私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第拾参話 100人組手でもする気かよ!?

 

わら子の舞が始まって、その美しさに思わず見とれてしまいそうだったが、村の東側にある谷の方から大量の強い妖気が私達の方へと向かって来ていた。

 

「そんな・・・何故今回は、こんな大量に!?」

 

「え、ちょっと龍花さん?なんか予想外みたいな顔してますけど!?」

 

「くっ!前回は1体だけだったのに、今回はその何十倍もいる!」

 

「ほぁぁあああ!?冗談ですよね虎羽さん!!」

 

龍花さんと虎羽さんの発言に私はビックリしてしまっているが、意外にも椿は落ち着いたような様子を見せていた・・・っていっても、何か現実逃避してるような気がするけど。

 

「えっと・・・1人何体倒せば?」

 

「椿様、残念ですが"神妖の力"を解放していても奴らは完全には倒せません。座敷様の舞による浄化によって、辺り一帯を浄化しなくては消えないのです」

 

「朱雀さん、それ本当ですかい?」

 

「はい。綾様のお気持ちは良くお分かりですが」

 

「あ、ははは・・・嘘だァァァアア!!」

 

わら子を倒せない敵の軍団から守り続けなきゃないって、かなり大変そうな防衛戦になると思うんですけど!!

 

「皆さん!来ますよ!!」

 

「だ〜もう!どうしたら!!100人組手でもする気かよ!?」

 

「待ってて綾ちゃん。ちょっと僕、"ある事"を試してみるから」

 

「・・・へっ?」

 

すると椿はいつの間にか"神妖の力"を解放し、手のひらから発生させた浄化の力を術式吸収しては放出、それをまた吸収して・・・を繰り返していたのだ。

 

【椿、そろそろ限界よ】

 

「了解です、妲己さん」

 

そして椿は妲己さんの言葉で、自身が暴走しないギリギリの辺りで浄化の力の強化をストップする。白狐さんも椿のやっている事にようやく気付いたようだ。

 

『椿よ、何をボ〜ッとして――』

 

「術式解放!天神招来、神風の禊《極》!!」

 

しかし椿が神術を発動した瞬間に、放った風の勢いが強すぎて彼女自身は後ろに吹っ飛ばされてしまう。

 

「うひゃぁぁあ!!」

 

「おっとと妖異変化、烏鳩(からすばと)!」

 

とはいえ、すぐさま変身して椿を受け止めたけど。

 

「大丈夫、椿?」

 

「あ、ありがとう・・・綾ちゃん」

 

「全く、一体何をしているのですか椿様」

 

そんな椿の行動を見て朱雀さんは若干呆れた顔をしたが、それから敵が谷へ吹っ飛ばされたのを確認して一息つく。

 

「しかし、流石といった所ですね。浄化は無理でも、大分谷底に吹き飛ばしましたよ」

 

「やっぱり・・・あれで浄化は無理ですか」

 

「えぇ、橋鬼は取り憑いた土地の"負の念"を取り込んでいますから、その為に土地の浄化をしなくてはなりません」

 

「なるほどね。だから幸運で周囲を浄化する、わら子の舞じゃないと効果が無いって事か」

 

こうなったら仕方ない、消耗が激しい"神妖の力"を使わずに出来る限り橋鬼の侵攻を防ぐしかなさそうだ。

 

椿が空を飛ぶ朱雀さんに掴まって黒狐さんの力へ切り替えたのに合わせ、お堂の正面で私も向かってくる橋鬼の軍団へと妖術を発動する。

 

「妖異顕現、黒焔狐火!」

 

「よ〜し、こっちも新しいのいくよ!妖異顕現、凍華繚乱(とうかりょうらん)!」

 

私が手のひらから氷で出来た彼岸花を突っ込んで来ていた橋鬼軍団の先頭へ投げ付けると、その花は花火が爆発するように一瞬で巨大な氷塊となって先頭の連中を氷漬けにした。

 

これが私が風の妖術に続いて思い出した、相手を足止めしたり拘束出来る氷の妖術だ。

 

