私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
私達は田畑の道を白狐さんと黒狐さんに背負われて進んでいる。いくら綺麗な夕焼け空とはいっても、その光に照らされている風景が全て綺麗な訳ではなく今見ている景色のように不気味に感じる事がある。
「あ・・・あれ、都市伝説の「くねくね」じゃない?」
「ひっ!あの、白くてウネウネしてる変なの!?」
『ああ、あれも見るでないぞ。魂を抜かれるからの』
「はーい、分かってるって・・・」
ネット情報でしか聞いた事のなかった眉唾物の存在に興奮していると、ふと腹の音が鳴ったのを感じた。
『白狐よ。俺達の足でも、流石にそろそろ昼飯を挟まんとな。センターまではまだ距離がある』
『むっ、そんなに時間が経っていたか。そうじゃな、綾も腹が空いてきたようじゃし早めに昼にするかの』
「なっ・・・余計な事言わないでよ!」
今の腹の音が2人に聞こえていた事で恥ずかしさから頬が熱くなる。夕焼けのおかげで、2人にはこんな間抜けそうな顔には見えてないだろう。
それにしても朝早く出発したハズなのに、この妖界に居ると景色のせいもあってか時間の感覚を忘れてしまいそうだ。
でも、どうしてなのか私には田畑も、近くを流れる小川も――そして夕焼けに照らされた田舎道に何処か懐かしさを感じていた。
まるで小さい時にそこで遊んだ事があるような、そんな不思議な感覚。
「はぁ・・・僕は早く帰りたいから、のんびりして欲しくはないんですけど・・・」
「どっちみち遠い道のりになりそうだからね。それに無理して一気にセンターへ行っても、疲れてたらそこで説明される事が頭に入ってこなくなっちゃうよ」
『まぁそう言うな、椿よ。我らも妖気を補充せんと、ずっと走り続けていたら疲れるわい』
そんな私達の後ろで袖口からいなり寿司を取り出して食べようとする2人が気になった。
「確か妖怪食には妖気が含まれてるって言ってたよね。ひょっとすると、それで妖気を回復出来たりするの?」
『そうじゃ、綾。このいなり寿司も妖気を加えて加工された妖怪食じゃ。椿と綾がいつも頑張って食べている妖怪食も、我ら妖怪の力の源じゃ。』
「へぇ〜」
『それに椿。いくら食べたくないと考えても、お前の身体は既に妖狐なんだ。綾のような人間と違って妖怪はな、妖怪食を食わねば妖気が尽きて死んでしまう。妖術を使うのも妖気がいるし、何より椿自身の身体が妖怪食を欲しているだろう。ほら、その弁当を食え。可愛い腹が鳴ってるぞ』
「うっ・・・」
黒狐さんに指摘されて椿の腹からも音が鳴った。なるほど里子が私達に毎回妖怪食の弁当を渡してくるのにも、ちゃんとした理由があったようだ。
『ちなみに、妖怪食は英気を養う事も出来るのじゃ。つまり、精神状態を良くする働きもある。2人とも、最近落ち込んだり酷く怒ったりする事も無いじゃろう?』
「そんな働きもあるんだ。結構便利に感じるな〜」
「ん?あ〜、そういえば・・・」
言われてみると、最近は気分が安定しているという事から確かに納得できる。
いよいよ空腹も限界に近づいてきたので、私達は弁当を取り出して蓋を開けた。そこには昨日と同じでやはりというか、それぞれが動き回っている中身があった。
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昼の弁当を食べ終えて――
私達は2人の背中にグッタリ倒れていた。
『2人とも、何時までグッタリしとる』
「昼飯で体力消費してるんだから、少しは察してよ・・・」
「だ、だって・・・僕の口の中で糸こんにゃくさんが、あんなに暴れて・・・うぅ」
『良い悶えっぷりだったな』
「言わないで!黒狐さん!」
「全く勘弁してよ・・・」
すると白狐さんが私達へ声をかけてきた。
『ほれ、2人とも。街が見えてきたぞ』
「えっ?あれ、ここって・・・」
「曲がり方が逆だけど、あれは桂川?とすると此処は亀岡市なの?」
鏡の世界のように街の建物の位置こそ反転しているものの、すぐに理解した私達に白狐さんが感心する。
『ほう、よく分かったの。確か此処には初めて来ると言ってたの。過去の記憶が無いにしても、翁の家に通っていたのは多少覚えているのであろう?――恐らく妖界にも来た事があるのじゃろう。小さな時の記憶は、たまにフラッシュバックするからの』
「なんだって?椿が――っ!?」
すると突然頭に激痛が走り、目の前の光景が全く別なものへと変化していく。隣を見ると椿も私と同じように頭を抱えていて、白狐さんと黒狐さんが何か叫んでいるようにも見えた・・・。
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気づくと私は小さい頃の姿になっていて、黒い髪をした着物姿の女性に手を引かれて歩いていた。
【此処はね、私が気に入ってた場所でもあるの】
そう私に話しかけてくる女性は優しい笑みを浮かべて見せる。
【貴方と来るのは、これが初めてだけどね】
私は昔の事を少し思い出した。
オジサンに引き取られて育てられたのは5、6歳くらいの時で、それより前に誰かとこうしてこんな夕焼け空の下を一緒に歩いた記憶がある事を。
【そうなんだ!じゃあ〇〇〇は私の事好き?私は〇〇〇の事、大好きだよ!】
【うふふ、私もよ。ずっとこうして、2人で生きていけたらいいわね】
【だいじょうぶだよ!いざとなったら私が〇〇〇の事をまもってあげるもん!】
そうだ。私はその時から幸せな未来の為に、誰かを守る為に生きようと――心の中に誓ったんだった。
【頼もしいのね、綾は。本当、貴方と出会えて良かったわ・・・】
でも、そのすぐ後の事を思い出した瞬間に、私は異様な恐怖心に襲われた。ダメだ、この先なんて思い出しちゃいけなかったんだ。なんで今になって、それを思い出してしまったんだろう。
【――っ!まさか、もう此処がバレたの!?】
【〇〇〇!?ダメだよ、もう〇〇〇はたたかわないって!】
【お前達をこうなる前に、もっと早くに消していれば、こんな事には・・・!だが、もう逃がさん!ここまでだ!】
【――ごめんなさい、綾。妖異顕現。】
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「ダメぇっ!!」
『綾!おい、綾が目覚めたぞ!椿の方は!?』
『椿、しっかりしろ!』
「はっ!?」
最後に女性へ手を伸ばして叫んだ時、私の意識は元の景色へと戻っていた。目元を触ると、いつの間にか流したのか私の涙で濡れている。
「あ、れ?こ、ここは・・・」
「はぁ、はぁ・・・う、うぇ」
背中に必死でしがみつく私達に、2人が不安そうに聞いてくる。
『椿に綾よ、一体何を思い出した?』
「私――」
『よせ黒狐よ。とてもじゃないが聞ける状態ではない。2人とも、とにかくセンターへ向かうが、あまりにも無理そうなら翁の家に戻るからの』
「へ、平気・・・」
私が思い出したもの、その全てについて理解をする事は出来なかったけれども――それがどうして今に繋がったのか、それは分かった気がする。
私は名前も忘れてしまった「誰か」を、椿と重ねる事で自身の存在意義を守ってきたんだ。
そして今度こそは、私が椿を守り切ってみせる。
私はそう一度決めたんだ。