私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第拾弐話 幸運をもたらす"わらし舞い"

 

私達の目の前に現れたのは廃村だけではなく、なんと昔住んでいたであろう身体の不自由な村人達もヨタヨタとしながら村のあちこちを歩いていた。とはいえ、その人達の身体は全体的に透けているので幽霊である事に間違いなさそうだ。

 

まぁ、そんな中でも私と椿以外は平然と村人達の近くを通って歩いているんですけどね!

 

『椿、ようやく綾から離れたと思ったら白狐ばかりに引っ付くな。俺の方にも来い』

 

「うぅ、ごめんなさい・・・今はちょっと無理です」

 

『むぅ・・・我も椿だけならまだしも、綾にまで引っ付かれていると流石に歩きづらいぞ』

 

「いや、いやいやいや!幽霊の人達たまに私達の方を見てくるんだよ!?その人達がボロボロになってる着物なのもあって滅茶苦茶怖いんだって!」

 

椿は久しぶりに尻尾を足の間へ挟める程に怖がっちゃっているし、私だって白狐さんの袖をガッシリ掴んだまま離せなくなっちゃうくらいだ。正直な話、下手なホラー映画よりよっぽど怖い!

 

そんな私達を見て、山神様は苦笑いをしてくる。

 

「ひょひょ、何じゃ何じゃ?霊狐に好かれておるのに、2人共幽霊が苦手なのか?」

 

「そんな単純に怖い怖くないって話じゃないんですよ〜!」

 

「くっ・・・僕も普通の霊なら慣れたけれど、亡霊や悪霊の類は無理です!」

 

とりあえず変な方向に話が脱線しないように本筋へ戻れそうな話題を探していると、レイちゃんが先程から幽霊の人達を成仏させてあげようと必死に身体から温かい光を放っている事に気付いた。

 

私と同じく、その光景を見た椿はレイちゃんを優しく諭す。

 

「レイちゃん、多分この人達は何か原因があって此処に縛り付けられているんだと思うよ。とりあえずは僕達で原因を何とかするみたいだから、レイちゃんはそれまで待っててくれる?」

 

「ムキュゥ・・・」

 

「大丈夫だよ、レイちゃん。そこまでションボリしなくても私達だけじゃなく、ちゃんとレイちゃんの出番はあるハズだから今は大人しく待っててね」

 

椿と一緒にレイちゃんを宥めながら皆と歩いて行くと、その先の村の外れで寺のお堂みたいな建物が見えてくる。

見た所は泥だらけにはなってしまっているが、これだけは高所にあったからか土砂崩れに巻き込まれなかったらしく、ボロボロになっていてもシッカリと佇んでいるようだ。

 

そして、山神様は振り返ってわら子へと声をかけた。

 

「よし、準備は良いか?座敷わらし、以前のように此処で"あの舞"を舞ってくれ」

 

「はい!」

 

わら子の真剣ぶりからして、普通の除霊とかとは違う事をやるのは分かるが・・・それでも"あの舞"とは一体何をするんだろうか?

 

そんな事を考えていると、白狐さんが私達のしがみついている所に近い尻尾をパタパタさせてくる。

 

『さて、椿に綾よ。これからの事を説明したいから、そろそろ我から少し離れてくれんかの?』

 

「うぅ・・・」

 

「ま、まだちょっと怖いんだけど・・・」

 

白狐さんが結構強く尻尾を振るので、どうやら離すしかないらしい――というか、不安そうにしてる私達の近くで黒狐さんは両手を広げて何やってんだ。椿ウェルカム!とでも言いたそうな様子だったんですけど。

 

『これ、椿も綾も。これから戦闘が始まるかもしれんから、隠れている場合では無いぞ』

 

「キャン!尻尾引っ張らないで〜!」

 

「うわっ!し、しょうがないな・・・っていうか、やっぱり戦闘になるんですかい」

 

なーんて事を考えていたら、そのまま私と椿は白狐さんから掴まれて前に引っ張り出されてしまった。

 

『良いか?座敷わらしは幸運をもたらす"わらし舞"を舞う事で、辺りを幸運の気で満たして邪な気を浄化出来るんじゃ。それが霊だろうと何だろうと関係なくな』

 

「はへ〜初めて聞いたわ、そんな力」

 

「わら子ちゃん、凄い能力を持っているんですね」

 

そうして白狐さんの話に椿と一緒に感心していると、龍花さんと朱雀さんが私達の近くへやって来て、以前に起こった事を耳打ちで話してくる。

 

「しかし、座敷様の"わらし舞"をさせまいとしてなのか、以前には突然"橋鬼"が不意を突いて襲いかかってきたのです」

 

「さっき廃村を見た時のわら子の話からすると、その時は廃村は無かったっぽいもんね。じゃあ、ますます怪しい感じがしてくるな」

 

「はい、綾様。それでも座敷様は、橋鬼から逃げずに舞を踊れば浄化出来ると思われていました。ですが・・・」

 

「どういう訳か、その橋鬼には通用しなくて攫われてしまったって事か」

 

それにしても、龍花さんと朱雀さんは同じ話し方で交互に話しかけてくるから、やっぱりというか聞いてて時折どっちがどっちか分からなくなりそうだ。

 

「おっしゃる通りです。まさか、邪な気の塊である橋鬼に座敷様の舞が通用しないとは、この時の私達も思っていませんでした。ですから、今回こそは――」

 

「わら子ちゃんの舞が成功して、この場所全体の浄化が終わるまで僕達が守る・・・という事ですね」

 