そして椿が空中から下へと落とした黒い炎も、先頭を押しのけて前へ出てこようとしていた橋鬼達へ命中して火達磨へ変えた。

しかし橋鬼軍団は、それでも巨大な氷を割ろうとしたり燃えながら進もうとしてくる。

 

そんな景色に私も椿も戦慄していると、椿を抱えたまま朱雀さんが静かに口を開く。

 

「ふむ、これは丁度良いですね。椿様、貴方の消えない黒焔――少しお借りします」

 

そうして朱雀さんは目を閉じて小さく何かを呟く。

 

すると、なんと橋鬼を燃やしていた椿の炎は細長い針の形へと姿を変えて、更に氷漬けにされている橋鬼達も一緒に貫いて地面へ張り付けてしまったのだ!

 

「「す、凄い・・・」」

 

「いえいえ、これが消えてしまう普通の炎なら長くは持たないのです。簡単には打ち消される事の無い、椿様の黒焔のお陰ですね」

 

そう朱雀さんから褒められてか椿は少し恥ずかしそうな表情になるが、まだ橋鬼達の侵攻が完全に止まってはおらず、他の人達が氷塊の先で戦っているのを見て真剣な顔へと戻る。

 

「朱雀さん!ちまちまやっていてもしょうがないから、ここからは僕も降りて戦います!可能なら僕の炎を好きなように使ってください!」

 

「分かりました、ご武運を!」

 

朱雀さんは椿の言葉に頷いて、彼女をポーイと地面へ放り投げ・・・って、ちょっと待てぃ!?

 

「うひゃぁぁあ!?」

 

「でぇぇえ!?よりにもよって敵陣のド真ん中に放り投げたぁ!あ〜もう、今そっちに私も行くから!!」

 

私は正門の柱を蹴って大きくジャンプし、空中で落ちてくる椿をお姫様抱っこでキャッチしながら雷の妖術を発動する。

 

椿も私に抱きかかえられた状態で、自身の妖術を両手から着地地点の橋鬼達へと発動した。

 

「こうなったら、もうヤケクソだぁ!!妖異顕現、影の操――&、黒焔狐火と黒羽の矢!!」

 

「私もちょっと椿の真似をして・・・妖異顕現、稲妻雷霆蹴《改》!!」

 

そして土壇場でさっき椿がやったような術式吸収と放出を見様見真似でやってみると、なんと完全に吸収こそ出来なかったが両足から雷の妖術を発動してドロップキックの要領で地面ごと橋鬼達を吹っ飛ばす事が出来た!

 

椿の方も術式吸収で強化された影の妖術で、後から発動した2つの妖術を橋鬼達の影から発動出来たらしく、大量の黒い炎を纏った黒羽の矢が着地地点一帯の橋鬼達を炎へと包み込む。この椿の大量の黒羽の矢戦法は、美亜の屋敷で亰嗟の和月と戦った時にも見た戦法だ。

 

そこから更に朱雀さんが能力で炎を操作して、矢が命中した橋鬼達を完全に地面へと固定する。

 

「お〜ここまで上手くいくなんて!」

 

「一瞬どうなるかと思ったけれど、朱雀さんとの連携が上手くいって良かったですね」

 

こうして固定された橋鬼を改めて見てみると、なんというか細っちょろい身体なのに頭だけは異常に大きい鬼の姿をしていて不気味に感じる。

しかし、そんな見た目とは裏腹に固定されていても地面を引っ掻いただけで軽く抉れる程の力があるようだ。

 

「こりゃ、あんまり長くは持たないかな」

 

「そうだね綾ちゃん。朱雀さん、もう少しシッカリと固定を――」

 

「椿様に綾様、危ない!」

 

「えっ?わぁっ!」

 

「おわっとぉ!い、いつの間に後ろまで!?」

 

しかも、気付けば橋鬼軍団は別な所からも侵攻して来ていたようだ。龍花さんが青龍刀で防いでくれなかったら、今の敵の攻撃も避けられなかったかもしれない。

 

