

ただまぁ、なんというか・・・その挙動が年寄りの人特有の危なげある動きで、見ているだけで止めたくなるような状態だったけど。

 

「良く来てくれた。お前さん達が依頼を受けた者達じゃな?」

 

「あっはい、そうですけど。一先ずその提灯は危なそうなんで、私が代わりに持ちますね」

 

「おぉ、すまぬすまぬ」

 

「白狐さん、この妖怪さんは?」

 

私が爺さんから提灯を受け取っていると、椿は不思議そうな顔で白狐さんに爺さんの事を訊ねようとする。

 

しかし、それよりも早く爺さんがレイちゃんを見て驚いた反応を見せてきた。

 

「ほぉ!あんた達2人は霊狐を従えとるのか!?」

 

「へっ?えっと・・・まぁ、その・・・はい」

 

そう私が答えると、爺さんは嬉しそうな表情を浮かべてウンウンと頷く。

 

「いやはや、何とも心強い方々が来てくれたものだ。それに、あの時の座敷わらし様も来てくれたのか」

 

「ご無沙汰しています、山神様。あの時は私の失態でとんでもない事をしてしまい、申し訳ありませんでした」

 

「今更、別に良い。あの時の事は致し方ないものだ。そちらが気にする必要は無い」

 

そう言って爺さんは優しい目で、わら子へと微笑みかけた。

 

なるほど、この爺さんは山神なのか〜・・・って、ちょっと待てぃ!今サラッと流しかけたけど・・・か、神様ですと!?

でも、妖怪と同じような妖気を感じるし普通の神様って訳じゃないのかな?

 

その疑問は椿も同じだったようで、白狐さんへ改めて質問をしていたよ。

 

「白狐さん、あの妖怪さんは山神様なの?」

 

「ひょひょひょ・・・そんなものは、周辺の者から勝手に呼ばれているだけじゃよ。私自身には名前など無いから好きに呼べと言ったら、そう皆から呼ばれるようになったのじゃ」

 

すると声が聞こえていたのか山神様が先に答えてしまったので、椿は少し気まずそうな表情になってしまった。

 

『椿よ、気にするな。それくらいで気を悪くするような奴ではない。我ら以上に長生きしておるからな』

 

「ひょひょ、そういう事じゃ。しかし・・・その私でも、どうにも出来ん事はある。人の性(さが)というのは、誰にもどうする事も出来ん」

 

「は、はぁ・・・」

 

それから山神様は着いて来いと言った感じで、私から提灯を受け取って山道へと歩いていく。

山の頂上へ向かうような道には見えないので何処へ続くのかは分からないが、結局は依頼に直接関係するだろうから後を着いていくしかなさそうだ。

 

「その昔、人の言葉で言うなら江戸時代かの。この辺りには、1つの村があったんじゃ」

 

すると突然、山神様が何事かを語り始めた。

まぁ、これもきっと今回の依頼に繋がるのかもしれないし、ここは下手に止めず聞いておこうかな。

 

「その村は川の傍にあり、他の村とは断絶状態で物資が乏しかった。その為に月2・3度、山を超えた先にある村へと物資の調達に行っておったが時代は時代、そこは山賊の住処の近くを通らぬといけなかったのじゃ」

 

「はぁ、そうなんですか」

 

よく昔話では聞くような話だ。山賊のせいで物資の調達が難しいどころか、村を襲撃されては被害を受けた・・・といった感じだろうか。

とはいえ、それならそれで何故そんな場所に村を作ってしまったのかと思う話になるんだけど。

 

そんな私の考えを見透かしたかのように、山神様は少し笑ってから話の続きを始める。

 

「ひょひょ、お前さん達の言いたい事は分かる。だがの・・・その村は、身体の不自由な者や精神のおかしくなった者達が追いやられ、或いは山に捨てられて辿り着いた場所。他に行く所など、無かったのじゃよ」

 

「えっ・・・」

 

そんな衝撃的な言葉が出てくるとは思ってもなかった私は、つい絶句してから山神様に謝るように少し頭を下げてしまう。

 

「あっ、その・・・なんかその、すいません」

 

「ひょひょ、そこまで気にしなくとも良い」

 

そして、さっきからレイちゃんは威嚇するように唸ってばかりいたけど、皆で進んでいる道の先を良く見たら妖気を感じた例の谷の方へ向かっているようだ。

 

「とにかく、そんな者ばかりじゃからか山賊からも満足には逃げられず沢山の被害者が出ておった。しかし、物資を調達出来なければ村が壊滅してしまう。そこで、その村の中で昔から大工をやっていた事故で腕や足を無くした者達が、我こそはと立ち上がって村の近くを流れる川に橋を架けようと提案したのじゃ」

 

「橋・・・ですか」

 

その言葉に椿が訝しい表情を浮かべる。

わら子が以前、橋鬼に攫われた事があるという話があったし、この話の結末は何か嫌な予感がしてくる。レイちゃんも私や椿のストップを振り切って、一直線に飛んで行きそうな程に落ち着きが無いし・・・その話の行く末が絶対ヤバい事になったのは確かだろう。