その椿の言葉に同意するかのように、龍花さんと朱雀さんは無言で同時に頷いた。そして虎羽さんと玄葉さんの方は、既に守りの体勢へと入っていたようだった。

 

「そう上手くいくかね?」

 

すると、今までずっと訝しむような表情をして黙っていた湯口先輩が口を開いた。ちなみに先輩があまりに雰囲気が話しかけたら不味そうな感じだったので、ここまで誰も話しかけられなかったのだ。

 

「ひょひょ、坊主。お前さん、ずっと黙って着いて来ていたが・・・何か思いあたる節でもあるのか?」

 

「あぁ、何か"おかしな気"がポツポツと点在してやがる。ちょっと俺はそいつを調べて来るから、その座敷わらしの護衛は椿と綾――お前達に任せたぞ」

 

「一応、先輩の方も気を付けてくださいね」

 

「ふん・・・言われなくても分かっているさ、綾」

 

そう言って先輩は霧が深い中、1人でスタスタとお堂から歩いて行ってしまった。それにしても、先輩の言う"おかしな気"とやらが今回の異常事態に関係してなけりゃ良いんだけど。

 

何にせよ先輩への警戒はまだ必要なので、首輪は着けてもらっている。だから、ヤバいと感じたら命令して・・・で、大丈夫かな。

 

『椿、綾。滅幻宗の坊主は俺が後を着けて、その様子を見張っておいてやる。どうにも首輪だけでは不安だ』

 

「「えっ・・・」」

 

黒狐さんまで離れようとするので、私も椿も咄嗟に声が出てしまった。黒狐さんは妖術が得意だから、何か変な妖術を使われた時に頼りになると思ってたのに――いやいや、なんで椿どころか私まで心細くなっちゃってるんだよ。椿は私が守るって決めてたハズなのに〜もう!

 

『可愛いな、椿。それに綾も不安になるのは分かるが、お前も少しは自分の力を信じてみろ』

 

「むぅ〜椿と一緒に撫でないでよ」

 

「あぅぅ・・・」

 

そう言われつつ私達は黒狐さんに頭を撫でられていると、ふと椿が黒狐さんの方を上目遣いで見上げる。

 

『ま、待て、椿。そんな可愛らしい上目遣いで見られたら・・・こ、この場から離れられん!』

 

「って、さっさと行かんかい!!」

 

『綾の言う通りじゃ黒狐!先に行ったアイツを見失うぞ!』

 

全く、黒狐さんは相変わらず椿に優し過ぎるんだから。それに椿も椿で何処かのCMで見たチワワのように、不安なのを視線で訴えようとするんじゃありません。どうする〜ア〇フル〜♪って脳内に流れてくるじゃん。

 

「なんなら、ずっとそこに居てても良いぞ黒狐」

 

「わぁ!先輩もまだ居たんですか!?」

 

「椿をたらしこもうとする会話が聞こえたから、急いで戻ってきただけだ」

 

「こ、心強いというか、なんというか・・・」

 

でも、よくよく考えたら先輩も椿の事が好きなんだよね。そりゃ不機嫌そうに入り口で待機してた訳ですわ。

 

「それよりも皆、とっとと用事を済ませないとヤバいんじゃない?あまりに皆がいつも通り過ぎるから流石に私も椿も怖くなくなってきたけど、いい加減真剣にやんないと!」

 

それから私は大きくため息をついたが、わら子はそれを見て意外な一言を口にしてきた。

 

「あはは・・・いつも通りの皆を見てたら、何だか少しだけ肩の力が抜けたよ。ありがとう、椿ちゃんに綾ちゃん」

 

「ひょひょ、お前さん達には緊張というものとは無縁なのか?全く、派手に騒ぎおってからに。だが、そのお陰で周りの霊達も拍子抜けして近づけんようだがな〜」

 

「えぇ・・・あ、ある意味結果オーライなのかな〜?」

 

「わ、わら子ちゃんの緊張は解けたから良かったんじゃないかな」

 

椿と一緒に苦笑いをしていると、わら子は花飾りの付いた扇子を持って、お堂の中央にある土俵のようになっている台へと上がって深呼吸をしていた。

 

そして、そこからゆっくりと水が流れるように綺麗な動きで舞い始める。

 

「さて・・・椿に綾、後は頼むぞ。そして黒狐、お前は俺を監視するんだろう?奴らが動き始める前に早く行くぞ」

 

『ふん、指図をするな青二才。お前は怪しいと思う場所を調べて、俺に報告すれば良い』

 

先輩と黒狐さんも準備が出来たと言わんばかりに、普段のように言い合いをしながら夜の暗闇へと出発していったのだった。

 

っていうか、気付けば既に辺りは真っ暗な夜だ。虫のさざめきすらない静か過ぎる廃村には、亡霊となってしまった村人達の囁く声だけが聞こえてくる。

 

『我々の事を嗅ぎつけたのか・・・』

 

『"アレ"がバレてはいかん』

 

しかし、それは良く分からないけど嫌な予感を感じさせるような内容だ。変な事が起こるのは確実だと考えていた方が良いかも。

 

そんな事を少し考えていると、谷の方から叫び声のような謎の奇声が聞こえてきた。

 

「来ましたね。椿様と綾様、それに白狐様・・・ご準備を!」

 

「あぁ!了解ですぜ玄葉さん!!」

 

「うん!僕達でわら子ちゃんを守ろう!!」

 

今回の騒動を起こした橋鬼に何が関わってるのかは知らないけど、私達は私達に出来る事を全力でやり遂げるんだ!!

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