「2人共、油断しないでください!状況が特殊過ぎる今回は、いつもの任務とは違うのですよ!」

 

「ご、ごめんなさい」

 

「あ、あぁ・・・すいません」

 

確かに龍花さんの言う通り、今回の敵は普段よりも圧倒的に数が多くて此方に向けてくる殺意も並大抵のものじゃない。その上、恐らく亡霊の村人も何時までも大人しくしているとは限らないだろう。

 

そして今まで喧嘩を仕掛けてきた不良連中なんかとは違うとはいえ、私も高いランクのライセンスを持っているんだから周囲の反応が全く違うのも当然か。

 

それにずっと守るだけが戦いじゃないし、それならば私だって・・・

 

「「妖異顕現――」」

 

椿と同時に手を上へ掲げ、私達はそれぞれ更に新たな妖術を発動する。

 

「黒鉄の鎖舞(くろがねのくさりまい)!!」

 

「泰焚・峯璃裂弩(タイフーン・ブリザード)!!」

 

そう叫んだ瞬間に、椿の尻尾の毛1本1本が鉄の鎖へと変化して一気に周囲へ蛇が散らばるように飛び、私の頭の後ろで1本に束ねた銀髪は強力な冷気を纏った竜巻へと変化する。

そして私は髪に纏った竜巻を頭で振り回すようにして操り、先に椿が放った鎖で雁字搦めとなった橋鬼達へぶつけて一瞬で雪像そのものへと凍結させた。

 

『つ、椿に綾よ・・・2人共、また変わった妖術を会得したの』

 

「まぁね。でも妖気を大きく消費するから、ちょっと疲れるけど」

 

そんな椿と私の妖術コンビプレーを見て、白狐さんが呆気に取られながらも声をかけてきた。

 

とにかく見える範囲の橋鬼達を行動不能に出来たので、それを見た皆は目を丸くしながら私達の所へ集合してくる。龍花さんですら「これ、守る必要があったのか?」と言いたげに顔が困惑しているし、よくよく考えたら私も椿も自身の能力で何とか防げたのかもしれないが――

 

「それと龍花さん、さっきは油断してしまってすいませんでした」

 

「龍花さん、改めて僕もごめんなさい。だから、戦闘の時はもう少し気を引き締めていきます」

 

「え、えぇ・・・そうですね、そうしてください。わ、私の手間も省けますので」

 

一応、それはシッカリと謝っておかないとね。

龍花さんが後から言った言葉が本心か照れ隠しなのかは分からないけど、これ以上は皆に・・・そして椿に心配をかけないようにしないと。

 

そんな反省を心の中でしていると、山神様は谷底を指差してきた。

 

「ひょひょ、安心するのは早い。ほれ、まだ沢山居るぞ」

 

「うっわ、まだ谷底からウジャウジャ出て来んのかよ!?」

 

「えぇ、嘘でしょう?」

 

さっき谷から湧いて来た連中は私達が完全に固定して捕まえたから、どうやら今出て来ているのは更なる新手のようだ。

 

『むぅ・・・流石に多いというか、妙ではないか?』

 

「確かに変だよな、白狐さん。まさか無限湧きって事は無いよね〜ははは・・・」

 

「わ、笑い声が乾いてますよ綾ちゃん」

 

そんな私の冗談を肯定するように、山神様は無慈悲にもこっくりと頷いた。

 

「ひょひょ、わらし舞が終わるまでじゃろうな。それまでは辛抱じゃわい」

 

「ですよねチックショウ!!」

 

もうヤダとっとと終わって欲しい。

 

というか、これだと絶対他にも原因ありそうだし余裕を見つけて探した方が良いんだけど、もう次の橋鬼軍団が近くまで迫って来てるから防衛する事しか出来ないし!

 

あ〜もう、こうなると先に出発して周辺の調査へ向かった黒狐さんと湯口先輩が、何とか異常事態の原因を見つけてくれるのを待つしかない感じじゃん!!

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