 

「その川を渡った先に別の村があるのじゃが、その川は流れが激しくての。例え一流の大工達であっても、そこへ橋を架けるのは至難の業じゃ。そこで、その村の者達が考えたのが――」

 

「人柱・・・ですか」

 

「ほぉ、知っておったか」

 

「まぁ知り合いの人から、ちょっと話を聞かされましたんで」

 

人柱の事を知っていた椿と私の反応に、山神様は物珍しいと言った様子で少し目を細めた。

 

確か、その説明をされたのは4つ子の紹介の時だったと思う。そうなると、わら子の解決出来なかった依頼というのは、その人柱にされた人達が妖怪化して暴走している話なのかもしれない。

 

『ふむ・・・人柱というのはじゃな、降り続く雨を"水神の怒り"と言って生贄にする場合もあれば、この話のように激流の川へ橋を架ける場合にも、橋の土台となる柱の根元に生きたまま人を埋めたりする。そうすると、絶対に崩れない橋が出来上がると昔は信じられていたのじゃ』

 

「うっ・・・ご、ごめんなさい白狐さん」

 

「やっぱりというか、昔の人ってロクでもない事を考え付いたりするもんなんですね」

 

吐きそうになった椿へ寄り添いつつも、私は胸糞悪い人柱の習慣を聞いて自然と眉間へシワが寄ってしまう。

 

「そこで人柱に選ばれたのは、精神に異常をきたした者。今では"精神障害者"と言うかの?そいつらが選ばれたのじゃ」

 

「はぁ・・・そういう人なら、特に大きな喧嘩にもならないで了承してくれると思ったんでしょうね、村の人達は。それにしたって、同じ境遇なのに酷い事を思い付くなんて」

 

「お前さんの気持ちは良く分かる。そうやって、そいつらの犠牲の下に橋の建設が始まった――のじゃが!」

 

「うわっ!な、何ですかいきなり」

 

山神様が突然大声を出してきたので、ビックリした椿が耳を伏せながら私の後ろへ隠れて来たじゃないか。そしてギュ〜って抱きつくように引っ付いてくるから、椿の胸が私の背中に押し当てられて・・・ゲフンゲフン、とにかく集中力が切れちゃいそうだ。

 

「橋を作ってる途中で、何かヤバい事になったんですね?」

 

「左様。しかも橋は作られるどころか、その土台を建てる事すら出来なかったのじゃ。その日から数日間、村は突然の豪雨に見舞われて最後には山の土砂崩れに呑まれて消えてしまったのじゃよ」

 

「天罰が下った・・・か、何かだったんでしょうかね。村でそんな酷い事をやったから」

 

「そして橋は作られる事は無く、当然ながら人柱にされた者達は理解に乏しかったから無念を感じる・・・ハズは無いのじゃが、どういう訳か"橋鬼"として出て来てしまった」

 

「はぁ・・・とんでもない話ですね」

 

山神様の話を聞きながらも、私の考えでは人柱にされた人の中にも、精神に障害があるとはいえ自身に何をされたのかを理解してしまったから、こうして妖怪となって現れてしまったのかもしれないと思った。

 

そうして話に集中しながら歩いていたので、気が付けば夕陽は落ちかかって周辺が薄暗くなってきていたし、私達の目の前に突然ボロボロになった村が出てきた事も分からなかった。

ぶっちゃけ山神様の「着いたぞ」という声が無かったら、怖い物が苦手な椿だけじゃなくて私ですら楳図か〇おさん風の顔でギャーッ!って叫んでいたかもしれない。

 

狐2人が珍しく余計な茶々すら入れずに静かだったのは、私と椿が真剣に話を聞いてたから悪ふざけで敢えて到着した事を話さなかった気がしてくる。

だって私が椿とビックリして抱き合ってる姿を見て、2人は何かちょっと面白そうな顔してたもん、絶対確信犯だよ!

 

わら子と4つ子の方は私達とは別に真剣な様子だったから、此方に気を遣う程の余裕も無かったみたいだし・・・そう考えると、よく狐2人は悪ふざけ出来たなって思うわ。

 

「あばばば・・・な、なんで土砂崩れに呑まれて消えたハズの村が!?」

 

「こ、怖いですよ!もう涼しくなってきているのに、今更肝試しみたいな物を見るなんて・・・」

 

『これ綾、あんまり我の嫁に引っ付くな。少し嫉妬してしまうではないか』

 

「「いや、だって怖いってば!」」

 

そんな風に私は椿と抱き合っていると、わら子も驚愕の表情で廃村を見ながら、とんでもない事を言ってくる。

 

「こんな村、以前には無かったのに。何で・・・怨念が濃くなっているの?」

 

「ひょひょひょ、湧いとる湧いとる亡霊が。さぁお前さん達、頼んだぞ」

 

わら子や山神様の言葉からして、どうやら廃村は亡霊や悪霊の力によって出て来ているようだ。

なるほど、そりゃレイちゃんが落ち着かなかった訳か・・・いや、それならそれで最初に話しておいて欲しかったんですけど!?

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